世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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第二章、いよいよ佳境に入っていきます。


23.変装って結構バレバレなの多い

 

 

 

 

 

 

 

スズメがチュンチュンと鳴く晴れ晴れとした翌朝、『PENTAGON』の最上階、中野家のリビングでは、五つ子の姉妹全員がテーブルを囲んで朝食を摂っていた。

 

「一花が休日のこんな時間に起きてるなんて珍しいですね」

 

五女で末っ子の五月が一花を見ながらそんなことを言う。一花は普段は長女として振舞っているが、その私生活は五人の中では飛び抜けてズボラだ。部屋は散らかり放題で、休みの日は昼まで起きてこないことも多々ある。

 

「いつもは五人の中じゃドベだけどね、今日は三玖に起こされちゃってさ」

 

「………早起きは三文の徳」

 

「三問?三玖は早起きするとクイズやってるの?」

 

「四葉、違うわよ。早起きすると、なんかこう、色々いいことがあるって意味よ」

 

三玖の言うことわざを、四葉があらぬ方向へと聞き間違え、二乃が適当な訂正を説明を入れる。皆が思い思いに朝ご飯を食べる中、五月か再び口を開いた。

 

「……彼らは?」

 

「さぁ、まだ寝てるんじゃない?」

 

五月の言う彼らとは、昨晩この家に泊まっていった二人の男子『上杉風太郎』と『浅倉総介』のことだ。一花が『泊まり込みで勉強を教える約束』と称して二人を一泊させようと言ったことが、事の発端である。そしてこの長女の行為が遠回しとはいえ、三女の三玖と、総介を結びつける原因となった事は、未だ本人たち以外知る由のない事である。

 

「…………」

 

三玖が下を向いて黙ったまま、昨日の事を思い出す。前髪が長く、顔が隠れやすいため、赤く染まった頬は、まだ他の姉妹にはギリギリ見つかっていないようだ。と、ここで四葉が立ち上がった。

 

「じゃあ私、上杉さん起こしてくるね!」

 

四葉が勢いよく階段を駆け上がっていく様子を見て、三玖も続けて立ち上がる。

 

「わ、私も、ソースケを起こしてくる」

 

タタタと早歩きで自室へ向かっていく様を、一花は何かを知っているかのようにニヤニヤとしながら見送った。一方の二乃は、苦々しい表情で三玖をチラッと見ただけで、直ぐに視線をテーブルへと戻した。

 

「………アイツら、本当に泊まったのね。

 

ま、それもあと少しの辛抱だわ」

 

二乃は昨日、風太郎を騙して『姉妹の一人でも赤点をとれば家庭教師はクビ』という事実を知ったため、ようやく自分たちの周りをうろつく連中を排除できる、と内心歓喜していた。

 

「二人も勉強参加すればいいのに。案外楽しいよ」

 

「お断り」

 

一花の薦めもそっぽを向いてキッパリと断りを入れる。そして二乃は、五月に視線を移す。

 

「五月、あんたは絆されるんじゃないわよ」

 

「…………」

 

そう二乃に言われた五月は、何かを考えるように黙り込む。

 

「素直になればいいのに」

 

そんな末っ子を心配しているのか、一花が優しく声をかける。

 

「………どうも上杉君とは馬が合いません。この前も諍いを起こしてしまいました。些細なことでムキになってしまう自分がいます」

 

「ふーん、フータロー君とは、ねえ。じゃあ浅倉君は?」

 

「彼は………あまり話をしたことが無いので、よく分かりません」

 

「アイツ、いつも三玖にベッタリじゃないの!ちゃんとみんなに教える気あんの⁈」

 

二人の会話に、二乃が割って入ってきた。キツイ物言いに、一花がすかさずフォローに入る。

 

「まぁまぁ、浅倉君が三玖と仲良いのは否定できないけど、彼、私や四葉もちゃんと勉強見てくれてるよ。教えるのも上手いし、素直に話を聞いてれば普通に良い人だと思うけどな〜」

 

「フン!どうかしらね………」

 

二乃からしてみれば、総介は風太郎以上に異端な存在だ。家庭教師として義父に雇われている風太郎でさえ、彼女にとっては煙たいというのに、その助っ人としてやってきた浅倉総介という男は、目障り以外の何者でもないのだ。

こちらが向こうに噛み付いても、向こうはまるで意に介さず、大人と子供の関係のような上から目線で扱ってくる。そんな彼の態度が、とても鬱陶しい。さらに、二乃にとって一番腹立たしいことは、妹であり、誰かに入れ込むような性格ではなかった三玖が、総介には心を許していることだ。それも、総介に特別な感情を持ってるかのように懐いており、彼の方も、三玖を特別に想っているのか、とても優しく接している。自分たちと三玖への言葉遣いの差を聞いていれば、そんなことはいくらバカでも分かる。

四葉もそれに近いが、アレはお人好しな性格のため、あまり気にしないでいい。まあそれはそれで四葉が心配なのだが……

とにかく、このままでは近いうちに三玖を発端として、姉妹全員がバラバラになってしまう……そういった危機感が、二乃の頭を常によぎっていた。

 

 

 

そんな時に知った、『誰か一人でも赤点をとれば家庭教師はクビ』の件。

チャンスだと思った。これで自分が犠牲となり、赤点となれば、もうあの二人とは縁を切れるし、あの男も、三玖には容易く近づけなくさせることが出来る。どこの誰だか知らない馬の骨に、姉や妹達、自分が引っ掻き回されるのはもうたくさんだ。遅くとも、あの二人は後一週間ほどで退場する。それまで耐えればいい。それでまた、元の仲の良い姉妹の場所が戻ってくるのだ。この場所は、私達だけの居場所は、もう誰にも踏み込ませやしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな二乃の思惑は、完全に周回遅れとなっていた。

 

 

 

 

 

いくら二人を引き離そうとしても、もう手遅れなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故なら、二人は昨晩既に、見事結ばれて恋人同士になっていたのだから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二乃、浅倉君のこと嫌いだもんね〜」

 

「ええ嫌いよ。早く死んでくれないかしら、アイツ」

 

「そ、そんなに、なんですか……」

 

物騒な物言いに五月は口を引きつらせてしまう。

 

「だって二乃はいっつも浅倉君に言い負かされてるからね〜。天敵だね」

 

「負けてないわよ!ていうか、勝負もしてない!」

 

一花が二乃を挑発してからかう。そんな様子を見て、五月はポロっと呟いた。

 

 

 

 

 

 

「………羨ましいです」

 

「「え?」」

 

「一花や三玖、四葉は、彼らとうまくやっているみたいですから……

 

 

 

 

私は一花や三玖のようにはなれません」

 

 

そんな五月がボソッとこぼした言葉を聞いていた一花は、何かを閃いたようで、目を『キラーン』と輝かせた。

 

「………なれるよ」

 

「えっ」

 

「ほら、ここの髪をもってきて……」

 

一花は隣にいた五月に近づいて、髪をセットし直した。

 

「はい、三玖のできあがり!」

 

そう言われた五月の髪型は、それっぽく前髪が長く、分け目もできていたのだが、それでも完成度は三玖には程遠い。

 

「私は真剣に言ってるんですが!」

 

「ごめんごめん、五つ子ジョークだよ」

 

 

プンスカと怒る五月をよそに、一花は楽しんでいるようだった。

と、

 

「一花!

 

 

 

 

髪の分け目が逆よ、もっと寝ぼけた目にして」

 

二乃までもが、五月の髪いじりに参戦してきた。

 

「この髪が邪魔だなー」

 

「私で遊ばないでください!」

 

こうして末っ子は、長女、次女の二人におもちゃにされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょうど三玖もいないし、これで二人騙せるか試してみようよ」

 

「え……マジ?あいつらに私たちの区別なんてできるわけないでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

 

 

 

時は少し戻り、総介を起こしに行った三玖………ではなく、四葉は、自室の部屋へと入って、風太郎が寝ているベッドの横に立っていた。

 

 

「……………」

 

彼女の顔は、いつもの元気いっぱいな表情とは違い、穏やかに、未だ夢の中の風太郎を見つめていた。その顔は、どこか懐かしさ、寂しさ、他にも色々な何かが入り混じったような、複雑だけど、とても静かな顔で、彼の顔に視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………風太郎君………」

 

 

 

 

 

普段とは違う彼を呼ぶ声が、たった二人の部屋に響き、消えていった。

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

 

 

一方で、四葉が自室へと入った直後に、三玖も、総介の眠る自分の部屋の前に立った。なるべく音を立てないように、ゆっくりとドアを開け閉めをして、忍び足でベッドへと近づいてゆく。幸い、ベッドの横に立つまでは、彼は起きなかったようであり、掛け布団を肩の下まで被り、未だ静かに寝息を立てて、仰向けにスヤスヤと眠る総介の姿がそこにはあった。

 

「…………」

 

彼の寝顔を見て、少し得をした気分になる。この寝顔を知っているのは、姉妹や他に近しい人間では自分だけのはず。彼の隙だらけの寝顔を見て、自然と笑みが出てくる。

 

 

 

(ふふっ………まだ、夢みたい)

 

何度も現実だと確認したにもかかわらず、そう思えてくるほどの衝撃的な夜だった。

昨晩、このベッドで、二人は結ばれた。手を繋いだ。抱き合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度もキスをした。

 

 

「……っ!!」

 

思い出す度に、顔が赤くなってしまう。先ほども、唐突に思い出してしまい、危うく姉妹の前で真っ赤っかな顔を晒してしまうところだった。慌てて平静を装って自室へと向かったものの、目の前で眠る恋人の姿を見て、否が応でも昨日のことがフラッシュバックする。慌てて首を左右に振って、雑念を払う。

 

(お、起こさないと……)

 

 

このまま彼が起きるまで寝顔を拝むのも楽しいが、そうすればいつ起きるのかわからないため、姉妹が様子を見に来るだろう。そうなる前に、起きてもらいたい。そして確認したい。昨日のことを……

 

 

 

「………ソースケ、起きて」

 

三玖は彼の肩に手を置いて、ゆっくりと揺すりながら声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソースケ起きて。朝だよ」

 

 

 

総介は重くなった瞼をゆっくりと開く。誰かにユサユサと揺らされている感覚と、自分を呼ぶ控えめで優しい声が聞こえてきたことが、彼の意識を眠りの世界から戻すきっかけとなった。眠気でボヤッとする視界の中で目に入ったのは、自分を起こそうとしている世界で一番愛おしい人の姿だった。

 

「ん〜……?……みく……?」

 

「起きた?」

 

総介はあまり眠れていない寝起きのためか、今の状況を直ぐには理解できなかった。とりあえず体を起こして、今の状況を確認する。

 

 

「おはよう、ソースケ」

 

「………ん、おはよう、三玖……」

 

彼女のかけてくる声に、総介は安らぎを感じながら、昨日のことを順を追って思い出していく。

 

(………そうか、俺……この子の部屋に………泊まって……)

 

いつもとは違う天井と、何故か横にいる初恋の女の子を見て、彼はようやく理解し、意識をはっきりとさせた。左手で頭をかき、少しあくびをする。

 

やがて、昨晩、夜中に起きた記憶が総介の頭を駆け巡る。

 

(…………昨日………本当に………)

 

思い出すのは、三玖が寝ぼけて部屋を間違えたこと、彼女に二乃に隠していたことを知られてしまったこと、

 

 

三玖からの告白、それに対する葛藤………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖を受け入れ、自分も本音を告白し、結ばれたこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も、口づけを交わしたこと………

 

 

 

 

 

 

 

 

「………夢……じゃねーよな……」

 

 

「夢じゃないよ」

 

思わず呟いてしまった一言は、三玖にもはっきり聞こえていた。未だ半分夢の世界に飛んでいそうな総介にはっきりとそう告げて、掛け布団の上に置かれている彼の手に、自分の手をゆっくりと重ねる。

 

「………三玖………」

 

「夢じゃない………総介の、恋人になれたんだもん。夢になってほしくない」

 

 

優しく笑いかけてくる彼女を見ると、心なしか安堵感が湧いてくる。心臓か、脳か、それらがどこから出てくるのか分からないが、たちまち全身を優しく温かい感覚が総介を包み込んだ。ようやく、ようやく想いが通じたのだ………

 

「………そうか……」

 

手を裏返して、重ねられた白くて細長い三玖の手と握り合う。それにすぐさま彼女も、ゆっくりと握り返してくる。

 

「………ソースケ……大好き」

 

三玖が頬を赤くした笑顔で、昨日の振り返りのような告白を、改めて口にする。その言葉を受けた総介は、頭をかいていたほうの左手を、彼女の背中へと回して、ゆっくりと抱き寄せた。三玖も、それに一切抵抗することなく、なされるがままに、すっぽりと総介の胸に上半身を埋めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺もだよ、三玖。大好きだよ……」

 

繋いでいた方の手も、背中へと回して、優しく抱きしめる。やがて、三玖は顔を上げて、総介と見つめ合う。自然と、目が閉じられて、顔同士が近づいていく。総介も、近づいてくる彼女を一切止めることなく、あるがままに受け入れて、唇同士が重なった。

 

 

(…………夢じゃねーな)

 

 

キスの最中。昨日、同じ感触を幾度となく味わったことを、総介は思い出す。

これが初めてだったらば、昨日味わったアレは何なのだろうか?そう言いたくなるほどに、彼の記憶からは、昨日の口づけの感覚も蘇ってきていた。

 

触れ合うだけのキスを終えて、再び見つめ合うと、三玖は恥ずかしさか、喜びからか、総介の胸に顔を埋めた。総介も左手を三玖の頭へと置き、ゆっくりと撫でる。倦怠感にも似た心地よさが、二人を包み込む。

 

「…………ずっとこのままでいてーな」

 

「だめだよ、もうみんな起きてる」

 

「そりゃそうか……起きなきゃな」

 

寂しいが仕方あるまいと、総介は三玖を胸元から離してベッドの中から起き上がる。

 

三玖も立ち上がって、部屋から出て行こうとする。

 

「朝ごはん用意してあるから、着替えたら降りてきてね」

 

「わかった。ありがとう」

 

まるで新婚夫婦みたいなやりとりだなと思いながら、総介は立ち上がり、三玖が部屋を出て行ったタイミングで、着替えを始めた。

 

総介は服を着替えている途中、昨日のことを考えていた。

 

(………『あの女』のことはどう三玖に言やいいんだ)

 

昨日、告白される前に総介は、二乃に隠していたことがバレたことを告げた。それを知ってしまった三玖が抑えていた感情を吐き出してしまい、あのような事態になったのだが、それに夢中になってしまい、二乃のことは頭からポーンと抜けてしまっていた。しかし、総介は風太郎からそのことを聞いた時点で、既に打つ手を決めていた。それを説明するのは今度として、問題は三玖に話すかどうかだ。

 

(もう後はねーぞおい……)

 

あと打てる手は『2つ』。とはいえ、それらはいずれもテストが終わった後の話(・・・・・・・・・・・)であるし、最終手段のもう一つの方は海斗に頼んで調査してもらっている。

 

場合によっては、三玖に話さないままテストに臨ませることになるが……

 

(………まあ、何とかなるか)

 

三玖は自分と恋人同士になれて、だいぶ落ち着いたように見える。後はお互いあまりそれに夢中にならずに、勉強での細かい修正をしてやれば、赤点回避は問題ないだろう。

 

一花と四葉も、勉強に精力的に取り組んでいるため、最初に見たテストの点数ほど悪い結果は出ないだろう。この二人はあと一週間弱でどこまで詰め込めるかだ。

 

 

残りの二人は………

 

 

(……………)

 

 

 

考えないことにした。そもそも、二乃にバレた時点で、五人全員の赤点回避は完全に不可能になった訳だし、後はどうでもいい。

 

 

そんなこんなで、総介はいつもの黒パーカーに紺のパンツへと着替えて、あと忘れないように黒縁眼鏡をかけ、いつも乃彼の格好となり、三玖の部屋を出てリビングへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………のだが。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、浅倉さーん、おはようございまーす!」

 

リビングの下から、四葉が声をかけてきた。その横には、風太郎もいる。そして、二人の前には、異様な光景が広がっていた。

 

 

そこには…………

 

 

 

 

「………おう、四葉、おはようさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で三玖が4人に影分身してんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖の髪型と、三玖の顔をした4人が、リビングの横に並んでいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

総介が着替えている間に起こったこと、それを簡単に説明しよう。

 

 

五月を三玖にするために、一花と二乃はあの手この手を尽くして、見事に三玖のコピーを作り出すことに成功した。そこに出てきた四葉と風太郎。四葉の方はすぐにわかったのだが、風太郎は五月を三玖だと完全に誤認し、

 

「おはよう三玖」

 

と声をかけた。大成功である。風太郎は本物の三玖が出てきた時には「み、三玖が二人!?」と訳が分からない状態になり、寝ぼけてるのか?と思うほど困惑してしまった。

 

これに味をしめた一花は、次に総介にもやってみようと言い出し、それに二乃が

 

「どうせなら、あたしも変装する」

 

と、どこからか取り出した手鏡で髪を整え始め、それに一花も

 

「面白そうだし、私もやってみようかな」

 

と便乗し、これまたどこからか取り出したウィッグを被って、4人の三玖が完成した。これを見た風太郎は、「み、三玖が4人もいる!?」と、変装の様子を見ていながら、目をぐるぐるさせてしまった。それを唯一変装していない四葉が彼を落ち着かせて、総介が降りてくるのを待った。待ってる間、三玖には「これで総介が三玖を当てたら凄いね」的なことを言って丸め込み、絶対に喋らないことを約束させて、服装でバレないように、ブランケットや何かしらの布で隠して、準備を整えた数秒後に、総介が三玖の部屋から出てきた。

 

 

 

 

 

以上、説明終わり

 

第1回『本物の三玖は誰だろな?選手権』のはじまりはじまり〜

 

 

………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総介が階段を降りてきたと同時に、四葉が彼に駆け寄り、今回の趣旨を説明した。

一通り説明を終えた四葉は、目の前の四人に手を向けながら総介に言った。

 

 

 

 

「さぁ浅倉さん!誰が本物の三玖か当ててくだry

 

 

 

 

 

「この子だろ?」

 

 

 

 

 

 

………へ?」

 

 

 

 

 

「「「!!!!!?」」」

 

 

「………」

 

 

一瞬だった。三玖の容姿をした4人を見回すと、総介は迷うことなく横に並んでいるうちの、一番左端の彼女の前へと行き、頭に手をポンと置いた。

 

 

「んで、聞くまでもねーけど、正解は?」

 

総介はいつもの気だるげな表情で、四葉の方に顔を向けて問う。

 

「え、えーと……何でわかったんですか?」

 

それは、遠回しに正解と言ってるようなもので、総介ははぁ、とため息をついて言った。

 

「いや、普通わかるだろ?」

 

その言葉に信じられない表情をする四葉と風太郎、そして三玖に変装した3人。何当たり前のことを聞いてんだ?そう総介が疑問に思っていると、頭を撫でていた子が、我慢できなくなったのが、総介に抱きついてきた。

 

 

 

 

 

「ソースケ!」

 

 

 

 

 

勢いよく抱きついたつもりだったが、総介は突然のことで驚いただけで、体勢を崩しはしなかった。

 

 

「………当たり」

 

彼の胸の中で、正解を告げる本物の三玖。嬉しいも何も、これ以上の幸せは無い。

正直、総介が来るまで三玖には不安が8割方を占めていた。自分を見つけてくれるだろうか……もし、別の子を指したら………

生まれてこの方、五つ子として、何回も間違われてきた。今までは別段気にはならなかったが、今回に限っては違う。昨晩とはいえ、恋人関係になった彼に間違われたら、自分はどれだけショックを受けてしまうだろうか……仕方ない事かもしれないけど、やっぱり不安になる。一縷の望みにかけて、三玖は沈黙を貫いた。そして、それは叶った。自分の頭に手が置かれた瞬間、告白された時と同じくらいの嬉しさと幸福感がこみ上げてきた。

もう、離れたくない。こんなに簡単に、自分を見つけてくれた大好きな人を、離したくない。

姉妹の目なんて全く関係ないかのように、三玖は総介に抱きついた。

 

 

 

「………ありがとう、

 

 

 

 

 

 

私を見つけてくれて」

 

 

胸に顔を埋めながら感謝する三玖の頭を、総介は優しく撫でる。

 

 

「間違えないよ………

 

 

 

 

間違える訳ないさ、絶対に」

 

 

そんな仲睦まじい(総介爆発しろ)二人を黙って見ていた一同だったが、四葉が気を取り直して、総介へと尋ねた。

 

 

「………こ、コホン!で、では浅倉さん!、その勢いのままに、次は一花が誰が当ててくだry

 

 

 

 

 

「知らん」

 

 

 

 

…………へ?」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

一瞬だった(デジャブ)。残りの3人を見るまでもなく、総介は答えた。

 

 

「し、知らんって、どーゆーことですか?」

 

「だから知らんって。こいつらが三玖じゃねーことだけは分かるが、誰が変装してるのかはわからん」

 

「へ、へー……」

 

総介にとっては、五つ子の中では三玖だけが全てであり、他は所詮その姉と妹という『他人』に過ぎないし、女性としての興味すら持っていない。よって、それらが変装してたら分からないし、めんどくさいので見極めようともしない。ただし、『誰かが三玖に変装している』『三玖が誰かに変装している』といった、三玖が絡んできている場合にのみ、少し見たら一発で判別することができるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?何で三玖だけ分かるのかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛ですよ愛(小並感)。

 

 

 

「第一アレだ、俺こいつらに興味ねーもん」

 

「誰が興味ないですって!!!!」

 

たまらず、右端で三玖に変装していた二乃が大声で怒鳴ってきた。

 

「お、お前は!?枝垂ほたる!」

 

「誰が大手菓子会社の社長令嬢の駄菓子厨よ!てかアンタ三玖から離れなさいよ!」

 

「いや、俺が抱きつかれてんだけど……」

 

二乃の怒鳴り声に自分の行動が恥ずかしくなったのか、三玖は名残惜しくも総介から離れた。総介は少し残念に思うが、あまりテスト前という時期に付き合っていることはバレたくないため、なんとか冷静になって対処する。

 

「あはは、いや〜、これは筋金入りだね……」

 

「………納得いきません」

 

二乃に続いて、一花と五月も正体を明かす。無論、総介にはどうでもいいことなので、別に驚きもしないことなのだが。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、第1回『本物の三玖は誰だろな?選手権』は、総介と三玖の2人勝ちとなりましたとさ。めでたしめでたし〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

その後、総介と風太郎は朝ごはん(二乃製、薬は無し)を食べて、たまには気分も変えてと、一花、三玖、四葉と一緒に図書館で勉強することとなった。尚、五月は相変わらず部屋で自習をすると頑なに勉強会に参加せず、二乃に至っては友人と映画を観に行く始末。まあ2人を追い出したいのだから、この行動は二乃にとっては正しい選択なのだが……

 

そんなこんなで、5人で図書館まで歩いていると、総介のスマホから着信音が聞こえてきた。

 

 

電話だ。

 

 

「すまん、電話するから、ちょっと離れるわ」

 

「いいですよー」

 

 

総介は着信相手を見て、風太郎たちに断りを入れて、電話に出た。

 

 

「……海斗か?」

 

『ああ、総介。例の件について、話がしたい。渡す物もあるし、今から会えるかな?』

 

「………わかった。すぐ向かう」

 

普段なら、三玖との時間を邪魔しやがってと、悪態をついて断るのだが、今回は勝手が違う。『例の件』、つまり、総介が依頼していた調査の件の報告だ。三玖と離れるのは申し訳ないが、今は海斗の方を優先するしか無い。

 

電話を切って、三玖たちの元へと戻り、事情を説明した。

 

「すまん。急用が出来ちまった。先に図書館に行っててくれないか?」

 

「え?……」

 

「そうか。戻ってくるのか?」

 

「1.2時間で戻ってくる。それまで上杉、頼めるか?」

 

「あ、ああ、わかった。気をつけてな」

 

「サンキュ」

 

総介は風太郎と話はつけたが、三玖は未だ寂しそうな目で彼を見ていた。それに気づいて、総介は三玖の頭を撫でる。

 

「………ソースケ………」

 

「………大丈夫、すぐに戻ってくるよ」

 

「………うん、気をつけてね」

 

彼の言葉に少し安心したのか、三玖は柔らかい笑顔を見せて総介を送り出した。

 

「いってらっしゃ〜い」

 

「浅倉さーん、早く戻ってきてくださいねー!」

 

一花と四葉も、総介に声をかける。彼はそれに対して、手を振って応えた。なんだかんだで、あの2人に対する面倒見も良いのである。

 

総介は小走りで、海斗と指定した待ち合わせ場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで彼は、海斗から五つ子の義父のもう一つの重要な情報を手に入れることに成功する。果たして、それは一体何なのか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遂に、五つ子と風太郎、総介は、試験当日を迎えることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその試験がきっかけで、総介は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、全ての舞台は整った

 

 

 




総介の正体まで、あと3話………多分


今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
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