世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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今回で原作一巻がようやく終わります。




いつもより長くなってしまいました。


12.喧嘩するほど仲がいい

総介の自宅から五つ子のマンション『PENTAGON』まではそう遠くはない距離にあるので、彼は徒歩で向かっていた。

イヤホンをスマホに繋ぎ、お気に入りの曲をかけながら時々好きな曲調の部分を口ずさむ。肩には通学用の手さげカバンをかけ、かけていない方の手にはビニール袋を持っていた。

 

 

今日、家庭教師の助っ人としてマンションに行くまでの数日間は、特に何の変わりも無い日常だった。違う点があったとすれば、連絡先を交換した三玖とラインでのやり取りをしていたことだろう。三玖が戦国武将の豆知識を教えれば、総介も幕末の侍達の逸話を語ったりする。放課後に家に帰ってからは、それが日課となっていた。

総介自身、三玖とラインができると言うだけでとても嬉しさが爆発しており、彼が送ったメッセージに対する三玖の返信が初めて返って来た時は自室で身をくねらせるほど喜んだそうな。

前日には『家庭教師、頑張って』と、まさかの教える人からの励ましのメッセージに、『三玖とその他の姉妹の成績を上げれるよう頑張るよ』と律儀に返していた。マジで爆発してくんないかな、コイツ。

 

ちなみに、その直後に海斗からきた『家庭教師とヘッドホンさんの件、頑張って』と、後ろに親指が立った絵文字に対しての総介の返信が『うっせぇ死ねボケ』と後ろに中指を立てた絵文字である。

………扱いが天と地の差とはこのことであろう。彼にはいつか何かしらの罰が当たるのではなかろうか?イケメン完璧超人リア充王の海斗だが、この返信が速攻で返ってきたことには同情する。

 

そんな準リア充野郎と化しつつある総介のどうでもいい出来事を語っているうちに、彼はマンションのエントランスへと到着した。さて、ここで一つ疑問が浮かぶ。

 

このまま風太郎を待つべきか、先に上がっておくべきか……

 

昨日三玖から聞いた時間より、15分ほど早く到着してしまった総介。おそらく風太郎はまだ到着はしていない。していればここで待ってくれているはずだ。彼の助っ人という立場上、一人で入って良いものかと少々不安になる。

こんなことなら、彼と連絡先を交換しておけばよかったと少し後悔した総介だったが、直後にそんなことはどうでもよくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソースケ」

 

エントランスの入り口から、今、総介が一番会いたい人の声が聞こえてきた。ていうか、いつでも会いたい。

 

「三玖、おはよう」

 

とりあえず、総介は会ったので挨拶をする。三玖もそれに同じ言葉で返してくる。

 

「おはよう……何やってるの?」

 

三玖が腕にビニール袋を抱えながら総介に尋ねた。彼女はおそらく買い物帰りだろう。

 

「いや、予定より早くここに着いたのは良いが、助っ人の手前、俺一人で中に入るのもどうなんだと思って……上杉が来るのを待ってたんだ」

 

「………なんだ、そんなこと」

 

軽く笑いながらカードキーを文字盤の下に差し込み、オートロックを解除する。

 

 

「いいよ、入って」

 

「いいの?」

 

「私がいいって言ったから、大丈夫。みんなも何も言わないから、一緒に上がろう?」

 

三玖はそう言うと、開いたドアを通り過ぎて、総介に振り向く。

 

 

 

 

 

「家庭教師、するんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

はにかみながら、総介に聞く三玖。総介はそんな彼女にまたしても見とれてしまう。いや何回目だよお前……

 

 

 

 

 

 

 

(もう俺、この子嫁さんにもらいたい………)

 

 

 

色々とぶっ飛び過ぎな考えになってしまうが、総介は三玖のこととなると思考回路がショートどころかライトニングサンダーを起こしてしまうので、これがデフォルトである。決して口には出さないが、いつか漏らしてしまうのでは?と、密かに恐れているのは彼だけの話。

 

「三玖………かたじけない」

 

「苦しゅうない……ふふっ」

 

「………ふふ」

 

武士のようなやり取りをして笑い合う2人。まるでいつも一緒にいて冗談を言い合っている様な雰囲気が、2人の周りを包み込む。ホントコイツら付き合ってないんだよこれで。両想いだけど。書いててイライラしてきたよマジで。こんな青春、いいな〜作者も送りたいな〜羨ましいな〜………

 

 

 

 

おっと、失礼しました。

 

 

三玖の了承も得たところで、総介もドアを通過して、2人並んでエレベーターへと向かおうとする。すると後ろから、

 

 

 

 

 

「おーーい!待ってくれーー!!」

 

 

男の声が聞こえてきた。思わず反応してしまい、振り向いた。

 

 

 

 

「上杉……」

 

「フータロー……」

 

 

合わせて上杉フータロー。まあ、それだけである。

風太郎はドアが閉まるギリギリで滑り込み、間に合った。

 

「ゼェ……ゼェ……まに、あった……ゼェ…」

 

汗をかいて手に膝をつき、荒い呼吸をする風太郎。

時間的に見れば、彼の到着は5分前なので、別に急ぐほどでもないのだが、ドアが閉まって2人が上へ行ってしまえば、オートロックを解除するには文字盤のボタンを使って部屋番号を押して呼ばなければならない。そんな慣れない作業をするよりも、なんとか2人を呼び止めてドアが閉まる前に滑り込めばと思い、数十メートル手前から猛ダッシュでドアを駆け抜けたのだ。それにしても………

 

 

 

「おめーも体力ねーのな」

 

「ハァ、ハァ、……え、なんだって?」

 

「どこで難聴発動してんだよ…………まぁいいや、先行くぞ、上杉」

 

「え?ちょ、待って、もうちょい、はぁ……休ませてくれ」

 

総介が先を急ごうとするのを、風太郎が待ってくれと止める。だが、ドアの外ならまだしも、通過したのであってはもはや待ち続ける理由もないので、早々に三玖とエレベーターへ向かおうとする。

 

「オートロック通ったんだからいいだろ後から上がったってよ。あ、そだ、あとで連絡先おしえてくれ」

 

「え?ソースケ、フータローの連絡先知らなかったの?」

 

「まぁ、色々ありすぎて聞きそびれてな。忘れない内に聞いておこうと思って」

 

「そうなんだ……」

 

「あの時、三玖に連絡先を聞いててよかったよ。いつくればいいのか分からなくなっちゃってたからね」

 

「ふふ、学校で聞けば良かったのに」

 

 

もはや風太郎なんていないかのように、総介と三玖は楽しそうに会話をしながらエレベーターへと入るが、再び息を吹き返した彼の猛ダッシュによって、またもや閉まる直前に間に合うこととなった。その時に三玖の口から「はぁ〜」というため息、総介からはまさかの「チッ」という舌打ちが聞こえ、風太郎には息切れと精神的ダメージが一気に襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

(三玖と2人きりの時間を邪魔しやがって)

 

(もっとソースケと話したかったのに………)

 

(神様、俺何か悪いことしましたか?)

 

 

 

頑張れ上杉風太郎!

 

 

 

負けるな上杉風太郎!!

 

 

 

体力をつけろ、上杉風太郎!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございまーす」

 

 

 

そんなこんなで、俺、三玖、ついでに上杉は五つ子の家に到着、中に入ると、1人以外の全員がリビングで待っていた。あと、五月とやらは団子を食べていた。この子はいつでも何か食べてるな。

 

 

 

「準備万端ですっ!」

 

やる気満々の四葉。ドベだがいい心がけだ。やる気が成績上昇の第一歩である。

 

「私も。まぁ見てよっかな」

 

と、一花。オイコラお前も勉強すんだよ何一段上のポジション気取ってんだよ12点の分際で。

 

「私はここで自習してるだけなので勘違いしないでください」

 

と、五月。ツンデレ乙。あと自習で成績上がるなら家庭教師雇ったりしないからな親父さん。

 

「約束通り、勉強教えてね」

 

と、三玖が言ってくるので、無言のサムズアップで返す。ホント素直でかわいい好き。もう結婚してくんないかな?

 

 

…………

 

と、四者四様な返答にそれぞれ反応する総介(一部なんか気持ち悪い心理描写がございました。申し訳ございません)。

 

風太郎も、ようやく勉強が始められると安堵する。

 

(なんだ、今日は従順じゃないか。三玖は浅倉だけにっぽいけど……でもねまぁ、こいつらだって人の子、優しく接すれば理解し合えるんだ)

 

「よーし、やるかー!!」

 

風太郎もようやく元気を取り戻したようで、やる気もいつもよりマシマシだ。彼の一声で、和やかな雰囲気が訪れた。

 

 

 

 

さあ、いよいよ勉強開始

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

と、いきたいとこだったが、上から声がした。今この状況で、リビングにいる6人が発した声が、上から聞こえてくるのは有り得ない。となると、この中にいない人物の声だ。そんなのは1人しかいない。総介と風太郎は、同時に声がした方向へと向いた。

 

 

「なーに?また懲りずに来たの?」

 

 

 

「二乃」

 

「…………」

 

 

「先週みたいに途中で寝ちゃわなきゃいいけど」

 

二乃が、階段を登った姉妹の部屋のまえで、余裕綽々の笑みを浮かべながら見下ろしていた。

 

 

「てめぇが薬を(おっといけない、優しく優しく)」

 

 

「……………」

 

青筋を立てて今にも怒鳴りそうな風太郎だったが、なんとか自制する。

 

対して総介は、いつものように無気力な表情で二乃を見るが、違和感を感じていた。

 

 

(おかしい………何でこの女俺の前であんな余裕なんだ?)

 

 

実はここ数日、五つ子とはすれ違ったりする形で学校で会っていた。話をするほどもない短い時間だったが、軽い挨拶を交わしたり、手を振ったりしてきていた。二乃以外は。

彼女は総介を見つける度に、「げっ!」とか「ひっ」とかいう畏怖するような声を上げてそそくさとその場を去っていった。いかんせん初めて彼女たちに会った日に、二乃だけいじり倒したせいだろう、と総介は結論づけてさほど気にしなかった。彼女が謝ってくれば、総介もそのことを謝罪するつもりでいたのだが、どうやらその時は訪れることはなさそうだ。2人は目が合うが、二乃は余裕の表情を崩さない。

 

 

(…………何考えてんだ、この女?)

 

総介の疑念をよそに、隣にいた風太郎が二乃に声をかけた。

 

「どうだい、二乃も一緒にry」

 

「死んでもお断り」

 

食い気味に否定してくる二乃。風太郎に再び青筋ができる。

 

(………なら死ね)

 

と、流石にそれはただの理由なき暴言になってしまうので口にできない。トラブルの元にもなり兼ねないので、総介は心の中で留めておくことにした。

 

「……仕方ない。今日は俺らだけでやるかー」

 

「はーい」

 

四葉の元気な返事に何を思ったのか、二乃は階段を降りてきてスマホを取り出す。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ四葉

 

 

 

 

 

 

バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバー探してるんだけど

 

 

 

あんた運動できるし今から行ってあげたら?」

 

 

 

そういうと風太郎と四葉が反応してしまう。

 

「いっ」

 

「今から!?」

 

「…………」

 

「えっと……でも……」

 

四葉は行こうかどうか、迷っているようだ。と、ここで二乃の一声がかかる。

 

「なんでも五人しかいない部員の一人が骨折しちゃったみたいで

このままだと大会に出られないらしいのよ

頑張って練習してきただろうに

あーかわいそう」

 

(…………なるほどな。よくもまぁいけしゃあしゃあと……)

 

 

総介は二乃が余裕な理由がようやく読めた。

 

この女、俺と上杉の邪魔をする気だ。助っ人の件はおそらく本当だろう。彼女は既に友達が何人もいると先日聞いたばかりだ。そういったことも耳に入っててもおかしくはない。そしてそれを四葉へと投げかけた。ここ数日でわかったことだが、四葉という女はバカで、純粋だ。多分困っている人は誰彼構わず手を差し伸べてしまう性格だろう。この女はそれを利用した。

 

総介が答えにたどり着いた瞬間、四葉が頭を下げて謝った。

 

「上杉さん、浅倉さん、すみません。困ってる人をほっといてはおけません!!」

 

「嘘だろ……」

 

(ほらな)

 

「あの子、断れない性格だから」

 

三玖が補足を入れる。やはりそうだったか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………待て」

 

 

四葉は部屋から出ていこうとするが、総介はすんでのところで彼女の首根っこを右手で掴んだ。

 

 

「は、離してください、浅倉さん!私がいかなきゃ!」

 

「別にお前じゃなくてもいいだろ。ちと待ってろ」

 

その場で走ろうとする四葉だが、総介の力が強いのか、一向に進まない。彼は空いた左手を取り出して、スマホを取り出す。画面を何回かタップし、耳へと当てた。電話だ。

 

 

 

prrrrr

 

 

 

「…………あ、もしもし、わりーな、いきなり。んで、今日非番だよなお前?予定とかは?…………ああ、おっけ。バスケ部の人がさ、助っ人探しててさ、大会近くて、人数足んねーんだよ。………ああ、今から行ってくんねーか?………いや、理由は後で話すし、礼もする。とにかく今日行ってくんねーか?………すまんな、オフのところ………ああ、アイツにもよろしく伝えといてくれ。ありがとな。………んじゃ、おつかれ〜」

 

そう言ってから、総介は耳からスマホを離し、電話を切った。

 

「知り合いに助っ人の件は頼んどいた。たった今、お前が助っ人に行く理由は無くなった」

 

「えっ?」

 

「なっ!?」

 

その言葉に、四葉と二乃が同時に驚きの声を上げた。特に二乃は信じられないような表情のまま固まってしまう。総介はそんな彼女に目も向けずに、四葉へと話しかける。

 

「だから、お前はここで心置きなく勉強に集中出来るぞ」

 

「ほ、ほんとですか………よかった〜…」

 

一安心して胸を撫で下ろす四葉。彼女もこの場を出て行くのは負い目を感じていたのだろう。

 

「だ、大丈夫なのか?」

 

不安そうな表情で風太郎が聞いてきた。

 

「ああ、後日礼をせがまれるが、今この場はなんとかコイツを留めておける」

 

「そ、そうか。サンキュー、浅倉」

 

風太郎も一安心する。ようやく勉強を始められるのに、またバラバラになってしまっては元も子もない。

 

「…………」

 

そんな彼を尻目に、総介はいつも通りの気だるげな表情で二乃を見る。すると、先程彼女がしていた余裕のある表情は、もうどこにも無くなっていた。

まるで殺すかのような鋭い視線、眉間に寄せた皺、剥き出しの歯、そこから聞こえる歯ぎしり。全てが総介へと向いていた。彼女が用意していた策は、1手目から彼によっておじゃんにさせられたのだ。そしてその悪意を感じ取った総介は、目線だけでこう言った。

 

 

 

 

 

 

『次はどんな手があるんだ?』と。

 

 

 

 

この挑発は、見事に二乃に届いた。彼女は一瞬、鋭い目を更に鋭利にして睨んだ後、冷静さを保ちながら次の人物へと声をかけた。

 

 

「………一花、そういえば二時からバイトって言ってなかった?」

 

「え?あー、忘れてた」

 

そう言った一花は立ち上がり、部屋を出ていこうとする。

 

「ごめんねー。この日だけはどうしても抜けられなくて。また埋め合わせするから。許してね♪」

 

手を合わせながらウインクをする一花。いや、デートドタキャンする彼女かよ!って思った人は素直に手を挙げなさい。はい、私です。

 

じゃなくて、その様子を見た風太郎は、総介を見る。また彼が何とかしてくれるだろうと思っているのだろうか……

しかしそんな期待とは裏腹に、総介は一花が出て行くまでの間、一切口を開こうとしなかった。

 

「あ、浅倉………」

 

「…………さすがにこればっかりは、どうしようもねーよ……」

 

「!!?そ、そんな……」

 

これは二乃に軍配が上がった。バイトは代理を立てられないし、無理に残しても、シフトに穴が開いて働き先に迷惑をかけてしまう。そうまでして止める理由も強くない。この件は総介の完敗である。

 

(大体あの女なんでこの日この時間にバイト入れてんだよ。テメー絶対勉強嫌だから入れただろ。マジ勘弁してくれよ。今度から一花じゃなくて『ビッチ花』て呼ぶぞあの女……)

 

心の中で悪態を吐くが、一花がどんなバイトをしているか知らない分、一概に彼女だけが悪いとも言えないので、総介はこの件は考えることをやめることにして、二乃を見た。

 

 

 

「…………♪」

 

 

先程とは違う、勝ち誇ったかのような笑顔。四葉は無理だったが、一花を離脱させることには成功した。それが自信へと繋がったのだろう。それを勉強に活かして欲しいものである。

 

「………五月、こんなうるさいとこより、図書館とか行った方がいいよ」

 

「それもそうですね」

 

次のターゲットは五月だ。案の定二乃の一声に耳を貸してしまう五月。出ていこうとする彼女に総介は声をかける。

 

 

「………出て行くのか?」

 

「はい。私は自分一人でも勉強はできますので」

 

「……そうか、残念だ」

 

総介はわざとらしく肩を落としてから、持ってきてたビニール袋に手を伸ばす。

 

「せっかくお前さんに肉まん買ってきたのに、これじゃあここで食べながら勉強できなry」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしているんですか浅倉君?早く私に勉強を教えてください。そして肉まんを私にください!」

 

「チョロい!チョロすぎるぞ五月!!」

 

五月は肉まんというワードを総介が口にした瞬間、テーブルにノートと参考書を広げ、シャーペンを取り出し、メガネをかけて勉強体制を整えた。

 

 

 

その間、わずか1秒!!!!

 

思わず風太郎が前回と同じツッコミをしたくなるのも無理はない。

 

「…………」

 

ニ乃はアホみたいな顔をしながら、開いた口が塞がらなかった。妹がこんなにも簡単に餌付けされてしまうとは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつき」と「えづけ」って似てるよね…………え、似てない?

 

 

 

 

 

 

 

総介は今までとは違い、ドヤ顔で二乃へと顔を向けた。残っているのは三玖ただ一人。しかし、総介に絶対の信頼(好意)を寄せる彼女が、二乃の言うことを聞くはずがない。総介もラブコメの鈍感主人公とは違い、三玖が自分を信じてくれていると言う絶対的自信があるため、あえて二乃だけに見えるように三玖を指差した。

 

 

 

『ほら、やってみろよ?』という意味で……

 

ぐぬぬ、と苦虫を噛む二乃だったが、残された道は一つしか残っていなかった。二乃の一声が、遂に三玖へとかかった。

 

「………三玖、そういえばあんたが間違って飲んだアタシのジュース、買ってきなさいよ」

 

「………それならもう買ってきた」

 

「えっ」

 

そう言って三玖はビニール袋に手を入れて、缶ジュースを二乃へと渡した。それはもちろん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『抹茶ソーダ』である。やぁ、久しぶり。

 

 

 

 

 

 

 

「何コレ⁉︎」

 

驚く二乃を尻目に三玖は総介に声をかける

 

「そんなことより、授業始めよう」

 

「そうだね、時間もないしね」

 

 

 

 

こうして、原作では二乃と三玖以外誰もいなくなった勉強会だが、バイトの一花以外は離脱を免れた(助っ人代理と餌付け)。

 

特に勝負などはしていないが、スコアは3ー1で総介の勝利である。

 

しかし、二乃はこのままでは納得いかないのか、それとも三玖と仲良くしている総介が気にくわないのか、再び三玖へと食い下がる。

 

「…………はっ!アンタ何?そう言う冴えない陰キャが好みだったの?趣味悪〜」

 

まだやるのかコイツと、総介は二乃に物申そうとしたが、三玖が彼を止めた。

 

「ソースケ、気にしないでいいよ。……二乃はメンクイだから」

 

「………君もなかなか酷いこと言うね、三玖」

 

まさかの三玖の返しに少し驚く総介。するとここから、中野家の次女と三女の口喧嘩が始まった。

 

「はぁ?メンクイが悪いんですか?イケメンに越したことはないでしょ?」

 

「外見ばかりにとらわれるのは愚の骨頂」

 

「なーるほど、外見を気にしないからそんなダサい服で出かけられるんだ」

 

「この尖った爪がオシャレなの?」

 

「あんたにはわかんないかなー!?」

 

「わかりたくもない」

 

二人の止まることのない言い争いに、四葉と五月があわあわと困惑して震えてしまう。総介は黙って二人を見ている。

そして我慢できなくなった風太郎が、二人の言い争いを止めに入る。

 

「お、お前ら、姉妹なんだから仲良くしろよ。外見とか中身とかそんなのどうでもいいだろ」

 

その言葉で、二人は一旦黙り込んだが、三玖の方から、口を開き始めた。

 

 

 

 

「………二乃、もうやめよう?」

 

「は?あんた、ソイツに言われてハイそうですかって……」

 

 

 

「違う。もう私達を守ろうとするの、やめよう?」

 

「!!!!」

 

「……………」

 

三玖の一言で、二乃は言葉を失ってしまう。総介は三玖を一瞬見たが、すぐに二乃に視線を戻した。

 

「……な、何を」

 

「ソースケが言ってたでしょ?二乃は私達ことを思って、ソースケやフータローを攻撃してるって。そのために二乃は自分だけ恨まれてでも、姉妹を守ろうとしてるって」

 

「…………」

 

三玖の話に、その場にいた全員が黙り込む。

 

「二乃の気持ちは凄く嬉しいし、少し前の私なら、二乃と同じだったかもしれない。でも私は、今の私は、ソースケに勉強を教えてもらいたいし、四葉もフータローとソースケに教わろうとしてる。五月は………肉まん食べてるだけだけど、四葉と私の2人は、二乃がこんなことをすることを望んでいない」

 

その言葉を受けた二乃は、顔をうつむかせてしまう。ここで、総介が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………別に勉強したくないならそれでも構わん。

お前が嫌がりながら無理やり勉強させても、成績なんざ上がるもんじゃねーからな。

お前の好きな時に勉強すりゃいいし、好きな時にこっちに来ればいい。その時はちゃんと教えることを約束する。

 

 

 

 

 

 

 

 

けどな、自分から勉強しようとしてる子らの邪魔をしようとすんなら、いくら女だろーが容赦はしねーぞ。

頑張ってる奴を、必死で努力してる奴を横から棒で叩くような真似をするような奴は、三玖の姉妹だろーが何だろうが、俺は許さねー。

………これ以上邪魔するってんなら、それ相応の覚悟は出来てんだろーな?」

 

今までにない、低くドスの効いた声で、二乃へと問う総介。二乃はしばらく俯いてから、肩を震わせ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………れ………ない……」

 

 

「………二乃?」

 

 

「何それ!!!!意味わかんない!!!!!!!!」

 

 

そう叫んでから、彼女は階段を駆け上がって、自室へと入って行ってしまった。

 

 

 

 

「……………」

 

「………ニ乃」

 

四葉が心配そうに二乃の部屋のドアを見つめるが、それだけではどうにもならないと悟ったのか、総介がパチンと手を叩く。

 

「さ、俺たちは切り替えて勉強するぞ。このままじゃ時間もなくなっちまうからな」

 

「あ、浅倉⁉︎いいのかよ?二乃があんな……」

 

「それはアイツが悪い。俺たちが気に食わないからっつーだけで、真面目に勉強しようとした三玖と四葉の邪魔をしようとした。当然の報いだ。いや、これは機会だ」

 

「機会……ですか?」

 

五月が肉まんを頬張りながら尋ねる。

 

「これでアイツが自分を見つめてくれれば、みちは切り開けるだろーよ。俺たちも、アイツも。それが出来ずに、また邪魔してくるようなら………」

 

「邪魔してくるなら……どうするんだよ?」

 

「これでしめーだ。アイツには今後一切、勉強は教えん。俺も、上杉もだ」

 

「なっ!?………そ、それって!!!?」

 

「雇い主にそれぐらい言えるだろ?お宅の娘さんの1人が、執拗に勉強の妨害をしてくるので、彼女抜きで家庭教師をやらせてくださいって。別に悪いこと言ってるか?」

 

「そ、それは……」

 

「それにこれは、アイツにとっても最期のチャンスだ。三玖がきっぱりと『望んでない』って言った以上、アイツも絶対に考えるはずだ。今までしてきたことを……そして良くも悪くも、答えを出すはずだ。どうなるかは知らねーけどな」

 

それに、と言って総介は、三玖と四葉に視線を向けた。

 

「俺ら2人が駄目でも、三玖と四葉なら、アイツを変えれるかもしれない」

 

「私達が……」

 

「二乃を変えれる、ですか?」

 

三玖と四葉が、互いを見合う。

 

「少なくとも、三玖が喋っている間、アイツは耳を傾けていた。姉妹の意見を聞く耳はちゃんと残ってるはずだ」

 

「……ソースケ……」

 

「………三玖、こんなことを押し付けてしまって、本当にごめん。でも、5人で成績を上げるには、やっぱり俺たちだけじゃ無理なんだ。君達姉妹の力も必要になってくる」

 

「………私達の力……」

 

三玖は先日、2人きりで総介と話をしたことを思い出していた。

 

成績を上げるには、彼らだけの力じゃできない。勉強し、テストを受けるのは自分たち姉妹。 そう総介は言った。

 

「…………」

 

「………浅倉、二乃は……」

 

「………これに関しては、俺がしたことだ。ちゃんと責任はとる」

 

「…………」

 

「さ、今は切り替えるぞ。勉強を終わらせてから呼びに行けばいいし、何よりここで躓きたくねー。ここにいる3人の成績を上げるのも、残りの2人のモチベーションになるはずだ」

 

「………ああ」

 

「うん……私は、勉強する」

 

「………わ、私も、二乃のために、頑張ります!」

 

三玖と四葉は、なんとか切り替えてくれたようだ。総介は2人に安心すると、五月の方へと目を向ける。

 

「………五月、今のお前に聞きたい」

 

「………何をですか?」

 

「肉まん抜きで、お前は上杉と俺から教わりたいと思うか?」

 

五月は肉まんを食べる手を止めて、しばし考えた後に答えた。

 

「………思いません………でした」

 

「………」

 

「五月………」

 

風太郎が消沈してしまうが、五月は言葉を続けた。

 

「でも、今の二乃は、間違っていると思います。勉強をしようとしてる三玖と四葉を邪魔することは、やっていいことではありませんから……だから、今日は大人しく、勉強を教わります」

 

「は、本当か⁉︎」

 

沈んでいた風太郎が、蘇って明るくなる。

 

「か、勘違いしないでください!三玖と四葉に遅れを取るわけにはいきません。私も、二乃のことは心配なんですから!」

 

直後、四葉が五月に抱きついてきた。

 

「五月〜!」

 

「よ、四葉⁉︎離してください!」

 

「どんな形でも、動機でも構わん。一緒に勉強してくれることには感謝したい。ありがとな」

 

と、そんな二人を気にせずに総介は一応味方についてくれた五月に、感謝の意を示す。

 

「で、でももし、成績が上がらなかったら、学食の全メニューを奢ってもらいますからね!!」

 

「………マジで?」

 

「マジです!!」

 

「………食えんの?」

 

「3日あればなんとかなります!」

 

 

どんな胃袋してんだコイツ?と思ったが、とりあえずスルーすることにした。とにかく勉強をしなければ、ということで、総介は風太郎の方へと向く。すると、風太郎は視線を察して、総介に提案をもちかけた。

 

「浅倉、三玖はそっちに任せてもいいか?知っている二人の方が、勉強教えやすいだろ?俺は四葉と五月に教えるから、空いた時にどっちかを見てやって欲しい」

 

「あいよ、それでかまわん(上杉、お前は神か?)」

 

「よろしく、ソースケ(フータロー、ぐっじょぶ)」

 

「頑張りましょう!上杉さん、浅倉さん!」

 

「私も、今日だけは教わってあげてもいいでしょう。今日だけは、ですよ?」

 

「あ、肉まんもう一個あんだけど?」

 

「いつでも教えてください!お願いします!」

 

 

「「「「…………………」」」」

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの思いを胸に秘めながら、5人は勉強会を始めた。赤点を回避するため、成績を上げるため、姉の姉妹を守ろうとする呪縛から救うため、肉まんと学食をいっぱい食べるため……この子コレばっかりだな……

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの勉強会の後、もう一つの大事件が起こってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

それは彼女にとって、彼らにとって、一体どのような結果をもたらすのか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、五等分の逆転裁判

『風太郎、ペンタゴンに(社会的に)死す』

 

 

 

異議あり!!

次回はこんなタイトルではありません!!!

 

 




気がつけば10000字を超えてしまいました。





今回もこんな駄文を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
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