嫌な夢を見た気がした。服に汗が染み込んでいて、気持ち悪い感覚が全身から伝わる。
まだ体はしんどいけど、何とか起きあがれる。治りかけという感じだろう。
「……今、何時なのかな」
目が見えないのは、やっぱり不自由だ。元々ボクは家にある本を読むぐらいしか、出来なかった。
家にある本は少なくて、最後は国語辞典のほとんどを読みきっていたぐらいだ。だけど、読んでる間だけはとても楽しかった。
新しいことを知る。家に閉じ込められていたボクには、ソレがとても楽しかった。
だけど、今のボクは本を読むことが出来ない。
「おはよ、有紀。今は朝の十時だよ。雅ががコンビニでおにぎり買って来てくれてるから、朝ごはんはもうちょっと待ってね」
「うん、分かった。ありがと、お母さん」
音と匂い。その両方から、お母さんを感じる。
「……ありがとね、有紀」
「……ぅん? えっと、お母さん、突然、何……?」
「あはは、やっぱり、雅の言った通りか。んっと、有紀は雅に……悪戯をしたよね?」
悪戯、とお母さんは控えめに言ってくれたけど、昨日のことだろう。
――下手をすれば、お母さんと雅兄ちゃんの関係を壊すことになっていたというのに。
「……うん」
「私はさ、雅が嘘を吐いてることなんて、全く気付けなかった。有紀がどうやって気付いたのかは分からないけど、それを私に教えてくれた」
「…………」
違う。そんなのじゃない。
自然とボクはそう否定していた。勿論、それは本当のことだし、言い訳なんて出来ない。
だけど、そんな風に否定する自分は、お母さんを否定しているような気がして、悲しい。
二つ気持ちが、同時にボクを押しつぶす。
嘘を吐いてお母さんを騙すのか、お母さんを否定するのか、ボクは自分でその二つを選択しないといけない。
「有紀。そんな辛そうな顔をしないで」
「……ッ、ボクは、そんな……」
そんな顔をしていない。そう言おうとして、手に涙が零れていることに気付いた。
何でこんなことで泣いているんだ。ボクは強くないと、――誰にも迷惑を掛けないようにしないと……。
すぅ、とお母さんは大きく息を吸った。
「……私さ、雅が嘘を吐いてるって知って、とっても傷付いた」
「……ッ」
当たり前だ。ずっと信じていた相手に嘘を吐かれているなんて知ったら、誰だって傷付く。
「……でもね、とっても嬉しかった」
「え?」
「私に嘘を吐くぐらいには成長していて、そのせいで悩んでいたって分かったから。だから嬉しかった。だから、今度は私の番」
「お母さんの、番……?」
「……うん。実はね、私も、嘘を吐いてるの。雅にも、――有紀、君にも」
お母さんの言葉は、絶対に信じたくない、最悪の言葉だった。
「「嘘だッ!!」」
文章量が少ないのは手抜きではありません。そして高校生になって、自由時間がかなり減りました。それと、不定期で短編を投稿するかもなんで是非よろしくです。