登録してくださった皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます!
銀魂………本当に完結!お疲れ様でした!(祝)
かぐや様は告らせたい………両想い成就!おめでとうございます!(祝)
五等分の花嫁………ハーレムの弊害、ここに極まれり!(笑)
季節は10月。季節も移り変わり、秋も本格的にやってくる。街中の葉っぱが紅色に変色していく中、全く変わらない色の男が一人いた。
男はあくびしながら通学路をゆっくりと歩く。黒縁眼鏡の奥にあるその目は、死んだ魚の目と呼ぶにふさわしいほど、気だるさに満ちていた。
服装は相変わらずの学生服の上に黒パーカー。総介はこれが気に入ってるのか、私服でもだいたい黒パーカーを着ている、余談だが、彼は同じ物を5着持っており、日々使い回している。オシャレに頓着は無いため、一番しっくりくる服を何着も買うのが彼のこだわりである。というか、主人公が毎回違う服装されたら色々とめんどくさいんです、はい。
そんなこんなで、月が変わろうとも、浅倉総介の朝は何も変わらずに始まっていくのであった。
…………………………
「アドレス交換?」
「うん。一花がソースケとメアド交換したいって。昨日みたいに、緊急で何かあった時に、ソースケから直接連絡できたら便利だから……」
昼休み、特に予定のなかった総介だが、三玖から『昼休みに図書室に来て欲しい』というメールを受けて、光の速さのダッシュで図書室へと馳せ参じた(海斗を完全無視して)。するとそこには、三玖と、一花と四葉、ついでに風太郎もいた。皆勉強会をしていたようで、テーブルを囲むように椅子に座っていた。そこで何の用なのかと聞いてみたところ、上述の通り、三玖からアドレス交換の話を持ちかけられたのだった。それにいち早く反応したのが四葉だった。
「アドレス交換!大賛成です!
…………その前にこれ終わらせちゃいますね」
そう言う四葉の前には、何羽かおられた折り鶴と、何も折られていない折り紙が数十枚。
「…………一応聞くが、何やってんだ?」
風太郎が静かに尋ねた。
「千羽鶴です!友達の友達が入院したらしくて!」
「勉強しろーー!!」
元気に答える四葉に風太郎は半ギレで叫んだ。それに続いて総介も四葉に一言物申す。
「友達の友達って、それもうただの他人じゃねぇか」
「だとしても、困っている人を放っておくわけには行きません!」
「赤の他人からいきなり千羽鶴もらうのも迷惑な話だけどな」
そう呟くも聞き入れて貰えずに黙々と折り鶴を折る四葉。それを見かねた風太郎がが、まだ折られていない紙を手にとり、一緒に折り始める。
「半分よこせ、これ終わったら勉強するんだぞ」
「お前もやんのかよ…………」
そんな少し脱線した状況に、三玖がコホンと咳払いをして話を戻す。
「私はもうソースケと交換してるから、あとは4人と交換して欲しいんだけど、大丈夫?」
「別に構わないけど、長女さんとそこのバカリボンはいいとして、アイツはそう簡単に教えてくれるもんかね〜?」
「バカリボン!?ひどいですぅ!」
四葉が涙目になりながらツッコむも、事実なので誰も拾ってくれなかった。と、ここで一花が口を開く。
「まぁフータロー君はともかく、みんな浅倉君に色々感謝してるし、二乃も悪くは言ってなかったから大丈夫じゃないかな?」
「俺はともかくってどーゆー意味?」
「そう簡単にいきゃ苦労はしねぇがね。上杉はともかく」
「だからどーゆー意味?文脈おかしいだろ今の?」
「…………フータローはともかく」
「上杉さんはともかくー!」
「お前らは言いてぇだけじゃねーか!!」
そんなこんなで、今はここにいる2人とのアドレス交換を優先する総介であった。風太郎はともかく………
………………………
〜総介、一花と四葉との連絡先交換完了〜
〜風太郎、三玖と四葉との連絡先交換完了〜
………………………
「ありがとうね、浅倉君」
「わ〜い!上杉さんと浅倉さんのアドレス、ゲットですー!」
無事に交換を終えた二人だったが、総介はあることに気づく。
「…………なぁこれ、三玖が俺の連絡先を他の姉妹に教えればいいだけの話じゃね?」
「あ………」
「確かに………」
「わお!浅倉さん天才です!」
「…………俺も今思った」
今回は全員(総介、風太郎含む)もれなくアホでした…………
オマケ
「三玖、足の怪我は大丈夫?」
「うん、もう痛みも引いたから……ソースケが手当てしてくれたおかげ……」
「………そ、そりゃ良かった……」
「うん、ソースケ、ありがとう……」
「…………どういたしまして………」
「あ〜ら四葉さん、昼間から図書室であんなにイチャイチャしてますわよ!」
「けしからんですねぇ一花さん。最近の若者は節度というものを知らないのかしら全く?」
「お二人とも顔をあんなに真っ赤にして。こうも甘い空間にいたらブラックコーヒーが欲しくなりますわ。そう思いませんか四葉さん?」
「そうですねぇ一花さん。ですが私はブラックコーヒーより抹茶ソーダでもいただこうかしら?」
「……………あうぅ」
「黙ってろや小野寺姉妹。二人仲良くヤクザの息子にでも構ってろ」
「ふ、二人いっぺんに中の人ネタ……………」
「扱いが雑ですぅ………」
次回に続く………
「終わってたまるかぁぁあ!!!!!!
まだ2000字も書いとらんのに勝手に終わろうとすんじゃねぇぞクソ作者!!」
ええ、主人公からクレームを受けたので、時間と場所を変えて、まだまだ続きま〜す。
…………………………
「お断りよ!お・こ・と・わ・り!」
放課後、食堂にやってきた総介と風太郎。三玖から『二乃と五月は食堂にいる』と聞き、彼女も同伴してやってきたのだが、二乃から帰ってきた反応は何というか、当然の回答だった。
「確かに、私たちにはあなた達のアドレスを聞くメリットがありません」
「頭悪い奴ほどメリットとかいう意識高そうな言葉使う傾向にある。これ、覚えとけよ上杉?」
「大丈夫だ、こいつの頭が悪いのは前から知ってる」
「あなた達酷すぎるでしょ!?もういいです!絶対に教えませんから!」
総介の余計な一言に風太郎が便乗したため、不機嫌な五月がさらに不機嫌に。それを見た総介が、あるものを取り出した。
「まぁそう言うな肉まん娘。アドレス交換してくれりゃいいもんやるからよ」
総介はポケットから取り出した物をヒラヒラと見せびらかす。それはチケットの束だった。五月は総介の手にある紙を見て、目の色を変えた。
「そ、それは!?558の肉まん1個無料券!?」
「それも5枚あるぞ。どうだ?これのどこがメリットが無いっつーんだ?」
そう食べ物で釣る総介に、風太郎もポケットから携帯を取り出して続く。
「俺も今なら、俺のアドレスに加えてらいはのアドレスもセットでお値段据え置き!お買い得だ!」
総介は肉まん、風太郎は妹の連絡先をエサに五月を揺さぶった。当然、五月がこれに食らいつかない筈もなく……
「…………背に腹は代えられません……」
あっさりとスマホを取り出す。これで二人とも五月のアドレスもバッチリゲット出来た。
(ほんとチョッロいなこいつ……)
(多分五人の中で四葉並みにわかりやすいな)
「……五月は本当に食べ物に弱い」
「三玖!アンタ五月を売ったわね!?アンタも身内売ってアドレスゲットするなんて卑怯よ!」
二乃がギャースカ騒ぎ立てるが、そんなもん二人にはどこ吹く風である。まぁその騒いでいる奴が残りの一人なのだが……
「二乃は教えてくれないのか?」
「当たり前よ!」
風太郎の質問をキッパリと切り捨てた二乃。それに対して、総介が動いた。彼は二乃をじっと見つめる。
「…………何よ?なんか文句あんの?」
苛立ちを隠せない彼女が総介に噛み付く。その後に、総介から言葉が出た。
「…………おめでとうございます」
頭を下げて、祝いの言葉を言う総介。それに周りの皆が一瞬ポカンとなった。
「………は?何よいきなり?私何もしてないわよ?」
総介の突然の祝いの言葉に、少し戸惑う二乃だったが、総介が話を続けた。
「いや、お前の中の人が結婚したってニュースに出てたから、これは一言祝わなくちゃな〜と思って……改めまして、ご結婚おめでとうございます」
案の定中の人のことだったので、やっぱりかと、二乃は盛大にずっこけた。
「やっぱ中の人ネタかい!!そりゃ一瞬そう思ったけどさ!アンタ前回のシリアス回から一転してこの話でメタ発言多すぎよ!!一花と四葉を一気にそれでイジるし、あげくの果てには作者にクレームつけるし、やりたい放題じゃない!!………ていうか、アタシと五月が出る前に話終わらそうとしてんじゃないわよ作者!ぶち殺すわよ!」
あ、はい。すんませんでした。以後気をつけます。
「まったくもう…………あと、アタシの中の人、ご結婚おめでとうございます!!エレンの中の人と末永くお幸せに!!!……ほら、アンタ達も言いなさいよ!」
そう言って二乃は他の三人に目を向ける。てか何なのこのカオスな空間……
「ええ!私たちもですか!?…………ご、ご結婚おめでとうございます!末永い幸せを心より願っています」
「ハイ次、三玖!」
「ご結婚おめでとうございます。私も最終的にはソースケと結こry」
「ハイ次!!」
「…………むぅ〜」
途中で切られてしまったことに、頬を膨らませながら二乃を睨む三玖。かわいい。
「お、俺も!?………ええと、ご結婚おめでとうございます…………これ何のコーナーなんだよ……」
そう言いながら風太郎も乗っかってくるあたり、かなり毒されてきているようだ。と、ここで、この混沌とした雰囲気を作り出した言い出しっぺが口を開く。
「…………うし、じゃ、俺はもう帰るわ」
突然の帰宅宣言に、風太郎と二乃が反応した。
「え?」
「は?アンタ、アタシのアドレス聞きにきたんじゃないの!?」
二乃が目を開いて驚く。アドレス交換が目的で来たのなら、もう少し食い下がってもいい筈なのだが……
「いや、俺は祝辞言いに来ただけで、お前に別にアドレス聞こうなんざ思っちゃいねーよ。てか、お前のアドレス聞かなかったら、俺のスマホにはお前の名前だけ無いことになっからな〜。まぁその一人だけ名前のないアドレス帳見ながら、『あ、あいつだけハブられてるわクソワロタ』ってな感じでジャンプの肴にでもすっかな〜」
ゲスい笑顔を思い浮かべながら二乃を挑発する総介。彼はもちろん本気で帰るつもりもなく、二乃にとって屈辱的なことを口から発して挑発し続ければ、いずれは折れてアドレスを教えるだろう。そういう魂胆である。何とまあ腹の黒いこと黒いこと。
「ぐ、ぐぐぐ……」
案の定二乃は彼の挑発に反応してしまい、歯をくいしばる。それを見て総介はさらに畳み掛ける。
「ま、お前のアドレスなんざ興味もねーし、第一、俺は三玖のアドレスさえあればそれでいいから、俺が三玖とどう連絡とろうがお前はそれを知る由もねーry」
「わかったわよ!交換すればいいんでしょすれば!!さっさとスマホよこしなさい!!!」
んで、あっさりと落ちましたとさ。短気って本当に単純だね。二乃は総介からスマホをぶん取り、自分のアドレスを打ち込んでいく。
「…………はい、これ、アタシのアドレス!これで三玖とは好き勝手させないわよ!覚悟しなさい!!」
そう言って二乃は総介にスマホを返す。
「いやメールは邪魔できんからなお前」
「三玖といかがわしいメールしてると知ったら、迷惑メール死ぬほど送りつけてやるんだから!」
「そん時は着拒するわ」
「……ギギギ」
おどりゃ総介、みたいな顔で二乃が睨む。
どこまでも総介が一枚上手である。
「んじゃ、俺と三玖は用事あっから、上杉頑張れよ〜」
そう言って総介は、三玖を連れて食堂から去ろうとする。それを見た風太郎が総介の背中に声をかける。
「は?俺にも教えてくれよ浅倉!」
「本人いんだろそこに。お前も男ならちゃんと面と向かって土下座して聞きやがれ」
「いやお前土下座してないだろ。しかも二乃にアドレス聞くどころか、めっちゃ挑発してたし……」
風太郎のツッコミも二人にはそんなに効かず。と、ここで
二乃が割って入る。
「ちょっと三玖!ソイツとどこにいくつもりよ!?」
「一花のところ。この後にソースケと話があるんだって」
「一花が?それで何でアンタまで行くのよ?」
「事態の説明と、一花がソースケを誘惑しないように」
「さらっと変なこと言ってんじゃないわよ」
「昨日聞いたこと、まだソースケだけ知らないから……」
そう三玖が言うと、総介がそれに反応した。
「え、俺だけ?上杉も知ってんの、長女さんの秘密?」
「一花はフータローに最初にバレたって……」
「…………ああ、なるほど」
昨日、公園でのやり取りを思い出して、総介は納得する、どんな秘密なのかは知らないが、あの時に風太郎は一花の秘密を知って、隠していたと言うわけだ。
そう話をしながら、二人は歩き出して食堂を去って行った。そして残ったのは風太郎と二乃、五月となった。
「…………二乃、俺にも」
「イヤよ」
「…………」
その後は原作通りなので、何も言うまい………
……………………………
「うぃーす。ちゃんと全員分交換してきたぞー」
「私が証人。ソースケはみんなとちゃんとアドレスを交換した」
あの後、総介と三玖は一花の待つ屋上へと到着した。人の気配は一切無く、少し出口から離れたところならば、話はそうそう聞かれないだろう。柵にもたれた一花の元へと向かい、総介は一花へとアドレス帳の画面を見せる。
「お疲れ様〜。じゃあ約束通り、私の秘密、まだ浅倉君に言ってなかったから話すね」
昼休み、一花、四葉とアドレス交換をした総介は、一花から早速メールを受信した。内容はこうである。
〜『お姉さんが昨日何で服が違ったのか、みんなのアドレスをゲット出来たら教えちゃうよ。ちなみにみんなはこの秘密知ってるよ。
PS.三玖に話しておくから、二人で集めて回ってね♡』〜
総介は一花の秘密にはこれっぽっちも興味は無かったのだが、『三玖と二人で』というパワーワードに負けてしまい、残りの2人のアドレス交換をして今に至るというわけだ。
「やばいやつの話とかやめてくれよ?」
「だいじょぶだいじょぶ。そんな裏の事じゃないから。でね、昨日の話になるんだけど………」
そこから、一花の説明が始まった。自分が駆け出しの女優だということ、花火大会の日に急遽オーディションが決まったこと。そのゴタゴタの中で、風太郎の協力もあって何とかうまくいったこと。全てを話した。
一花が説明を終えたところで、総介はただ一言だけ言った。
「ふ〜ん、大変だな」
気だるげな表情を一切崩さないまま、総介は一花の話の感想を述べた。その淡白な反応に一花は少し戸惑う。
「…………あれ、驚かないの?」
「驚くも何も、俺アンタに興味ねぇし」
即答で超絶失礼なことを返す総介。
「うわ、すごい辛辣。もう少し反応すると思ってたけどなぁ」
「三玖が女優って聞いたら2メートルぐらい飛んで驚くが、長女さんじゃなぁ……あんまし」
「………君って最近露骨になってきたね」
「私は、そこまで演技は上手くないかも……」
そんなことを言って照れる三玖を無視して、苦笑いをする一花。この男はあくまで三玖しか見ていないのだろう。すごく、すごく面白い。そして、少し羨ましい。
今まで自分たち五つ子は、よく間違われたりすることもよくあった。五人でまとめられることもあった。それをこの男はどうだ?
三玖だけを見て、三玖だけに関心を示し、三玖だけに優しくする。あからさまな贔屓だが、同じように扱われてきた今までと比べたら、大分新鮮な感じがした。そしてその対象である三玖も、目の前の男にぞっこんときている。それも分かりやすいほどに。
だからこそ、一花はこの男に興味が湧いた。どこまで三玖しか見ていないのか、それを確かめてみようと思った。女優というステータスをひけらかせば、彼は少し反応を示すのではないかと、ちょっとしたいたずら心が出てしまったのだが、結果はご覧の通り。
総介は全く反応しなかった。それどころか、自分を三玖と比べるまでも無いように無下に扱う。少し腹が立ったが、それ以上に妹に対する羨望が増した。三玖が、彼の中ではとんでもなく特別な存在で、三玖にとっても彼はそれに匹敵するほどの男であると。つまりは両想いだ。その証拠に、二人は隣同士のまま一切離れようとしない。まだ付き合っていないのに、二人は既にデキているかのような甘ったるい雰囲気をこれ見よがしに出している。そんな二人を見て、一花はこう思った。
(私も、フータロー君とこんな風に…………なんてね)
そうは思った一花だが一方で、総介がきっかけで、姉妹がバラバラになるのでは?という危惧もあった。三玖が総介と結ばれたら、それに準じて皆新しい友人や恋人を作って、姉妹同士を顧みなくなるのではないかという懸念も、一花の中では生まれていた。しかし、これで改めて彼女は思い知らされていた。
自分たちは顔こそ同じだが、まったく別の人間であると………
いつか五人は、離れ離れになる時が来てしまうことも………
「…………一花?どうしたの、一花?」
考え事をしている最中、三玖が様子がおかしいと思って顔を近づけて呼びかけてきた。
「え!?……い、いや、何でもないよ」
「ぼーっとしてたぞ。あんま三玖に心配かけんなよ長女さん」
総介も話しかけてくる。一花は、総介にずっと気になってることをぶつけてみた。
「………その、長女さんというのは……できれば名前で呼んでほしいな。『一花ちゃん』とか?」
少々かわい子ぶって言ってみたのだが、抑揚のない口調で速攻で返される。
「じゃあ天使ちゃんは?」
「いやマジそれは勘弁してください。ガードスキルとか持ってないんで」
この男、本当に油断できない。こうして第4の壁を嘲笑うかのように踏み越えてイジってくるのだから。ここだけは二乃とは一緒にしないでほしい。
「まあ、俺の気分が良かったら呼んであげなくもないな。せいぜい頑張れよ、長女さん」
「ものすごく上からだね……」
「実際成績は上なんで」
「それを言われたら……」
もう何も返せない……
と、ここで三玖が二人の話に入る。
「…………じゃあ、私とソースケはこれから本屋さんに行くけど、一花はどうする?」
「え?本屋さん行くの?どうして?」
「参考書を買いに。ソースケにどんな勉強が効率いいか教えてもらいたいから」
「アンタも来るか?別に二人っきりだけって決めてもねーし、アンタも生徒だから教えるとこもいっぱいあるしな」
そう言われてしまったら、生徒の身としては断るわけにもいかず、
「じゃあ、私も行こうかな。でも、2人のデートの邪魔はしない程度にしないとね♪」
やられっぱなしもアレなので、少しからかってみようと思い、言ってみた。
「で、デート!?……」
「マジでか?じゃあ三玖、今からコイツほったらかしにしてデートしよう」
「え、ええ!!?」
「待ってください私が悪かったです許してください」
三玖には効果絶大だったが、総介には悪ノリされて一花は上を行かれる始末。本当に何なんだろうかこの男は……三玖も顔真っ赤にしてるし……
「………ついてくんならそれでいいぞ。アンタに見合う参考書でも見てけばいいしな」
「う、うん。そうだね」
気だるげな表情は、ここに来てから一切崩れていない。二乃がよく彼の目を『死んだ魚の目』と言っていたが、一花にはそれが何を考えているのかわからない、入ったら抜け出せない沼のようなものに見えて少し怖かった。ただ一つ、彼女に分かるのは、彼が誰よりも三玖を大切に思っている事だけだった。
「じゃあ行くか。俺も見たいもんあるし」
「うん、善は急げ……」
そう二人が声をかけあって、屋上の出口へと歩いて行き、一花もそれに続く。二人の背中を見て、一花はこんなことを思ってしまった。
『この2人は、いつか本当に結婚するかも』
将来なんて、今はまだ分からない。だが、何となく、思ってしまった。見えてしまった。
(まだ一ヶ月も経ってないのに、何でなんだろうね……)
転校初日から会っていたとしても、2人があった回数は指で数えるほどだ。それが何故、2人が長年連れ添ったかのように信頼しあっているように見えたのか、一花は不思議でいっぱいだった。しかし、すぐに考えるのをやめた。考え続けても、答えが出なければいつまで経っても堂々巡りだ。
(………いつか答えは出るよね……)
2人の関係も、自分の風太郎への思いも………何かは分からないが、いつかは決着がつく。今は気長に待とう。そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。今はただ、こう思っておけばいい。
(………妹を、三玖をよろしくね、浅倉君)
聞こえることもない思いを胸に留めながら、一花は総介と三玖に続いて屋上を後にしていった。
秋も本格的に突入し、オレンジ色の夕日が、誰もいなくなった屋上から見える空の端を染め始めていた。
後日、二乃に借りパクされた生徒手帳を取り戻すため、風太郎が中野家を訪れて一悶着あったことは、総介にとってはどうでもいいことなので、原作2巻の169ページから見てください。
「俺の扱いが雑過ぎるだろうがぁぁぁあああ!!!!!!」
そして最後にもうひとつ。
アニメでの二乃の中の人がご結婚されたということで、おめでとうございます!(祝)
これにて2巻は終了です。次回から3巻の話に入って行きます。
あと、一花が一番動かしづらいです………
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!(感謝)