個人的には『かぐや様は告らせたい』の二期をやって欲しいです。
総介が転校生のヘッドホン美少女と会ってから1日が経過した。その間、彼は頭のど真ん中には彼女の姿がどんと居座り続けていた。
教室に戻ってもあの子、
昼休みに屋上でパンを食べててもあの子、
放課後に帰宅途中でもあの子、
帰って夕食を作っててもあの子、
食べてもあの子、
風呂でもベッドでもあの子、
寝ても覚めてもあの子………
『……………ありがとう』
完全にその子に落ちてしまった…………
「……どーすりゃいいんだよコレ……」
朝、ベッドから起きた総介が発した言葉がコレ。彼自身、これが一目惚れだと気づくのには時間がかからなかった。漫画の登場人物のツンデレとは違い、自らの気持ちに理解が早い彼は、恋愛というものを受け入れるのにも若干の抵抗で済んだ。
しかし、こういった感情を味わった事は人生で一度も無かった。これまでも可愛いと思える女子や女性には時々遭遇し、なんなら少し世間話などの会話もしてきた。しかし、今回のように、全身の血が高速で流れ、顔が破裂しそうなほどの熱に侵される感覚に陥ってしまうを経験した事は無かったのだ。
世の人々はこの現象を俗に『初恋』と呼んでいる………
「なるほど。大体の事情は分かった。君が昨日からずっと変だった理由も、その子に恋しちゃったって事なんだよね?」
「ああ、我ながらもう完全におかしくなっちまった。情けねえ………」
朝、教室に着いてすぐ、総介は先に登校していた海斗と人気の無い屋上へ移動し、昨日の件を話していた。仮にも初恋というデリケートな事柄。昨今の学生の拡散力は馬鹿に出来ず、誰かに相談をすれば瞬く間にクラス、学年へと知れ渡ってしまう時代。そんな火のついた爆弾の如き危ない相談を何の躊躇もなく海斗に出来るのは、彼が誰よりも人の秘密を厳守していることを総介は長い付き合いで知っているからで、何より彼が海斗を信頼しているに他ならない。……総介本人は頑なにただの腐れ縁だと否定しているが。
「いやいや、素敵じゃないか。青春だよ、初恋なんて。『1年前までの僕たち』と比べたら、想像出来ないほどに学生生活を謳歌しているじゃないか」
「……………そりゃそうだがよ」
1年前に何があったかはさておき、総介は片手で眼鏡の上から頭を抱えながら、未だに脳内に出現するヘッドホンの少女のことを考える。
この子は一体いつまで俺の中に居続けるんだ。しかも延々とお礼を言ってきている。賃貸契約すらして無いのに、無断で頭の中に入居され続けても困るってもんだ。せめて家賃払ってくれるならと思ったが、俺の1N(脳みそ)DKに一銭の価値すらあるのかも疑わしい(てかねーよ)。
「それで、君はどうしたいんだい?」
「タイムマシンが欲しい」
「そんなものないよ。それにいくら過去に戻っても君はもうすでに彼女と出会ってるんだよ?それじゃ意味ないんじゃ……」
「だったらコレで俺の頭殴ってその子の記憶だけ消してくれ」
「総介、僕エスパー?」
総介はどこからともなく取り出したトンカチを海斗に渡そうとするが、記憶の部分的消去なぞ現代科学ですら難しい。ましてやトンカチで殴るというローテク手段でどうにか出来るものでは無いし、正気の沙汰ではない。てか最悪死ぬから。と海斗に即断られた。
「とにかく、もう会ってしまったものは仕方ないんだ。今後彼女と近づきたいのかどうか、それはあるのかい?」
「………そりゃ、まぁ………あるにはあるが………」
どうにも答えが濁ってしまう総介。と、海斗が続ける。
「だったら昼休みにでもその子を探して、一緒に話をしてみればいい。感謝の言葉を言われた以上、君に対する印象は悪くはないはずだよ?」
「んなこと出来んのてめーかヨ○スケぐれーだよ。話しながら勝手に昼飯もいただく気だろ?『突撃!あの子の昼ごはん』だろ?」
「ヨ○スケじゃなくてだね……普通に、『お昼ご飯一緒にどうですか?』と聞いてみればいいじゃないか?君なら出来ないことではないだろう?」
「ただの女子ならな。でもその子なら………出会ってすぐに頭ん中から脳みそ無くなるわ」
「そんなに!?」
どうやら事は海斗が考えていた以上に深刻らしい。緊張して口下手になるどころか、思考の中枢を紛失してしまうほどに。
「そんなもんだ恋愛ってのは。俺には全てが分かる」
「百戦錬磨の猛者みたいに言わないでくれるかな。君惚れたの昨日だよね?初恋から24時間すら経ってないよね?」
総介の不安の原因は、そのヘッドホンの子が目の前に現れると彼の練りに練ったボキャブラリーを完全に破壊しにかかるやもしれないということだ。頭の中で考えることさえ先程から顔を赤くしているというのに、実物に再会してしまったらどうなってしまうのやら………
「あぁもぉ!いいよな〜、てめーは。『許嫁』ってもんがあって。将来安定じゃねーか。しかもイケメンでモテモテ。さぞ女には困らねえだろうな。本当いいよな〜、死んでくんないかな〜」
「愚痴を言うぐらいならその子と何を話すかを考えときなよ。あと、『彼女』とは形だけのものだ。恋愛感情は持ち合わせていないよ」
「余裕ぶっこきやがって、この『Mr.完璧超人』。………だがまあ、その子をなんか別のモンだと思えば、どうにかなるかもな……」
「別の物……例えば?」
「エリザベス」
「やっぱりね」
総介が想像したのは、白い体をしたペンギンのような化け物。要は『銀魂』に出てくるあの『エリザベス』である。
「相変わらず君は昔から『銀魂』が好きだね」
「何度も言っちゃいるが、俺の人生のバイブルなまである」
「漫画や小説全部持ってて、DVDも全巻揃えているんだ。本当に筋金入りだよ」
「グッズとかもある程度持ってるぞ」
「完全にマニアの域だね」
「いや〜、空知先生はとんでもないものを盗んでいきました。………私の心です!」
「その後に生み出された心は昨日女の子に盗まれたけどね」
「うめー事言ってんじゃねぇよ」
「まぁとにかく、何事もチャレンジだ。まずはその子を探すことからやってみなくちゃ始まらないよ」
「………努力します」
ぶっちゃけてしまうと、総介は既に自分の答えは見つけていた。
『その子を探して、話とかをしてお近づきになる』。
まさに海斗から言われたことと同じものだった。総介も海斗がそれを言う事を分かっていた。だったら何故海斗に話をしたのか?
簡単な話、『誰かに話して安心したい』のである。自分は間違っていないかと言う不安を消したい、もしもダメだった時に慰めて欲しい、成功した時に祝って欲しい、相談に乗って欲しい。心にあるモヤモヤを、誰かに打ち明ける事で解消されることもある。今の総介は正にそれを求めていた。
結果として、それは成功したと言える。少し心が楽になった。やはり持つべきものは、便利な腐れ縁である。
「………今僕のこと変な風に言わなかったかい?」
「んや。それよりも、そろそろ戻ろうぜ。予鈴もなるし、早く来て1限目に遅刻なんてカッコつかねーしな」
「君がここに連れてきたんだろうに………」
2人は屋上の扉に向かって歩き出す。
「………頑張りなよ、総介」
海斗は先を行く総介に、声をかけた。
「…………うっせぇよ」
総介は振り向かずに呟くようにして答えた。それでよかった。彼が海斗に対して素直に『ありがとう』と言うのは逆に調子が抜けてしまう。最初は彼が転校生に恋をしたと聞いた時は、彼が何者かに入れ替わったのではないかと言うほどに内心驚いていた海斗だったが、どうやらいらぬ心配だったようだ。
ようやくいつもの総介、かな?と、海斗は考えながら、総介とともに朝の授業へと向かうのだった。
「とは言ったものの……………」
昼休み、総介は食堂にいた。ここがこの時間に一番学校で人の集まる場所であり、例のヘッドホンの少女を探すにうってつけの場所だと考えたからである。教室からここに向かう際、海斗を見たら爽やかに親指を立ててきたので、うざったいから無視してやった。
道すがら、例の自販機で、先程補充されたコーラと、念のための抹茶ソーダを購入し、現在に至る。別に昼飯は食べなくてもある程度は過ごせる。授業中にパンでもこっそり食えばいい。
だが一つ問題が……
(コレ、ストーカーじゃね?)
………
…………
……………
(……………イヤイヤイヤ、これは断じてストーカーではない!ただ気になるあの子いないかなーってフラッと探しに来ただけだ!断じてストーカーじゃない!ストーカーってのはアレだ!好きになった人をどこまでもつきまとう陰湿な行為であって、俺のはアレだ、そう!ピュアな人探しだ!決してどこぞのゴリラでも、どこぞのメスブタでも、どこぞのあんぱん大好き野郎でも無い!ただ勝手に走って逃げたことをあの子に謝ってあわよくばお近づきに〜って考えているピュアな男子高校生の人探しだ!そうだよ人探し!覚悟を決めろ俺!俺は世界の一部であり、世界は俺の一部だ!よし、行くぞ!探すぞ!探しまくるぞ!)
勝手に悩み、勝手に自己解決し、勝手にストー……人探しを始めた総介。なのだが………
(…………いねーな)
見つからない。教室で弁当でも食べてるのだろうか?
だとしたらあのこのいる教室を知らないため、総介にはどうすることも出来ない。
(しゃーねー。戻るか)
まだ探し始めて5分も経っていないにもかかわらず、総介は元いたクラスへと戻ろうとした。と、彼が振り向いた瞬間。
「……………あ」
「……………お?」
目の前にいた。
長くて顔を隠す前髪、眠たそうであまり開いていない瞼、首にかけている青いヘッドホン、大人しそうな独特の雰囲気。
間違いない
彼女だ
総介の視界から一瞬、周りの世界が消えた。
のだが、総介はエリザベスを想像してなんとか持ち直し
「…………ど、どうも……昨日ぶりだね」
「……………うん」
何とか声をかけることには成功した。ヘッドホンをした少女も、小さくではあるが返事をしてくれた。ここからだ。ここからどうにか話を伸ばさなければ!と、ヘッドホンの子が手に持ってたもの見る。お盆の上に、サンドイッチと、抹茶ソーダ………
「…………コレ、いる、じゃなくていります?」
妙なところで敬語になる総介。差し出したのは自身が買った抹茶ソーダ。
「え………でも、もう買ったから」
「ああいや!別に今飲まなくていいんだ!飲みたくなった時でいいし、それに、昨日勝手に走りだしたから、その、あれ、お詫びとして、その、受け取ってほしいといいますか、………勝手に逃げ出して、ごめんなさいと、謝りたくて………」
無論、総介にも謝罪の気持ちもちゃんとある。あの状況で、予鈴を言い訳にして何も告げずに少女を置き去りにして猛ダッシュで走り去ったのだ。謝って当然の行為である。しかし、それを口実に話を進めればいいとも思っている打算的な気持ちがここでは勝る!
「…………じゃあ、もらう」
何とか抹茶ソーダを受け取ってもらうことには成功。しかし問題はここからだ。
「そう、そりゃよかった「でも」……え?」
突然少女が総介の言葉にかぶせてきた。
「…………今回はお礼、させてほしい」
「…………い、いや、だからこれは、謝罪の」
「だったらこれはいらない」
そう言って少女は総介が買った抹茶ソーダを返そうとする。総介は瞬時に考えた。まずい。ここでこれを受け取ってしまえば、もう話すことがなくなってしまう。そうなったら、最悪二度と会話しなくなるかもしれない。そうならないための打開策を……………………………………………思いついた。
「…………じゃ、じゃあさ」
「…………」
「…………お昼ご飯、2人で一緒にどうかな?」
意を決して、総介は聞いてみた。
「…………………それでいいの?」
「え?あー…………うん、それで」
果たして、答えは
「…………………うん、いいよ」
成功だ。というより、第一関門クリアだ!
「じゃ、じゃあ、空いてる席、探そうか」
「…………うん」
口数は少ないものの、今のところ悪い印象は持たれていない。総介は自分の選択が何とか功を奏していることに安堵した。
そしてここから、総介の初恋相手であるヘッドホン少女に対するアプローチ大作戦が始まる!!
次回、『総介失恋!!海斗に慰めてもらうの巻!』に続く………
「って何勝手に決めつけとんじゃコルルルゥゥアアアアア!!!!!」
この小説を書くために、原作9巻までと、『3年Z組銀八先生』を4巻買いました。原作は資料としてこの小説と同時進行で読んで、『銀八先生』は息抜き並びにギャグ小説の参考として楽しみながら読んでいきます。
今回もこんな駄文をここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。