結局は、夢だったのかも。でも、その時その時で、暑かったり、美味かったり、痛かったり、気持ち良かったり、感覚があったから、現実ではあった。不思議な体験したンよ。せっかくだから、またいつか「あの世界」を思い出して楽しみたい。ので、回想しつつ話そうかと。
液晶を挟んでよく知った世界に、実際に行っちまった日々の事をーー。
よくある書き方で、自分語りから始めようか。長いぞ。読むのすっ飛ばしても、まあ問題ないかな。それでも、書き出しときたいのは、自己満だ。自分語りしたいんだよ。
オレは、テレビゲームをして遊ばない子供時代を送ってた。「習い事」が「遊び」で、すんげえ楽しかったから、ゲームに興味を持ってなかった。や、興味はあったな。幼馴染の家に行くと、必ず『スーファミ』か『64』でわいわい遊んでたから。実家に『ファミコン』はあったけど、ひとりっ子も相まって、ぼっちプレイより幼馴染ん家で遊ぶ方が楽しくて、しょっちゅう幼馴染ん家に行ってた。中学、高校は部活動漬けで、ゲームで遊んでる時間はなかった。とは言え、ゲームで遊べないことに不満は抱かなかったよ、子供時代と同じで部活動が楽しすぎたし、ゲームで遊べなくてもなんも問題ない。社会人になると、夢中になったのはコスプレなんだが、まあ、十年経つと、コスプレ界の認識やら変わって頻繁に起こる『学級会』ってやつに疲弊しちまってさ、「コスプレ」って遊びをするのが辛くなったんだ。
楽しいことが無くなりかけた時、コスプレ友達が「モンハンやろう」と誘ってくれた。自分が持つ家庭用ゲーム機が『ファミコン』から『プレイステーション4』にいきなり格上げだぜ。四万円近くの本体と、『モンスターハンターワールド』の円盤を購入してな。
スティック操作は『64』で止まってるから、二つもスティックがあって混乱して慣れなくて、始めた当初はうまく動かせないカメラワークに画面酔いしまくってたわ。ものの十分ほどでグロッキーになって、休憩を挟みまくりつつ、こつこつプレイヤースキルを上げてった。ようやくまともに動けるようになって、誘ってくれた仲間達で狩りに出かけたり、ひとりで練習したり、救難信号を出して同国人や外国人に助けてもらったり、グラフィックに驚いて、狩りより探索と言う名の散歩する方が楽しかったり、俗に言う「エンジョイ勢」ハンターデビューを果たした。
そのハンター、『ポケットモンスター』のように固定キャラクターに名前を付けるだけっていうシステムじゃなく、レパートリーは限られてるけど、ツリ目とかタレ目とか、ぶちゃ鼻とか鷲鼻とか、ちょっとはクリエイトできるってんで、オレ自身の顔立ちに似せて作ってみた。ちょっと見栄はって、西洋人の鼻筋を選んだら、だいぶんハンサムに仕上がってしまった。こんな彫りの深い頭蓋骨に産まれたかった。オトモの猫も、そこそこクリエイトができるってんで、もう虹の橋にいるが、一緒に暮らしていた猫に似せた。ハンター、『貴之』。オトモ、『キットくん』。
「おっとぉ? おっと、なんだ?! 何が起きた、ビクンビクンしてるで、『貴之』くん! あっはっは! やばい、これ、治るの待たなきゃーーえ、キットくん、『旦那さんのピンチにゃ』? 助けてくれんの? どうやって? うんーー振りかぶって? ふはっ、フルスイング! そうやって助けるンかーい! ふっ飛んだわ、『オレ』」
プレイスタイル、こんな感じ。ちなみに、この不覚は初期の頃の話。『古代樹の森』の頂上、リオ夫婦の寝床のところの話。あそこで素材採取やら痕跡集めしてたら、ノーマークの背中にビリビリっと、ランゴスタがね。蚊っぽい見た目で、ヒトの顔よりでかくて、尻尾の先で感電させてくる小型モンスター。こいつ、『結晶の地』のテオナナ夫婦ん家に繋がる入り口があるエリアにもいるんだけど、地味に脅威。戦ってるときに感電されると、死しかないんだよ。一応、ビリビリモーションを治るまで待たずに、キャンセルする手段はあるぞ。アッパー攻撃か、爆弾か、竜撃砲か。だけど、別プレイヤーがそれをして助けてくれる率は、中々無い。だから、ランゴスタは地味に脅威。あれ、脱線した。
さっきも書いたけど、探索の方が好きで、遊び始めてそう経たない内にトロフィー『モンスター博士』を解除した。推しモンスター、対戦して得意なモンスター、苦手なモンスターも段々と確定してきた。どこに何があるのかも、だいたいは記憶出来てきた。メインストーリーも、特別任務もクリアして、あとは希少な環境生物一羽のトロフィーと、大小のサイズのトロフィーを埋めればトロフィーコンプリートってところまで来た。ああ、忘れてた。トロフィーはないけど、食材コンプリートがまだだった。スキル全記憶とかしてないし、フレーム予想とかも出来ないプレイヤースキルがクソなハンターだから、知り尽くした、とまでは言えないけど遊びこんでたんだ。前置きは、ここまで。
そんな時期の金曜の夜。いわゆる花金。仕事で疲れてたから、ログインボーナスと、せっかく起動したからクエスト一回だけして寝落ちたその日が、そう、トリップした日。みんなはさ、夢と現実の狭間って経験したことあるか? 夢の中で夢だと認識しても覚めないアレ。あと、寝てて、落ちる感覚に襲われたことは? 授業中の居眠りで、ビクンッガタンってなったことある? その二つが同時に来たんだよ。オレ、寝る直前に観てた事とか、最近や日中に受けた強い印象を夢で見ることがよくある。例えば、ゾンビ映画を見るとその日の夢は、ゾンビに追われるか、無双キルしているか。あの日の夢は、アステラ拠点の資材のお兄ちゃん辺りを歩いてるところで「夢だ」と自覚して、それでものんびり拠点内をぶらぶらしてたんだ。そんで、植物研究チームのガーデニングもとい栽培場の水を覗き込んだところで、落ちる感覚に襲われた。普段なら「うわーまじかぁ……。起きちまったわあ……」って、布団に潜り直すだけで済むはずなのに、リアルな水の感触に驚いて立ち上がって、なんでか眩しくて危うくどこかの大佐になりかけて、負荷が掛かった心臓が痛かった。布団で寝ているから、ベッドから落ちるってことはないのに、本当に落ちて。『水』も、まさか、三十路過ぎたのに、え、まじか、って焦ってたところに、
「ちょっとー? 大切な研究所なんだから。食事場でお酒飲み過ぎたのかな?」
なんて、オレ以外の声がくっきりはっきり聞こえて、更に焦った。男の声だけど、高め。この時点ではまだオレは、トリップしたことを自覚してない。思考が停止してるからな。二十三時になって部屋で寝てたのに、太陽あったけぇし、葉っぱの擦れる音もするし、海の音するのに、何故? とかなんも浮かばなかった。無だよ、無。
「ほらほら、上がって」
逆光で影になってる男の人は、自分の横を指して退くように言ってきた。オレはひとまず、びっしょりになりながら指示に従って、その人の隣まで行った。とにかく眩しくて目ん玉痛いから、太陽を背にしつつ、何が起きた……、って呟くと、隣の人は、あっはっは! って笑ってきたっけ。
「落ちるのが好きなんだねえ、五期団くん」
若所長が隣に居て、そりゃあもう、もう一回「何が起きた?!」って叫んだわ。右側からおばあちゃんの声が、お酒に溺れちゃだめよぉ、って注意してきて、そっちを見たら、ウンパルンパとかフリットウィック先生みたいなおばあちゃんがいて衝撃的すぎて、飲酒してないのに、すいません……、なんて流されて謝るっていうね。
会話が出来る夢って、相当疲れて見るカラーの夢よりヤバい気がする、って思ったのがこの辺り。目玉も明るさに慣れてきたから、周りを見渡してみた。海、船、見覚えのある旗、肋骨みたいな支柱、見覚えのあるリフト、真隣には見覚えのある崩れそうな大量の本、逆側には上り階段。視力両目でコンマ一くらいだから、全部ピンボケしてたけどな。もう一回、若所長を見上げる。向こうは向こうで「ん?」って感じでオレを見てた。
ここでオレは、ラノベ展開だこりゃ、って妙な落ち着きで適応したんだ。
会議所は階段上にあるけど、上がらずに待つ。話し合いを中断させるのも申し訳ないし。でも、トップ達が解散しないタイミングで話し掛けたいから、ここで待つことに。プーギーとの友好度をカンストさせた状態で抱っこして歩くと、拾えるアイテムを感知して「ここ掘れワンワン」してくれる。それを利用して、この辺の物資から頂いたこと多々あり。ふは。ドロボーやんな。なにをくれてたっけなぁ。会議所の大砲から『バクレツの実』は、よく頂いてたけど。栽培所がまだ十個しかストックできなかった時期にな。ここで見つけてたのなんだっけなあ。『ウチケシの実』とかだっけか。なんて、辺りを観賞してたら陰ができて、なんぞ、と振り向いたら甲冑が目の前にあったんよね。
「ふぎゃあ!」
確か、こんな、三十路超えた野郎の悲鳴じゃない悲鳴を上げてしまったはず。甲冑もといソードマスターが、いつの間にか会議を抜けてオレの前に来ていて、
「任務から帰ったのなら、報告を聞きたい」
って、渋いイイ声で会議に加われと言ってきた。そんでさっさか机の所に戻っていく。会議とか苦手で、えー……、なんて肩を落としてても向こうからの圧力がハンパなかったんで、渋々階段を上がったわけよ。ぎょっとされたわ。寝間着にしてるトレーナーにスウェットのズボンな格好だから。
「――……どこか負傷したのか?」
「あー……。いや、その、実はその子とオレは別人で、それをお話ししたく近くで待機してたんですよね」
「別人?」
気付いてなかったんかい、ソードマスター。
「はい、空から来たあの五期団のハンターと、似て非なる存在です。それで、報告をとのことですが、何についてでしょうか?」
そう言うと三人が顔を見合わせた。だから、可愛いっていうの。