――ボク、柊姫有紀は生まれるべきじゃなかったんだと思う。
お父さんはボクに暴力を振るうし、お母さんは五年前に「絶対に戻ってくるから」とだけ言ってどこかに行ってしまった。
お母さんは綺麗で、優しくて、面白くて、賢くて……――それに、とてもいい匂いがする。
そんなお母さんが帰ってくるのを、ボクはずっと待っている。
お母さんが帰ってくるなら、どんな辛いことでも耐えてみせる。
ボクが我慢する。――たったそれだけで、お母さんが帰ってくるのならばどんな暴力だって耐えてみせる。
お母さんとの思い出は、五年間のソレのせいで、ほとんど消えてしまったけれど、お母さんの声と匂いだけは覚えている。
いつか絶対に帰ってくるお母さんを、ボクは忘れないようにしながら、待ち続けている。
――だから、お父さんが話した事は嘘だ。嘘に決まっている。
お母さんは、いつかボクのところに戻って来るはずなんだ。
そして、ボクに笑って言ってくれるはずなんだ「ありがとう」って。
――そんな時だった。ボクがソレを聞いたのは。
「……ありがと、有紀」
曖昧な感覚がゆっくりと冴えていく。どれぐらいの時間が掛かったのかは分からないけど、多分、とても長い時間だったと思う。
その時になってようやく、ボクは眠っていたことに気付いた。
いや、そんなことを思っている場合じゃない。
今、聞こえた「ありがとう」が
「……お母さん、なの?」
ボクの問いにその声の人は答えてくれなかった。
でも、その代わりに、小さな寝息が聞こえてくる。――幻聴じゃない、と安心する。
「……寝てるの? ……そっか、疲れてるんだね、
だったら起こしてはいけない。折角、ボクに会いに来てくれたんだから、
「でも、これぐらいなら、いいよね?」
だって、五年も待ったんだもん。――だから、少しだけなら、
そっと、ボクはそこから降りて、お母さんの息が聴こえるところに歩いて行く。
「あったかい……」
ずっと、ずっと、こうしたかった。大好きなお母さんと一緒に寝たかった。
「……えへへ。戻って来てくれてありがと、お母さん」
お母さんの布団に潜り込んで、ボクはそう言った。お母さんの匂いとお母さんの体温に包まれて安心したのか、ボクはすぐに眠くなってしまった。
「おやすみなさい。お母さん」
投稿ペースが早くなっているのは内容が薄いからです。
えっと、感覚的には、前回が一章として、一・五章ぐらいでしょうか。
二章に続く為の布石というか、何というか。
次は二月頃に、投稿かと思います。※1月10日に投稿出来ちゃいました。
感想お待ちしおります。
リア友でも、誰でも、ズバッと言ってくれて構いません。むしろそのほうがいいです。どうか、どうか……!!