世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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銀魂の最終巻の七十七巻と、公式キャラブック『広侍苑』を購入しました。
キャラブック、3000円高すぎぃ!!

裏表紙に空知先生がこうコメントしていました。
『生粋の銀魂バカだけ買ってください』



先生、ここにもバカがいます!


21.人生はゲームのようにはいかない

時は流れて翌日……

 

 

 

 

 

 

「上杉さん、私、結婚しました!ご祝儀ください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

と、今回の話は四葉のまさかの結婚宣言に始まるのだが、別に本当に結婚した訳ではない。

今、四葉の周りには風太郎、一花、三玖、そして総介がテーブルを囲んでおり、彼女たちの中央にあるテーブルには、お金を使ったり、稼いだりして、最終的には大富豪と言う名のゴールを目指すすごろくゲーム、というか人○ゲームが置かれていた。

 

「えっ?」

 

風太郎が間抜けな声を出す。考え事をしていたのか、どうやら聞いていなかったようだ。

 

「おめでとー」

 

「じゃあ次、私の番」

 

そう言って三玖が中央にあるルーレットを回して、止まった数字の分だけコマを進める。

 

「スカウトされて女優になる、だって」

 

「もー!!それ私が狙ってたのに!」

 

「いやアンタ現実世界で既に女優やってんじゃねーか」

 

各々がゲームを楽しんでいる中、風太郎はというと、

 

(あ……ボードゲームの話か……)

 

ようやく状況を理解したところだった。そして手元を確認し、自分が持っているゲーム内で使えるお金を数える。そして……

 

「ゲームでも貧乏な俺……

 

ははは

 

 

はは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってエンジョイしてる場合かー!!

 

自分の人生どうにかしろ!」

 

 

 

 

 

 

 

乾いた笑いの後に突然シャウトする。

 

「うっせーな。いくらテスト前でも、勉強後の息抜きぐれー必要だろうが」

 

「今日はたくさん勉強したし、休憩しようよ」

 

「もう頭がパンクしそうです」

 

そう言う総介を筆頭に、一花と四葉も同調する。特に四葉は、普段は勉強しない上に、一番成績が悪いので、疲れが人一倍に見て取れた。

 

「そうだが……」

 

それでもどこか不安を隠せない風太郎。

 

「………」

 

その様子を、総介は横目で見ていた。そして、昨日海斗から調査結果を聞いたことを思い出す。

 

 

 

 

 

五つ子の本当の父親(・・・・・)は、彼女たちが生まれて間もなく、母と子を残して突然いなくなってしまったこと、その母も、五年前に病で他界してしまったこと、その前に母が再婚した男が、今回風太郎を家庭教師として雇っている義父だということ………

 

 

他にもいくつか聞いたが、あまり関係無いことだったので頭の端に留めておく程度にした。

そしてその義父について、『最も重要な情報』は、もう少し時間がかかるそうで、現在調査中とのこと。

 

 

彼女たちに思うところは勿論ある。しかし、物事には踏み込んではいけない部分もあることを総介は重々承知している。

 

 

 

しかし………

 

 

 

彼にとっての初恋の相手である三玖、そして総介と同じく、母と死別した境遇。これらが普段は他人の事情に淡白な彼の心をじわじわと侵食し、判断を鈍らせてしまう。

彼とてまだ一人の高校生。いくら周りより大人な考えの持ち主であっても、感情的な部分で割り切れない事も多く存在する。ましてや、それが好きな人のことだったら尚更だろう。

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「………ースケ?………ソースケ?」

 

「え?」

 

総介が考え込んでいると、三玖が声を掛けてきた。

 

「すごく怖い顔してた。大丈夫?」

 

どうやら、考えすぎて眉間に皺が寄ってしまってたようだ。三玖がとても辛そうな表情で総介の顔を覗き込んでくる。

 

(いかんいかん。三玖に余計心配をかけてどうすんだよ……)

 

「………大丈夫だよ。少し疲れてただけだから」

 

そう言って総介は眉間に手を当てて、皺の寄った部分をほぐす。

 

三玖には姉妹の中で唯一事情を説明している分、これ以上余計な負担をかけるわけにはいかないというのに、要らぬ心配までさせてしまう始末。総介は自分が情けなくなってついため息をついてしまう。

 

「大丈夫ですか、浅倉さん?」

 

四葉も心配して声をかけてくる。すると、一花がここで皆に聞こえるように話しかける。

 

「本当に疲れてそうだね。

 

 

 

でね、そこで私に提案があるんだけどー」

 

一花が何かを言いかけた時、

 

 

 

 

「ああー!!」

 

 

 

 

後ろから声がした。二乃である。

 

 

「なんだー、勉強サボって遊んでるじゃない」

 

彼女の登場に風太郎が反応する。

 

「にっ……」

 

「私もやる。アンタ代わりなさいよ」

 

 

風太郎と二乃、二人のやりとりを尻目に、総介は未だ考え込んでいた。その様子を見てられなくなったのか、三玖が総介の頭に手を伸ばし、優しく撫でる。

 

「ソースケ」

 

「………ごめん、三玖。心配かけて」

 

「ううん。私たちのために頑張ってくれてるんだもん。もし私に出来ることがあったら、何でも言ってね?」

 

そう言って優しく微笑む彼女を見て、総介は心の奥からゆっくりと癒されていく感覚を味わう。と同時に、顔に熱が生じて赤くなってくる。今まで考え込んでいた自分がバカに思えてくる程に、三玖の優しい笑顔は総介に無いものを与えてくれる。彼は改めて思ってしまう。『少しでも長く、この子のそばにいたい』と……

 

「………ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 

互いに頬を赤く染めて、二人の間に甘ったるい雰囲気が流れる。総介爆破されろ。ダイナマイト巻き付けられて。

 

そんな二人を、一花と四葉はニヤニヤしながら鑑賞していた。

そして二乃は、その様子をジト目で見るも、すぐにテーブルに視線を戻す。

 

「お金少なっ!」

 

どうやら風太郎の持ち金を見たようだ。確かに少ない。ゲームでも貧乏クジを引く男、それが上杉風太郎である。

 

「あんたも混ざる?」

 

二乃はそう言って後ろを振り向く。するとそこには、五月もいた。

 

「………」

 

「五月………一昨日は」

 

「私はこれから自習があるので失礼します」

 

風太郎は五月の姿を見るや、一昨日の口論のことを謝ろうとするが、聞く耳持たずに踵を返して部屋へと戻ろうとする。その様子を、総介は聞いてこそいたが、一切視線を向けようとはしなかった。

 

「お、おい!」

 

風太郎は五月を止めようとするが、一切取り合ってもらえず、階段を登って部屋へと戻られてしまった。

 

「………」

 

その様子を見ていた二乃が、突然風太郎の背中を押して帰らそうとする。

 

「ほら、アンタも今日のカテキョーは終わったんでしょ、帰った帰った!」

 

「あ、ああ……」

 

彼の背中を押す二乃が、総介の方を振り向いて帰宅を催促する。

 

「アンタも、三玖とイチャイチャしてないで、ちゃっちゃと帰りなさいよ!」

 

「い、イチャイチャ……」

 

そんな風に言われた三玖が、恥ずかしさで頬を赤く染める。総介は二乃の言うことに嫌々ながらも立ち上がろうとするが、ここで一花がとんでもないことを言い出す。

 

「待って二乃。

 

 

フータロー君何言ってるの

約束が違うじゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は浅倉君と二人で、泊まりこみで勉強教えてくれるって話でしょ」

 

 

 

 

そんな一花の言葉に、その場にいた全員が固まった。

 

 

 

 

 

「「えっ?

 

 

 

 

 

ええーーーー!!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

「…………俺も?」

 

 

風太郎と二乃が驚きの叫び声を上げた後、総介が一言だけハンバーグの横についてるパセリの如く添えられた。

 

 

 

いや例え下手くそ過ぎだろ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………一体何考えてんだ、この女)

 

 

あれから、しばらく一花、三玖、四葉に勉強を教えた後、風太郎に一花が風呂入るようにすすめ、彼もそれに従って浴室へと向かった。その間に、総介は一人で3人を相手にすることとなったのだが、彼にはどうも腑に落ちないことがあった。

 

 

 

風太郎の反応を見た限りでは、とても事前に約束をしていたとは思えないし、仮にそうだとしても、総介に一言言っていたはずだ。

つまりは、完全に一花の独断だということだ。何故このタイミングで、泊まりこみの話を持ってきたのか……

 

 

(………解雇の話、まさか知ってんのか?)

 

総介の頭に思い浮かんだのは、これだった。三玖から聞いたのか、義父から一花へ連絡があったのか、それとも別のルートから情報を手に入れたか…………まあ入手経路はどうであれ、一花がもしそのことを知っていたのならば、辻褄合うのだが、知っていたとすれば、それよりも前に何かしらのアクションを起こしていてもおかしくはない。それを二人が帰ろうとするギリギリまで何も言わなかった………

 

 

(………まぁどうでもいいか)

 

 

そもそも一花は二人によく勉強を教わっている方であり、解雇のことがバレていたとしても、あまり支障はない。問題はそれを餌に、何かしら頼みごとなどをされてしまわないかという懸念だが、今のところはそのようなそぶりを見せていないので、このまま放置でいいだろう。それに泊まりこみで教えるのは、勉強の時間も増えるので、赤点回避の条件もクリアし易くなってくる。

 

 

 

 

 

 

それよりも総介には、気になることがあった。

 

 

 

 

 

それは………

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖の機嫌が、すこぶる良いのだ。

 

「三玖、ここはこんなは方法はどう?やり易いと思うけど?」

 

「……………うん!分かりやすい。ありがとう、ソースケ!」

 

普段とは1オクターブほど大きな声と、屈託の無い笑顔で総介に礼を言い、再び問題集にペンを走らせる三玖。それに総介は、頬を赤くしてしまう。

 

 

この子こんなキャラだったっけ?

と、ここで向かいに座っていた四葉が声を掛けてくる。

 

「浅倉さん!ここってどうすればいいんですか?」

 

「ああ?ちょい見せてみろ………ここはだな……」

 

四葉の方へと向かい、解らない箇所を教えていく総介。それをジーっと見ていた三玖だが、途端に横から一花に小声をかけられた。

 

「四葉に愛しの彼を取られてヤキモチですかな〜?」

 

「な、なんのこと……」

 

三玖はペンを走らせながら否定しようとするが、頬が赤くなってしまう。

 

「またまた〜、顔に出てるよ〜、『ソースケと夜も一緒に勉強できて嬉しい』って♩」

 

「…………ああう」

 

一花のからかいに三玖は耐えられなくなり、ついには顔が真っ赤になり、煙をだしてしまう。どストライクで図星だったようだ。

 

「あはは、か〜わい〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花(ピー)香菜さ〜ん、勉強に集中しましょうかぁ〜?」

 

「へ?」

 

花……一花が顔を上げると、そこには腕を組み、とんでもないほど怖い笑顔で佇む総介の姿があった。

 

「いや〜、俺もアンタの中の人は好きな声優だから今まで何も言わなかったけど、流石に俺も鬼になっちゃいますよぉ〜、シャルロットさ〜ん?」

 

「い、いや僕、じゃねーや私は男装したフランス代表候補生じゃないから。IS適正とか無いから。どうか中の人に免じてご勘弁を」

 

「じゃあ口より先に頭とペンを動かしましょうかぁ〜?くだらね〜事のたまったら次は誰でイジって欲しい?ホレ言ってみ?」

 

そうニヤリと不気味な笑みを浮かべる総介に恐怖を感じたのか、一花は速攻で頭を下げて、

 

「す、すみませんでしたーーー!」

 

と、大声で謝った一花は、三玖から離れて勉強を再開した。

 

「ったく……」

 

「自業自得……」

 

「………三玖も集中するように」

 

「は、はい……」

 

油断も隙もねぇな、と総介が呆れていると、風呂場の方から何故か二乃が姿を現した。テクテクと歩いて、椅子のある方のテーブルへと座り、スマホをいじりはじめた。しばらく時が経ち、総介は二乃の方をチラッと見ると、彼女と目が合う。

 

 

「………♪」

 

「………!」

 

総介と目が合った二乃は、まるで勝ち誇ったかのようなドヤ顔をした。それは、勝利が確定した、某ギャンブル漫画の如く、恍惚を浮かべたような表情。総介はそれを見て、風呂場の方から現れたことを加味し、全てを察した。すると、今度は風呂場から風太郎が現れた。彼に気づいた四葉が真っ先に声を掛ける。

 

「あ、上杉さん、おかえりなさーい!」

 

そう声を掛けられた風太郎は、ギギギ、と、さながらブリキロボの如く首を回して応えた。

 

「ああ……おあとー」

 

そんな彼の顔は、顔中汗まみれで、目の焦点が合っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

決まりだ。しかし、念のために確認しておかなければ。

 

 

 

 

「じゃあ俺も風呂借りるわ」

 

「あ、はい!行ってらっしゃーい!」

 

「上杉、シャンプーとか着替え入れる場所とか、教えてくれや」

 

「え、ちょ、おい、浅倉!?」

 

総介は風呂の腕を引っ張って、そそくさと風呂場の方へと消えた。

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂場の前に到着した総介は、風太郎の腕を離し、彼の方へと向いた。

 

 

「………バレたのか?」

 

「!!…………すまん」

 

総介の質問に、何が言いたいのかを理解した風太郎は、そう言葉を絞り出すしかなかった。

 

「………何があった?」

 

「………実は………」

 

風太郎は事の経緯を説明した。自分が入浴している時に、二乃が五月と偽って話しかけきたこと、そこでドア越しに謝罪したら、事情の説明を求められて、五月だと思い込んで全てを話してしまったこと、直後に二乃が自分の正体を明かしてきたこと。

 

それら全てを聞いた総介は………

 

 

「……………」

 

「イダダダダダ!頭折れる!頭折れるぅぅぅ!!!!」

 

風太郎にアイアンクローを決めていた。ちなみに、本気は出していないが、風太郎の頭蓋骨がミシミシと音がしている。しばらくして、総介は彼の頭から手を離す。

 

「テメーまじいい加減にしろよ?ドア越しに謝罪だあ?謝る事ぐれー面と向かって言えねーのか?あ?」

 

 

「ほ、本当にすまん!俺も必死すぎて……考えてなかったんだ……」

 

風太郎が手を合わせて、ペコペコと頭を下げながら総介に謝罪する。

その様子を見て、総介は、はぁ、とため息をついて話しを続けた。

 

「……まぁいい。過ぎたこたぁもう戻せねー。これでしめーだ」

 

「こ、これからどうするんだ?」

 

「とりあえず、長女さんと三玖と四葉はちゃんと勉強している。その3人だけでも赤点は絶対に回避させるぞ」

 

「で、でも、『全員』赤点回避しなきゃ、俺は………」

 

風太郎は顔を下げて、うなだれてしまう。その様子を見た総介は少し考えてから、風太郎の右肩に手を置き、口を開く。

 

「…………上杉、今は先のことは何も考えるな。勉強に積極的な3人の事だけ考えろ。後のこたぁ俺もどうにかして対策を練る。お前は勉強を教えることに集中しろ」

 

「浅倉………」

 

今のままでは、二乃と五月の赤点回避は絶望的だ。この2人はもう諦めるしかない。五月は自習すると言っていたが、そもそも地力が低く、要領も悪いため、誰かのサポート無しでは赤点回避は望めないだろう。

 

 

 

二乃?聞くまでもない。

 

 

 

 

 

「とにかく切り替えろ。3人に勉強を教えることが最優先だ。あの2人に必死になるあまり、残った3人を疎かにしたら本末転倒だ。それこそ全員赤点ってことになりかねねーぞ」

 

「わ、わかった……」

 

とりあえず納得した風太郎を、総介はリビングへと戻し、入浴のために服を脱ぎ始めた。

 

 

 

入浴中、彼は今後の事を考えていた。

 

(…………やっぱやるしかねぇのか………)

 

数日前、総介が緊急で海斗に頼んで調べさせている五つ子の義父のもう一つの情報(・・・・・・・)。このまま行けば、恐らくこれを使う事になってしまうだろう。彼の中で考え得る最終手段まで、後一歩手前と迫ってきた。出来ればその手前で止まってくれれば御の字なのだが………

 

 

「……………世の中うまくいかねーな、全く……」

 

 

湯船に浸かりながら、総介は誰に向けたものでもない言葉を呟くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

風呂から上がり、シャツとジャージに着替えた総介。シャツは白地で、胸元にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

『ビーチの侍』

 

 

 

 

 

わかる人にはわかるよね?

 

 

 

彼がリビングへと戻ると、何やら話をしていたようだった。何だと思い歩いて行くと、三玖が振り向いて総介に気づく。彼女は総介に声をかけようとしたが、何故か一瞬ためらってしまい、次に総介に気づいた四葉が話しかけてくる。

 

 

「あ!浅倉さん!突然ですが、浅倉さんの好きな女子のタイプは何ですか!?」

 

「ち、ちょっと四葉!」

 

「………はい?」

 

いきなりそう聞いてくる四葉に、慌てて四葉を止めようとする三玖。聞けば、ノートを埋めるたびに風太郎の好きな女子のタイプを教えてもらっていたらしい。それを書き記したフリップが、テーブルの上に置いてあった。てかいつ作ったんだコレ?

総介がそれを拾って、詳しく見てみると、フリップにはこう書かれていた。

 

『上杉風太郎の女の子の好きなトコBest3

 

1.お兄ちゃん想い

2.料理上手

3.いつも元気』

 

 

 

 

「…………」

 

言葉も出ない。ただのシスコンじゃねーか………

 

 

「それで、今度は浅倉さんの好きな女の子のタイプは何だろなーって、三玖が呟いたんです!」

 

「き、聞いてたの!?」

 

三玖が驚いた顔をすると同時に、今日何度目か、顔が真っ赤になってしまう。それを聞いた総介は、

 

「………言っていいのか、コレ?」

 

と、少し困惑した。

 

「はい!私も気になります!」

 

「私も気になるな〜。浅倉君がどんな子が好きなのか」

 

「い、一花まで……」

 

「俺も、なんか気になる」

 

「おお!上杉さんも気になるんですか!」

 

ついには一花と風太郎まで参戦してきた。そして遠くでは、二乃がチラッチラッとこちらを見ている。お前も気になるんかい。しかしまあ……

 

「………別に教えてもいいけど……」

 

「………おお!!聞きたいです!ぜひぜひ教えてください!」

 

そう迫ってくる四葉の顔を手で押し戻して、総介は意を決して口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ言うぞ

 

 

 

 

 

俺が好きな女子のタイプは

 

 

 

 

 

 

 

『大人しくて素直な子』だ」

 

 

 

 

 

「「「「「………………」」」」」

 

 

 

それを言った瞬間。全員が固まった。

 

 

 

 

 

「………それだけ?」

 

と、一花が最初に口を開く。

 

「それだけ」

 

「料理とかは?」

 

と、三玖。

 

「んなもん後で覚えりゃいい」

 

「………そう」

 

三玖はホッと安心する。

 

「なんというか………イメージ通りですね」

 

と、四葉

 

「ズバリ言うな」

 

と、ここで一呼吸おいて、総介が言葉を繋ぐ。

 

「因みに嫌いなタイプは、『ガミガミとやかましいツンデレ女』だ」

 

「………なんでアタシの方見ながら言うのよ」

 

総介は嫌いなタイプの女を、二乃をガン見しながら発表した。別に誰も聞いてないのに………

 

「ああ、そうだよね」

 

「わかる」

 

「これもイメージ通りです」

 

「なんか納得だな」

 

「だろ?」

 

と、全員が二乃を見ながら話をする。

 

 

 

 

 

 

 

「アンタらぶっ殺すわよ!!!」

 

 

 

そう二乃が叫んだ後、上のドアがガチャっと開いた。中から五月が出てくる。

 

 

 

「騒がしいですよ

 

 

 

 

勉強会とはもう少し静かなものだと思ってましたが」

 

そう言って五月は階段を降りてきた。

 

「ごめんねー」

 

一花が手を合わせて謝る。風太郎は彼女に話しかけようとするが、どうも躊躇ってしまう。そんな彼を尻目に、五月は三玖に声をかけた。

 

「三玖、ヘッドホンを貸してもらっていいですか?」

 

「?いいけどなんで?」

 

三玖が五月にヘッドホンを渡しながら尋ねる。

 

「一人で集中したいので」

 

そう言ってヘッドホンを借りた五月は、再び部屋へと戻ろうとする。

 

「………お前のこと、信頼していいんだな」

 

風太郎が、自室へと戻ろうとする五月に声をかけた。五月は少し間を開けて、答えた。

 

「足手纏いにはなりたくありません」

 

そう言って五月は、階段を登り始める。その二人のやりとりに、総介は相変わらず一切視線を向けなかった。しかし、彼の近くに座っていた一花は、二人を見て声をかけた。

 

「五月、待てよ!じゃあなんで」

 

「フータロー君、見て、星が綺麗だよ。ちょっと休憩しよ」

 

そう言って一花がベランダの窓を開けて、外へと出て行った。

 

「一花、また突飛なことを……まぁいい、三玖、四葉、お前らも休んで……」

 

一花の行動に呆れつつも、二人に声をかける風太郎だったが、

 

「家綱、綱吉、家宣」

 

「なるほど、家綱、綱吉、家綱」

 

「違う、二人いる」

 

「家綱吉、家宣」

 

「合体してる」

 

そんな二人の様子を見ていると、総介が風太郎の方を向いてベランダに行くように促す。

 

「………行ってやれよ。こっちは俺が見とくからよ」

 

「……ああ、ありがとう」

 

そう礼を言って、風太郎はベランダへと出て行った。

 

その後も、夜遅くまで勉強会は続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして就寝時間になってこんな問題が浮上した。

 

 

「しかしだな」

 

「俺は別にここでも構わねーぞ」

 

「お客様をソファで寝させられません!」

 

風太郎と総介がどこで寝るかで、ちょっとした揉め事があった。どうするかと悩んでいると、三玖が四葉の後ろからとんでもないことを言ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「ソースケ

 

 

 

 

 

 

 

 

私のベッド使っていいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやりとりがあって、今現在、三玖の部屋には総介1人が立っていた。

 

 

「………どうすりゃいいんだコレ」

 

風太郎は四葉のベッドを使う事になり、三玖は一花、四葉は二乃の部屋で寝ることになった。

 

 

「………」

 

総介は、ベッドを前にして、暫く立ったままの体勢が続いていた。

まさかこんな形で、初恋の人のベッドを使う事になるとは………想像もしていなかったであろう。

 

 

とりあえず、彼も眠気が回ってきたので、ベッドへと入る事に………

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

「!!!!!」

 

 

とんでもなくいい匂いがして、否が応でも意識してしまう。

 

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ…………)

 

 

そんなヤバイ事しか考えていなかったが、心地よさも同時に襲ってきたため、意識が遠のいて行った。

 

 

 

 

 

 

……………………………

 

 

 

 

 

 

………………………

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、総介は突然目が覚めた。

 

 

(………誰だ?)

 

彼は何かが起こると、すぐに目を覚ます性質をしているので、何者かが部屋に入ってくる音ですぐに目を覚ました。誰かがこちらに近づいてくる足音がする。彼は起き上がり、部屋に入ってきた者の正体を確認しようとした。が!

 

 

 

 

「………み、三玖!?」

 

「…………ふぇ?」

 

 

なぜか三玖が、ベッドの前に立っていた。

 

「………え?……そ、ソースケ!?」

 

彼女の様子を見るに、どうやら寝ぼけてこの部屋まで来てしまったようだ。元々三玖の部屋なのだから、こうなってしまうのも無理はない。総介に声をかけられた三玖の意識が、段々と戻ってきた。

 

「三玖、寝ぼけてたの?」

 

「う、うん……トイレ行ってて、戻ったらこっちに……」

 

「そう…………ところで、それ、隠してもらえないかな?目のやり場が……」

 

「え?…………っっっ!!!!!!!!」

 

そう言われた三玖は、何故か顔を赤くしている総介が指をさした先を見ると、パジャマのボタンが大胆に開いて、彼女の豊満な胸の谷間が露わになっていた。それに気づくと、慌てて胸元を手で覆い隠し、後ろを向いてボタンを留め直す。

 

 

「………えっち」

 

三玖がジト目で見てくるが、総介は冷静に反論する。

 

「不可抗力です………早く戻りな。コレ、誰かに見られたらヤバイし……」

 

そう言って三玖を一花の部屋へと戻そうとする総介だったが、何を思ったのか、自分のベッドへと腰掛けた。

 

 

「………三玖?」

 

彼女の行動に疑問を思った総介だったが、次の瞬間、三玖が彼に問いかけた。

 

 

 

「………ソースケ…………何かあったの?」

 

 

「え?」

 

「お風呂から上がったソースケ、すごく辛そうな顔してた。入る前はあんな顔じゃなかったのに………」

 

「…………」

 

どうやら、顔に出てしまっていたようだ。いや、それでも微々たる差だろう。あの時はあまり意識してはいなかったが、三玖が声をかけるのを躊躇したのもそう言った理由があったからだろう。

 

「………バレてたか」

 

「………教えて。何が……」

 

流石にこれ以上は誤魔化せまいと、総介は諦めて話す事にした。

 

「………アイツに、二乃に、解雇の件が知られた」

 

「………え?」

 

三玖の時が、一瞬止まってしまう。しかし、総介は説明を続けた。

 

「上杉が風呂に入ってる最中に、アイツが上杉にカマかけて、事情を知ったんだ」

 

三玖は、その事を聞いてはいたが、耳に入ってこなかった。

 

 

 

 

二乃に知られた………つまりは、五人全員での赤点回避は、この時点で絶望的になったということだ。

 

 

 

 

 

 

三玖の中で、今まで溜めていたものが、決壊しいく。

 

 

 

 

「………ごめん。俺がもっとアイツの動きを警戒していれば…………三玖?」

 

 

「……………嫌だよ………」

 

下を向きながら、震える三玖を心配した総介が、彼女に話しかけようとしたその時、三玖が振り向いて、

 

 

 

 

 

「!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総介に抱きついてきた。

 

 

 

「………嫌……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今まで、頑張ってきたのに………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソースケと一緒に………勉強、いっぱいしてきたのに……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

勉強、楽しくなってきたのに…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わりたくない……………………終わりたくないよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

何も答えられなかった。三玖が、どれだけ勉強を頑張ってきていたのか、総介は知っていたから。

 

彼女の思いを聞いた総介は、優しく三玖の背中にてをまわして抱擁した。彼女は数分の間、総介の胸で泣き続けた。総介は、三玖の背中をポンポンと叩いて宥めることしか出来なかった。

 

 

 

彼は痛感した。自分は三玖に、知らないうちに多大な負担を与えてしまった事を………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………落ち着いた?」

 

「………うん」

 

あれから、総介も三玖と同じくベッドの端に腰掛け、二人並んで肩を寄せ合っていた。

 

「………ごめん。昨日、俺が言うべきじゃなかった……三玖のプレッシャーになってしまって……本当にごめん」

 

総介は、昨日、三玖に話してしまったことを本気で後悔した。表では平気な顔をしながらも、内心ではとんでもないプレッシャーになっていたことを、彼女が涙を流した時点で察してしまったからだ。しかし、過ぎた時間は戻らない。彼は、三玖に謝ることしか出来なかった。

 

「ううん、ソースケは悪くない。あの時、私に言ってくれて、嬉しかった……信頼されてるって実感できたから………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでこれたのは、総介がいてくれたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたが、家庭教師として、風太郎と一緒に、頑張ってくれたから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたが、私のそばにいてくれたから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう三玖が返すと、彼女は総介の手を握り、指を絡める。総介も、彼女の手を握り返す。

 

 

 

 

 

 

 

「………三玖………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソースケ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好き」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回もこんな駄文を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。


第二章、早く進めたい……
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