練習試合でみほとまほを下してから3年が経ち、真霧は黒森峰学園戦車部の副隊長を拝命していた。そして、明日をプラウダ高校との決勝戦を控えた前日、真霧は試合会場の近くの居酒屋に来ていた。そして、その居酒屋に入るとある人物を探してその隣に座り、話しかけた。
「千代さん」
「あら、真霧君ね」
そう、真霧が会いに来ていたのは西住流と二分する流派の島田流戦車道家元、島田千代、その人だった。
「明日…本当にいいの?」
千代は真霧にそう聞いた。
「…ええ」
「既に偽造の遺書は書きましたから」
真霧は千代の質問にそう答えた。明日の大会、真霧はある計画を立てていた。大会中にみほの転校する理由の戦車の代わりに川に落ちて事故死に見せ、西住から逃げ島田流に孤児として養子縁組をする計画を―
「はい、これを持っていきなさい」
そう言って千代は一つの紫色の御守りを渡してきた。その御守りの表面には『戦車安全祈願』と白い糸で刺繍が施されている。
「これは…」
「本当に死なないでくださいね」
「貴方が死んだら貴方が兄になる愛里寿が悲しむから」
実は真霧、愛里寿に思った以上に懐かれており、真霧に養子縁組の話が出たのは愛里寿がお兄ちゃんが欲しいと千代に言ったからだったりする。
「…ふふ…ええ、死にませんよ。ありがとうございます…お母様」
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翌日、試合が始まって一時間程経った頃に雨が降り始めた。そこの中で真霧は乗車するティガーⅡを森の中まで走らせ、そこで命令を出した。
「この先の森の中で停車してくれ」
「了解」
そう操縦員の川敷真理(かわしき まり)が返事をし、ゆっくりと停車した。それから真霧は双眼鏡を手に取り、氾濫しそうな川を見つけるとその近くの敵の様子を見回した。そして、川の岸ギリギリに停車している戦車とそれを狙うプラウダのフラッグ車、そして、それの近くを走るみほのフラッグ車を発見した。
「あ、あれは…」
「ヤバイぞ!!」
それを見るなり真霧は叫んだ。
「一体どうしたんですか?」
真霧の戦車が発進すると砲手の中井愛美(なかい えみ)が聞いてきた。
「あの川岸の戦車、あのままだと岸に流れ弾でも出てみろ、川に落ちるぞ」
「な、なら急いで通信を…」
通信手の石田美咲(いしだみさき)がそう言い、無線を使おうとする。
「だめだ、この雨だと通信できない」
「だったら!」
そう装填手の川邑由梨花(かわむら ゆりか)が叫んだ。
「だから、この戦車をあの戦車にぶち当てて避けさせる」
「む、無茶ですよ」
美咲がそう嘆いた。
「美咲と由梨花、愛美と真理は戦車を降りてくれ」
それからそう真霧は言った。その隊員達は悩みの顔を見せた。
「副隊長命令だ。総員戦車を下車後エリカの部隊と合流せよ」