世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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自分のボキャブラリーの少なさに悶え苦しむ今日この頃……




今回汚い言葉のオンパレードです。ご注意下さい。


16.集団でイキる奴ほどサシでは弱い

 

 

(俺たち、花火見に来たんだよな………)

 

と言う総介のモノローグから今回の話は始まる。彼が何故かのようなことを考えたのかといえば……

 

 

 

「もう花火大会始まっちゃうわよ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで私たち家で宿題してんのよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

「週末なのに宿題終わらせてないからだ!片付けるまで絶対祭りには行かせねー!」

 

 

 

そう、宿題である。

あの後、姉妹は全員風太郎に家まで連れ戻されて宿題をさせられていた。先日二人が作成した家庭教師用の宿題ではなく、『学校の宿題』である。この姉妹、学校の宿題を日曜日の夕方までやっていなかったのである。総介?朝に三玖とメールしてから宿題だけは終わらせていたので問題はない。なので……

 

 

「ここはこういう覚え方はどう?」

 

「………いまいち分かりにくいかも……」

 

「そうか、じゃあ………こんなのは?」

 

「………これ、すごく分かりやすい」

 

「そりゃよかった。じゃあここの3つの問題も同じやり方で出来るから、やってみて」

 

「うん!ありがとう……」

 

五人には難易度が高い分、こうしてイチャイチャ………もとい、勉強を教えることができるのだ。総介はとりあえず三玖の横について宿題のサポートをしていた。そのおかげで、三玖は一番早く宿題を終えることができた。

 

「………終わった」

 

「早っ!!三玖!ずるいわよ!そいつ貸しなさいよ!」

 

「浅倉さぁあん!この問題がわかりませぇん!」

 

二乃が総介を要求し、四葉が泣きつくそれを総介は……

 

「上杉、チェンジで」

 

「俺かよ!?」

 

風太郎へ丸投げした。こういう時は変わり身を使うに限る。

 

「あんたでもいいから、さっさと教えなさいよ!ていうか、答え書いて!」

 

「それお前俺に宿題やらせたいだけじゃねーか!」

 

「上杉さぁあん!助けてぇ!」

 

「うわ、四葉!抱きつくな!今教えてやっから!」

 

風太郎の方がしっちゃかめっちゃかになっている時、総介は比較的大人しい一花の宿題を見ていた。

 

「だからここの部分はこうだっつーの。この文法はここでは使わねーの」

 

「うわ、ホントだ。すごいね、浅倉君。天才?」

 

「高1の初歩の英語だ。そんぐらいで天才なら世の中天才まみれだ」

 

「う、辛辣だね……でもありがとう。おかげで助かったよ。お礼にお姉さんがイイコトしてあげようか?」

 

「あ゛?」

 

宿題の最中だというのにからかってくる一花を、総介はたった一文字で黙らせる。

 

「じ、冗談だって。でも、私を早く終わらせたら、すごく君にとって嬉しいお礼しちゃうよ?」

 

「………なんだそれは?」

 

と、一応聞いてみる総介。

 

「それは終わらせてからのお楽しみ♪でも、間違いなく君が喜ぶやつだよ?」

 

「………チッ……とっととペン進めろ……」

 

「了解♪」

 

どんな礼であれ、これを終わらせなければ祭りには行けないのだ。不本意だが、一花の案に乗って、彼女を優先的に教えて三玖の次に宿題を終わらせた。

 

「終わった〜!ありがとね、浅倉君、それじゃ、お礼の準備してくるから、ちょっと待っててね♪」

 

「どこにでも行きやがれ」

 

冷たく突っぱねる総介。それほど期待もしていないので、当然である。

 

「ぶー、絶対驚かせてやるからね!」

 

喜ばすんじゃないのかよ……と思いながらも、総介は次の姉妹へと行こうとしたところで、風太郎の方を見る。

 

「おめ、バカ!何でweをWiiって書いてんだ!?」

 

「えへへ……Wii久しぶりにやりたいなぁって……」

 

「あ、あたしもやりたい!………あ、答えこれなのね!いただき!」

 

「あっ!私のプリント!返してください!」

 

「………いいじゃん五月〜。ちょっと写させてよ〜?」

 

「ちゃんと自分で解きやがれーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、入るのはやめよう。全員言うこと聞かなさそうだし、じきに終わるだろ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おわったーー!!!」」

 

「はぁ、やっと終わりました……」

 

「みんなお疲れさまー!」

 

 

アホ三人がようやく宿題を終え、祭りへと向かう。五月も浴衣に着替え終え、らいはが皆を労う中、風太郎の方は体力が尽きてしまったのか、どよーんとした雰囲気をしている。どんだけ体力ねーんだよ、と、総介は彼をで見ながら思っていた。

 

 

 

「でも、一花と三玖はまだなの?」

 

「すぐに追いつくって言ってましたけど……」

 

今この場において、一花と三玖だけがいなかった。一花は総介にお礼をすると行ったきり、姿を消してしまった。マンションを出る際も、すぐに追いつくから先に言ってて、と言って同行しなかったのだ。

 

「トイレじゃないかな?」

 

「アンタじゃあるまいし、それに三玖もいないのよ?一体何してるのかしら?」

 

「さあ……あ、来ましたよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんごめん、お待たせ〜!」

 

ようやく追いついた一花と、彼女に手を引かれて一緒に来た三玖。追いついて早々、一花は総介の側まで走り、声を掛けた。

 

「はい、浅倉君、私からのお礼だよ?どうかな?」

 

「はい、て……三玖を渡されても…………っっ!!!!!」

 

一花が手を引いて連れてきた三玖を、総介の前に立たせた。

三玖を前に出されてお礼と言われても、それはそれで嬉しいが、というなかなか複雑な気持ちになった総介だったが、彼女を見た瞬間、そんな気持ちは瞬時に吹き飛んでしまった。

 

 

正確には、彼女の首から上を見て、なのだが……

 

まず、彼女の外見の中で一番の特徴である青いヘッドホンが無かった。そして肩ほどまで伸びていたセミロングの髪は、後頭部に集められて小さなリボンで結われていた。つまり、今の三玖は、首元丸出しである。そこにある白い首元は、普段地味目な彼女に艶かしさを与えながらも、上品な気質を失わせない絶妙な外見が完成していた。まあ難しい言葉ばかり並べても分からないので、四文字で表すとこうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大和撫子』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

そんな彼女を見て、総介は完全に言葉を失った。と同時に、三玖から目一切を離せなくなってしまった。

 

「………あまり、見ないで……恥ずかしい……」

 

三玖が手を上げて首元を隠すが、その仕草さえ総介には、彼女の美しさを際立たせるものにしか写らなかった。というか、浴衣姿だけでも見惚れてしまってた総介。この瞬間彼には『中野三玖』という存在そのものが、この世界で一番美しいものであるということを本気で思っていたのだから仕方がない。なので、彼の口は彼女の魔力にあてられたかのように、自然と動いていた。

 

 

「………綺麗だ」

 

「………え?」

 

「綺麗で、美しくて、素敵で………何だコレ……俺今勝手に……」

 

完全に無意識で言ってしまってたようで、自覚した直後に、総介は顔を真っ赤にする。顔は逸らそうにも、三玖から目を離せず、正面を見たま片手で隠す。

 

「う、美しい………うぅ……」

 

当然、三玖もそんな褒められ方をされてしまえば、同じく顔を赤くしてしまうわけで……ていうか、彼女の方は顔から煙が上がるほどに重症だった。

 

「ありゃりゃ、効果ありすぎたかなこれ?」

 

そんな二人を見て、一花はあっけらかんとしながら言葉を放つ。

 

「アンタそれで時間かかってたの?」

 

「うん、まあね……」

 

「ふぇ〜、三玖顔真っ赤〜」

 

「あの、早く行きませんか?アメリカンドッグ食べたいんですが……」

 

と、食い意地が張った五月の言葉で、「そうだね」「行こう!」と、ようやく動き出した一同。総介もそれに合わせて、祭りの中へと向かうことを決めた。

 

 

「………行こうか?」

 

「………うん」

 

二人は未だ顔が赤いままだが、自然と肩が触れるほどまで近づいて並んで歩いて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

……………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………人多いな」

 

「うん、すごいね」

 

一同は人混みの中で揉みくちゃにされながらも、なんとか固まって移動をしていた。

 

「そういえば、花火はどこから見るんだ?」

 

「二乃がお店の屋上を借り切ってるからついていけば大丈夫」

 

「なるほどね」

 

総介は幼馴染みに超絶金持ち銀髪イケメン野郎がいるからか、それほど驚きはしなかった。

 

「お兄ちゃん、みてみて!四葉さんがとってくれたの!」

 

と、らいははいっぱいに入った金魚たちの袋をいくつか風太郎に見せている。

 

「もう少し加減は出来なかったのか……」

 

 

全くだ……あと先考えずに取りすぎだよあの数は……

 

「あはは……らいはちゃんを見てると不思議とプレゼントしたくなっちゃいます」

 

いや気持ちは分からなくも無いが……

 

「これも買ってもらったんだ」

 

 

と言ってたらいはは手持ち用の花火を見せた。

 

「それ今日一番いらないやつ!」

 

打ち上げ花火を見に来たのに手持ち用花火とはこれいかに……

 

「だって待ちきれなかったんだもーん」

 

「いつやるんだよ……四葉のお姉さんにちゃんとお礼言ったか?」

 

風太郎がそう言うと、らいはは四葉の元まで行き抱きついた。

 

「四葉さん、ありがとう!大好き!」

 

そのらいはの言動に四葉は、完全に心を奪われたようで、らいはを抱きしめ返してほっぺたを擦り付ける。

 

「あーん、らいはちゃん可愛すぎます!私の妹にしたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

待ってくださいよ、私が上杉さんと結婚すれば、合法的に義妹(いもうと)にできるのでは……」

 

 

 

おいなんかとんでもないこと考えてんぞコイツ!

 

「自分で何言ってるか分かってる……」

 

後ろで見ていた風太郎と二乃も呆れているようだ。本当に四葉という女は、神楽ばりのおバカさんのようだ。

 

 

「………何やってんだか」

 

「本当だね」

 

「俺らだけでも、先に行く?」

 

「うん、そうしようか」

 

「待ちなさい!」

 

総介と三玖が先を急ごうとすると、二乃が2人を止めた。そして一同は一旦二乃の元へ集合する。

 

「んだよ?」

 

「せっかくお祭りに来たのに、『アレ』も買わずに行くわけ?」

 

「アレ?」

 

と、風太郎が尋ねる。すると、姉妹全員が二乃に同調した。

 

 

「そういえばアレ買ってない……」

 

「あ、もしかしてアレの話してる?」

 

「アレやってる屋台ありましたっけ?」

 

「早くアレ食べたいなー!」

 

「アレ?……もしかしてアレ食べるのか?」

 

「なんで浅倉まで同調してんだ………てかアレって何だよ?」

 

そう聞いてきた風太郎を合図に、二乃が声を上げた。

 

 

 

「せーの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人形焼き」

「かき氷」

「リンゴ飴」

「焼きそば」

「チョコバナナ」

「カツ丼土方スペシャル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員バラバラじゃねーか!!!ってか誰だ今カツ丼土方スペシャルって言ったやつ!?」

 

「俺だけど?」

 

「お前かよ!!!何なんだよカツ丼土方スペシャルって!?」

 

「カツ丼にこれ見よがしにマヨネーズをぶちまけた通称『イヌのエサ』と呼ばれる真選組鬼の副長『土方十四郎』至極の一品だ」

 

「そんなもんもう料理じゃねーよ!ってかイヌのエサって呼んでる時点で既に食いもんでもねーよ!」

 

「よし、全部買いに行こーっ!」

 

「お前らが本当に五つ子か疑わしくなってきたぞ!ってかカツ丼土方スペシャルは買わねぇからな!ってか存在するのかカツ丼土方スペシャル!?」

 

 

 

 

そんなこんなで、まあイヌのエサはいいとして、一同はそれぞれの欲しいものを買いに行って人混みを歩いていた。その中でも二乃は誰よりも先に先頭を歩いていた。

 

 

「あんたたち遅い!!」

 

騒がしい中、二乃の声が辺りに響く。

 

「………あいつ、やたらと今日テンション高いなぁ……祭りだからか?」

 

総介の疑問に、隣にいた三玖が答えた。

 

「………花火はお母さんとの思い出なんだ」

 

「え?」

 

「お母さんが花火が好きだったから、毎年揃って見に行ってた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんがいなくなってからも、毎年揃って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちにとって花火って

 

 

 

そういうもの」

 

 

 

 

 

 

 

「…………そうか」

 

話を聞く限り、この姉妹の母親はもう既に亡くなられているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総介の母と同じように(・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

「………ソースケ?」

 

 

「いや、何でもない。だったら、今年もみんなで揃って見ないとね……」

 

「………うん!」

 

 

 

三玖が総介の言葉に笑顔で頷く。そんな彼女を見てドキッとしてしまうが、直後にそんなことは考えられない事態が発生してしまった。

 

 

 

『大変長らくお待たせいたしました!まもなく開始いたします!』

 

 

どこからかのスピーカーから聞こえてきたアナウンスに人混みが一斉に動き始める。

 

 

「え、どこどこ?」

 

「もう始まってんの!」

 

「どっちだっけ?」

 

ガヤガヤと皆が騒ぎ始め、それぞれがバラバラな方向へと動こうとする。

 

 

(………まずい!)

 

 

「三玖!」

 

総介はこの場で全員がはぐれる可能性を感じ、すかさず三玖の手を握って引き寄せた。

 

「ひゃっ、そ、ソースケ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺から絶対離れないで、いいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………う、うん」

 

総介が耳元でいう言葉に、三玖は顔を赤くさせながら答える。総介爆発しろ。

そして三玖も彼のパーカーの裾を掴んで離れないようにする。

 

 

「………くそ」

 

総介はこの状況が悪い方向に向かっていることを懸念していた。

 

 

(海斗が言ってたことが正しかったら、バラバラになるのは避けたかったんだが………上杉の方に集まってくれればいいが……)

 

昼に海斗と話をしたことを思い出しつつ、三玖を人混みから守りながら抜け出す。その先には、上杉兄妹と姉妹の姿が1人も見当たらなかった。

 

 

「………抜け出せたはいいが……」

 

「………はぐれちゃったね………」

 

完全に総介と三玖ははぐれてしまった。皆が固まっていればいいが……

 

「………すまない。もっと早くに集まってれば」

 

「ううん、あの時は身動きも出来なかったし、仕方ないよ……っ」

 

三玖が言い終えると、顔を歪ませる。それに総介はすぐに気づいた。

 

「どうしたの?」

 

「………足が……」

 

「足?」

 

三玖の左足の甲を見ると、赤く腫れ上がっていた。

 

「踏まれちゃって……」

 

「歩ける?」

 

「………ちょっと痛むかも……」

 

三玖の顔を見るに、どうやら引きずるほどの痛みのようだ。

総介はそれを知ると、しゃがんで彼女に背中を向けた。

 

「………三玖、背中乗って」

 

「え?」

 

三玖が言われるがままに総介の背中に乗ると、彼は一気に立ち上がった。

 

「え?……え?」

 

何が起きたか、要はおんぶですはい。

 

 

 

 

 

『おんぶ』です!

 

 

 

 

「三玖、誰か見える?」

 

「………み、見えない」

 

突然の総介の行動に驚きながらも、周りを見渡して誰も見えないことを伝える。

 

 

「………そう……」

 

「……ど、どうするの?」

 

「とりあえず、足の手当てをしよう。少し離れるけど」

 

そう言って総介は三玖を背負ったまま歩き出した。

 

「そ、ソースケ、重いよ?」

 

「むしろ軽すぎる程だよ。もうちょっと食べないと、痩せてくよ?」

 

「…………」

 

総介の言葉に、顔を赤くしながらも、彼の気遣いに嬉しさで顔を綻ばせる三玖。

 

「………ありがとう」

三玖か礼を言った瞬間、辺り一面が一気に明るくなった。2人が、周りを照らしたものを見上げる。

 

「………花火」

 

「………上がっちまったか……急ごう、まだ時間はある」

 

「………うん」

 

次々と夜空に花火が上がっていく中、総介は三玖の足を手当てすべく人混みから離れて人通りの少ないところまで彼女を背負って歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを見る者たちがいることに気付かずに………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、アレ見ろよ」

 

「………イイネェ、アレにするか」

 

「なかなか上玉じゃねぇかオイ」

 

「へへへへ、楽しみだぜェ」

 

「男はどうする?」

 

「金取ってから見せつけながらヤっちまおうぜ?」

 

「ギャハハ、趣味悪いなオイ!」

 

「行くぞ、今夜はゴチソウだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………

 

 

 

総介は人通りのの少ない場所まで行き、歩道橋の階段に三玖を座らせて三玖の足の手当てを終えたところだった。

 

 

「………これで、とりあえずは大丈夫かな。どう。痛む?」

 

「うん、少し……でも、さっきほど痛くない……」

 

「そうか。でも無理に走ったりしない方がいいね」

 

「………ありがとう、ソースケ」

 

「どういたしまして」

 

みんなとははぐれてしまったが、総介と三玖は、二人きりの時間が出来たことにどこか嬉しさを感じていた。もちろん、みんなで花火を見ることが何よりの最優先であるのだが、こうして好きな人と二人きりになると、どうもこちらの喜びが出てきてしまう。

 

「………ソースケ」

 

「………どうしたの?」

 

「花火、まだ終わらないよね?」

 

三玖が心配そうな顔で総介を見つめる。

 

「あと40分くらいだね。それまでには、みんな揃わないといけないから……三玖、誰か連絡出来るかな?」

 

「うん、ちょっと待ってね?」

 

そう言って三玖は、スマホを取り出す。

 

「………そういえば、アイツが言ってた店に行けばいいんじゃ……」

 

「………あそこは二乃しか知らないの……」

 

「マジか……じゃあアイツに先にかけた方がいいかも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!!!!!!」

 

「うん、そうだね…………ソースケ?」

 

三玖が二乃に電話をしようとしたその時、総介は背後から気配を感じていた。

 

 

それは一人や二人ではない。5人、8人、10人……それほどまでの人数が、こちらに向かってくる足音。そしてそれらは、決してここに用があって来たわけではない、とんでもなく粘っこくて、気持ち悪い、厭らしさでまみれた纏わり付いたら離さないような、そんな気配。彼はそれを知っている。何度もそれに晒されて、何度もそれの前に立って来た。

 

 

 

(………こんなところでかよ……)

 

 

徐々に足音が近づいてきた。そして、

 

 

 

 

 

 

「ウヒョー、近くで見るとスゲー美人、こりゃたまんねーなぁ」

 

「ああ、やべぇ、ひっぺがしてぇ!早くシテェなぁ!」

 

「バッカオメー、発情してんじゃねーよ!なー彼女!オレ達と遊ばない?近くに誰も来ないイイトコ知ってんだよねーオレら」

 

「ギャハハハ!それお前がヤリてぇだけじゃねーかよ!全員平等に一回ずつマワす約束だろー!」

 

「つーわけで彼氏クン、この子オレらにくんない?今なら金と女置いて行ったら見逃してやらなくもねーぜ!」

 

「あぁそーだぜ?ボッコボコにされたくなかったらその女置いてった方が身のためだよぉ?それとも、彼氏クンも一緒にやるぅ?」

 

「あーいいねぇ!一夏の思い出ってやつかなぁ!まあもう10月だけどな?」

 

「ギャハハハ、うまくねーよバーカ!」

 

総介が振り向くと、そこには10人ほどの男の群れがこちらを向いていた。ただの男どもではない。全員が不良のような格好をし、髪を茶髪や金髪に染め、顔にはいたるところにピアスを開けている輩もいる。そしてそいつら全員の視線が、三玖へと向けられていた。まるで獲物を見つけたハイエナのような表情で。

 

 

「そ、ソースケ……」

 

三玖はあまりの恐怖に、思わず総介の背中に隠れて縋り付く。顔を隠して見たくないと言わんばかりに、彼女は目を瞑って総介に後ろからくっついた。

 

 

(…………なるほど、海斗が言ってたのはコイツらで違ぇねぇな)

 

 

 

 

昼、海斗から来た電話の内容を思い返して、それが合致したことで総介は納得した。

 

 

 

 

 

 

ここ数ヶ月、近くで開催される大きな祭りや花火大会に現れては、恐喝や暴行、強盗や強姦を繰り返している不良集団がいる。そいつらは大人しそうな女性や男をターゲットにし、人通りの少ない場所に行くのを見計らっては襲いかかり、男性には集団リンチで怪我を負わせて金品を強奪、女性は人のいない茂みや、時には車の中に連れ込んで集団で暴行して辱め、それらの写真や動画を撮影して脅すと言った、卑劣極まりない悪党どもがいると。連中は警察の目を盗み、巧みに逃げては行方をくらましていると……

 

そして次に来るのが、この花火大会の可能性が高いということ。それらを総介は、海斗から聞いていた。

そして今日、狙われたのが自分と三玖であることも、総介は気配を感じた瞬間に察した。

今の場所なら人も全くいないし、花火とは逆方向の場所だ。大会が終わるまでは、そう人は通らないだろう。

 

 

(…………完全な俺のミスだ……)

 

 

総介は自分が三玖を危険に晒してしまったことを痛感する。しかし、そんな事を考えている場合ではない。一刻も早く三玖の安全を確保しなければならないのだ。その方法はただ一つだけ………

 

 

「オイ、聞いてんのかよオタク野郎!?テメーにこんな女はもったいねーんだよ!さっさと金おいてどっかいけ!」

 

「何?お前俺らにボコボコにされたいの?ドM?まじかぁ!じゃあ俺らも、お前に協力しちゃおっかなぁ?」

 

「ギャハハ!どうせ助け求めてもボコボコにすっけどなぁ!んでよ、この女俺らが美味しくいただいてるとこ見せてやんよ!いいだろぉ!?」

 

「お、やーさしー!よかったな、オタククン。彼女の裸見れるぜ?まあ触っていいのは俺らだけどな!」

 

「ホラ、とっとと消えな!今だけ特別サービスで見逃してやるからヨォ!!」

 

見せてやるとか消えろとか、矛盾ばかりな事をほざきながら、悪党どもは勝ち誇ったかのように、全員で笑う。その笑い声を聞いて、三玖が服にしがみつく手の握りを強める。総介はすぐに気づいた。彼女の手は震えている。この後のことを考えて、恐怖している。

 

 

 

 

それを感じた瞬間、総介の中で、とてつもない怒りが湧いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰だ、この子を怖がらせた奴は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰だ、この子に手を出そうとしてる奴は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰だ、この子を泣かせようとしてる奴は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………てんだ」

 

 

 

 

 

「ギャハハハハハ………あぁ?んだって?」

 

 

 

 

「テメェらが消えろっつってんだ、クソ豚ども」

 

「ぁあ?んだとテメー!!!?」

 

 

悪党どもが凄んで威嚇してくるが、総介にそんな虚仮威しなど、全く効かない。

 

 

 

「揃いも揃ってブヒブヒ泣きやがって、発情ブタどもが。てめーらのエサはここにはねーんだよ。とっとと豚小屋に戻りやがれ」

 

総介がブタどもをひと睨みして警告する。しかし、集団で一人を相手にしている故か、悪党どもは自分たちの有利を信じて疑わない。

 

 

「テメー、誰に口聞いてんだコラ?ぶち殺すぞ?」

 

「ブタにきく口なんかあるか。とっとと消えろブタピアス」

 

「んだとコラァァ!!!」

 

 

顔中にピアスをした男が、ブチ切れて総介の顔面目掛けて殴りかかってきた。しかし、総介はそれを顔を瞬時に横にずらして避けて、上半身を屈ませて、ピアス男の懐に入り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………死ね」

 

 

 

 

 

 

「なっ!?……ぎゃふぁっ!!」

 

 

 

 

ピアス男のあごに向かって強烈なアッパーカットをかました。

ピアス男は宙を舞い、地面に落下して気を失う。そして総介は、ブタどもが唖然とする中、三玖の方を振り向き、彼女を抱きかかえて走り出した。

 

 

 

「三玖!逃げるよ!」

 

 

「え?きゃっ!」

 

右手で三玖の肩に手を回し、左手で足を抱えて走り出す。所謂お姫様抱っこである。

 

 

 

「ま、待ちやがれぇぇ!!!!」

 

 

「誰が待つかブァーーーーカァ!!バトルパートに入るとでも思ったかカスどもぉ!!ジャンプの見過ぎだおめぇら!出直して来いや!!アーハッハッハッハッハ!!!!」

 

 

世にもゲスい笑い顔をしながら逃げる総介。これではどっちが悪党なんだかわからない。彼は花火の方向へと向かって走り出した。

 

 

 

 

そこからしばらくは、総介とブタどものチェイスが行われた。ブタどもはメンツを汚された恨みで、彼をどこまでも追いかけた。

しかし、総介は祭りの人混みの中へと入り込み、ブタどもの追跡を巧みに躱していく。

途中で見つかったとしても、そもそもの彼の脚力に誰も追いつけなかった。ひと一人抱えているというのに、総介は全く苦にせずに走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

全ては、初恋の人を守るために…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はぁ、はぁ、はぁ………」

 

 

なんとか撒けた。あれから数十分間、彼はひたすら走り続けた。幸いだったのが、ブタどもが各々別れずに追ってきたことぐらいだ。思考回路までブタだったようだ。おかげで楽に逃げることができたが、大分無理しすぎた。

 

 

 

「………ソースケ、大丈夫?」

 

「ああ、疲れたけど、問題はない。もうあいつらも完全に見失ったみたいだしね」

 

総介は三玖を抱えたまま、近くのベンチへと座り込んだ。そこでようやく彼女を下ろして、隣に座らせる。

 

 

「………怖かった」

 

三玖は自身の体を抱き締める。彼女の体はまだ、震えていた。無理もない。10人近くの不良に囲まれ、これからされることを汚い言葉で言われ続けたのだ。怖くない筈がないのだ。だから……

 

 

 

 

 

 

 

「………三玖」

 

 

「な、何………ひゃっ?」

 

 

 

 

総介は、三玖を抱き寄せた。自分の胸元に、三玖の頭を持ってくる。人の目もチラホラあるが、そんなもの今は気にしている場合ではない。

 

「………そ、ソースケ?」

 

 

「………ごめん」

 

「え?」

 

「俺、ああいう連中がいるってことは、事前に知ってたんだ……警戒してたのに、君を危険に晒してしまった……」

 

「………」

 

「どんな形でも、君だけは守りたかった………だから、ああするしかなかった………本当に、怖い目に合わせてしまって、ごめん……」

 

「………ソースケ……」

 

「………三玖……なっ!?」

 

総介の話を聞き終えた三玖は、彼の背中に手を回して抱きついた。彼は突然の出来事に、一気に顔を赤くする。

 

「み、三玖!?何を……」

 

「………私ね」

 

三玖が総介なら言葉を遮り、話を始めた。

 

「すごく怖かった。あの人たちに、何をされるのかって………ソースケに、見捨てられるんじゃないかって」

 

「っ!!そんなこと!!」

 

あるわけない!と言おうとしたが、三玖が話を続けたため、総介はそのまま黙った。

 

「でも、ソースケは守ってくれた。私を、守って逃げてくれた。………凄く嬉しかった……」

 

「………三玖……」

 

総介は三玖の言葉を聞き、彼女の背中に手を回す。互いに抱き締め合う形となるが、いつもとは違い全く動揺はなかった。二人は抱き合ったまま話を続ける。

 

「あいつらに凄い腹が立った。三玖を怖がらせて、乱暴しようとしやがったから………すぐ逃げようと思ったけど、我慢できなかったから、一発入れてやった」

 

「………見てたよ、あの時だけは」

 

「………マジで?」

総介が驚きの顔をする。

 

「うん、あの時だけ、目を開けたの。ソースケが、殴って倒したところ……………凄くカッコよかった」

 

「………暴力にカッコいいも何もないよ。ただ血が流れるだけの醜い世界でしかないよ」

 

「それでも、私を守るためにしてくれたんでしょ?」

 

「……………」

 

「………ありがとう」

 

三玖の礼を最後に、総介は彼女を体から離そうとするが、彼女は動こうとしなかった。それどころか、抱き締める力を更に強めてきた。

 

「………三玖?」

 

「………もうちょっと、このまま」

 

「…………」

 

彼女はもう震えてはいなかったのだが、このままでもいいかも、と少し下心が勝ってしまった。総介は再び彼女の背中に手を回す。花火は既に、夜の空に打ち上がることは無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ!あの野郎どこ行きやがった!」

 

「探せ!探し出してブチ殺せ!」

 

「女だ!あいつ殺す前に女を目の前で犯してやる!」

 

「応援も呼べ!全員でここら一帯シラミ潰しだ!」

 

「ぜってぇにがさねぇ!骨全部へし折って殺してやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブタどもが地獄に落ちるまで、あと少し………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これ引っかかるかな………





今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
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