世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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5月中に間に合わなかったです。

申し訳ありませんでした。


10.頭撫でるのって、意外と使えるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『PENTAGON』のエレベーターを降りた1階のエントランスには、一つのベンチがある。総介と三玖はそこに座った。

今日初めて訪れた2人きりの時間。今まで2回会って話をしている2人だが、今回はなんだか今までと雰囲気が違う。2人を取り巻く雰囲気はなんというか、その………甘ったるいものが漂っていた。言うなれば『付き合いたてのカップルがまだ互いの距離感が分からずに測り合っている』かのような雰囲気である。

 

 

 

別にカップルでも付き合ってもいないのに………

 

 

 

 

やはり今まで話をした2回と違い、今は三玖の方も総介をかなり意識しているせいなのかもしれない。

 

「しかしまぁ……三玖の姉妹は皆個性的というか……愉快な連中だね」

 

「……ごめんね。二乃があんなことを……」

 

「別に気にしてないよ。わがままな子供を相手にするようなもんだから。それにアイツもアイツで、俺と上杉が君らに何かしないか網張ってたみたいだしね」

 

少し笑いながら二乃とのことを振り返る総介。彼女は彼女で、姉妹を見知らぬ輩どもから守るためにあんな刺々しい言動になってたに過ぎないと、思いを汲んで許していたし、総介自身、それほど気にするほどのことでもなかったからだ。そんな彼を見て何を思ったのか、三玖が口を開く。

 

「……あのね、ソースケ」

 

「ん、何?」

 

「実は……」

 

三玖はここで、先日の土曜日に、風太郎が二乃に水を混ぜた薬を盛られて追い出された話をした。総介はその話を表情一つ変えずに聞いた。

 

「………なるほど。アイツはその程度の手段なら迷わず使う。そういうことだね……」

 

「うん……二乃は、フータロー以上にソースケが嫌いみたいだから、もしかしたらまた同じことをするかもしれない」

 

「上杉が言い渋ってたのはこのことか……合点がいった」

 

「フータローから聞いてたの?」

 

「いや、俺がなんか問題あったら帰るって言ったら変な間をおいて返されたから、アレはそういうことなんだなって」

 

「そうなんだ……」

 

前回と違って、総介はとても落ち着いて話ができていた。先ほどまで三玖と同じ空間に(というか真横に)いたおかげで慣れていたことで、だいぶ心を冷静に三玖との会話をスラスラと進めていけた。話題も姉妹のことを話していくことで、会話を途切らさずに笑う程まで余裕もできていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題は、三玖の方である。

 

(ど、どうしよう………会話が無くなっちゃった……)

 

金曜日の出会いから、ずっと話をしたいと思っていた。それなのに、いざこうして2人きりになると、話したかった内容がすぐに頭から飛んでいってしまう。今の三玖の頭の中には、総介と2人きりでいれる嬉しさと緊張感がほとんどを占めていた。さながら、先週の金曜日の総介である。

 

しかし、今回は総介の方に多大な余裕が生まれているので、会話のリードは彼がうまくしてくれていた。

 

「しかし睡眠薬って……どこで手に入れたんだよ全く……」

 

「………お父さんが、お医者さんなの……」

 

「お父さんって、上杉の雇い主?」

 

「うん……」

 

「マジかよ……ていうか子供にんなもん渡すなよ……」

 

総介は手を額に当てて言った。

 

「お父さんは基本私たちに甘い……」

 

「……………んで、三玖はその薬でグースカ眠らされた上杉を何もせずに放置した、と?」

 

「そ、それは……」

 

少しきつめの口調で、総介が聞いてくる。

否定出来なかった。あの後、一花がタクシーを呼んで、四葉が風太郎を担いで、五月が風太郎の家まで付き添って………

薬を盛った二乃以外で、彼に何もしなかったのは三玖だけだった。それぞれの役割が決まってから彼女はそそくさと自室に入っていったのだった……

 

「………ごめんなさい……」

 

「それ俺に言ってもしょうがないでしょ?…………今度みんなで上杉に謝ること。いいね?」

 

「………はい」

 

なるべく穏やかにしたつもりだが、総介の注意で三玖は黙りこくってしまった。

 

彼とて物事の善悪の区別はきっちり理解している。たとえ初恋の人がオイタをしでかしても(実行犯は二乃だが)、何も注意しないというのは論外である。好きな人だから、と言ってなんでも許すようには育ってはいない。総介はそこまでは腐っていなかった。

その分とんでもなく贔屓はするけどね………

 

 

 

 

 

 

 

「………勉強、そんなに嫌い?」

 

「…………」

 

なんとなく聞いてみた。自分が来るまで、姉妹は薬を盛ってまで家庭教師を拒んだのだ。姉妹の中に俺たち異物が入るということ自体、彼女たち(特に二乃)からすればたまったものではないだろう。しかし、それだけで風太郎が姉妹からめちゃくちゃ避けられるのも納得いかなかった。やはり三玖を含めた5人は、勉強も嫌いなのだろう。

 

「…………嫌い………いくらやっても分からないものが多いから……」

 

三玖は下を向いたまま答えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………そうだな。俺も勉強は嫌いだ」

 

「え?」

 

三玖は思わず顔を上げて総介を見てしまう。

 

「………勉強、嫌いなの?」

 

「ああ嫌いだ」

 

「で、でも、家庭教師の助っ人だって………」

 

「別に家庭教師する奴がみんな勉強好きなわけないよ」

 

「じゃあ、ソースケも成績悪いの?」

 

「だいたい学年で50番前後ぐらい」

 

三玖は信じられないという表情で総介を見つめた。風太郎が助っ人と言って連れてきたのだ。彼ぐらい成績が良いと思っていた。それが勉強嫌いかつ、成績もずば抜けて良いというわけでもない。せいぜい中の上だ。

 

「昔から人にモノを教えるのが得意でね。それが変な噂になって上杉の耳に入ったのがきっかけで、助っ人してくれって依頼が来たんだ」

 

「そ、そうだったんだ……」

 

「どうにも人に教えるのは出来るのに、自分の事になるとさっぱりでね」

 

昔、総介は海斗から言われたことがある。

『君は自分を70点までしか伸ばせないけど、誰かを120点に出来る才能があるよ』と。その時に彼はそう言ってきた幼馴染に、

『全てにおいて150点取れるテメーがナマ言ってんじゃねーよ、殺すぞ』と返してやったが……

 

 

 

「昔から勉強が嫌いだったから、手を抜いて楽にやりたいな〜ってずっと思ってた。

 

 

それで、楽に覚える方法を必死に考えてね。

 

 

 

勉強なんて結果さえ出ればなんでも良いんだから、カンニングとか替え玉とかは抜きにして。

 

 

 

そのためにいくらでも楽に覚える方法を作って、人に教えているだけだよ。」

 

 

「ら、楽に覚える……」

 

「別に覚えた数式や物理の法則とかが今後世の中に出て役に立つことなんて、ほとんど無いんだ。

 

 

学生時代だけで、とりあえず楽して点取るためだけの覚え方が、一番効率がいいと思ってね。

 

 

三玖みたいに好きな戦国武将とかがあったら、すぐ覚えられるんだけど、勉強全部を好きになるなんて普通出来ないから、ほんと楽して覚えられるものをいっぱい開発したんだ。

 

 

そしたら、その覚え方が周りに好評になってしまったもんで……

 

 

 

そういう覚え方を教えてたら、気がついたら『勉強を教える天才』なんて言われてたみたいでさ

 

 

別にそんなんじゃ無いのにね…………そこは傍迷惑な話だよ」

 

総介は苦笑いをしながら語りを終えた。彼とて普通の学生である。いい点を取るために勉強はするし、いい点を取れなかったら落ち込んだりする。しかし、勉強が嫌いなことは五つ子とは変わらない。それに必死に勉強をしたわけでも無い。それでは何故そこそこの成績を保てているのか………

 

それが彼が『楽をするために必死で努力したから』である。矛盾極まりないが、勉強そのものとは違い、その一歩前の段階に全てを注ぎ込んだのだ。加えて、彼は人に教えることに特化した才能があると海斗にも言われている。それらが合わさってしまい、皮肉にも『人に教える天才、浅倉総介』が出来上がってしまったわけだ。まぁ総介も、人にそう呼ばれるのは気にくわないが、そういった才が自分の中にあることはまんざら嫌でも無いと思っている。

 

 

「………ふふっ」

 

総介の話を聞いて、三玖は思わず笑ってしまう。ありゃ?今の笑うとこあった?と、彼は三玖に目線を向ける。

 

「楽をするために必死になる………全然楽できてないね」

 

「………ははっ、そう言われたらそうだな」

 

そう指摘されて、総介も笑ってしまう。言われたこともそうだが、それ以上に、三玖とこうして話をしていることが何より楽しい。今のその状況を、総介はゆっくりと噛み締めていた。それは三玖も、全く同じ思いだった。2人は少しの間、静かに笑いあった。その後に、総介が口を開いた。

 

 

 

 

 

「………三玖」

 

「なに、ソースケ?」

 

お互いにベンチに座りながら、そのまま顔だけ向き合う。

 

「もし君が、本気で成績を上げたいなら、俺はそれを全力でサポートするよ。俺が今まで作った楽な方法をいっぱい教えるし、なんなら俺も一緒に勉強もする。もちろん助っ人として、やるべきことはちゃんとやるつもりだから…………やってみる?」

 

いつもの気だるげな感じとは違う、真剣な表情で、総介は三玖に言った。

 

 

 

「………いいの?私で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………君じゃなきゃ、こんなことは言わない」

 

 

「!!!!!!!………………じゃあ……勉強、やってみる……」

 

三玖の顔は総介の一言で真っ赤になってしまった。そりゃもう、耳まで真っ赤っかになるほどに。ぶっちゃけネタバレすると、今の総介の一言で三玖は完全に落ちました。

 

 

ん?どういう意味って?惚れたっつーことだよ。はい、とりあえず総介は爆発してください。マジで。

 

 

(………アレ?俺今、とんでもないこと言わなかった?……いや、言ったな………)

 

 

 

 

気がついても後の祭りである。見ようによっちゃ完全に口説き文句だが、言ってしまったものは仕方がない。何事も無かったかのように続けよう。

 

 

「……………ありがとう」

 

「ううん…………でも……」

 

「?」

 

三玖は赤い顔が少しずつ引いていき、不安そうな表情になってしまう。

 

 

 

 

 

「………私に、本当にできるのかな………」

 

「…………」

 

どうやらまだ自信が持てないらしい。そう呟いて下を向いてしまった三玖を見た総介の脳内に、こんなコマンドが思い浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q.頭を撫でますか?

 

はい

いいえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段総介はニコポとか撫でポとか、そんなもの二次元だけの話だ、あんなのただのご都合主義の産物だ、と馬鹿にしていたが、今この場においては、撫でポなら効果あるんじゃね?と一瞬考えてしまった。とはいえ、彼は女子の頭なんて撫でたことは人生で一度もない。果たしてうまくいくのか?というか、そもそもやっていいものなのか……しかし彼は、

 

 

(………やべぇ、めっちゃ頭撫でてぇ……)

 

 

めっちゃ撫でたくてウズウズしてた。横でしょんぼりとしている初恋の人。撫でるにはうってつけの条件である。もし成功すれば、ますます距離が縮まることは考えるまでもなくわかる。ただし、失敗すれば、気安く体を触ってくる変態とドン引きされてしまう………ハイリスクハイリターンとはこのことだ。重要な分岐点である。どうする、浅倉総介?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………よし、行こう)

 

今までの三玖とのやりとりを見て、総介はリターンの確率が高いと考え、撫でることを決意した。選択肢が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q.頭を撫でますか?

 

はい←

いいえ

 

 

ピコン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ラブコメの神様、オラにご都合主義を分けてくれ〜〜〜!!!!)

 

 

 

 

 

 

某元気玉を集めるような感じで身も蓋もない願いを心の中で叫びながら、総介は三玖の頭に手を伸ばした。ちなみに三玖が下を向いてから総介が手を伸ばすまで、わずか数秒である。

 

総介の手が、三玖の髪に触れた。

 

 

 

 

「あ………」

 

「………言ったでしょ?自分を信じれるのは自分自身だって。勉強だって一緒だよ。それに勉強はやった分だけ必ず力になる。今自信がないのは、まだ何もしてないからだよ」

 

「………ソースケ……」

 

「約束する。俺は最低でも、三玖の成績を必ず卒業できるまで面倒みる。でもそれには、三玖自身の力も必要なんだ。俺だけじゃ絶対出来ない……」

 

「………私の力も……必要……」

 

「そう。当たり前だけど、俺は三玖にはなれない。勉強をしたり、テストをするのは結局は三玖自身なんだから。………でも君を支えることなら出来る」

 

 

「…………」

 

総介が頭を撫でながら、三玖への言葉を口にする。撫でてる最中に髪からいい匂いがするとか、すごい柔らかい髪質だとか、邪念がポンポンと浮かんできたが、総介は今はそれは横に置いとくことにした(本当はじっくり堪能したい)。

 

 

「………今はただ、信じてほしい。俺を。三玖自身を……」

 

 

前回からの話を見ていると、完全に『誰コレ?』状態になってしまっているが、コレもれっきとした総介です。

 

 

 

 

「……………ソースケ」

 

「………何?……………!!!!」

 

三玖は頭を撫でていた総介の手をとり、頭から外す。流石にダメだったかなと思った総介だったか、次の瞬間、脳内に衝撃が走った。

三玖は彼の手を、両手で握りしめてきた。力は入っているが、痛みは感じない。今、総介の手は、三玖の小さな両手に包まれていた。

 

 

「…………」

 

三玖の行動に、総介は言葉を失ってしまった。同時に、顔が徐々に赤くなってきた。

 

「………私、ソースケを信じる」

 

 

 

「……三玖……」

 

 

 

 

 

 

 

「………あの時、ソースケが言ってくれたこと、ずっと考えてた。でも、まだ自信が持てなかった。……でも、ここでソースケに会って、話をして、また信じたくなった………だから……」

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

三玖は、総介を見つめ、頬を染めた笑顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「責任とってよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言われた、総介の頭は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(かわええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!)

 

 

 

奇跡的相性(マリアーーーーージュ)!!!!!!!

(2回目)

 

 

 

 

 

(この子は一体何回惚れさせたら気が済むんだチクショォォォォオオオオオオオオオオ!!!!!!)

 

自分の手が好きな人の両手で握られて、自分を信じると、今日一の笑顔で言われた日にゃ、そりゃ惚れ直すもんである。この三玖の思いもよらない行動に、今まで冷静さを保っていた総介の思考回路がショートしてしまった。

とは言いつつも、自分を握ってくる両手をちゃっかり握り返す総介であった。この男、なかなか欲望に忠実である。

 

(や、柔らか!何この手!?指も細長くて、白くて、小さいのに、こんなに柔らかいのか!?なんだコレ!?天使?いや、天使の手がなどんなんか知んねーけどさ、もうそんなもん超越してんじゃねーのか!?)

 

 

 

(………ソースケの手、大きくて硬くて、それにあったかい……)

 

 

三玖は三玖で、総介の手を握りながらこんなことを考えていた。もうお前ら付き合えよとっとと。そして総介は爆発しろ。

 

 

「…………も、もちろん。ちゃんと成績はあげるから……」

 

「………じゃあ、土曜日から、よろしくね、ソースケ」

 

「………わ、わかった」

 

そこで会話は一旦途切れたのだが、2人は一向に手を離そうとしなかった。むしろ、握る力を少し上げていた。この時、

 

 

2人はほとんど同じことを考えていた。

 

 

 

 

(ずっととは言わねー。その分寿命削ってもくれても構わねー。もう少し、この状態でいさせてくれ、ラブコメの神様とやら。頼む、300円あげるから……)

 

(………もうちょっと、ソースケと、このまま……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((もう少し………もう少しだけ……))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、2人の願いとは裏腹に、現実は非情である。

 

 

 

ピロロロロ♪

 

 

「「!!??」」

 

どこからか、電子音が響く。その音で我に帰った2人は手を離す。どうやら三玖のポケットに入っていたスマホが鳴っているようだ。

 

三玖はスマホを取り出して、耳に当てた。電話だった。

 

 

 

「………もしもし、何?………うん、わかった。もうすぐ戻るから……今一階のエントランス………うん。………大丈夫。……じゃあね」

 

しばらく話をした後、三玖は画面をタップして電話を切った。

 

「…………五月が、ご飯できたから戻ってこいって」

 

「五月……あの肉まん娘か」

 

「そう。五月は大食い。いつも何か食べてる」

 

2人の邪魔されたせいか、ここにいない五月に対していささか辛辣である。

 

総介がスマホを見ると、デジタル時計で19時50分と表情されていた。考えた見れば総介も昼から何も食べていなかった。というか、風太郎との会話もあったので、朝から何も食べてなかった。

 

(………腹減ったな、今更ながら……)

 

三玖と会話をしてたら、腹の虫なんかどっかに行ってしまっていた。

 

「………お開きだな、今日は」

 

「…………うん」

 

三玖はまた悲しそうな顔をしてしまう。

 

(そんな顔されたら勘違いしちまうだろうが……いや、あながち勘違いでもねーのか…………そうだ!)

 

 

総介は自分のスマホを再び取り出す。

 

「三玖、連絡先交換しない?」

 

「ソースケ?」

 

「ほ、ほら、これから家庭教師するから色々連絡取ったりするんだし、早い方がいいかなって……」

 

なんかよく理由としてまとまっていないのだが、もうこの際総介にはどうでもよかったし、そんなことを考える気力もわずかしか残ってなかった……彼のHPの残りは15である。

 

「………うん、いいよ」

 

三玖も、断る理由がないどころか、これをチャンスと見て了承した。

 

「本当!ありがとう!」

 

総介のHPが20回復した。まったく単純極まりない男である。

こうして2人は電話番号、メールアドレス、ラインを交換し合った。そしてそれが終わると、いよいよ別れの時である。

 

エレベーターがの前まで行き、降りてくるのを待つ。あっという間に降りてきた。それなりに上の階にあったはずなのだが……

 

開いたドアを三玖だけが通り、30階のボタンを押す。

 

「何かわからないことがあったら、いつでも連絡してね」

 

「うん………これから、よろしく……」

 

「よろしく。それじゃあ、また土曜日に……」

 

ドアが閉まる直前に、三玖は胸元で小さく手を振りながら……

 

 

 

「………またね、ソースケ」

 

その直後、ドアは閉まって上へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

エレベーターが上へ向かったことを確認すると、総介は何か憑き物が取れたかのように、いつもの気だるげな表情に戻っていた。

 

 

 

 

 

「………疲れた……腹減った……」

 

 

今日一日、いろいろなことが起こった。上杉風太郎からの依頼、五つ子との出会い。『ヘッドホンさん』こと中野三玖との再会、彼女との2人の時間………とても一日で起こったほどの内容とは思えないものばかり。しかし、どこかで満足感もあった。踵を返した総介は、オートロックのドアへと向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

エントランスを出た外は、すっかり暗くなっていた。雲ひとつない夜空に、青白い月がポツンと光っている。

 

「………牛丼でも買ってくか……」

 

帰って飯を作る時間もないので、どこかの牛丼チェーン店でテイクアウトでもしよう。飲み物は、途中自販機かコンビニで買えばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………中野三玖……か……」

 

 

 

彼女から感じた不思議な魅力。ただ単に、自分のタイプだから、というわけではない。彼女の全てに夢中になってしまうほど、総介はぞっこんになってしまった。知れば知るほど抜け出せなくなる、底なし沼のスパイラルに……それでも、総介はその沼がとても心地よかった。

 

 

 

 

 

「……………とりあえず、ラブコメの神様、あざーす」

 

 

 

 

礼儀もへったくれもない言い方で、存在するかどうかも分からない存在に礼を言いながら、総介はマンションから離れ、晩御飯を買いに街へと繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

 

 

 

「おっかえりー!ね、浅倉くんとどうだった?」

 

「………別に……」

 

「ええ〜?き〜に〜な〜る〜。いきなり『ソースケに言いたいことがある』って言って飛び出していったんだから、彼がそんなに気になってるのかな〜って思ったのになぁ〜」

 

「一花には関係ない」

 

「いけず〜………むむむ、仕方ない。四葉、やっておしまい」

 

「了解です!一花隊長!」

 

「よ、四葉?何を……ひゃあ!?」

 

「ほれほれ〜こちょこちょこちょこちょ〜!!」

 

「や、やめっ!……はひゃっ!よつ、ばぁ!!」

 

「ほらほら〜、まだやる?それとも話す?四葉のくすぐりは効果抜群だよ〜♪」

 

「は、話すぅ!話すからぁ………あは、あははは!四葉、やめてぇ……あははは!!」

 

「あんたら、さっさと食べなさいよ!ご飯冷めちゃうでしょうが!」

 

「モグモグ……まったく、にぎやかですね…パクっ」

 

「ってアンタは何先に食べてんのよ!?」

 

 

この後、一花と四葉に総介との会話をほぼほぼ話させられた三玖であったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一花がいじめるって、ソースケに言いつけてやる」

 

「いやそれだけはマジ勘弁してください」

 

 

反撃はしておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は新キャラ登場予定です。

今回全然ふざけられなかった………


今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
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