それでもやっぱり、1番好きなキャラは銀さんでした。それは今も昔も相変わらず……多分私の人生で彼を超えるキャラクターが現れることは無いかもしれません。
中野家の五つ子姉妹、上杉風太郎、そして初恋の相手『中野三玖』との出会いから1日が過ぎた。
昼休み、総介はいつものように幼馴染みの大門寺海斗とかいう金持ち完璧超人イケメンと屋上で昼ご飯を食べていた。
総介は売店で買った3つのパンとコーラ、海斗は家のシェフが作った高級弁当をそれぞれ食していた。たまに総介が伊勢海老やら牛タンやらを横取りしたりするが、ほぼほぼいつものことなので海斗も特に何も言わなかった。
少し前に「そんなに欲しいなら総介の分も作らせようか?」と言われたが、「そんな情けはいらねー」「お前のを横取りする飯は倍うまいんだなこれが」と、最低な返しをしやがるのが浅倉総介という男。三玖と話すときとは本当に大違いである。最も、これも幼馴染みの戯れということで海斗は許してやっていたのだが……
そんな昼休みでも、この日に限ってはいつもと違った。総介は海斗に、前日起きたことを掻い摘んで話していた。
「………なるほど。その『ヘッドホンさん』と、その姉妹の家庭教師をすることになったと。なかなか楽しそうじゃないか」
「楽しそうって……まぁ距離が近づいたのは幸運だったよ……上杉が来なけりゃ、最悪何も進まなかったかもしんねーからな」
「それにしても、君にぴったりだね、家庭教師。彼女たちの成績も伸び代は十分あるんだから、全員赤点も直ぐに回避出来るんじゃないかな?」
「勉強嫌いっつったの忘れたのか?他の4人はともかく、1人は薬盛ってまで邪魔してきやがる筋金入りのアホだ。オマケに俺らに対しての警戒レベルはMAXときてやがる。まずペン持たせんのから始めねーといけねーよコイツは」
総介が苦い顔で二乃の話をすると、海斗は爽やかな笑顔で笑う。
「はははっ、面白い子だね。『ヘッドホンさん』よりその子に興味が湧くよ。」
「………正気か?頭大丈夫か?イケメンすぎて普通の女じゃ満足できなくなったか?」
「酷い言い様だね……でも、そうまでして守りたいものがあるんだ。外側は周りを攻撃する分、中身はすごく繊細な子だと思うよ。」
「………そうだな。アイツにそう指摘したら、顔真っ赤っかにしやがった。多分、無意識だったんだろうな。周りを攻撃してる分、姉妹にもなんか刺々しかったみたいだ。それも1人でスケープゴートになろうとも、姉妹を守ろうとしてたんだろうな」
「ほら、中身は姉妹思いの良い子なんだよ。そういう子はやっぱり優しい一面を出した時に際立つって言うじゃないか」
「テメーのツンデレ女講座なんか聞く気にもなんねーわ」
総介かそう吐き捨てて、コーラをごくごく飲み干す。いつもより話が弾んでいる気がする。ここ数ヶ月、何ともない話をしていた2人だったが、ここ数日は総介の身の回りで起きていることで話題が尽きない。海斗もそれを聞くことを楽しみにしているし、総介も話をするのもまんざらでもなかった。
「それで、君のイチオシの『ヘッドホン』さんとは仲良くなれたのかい?」
「………それがだな……」
総介が言い渋る。珍しいこともあったものだと、海斗は考えながら松茸ご飯を口に入れる。
「………あの子、俺のこと好きっぽい」
「…………は?」
海斗が驚いた顔をしながら箸を止めて総介を見る。
「………正気かい?頭大丈夫かい?」
「コピペやめろや。………いや、言いたいこと分かる。分かるけどよ、……」
総介は昨日、三玖との間にあった出来事を事細かに話した。特にマンションのエントランスでの話を、彼はとても楽しそうに口を動かしながら言葉にしていた。
「………で、最終的には笑顔で『またね』って言われたんだが、これらを俺に社交辞令でできると思うか?」
「…………総介、君ってやつは……」
海斗は内心感激していた。あれほど日常で無気力極まりない、寧ろ無気力そのものと言っていいほど無気力だった幼馴染みが、たった1人の初恋の人のために奮闘し、さらにはその子からも好意を寄せられている(かもしれない)までに進展するほどに頑張っていたとは思わなかった。
「おい、気持ちわりーからそんな目で見んな。吐き気がする」
まるで息子の成長を喜ぶお父さんのような目で見守ってくる海斗にとんでもなく嫌な顔で反応する総介だった。
と、その時、屋上の入り口から1人の生徒がこちらへと向かってくる。2人からすれば、見知った顔ではあるのだが、昼休みにこちらに来ることは滅多にない事なので、どうしたのだろうとその生徒に注目した。
「……若様、ここにいらしたのですね」
「アイナ、どうしてここに?」
「いえ、厳密に申し上げれば、若様への御用ではございません。用があるのは……」
アイナと呼ばれた
「貴方ですよ、総介さん」
「俺だぁ?テメーに用ができるほどのことでもしたっつーのか?」
「えぇ。先日から出来た私の友人が、貴方のことをずっと話されるものですから、お伝えすることがありまして参った次第です」
彼女の名前は
容姿は金色の地毛を左側でサイドテールに結んでおり、碧眼で白い肌という、明らかな日本人ではない見た目だ。彼女はイギリス人の母と日本人の父の間に生まれたハーフである。
海斗ほどでもないが、成績は学年でトップ10に入るほど優秀であり、身体能力も高くて女子の中ではスポーツ万能。おまけに分け隔てなく敬語を使い、お淑やかな佇まいと、ハーフ特有の可憐な容姿から男子生徒にとても人気がある。しかし彼女は恋人を作る気は無いようで、これまで10人ほどに告白されているが、全て丁寧に断っている。まさに女版海斗である。
海斗とは生まれた時から主従関係にあり人として、メイドとして英才教育を受けて育った。その影響か、海斗を含む大門寺には絶対的な忠誠心をもっている。最も、アイナは両親から溺愛されて育ったため、皆に対して心優しい性格を残したまま優秀に育ったのだが……
とはいえ、海斗とは生まれた時から一緒だということは、彼と幼馴染みの総介とも旧知の仲となる。
「おめぇのダチだぁ?何で俺のことを…………え、まさか……」
「はい。先日にこの学校へと転校されてきた、中野家の五つ子の姉妹のことです」
アイナの言葉に、総介はもしかしたらと、期待に胸を膨らませた。言ってしまえば彼女も清楚が売りで人気の女子。あの中で、相性が良さそうなのは絞られてくる。大分ワクワクしながら彼女に聞いてみた。
「………それってもしかして、三玖のことじゃ……」
「いいえ、二乃です」
「………………」
一瞬で期待の全てがフライアウェイしてしまった。
「…………二乃です」
「2回も言わんでいいわボケ!」
まさかの二乃という答えに、苛立ちを一切隠さず突っ込む総介。
「何であのヒス女が俺のこと話してんの⁈つか、お前ら友達だったの!?」
「はい、転校されてきた初日に、同じクラスなので二乃と友人関係になりました。彼女はとても社交的で明るく、すぐにクラスに馴染んで友人を沢山作られています。先ほども彼女と昼食を共にさせていただきました」
ほら、と言ってアイナはスマホの自撮り画像を2人に見せた。そこにはツーショットで映る控えめの笑顔のアイナと、満点のスマイルの二乃が写っていた。総介からすれば彼女の笑顔がなぜか腹立たしい。
「へぇ。可愛い子だね」
可愛いと評価する海斗を尻目に、総介はツッコミ続ける。
「真逆だろあれ!!どこが社交的なんだよ!言葉のバイオレンス加減がえげつねーほど高い毒舌女じゃねーか!口ん中毒キノコ製造工場じゃねーか!敵めっちゃ作りそうなタイプじゃねーかぁ!」
「既に男子からも人気のようで、既に何人かから狙われています」
「人気!?アレが!?人を貶すことしか知らなさそうなあの女が!?嘘だろおい、やめといた方がいいって!ボロッカスに貶されてフラれるのがオチだって。毒キノコと男子のトラウマ製造機だって!
だってツンデレのツンしかねー女だもん!毒キノコだもん!!竹
とあるラノベとそっくりになってしまったが、総介は昨日の二乃からは想像も出来ない人間性におかしくなってしまう。おそらく二乃も、知らぬ所で総介にボロクソに言われているとは思わないだろう……それを聞いてた海斗は、笑って言った。
「ははは。どうやらその二乃って子が、総介の言ってた薬を盛った子みたいだね」
「薬、ですか?」
「ああ、実は……」
海斗が会話に入り、事の説明をした。
「………なるほど。姉妹を思うが故に、そう言った行動に出たと。なかなか強い子なのですね」
「うん、僕もますます興味が湧いてきたよ。その子に会ってみたいな」
「おいいいい!なんかいい感じに昇華されてんだけど⁈アレ一歩間違ったら犯罪だからね?捕まるやつだからね!?」
皆さんも他人に勝手に睡眠薬を盛るのはやめましょう。
「それで、その二乃ちゃんが総介の何を話してたの?」
「一言で申し上げますと、『猛烈な罵倒』です」
「だろうな!!!!」
待っていたかのように総介は叫んだ。
「総介さん、あまり二乃をいじめないでもらえないでしょうか。これでもちゃんとした友人関係でありますので、彼女の愚痴を聞く身としては少々思うところもありますので」
「あっちの方から喧嘩売ってきやがったんだ。買うっきゃねーだろ?んでろくに反撃の言葉も持ってねーアイツが悪い。出直してこいやっつっとけ」
「はぁ、貴方という人は……」
アイナも総介の人となりは理解しているので、それ以上は何も言わなかった。考えてみれば、彼女も総介の幼馴染みなのである。海斗ほどではないにしろ、総介がどういった人間かは側で見てきているので、彼の好き嫌いは何となくわかっていた。
「ここに来るの、あの女に言ったのか?」
「いえ、二乃には申さず此方へ参りました。若様ならまだしも、総介さんとの関係をもらせば、友人関係に亀裂が生じると危惧したものですから」
「さりげなく酷いなお前……」
その総介との会話を最後に、アイナは教室へと戻ろうとした。
「では私はこれで失礼致します。若様、総介さん、御昼食の邪魔をしてしまい、大変申し訳ございませんでした」
丁寧に謝りながら頭を下げるアイナ。
「気にすることはないよ。君のおかげで面白いことも色々と聞けたし、ね。総介?」
「ほぼ聞きたくなかったけどな……」
「全く君は……」
海斗は呆れてしまうが、アイナは再度総介を向いて言った。
「……それと総介さん、二乃の家庭教師の件ですが……」
「正確には五つ子の家庭教師の助っ人な」
もっと言えば、俺が主に教えるのは三玖だけど、と付け足そうとしたが、ややこしくなるのでやめた。
「………友人としてのお願いです、あの子をよろしくお願いします」
アイナは総介に頭を下げて頼んだ。
「………それはアイツ次第だ。アイツが自分でペンを持ってやる気にならねーと何も始まらん」
「……………そうですか……」
アイナが呟くと、頭を上げて何も答えずに戻って行った。
「……………」
「………良かったのかい?ああ言って」
暫しの沈黙を破って海斗が聞いてくる。
「………ああ。あんなの見せられたら、嘘はつきたくねー。『まかせろ』なんて何も保証のねえ言葉は、逆に失礼だろ?」
「…………」
「俺らも戻ろうぜ。あまり長居し過ぎてもいいことねーしよ」
「………そうだね」
海斗は総介の言葉を聞いてからあまり喋らなくなっていた。あの場面で頼まれたら、普通は『まかせろ』とか『やってみる』とかを言ってみるとものだが、総介はそれは嘘だと決めて言わなかった。
彼が答えた『
(……それってある種の信頼じゃないかい、総介?)
彼女にどう言った可能性を見たのか分からないが、少なくとも、嫌だったら断るだろうし、もう1人の家庭教師の上杉風太郎に丸投げしているはずだ。それをせずに彼女次第と言ったのは、彼が何だかんだで二乃の全てを悪く思っていないからだろう。
まぁ口にすれば拳骨されるのは分かっているので、海斗はその思いを胸の奥へとしまい込んだ。
2人は屋上の入り口へと歩き始めて、教室へと戻って行った。
…………………
「あ、俺トイレ行ってから戻るわ。先行っててくれ」
「了解。遅れないようにね」
「うぃ〜」
……………………
戻る途中でトイレを済ませた総介が1人で教室へと戻っていると、背後から何かが猛烈な勢いで近づいてくる気配がした。それが徐々に近づいてくるにつれ、ドドドドドという音とともに接近して、そして、
「あっさくっっっっらさーーーーーーーーーーん!!!!!!!」
自分の名前を叫びながら飛び込んできたので、総介は半身になってひょいっとそれをかわした。
「って!!!あばばばばばばばーーーーーーーー!!!!!」
それは抱きつこうとしたのか、総介が身をかわしたことによって、身体を地面に向けたまま落下して、見事なヘッドスライディングを決めてしまうこととなった。
「イタタタタ………ひどいじゃないですか!!!!乙女のハグをよけるなんて、『じゅうざい』です!!!」
「重罪なんて言葉、よく知ってたもんだな……………ええと……」
「四葉です!中野四葉ですよ浅倉さん!!忘れちゃったんですか⁈」
飛び込んできた少女、四葉はプンスカ怒りながら総介に迫ってきた。
「………ああ、四バカ。思い出した」
「字が違います!バカって入ってますよ!!」
「大丈夫だ。本当にバカだから問題ない」
「ひどいです!!たしかにバカだけどひどいです!!!!」
そう涙目になって突っ込む四葉を見て、(こいつは別ベクトルのイジりやすさがあるな)と思ったのは別の話。
「んで、いきなり飛び込んできて何の用なんだよ?」
「あ、はい……実は学校で浅倉さんを見かけたの初めだったから、つい興奮しちゃって飛び付いちゃいました」
「ガキかてめーは」
あははと手を頭の後ろに回しながら笑う四葉に冷たく突っ込みを入れる総介。こうも子供っぽい行動が多いと、イジってる最中にこっちがツッコミになっちまうよ。ていうか、今の走ってきた速度、相当なものだったな。
「………運動、得意なのか?」
「はい!私、バカですけど、体力には自信があるんですよ!!」
にしし、と力こぶを作るポーズをとってアピールする四葉。
(体力自慢のバカ………神楽みてーだな)
総介は『銀魂』のヒロインであるチャイナ娘『神楽』に四葉が似ていると考えた。頭のネジがぶっ飛んだようなバカさ加減、今の飛びつきの身体能力の高さがそっくりである、見た目も青っぽい瞳にオレンジの髪と似ているので、これで大食い属性が加わってコスプレさせれば、あっという間に神楽ちゃ〜ん♪。……あれ、いつの間にか絵描き歌になっちゃったアル。
そんなくだらないことを考えてたら四葉が唐突に口を開いた。
「そういえば浅倉さん、三玖には会わないんですか?」
「なんでそこで三玖が出てくんだよ?」
「だって2人ともすごく仲が良かったから、今も三玖の名前すぐ言えてましたし……好きなのかな〜って……」
そう言いながら、四葉のリボンがピョコピョコと動く。どんな原理なんだよ……
「……………」
そしてこの女、意外と鋭い。まぁ皆の前であれだけ2人の世界に入ったりしてたら、そう思われるのも無理もない。だが、1番バカの四葉にまで感づかれているということは、他の姉妹、特に一花とかいう見た目ビッチ(失礼)にはもうすでに気付かれてるよな……昨日も煽ってきてたし……こんな時は、これだ!
「いや〜やっぱり怪しいですよね〜。昨日も三玖に聞いたんですけど〜。大事な部分はなんかはぐらかすんですよね〜。でもやっぱりあれは恋をしているんだと思いますよ〜。なんでわかるのかって?そりゃ姉妹ですから分かりますよ〜。そこで、浅倉さんは三玖のことどう思ってるんですかと……………
ってあれ?浅倉さん?……………
いなくなってるぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
これぞ忍法『ペチャクチャ独り言の合間にさらば!の術』である。え?全然忍法じゃないって?
もう!そんなこと言うならお母さん知らない!!勝手にすればいいじゃない!!!
そんなこんなで、この週の残りは何ともなく時間を過ごし、ついに家庭教師をする日がやってきた。果たして風太郎と総介は、五つ子を無事に卒業へと導けるのか?そして彼と三玖との恋路は、どう動いていくのか?そして今のこの文章を書いている途中に下痢気味の作者の運命は!!!
とりあえず、トイレ行ってきます。
オリキャラ紹介
渡辺 アイナ(わたなべ あいな)
高校2年
身長162cm
体重51kg
普段は女子高生だが、大門寺家の使用人であり、海斗の侍女。周りには隠している。金髪碧眼で、イギリスと日本のハーフ。常に敬語を使うクールで優しい性格。海斗と同じで、成績優秀、スポーツ万能、異性からモテモテ。二乃とは転校してきた時から友達。
アイナの外見と境遇の一部は『かぐや様は告らせたい』の早坂愛から拝借しました。また、アイナだけでなく、総介や海斗にも秘密があります。
今回もこんな駄文を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。