世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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これにて第二章は終了となります。となる予定だったんですが……



ごめんなさい。思っていた以上にあまりにも文字数が多くなってしまったため、1話で収めきれずに、前後半で分けて投稿します。読者の皆様の手間をかけてしまって、本当に申し訳ありません。

銀魂特有の『終わる終わる詐欺』だと思ってください。

後半も既に完成しているのですが、前半をお楽しみいただくため、日にちを空けて投稿します。後半は土曜日に投稿予定です。


27.(しろがね)ノ魂を持つ男(上)

郊外の離れた土地にある『大門寺家本邸』。敷地面積は東京ドーム4つ分というアホみたいな広さを誇り、作りは日本風の豪華な家屋である。外見的に屋敷は主に平屋で、所々が二階建ての部分もあるのだが、数ヶ所に地下への入り口が存在し、緊急避難用のシェルターや居住区の役割も果たしていると噂にある。屋敷の他には庭園や池も存在し、よくある『昔の超大金持ちの家』をこれ見よがしに表している。

敷地の外には掘りがあり、表向きの入り口は正面の橋を渡った巨大な門のみとなっている。

 

そんな広大な敷地の離れに存在するのが、大門寺家対外特別防衛局『(かたな)』の屯所であり、作りは大体銀魂の真選組の屯所と同じである。

 

 

 

 

この作品、銀魂を知っていること前提で話を進めているが、一体何人の読者がついて来れるのだろうか……

まぁここまで来たら詳しくは銀魂の原作をご覧くださいとしか言いようがあるまい。

 

 

 

 

 

そんなことはさておき、その大門寺の巨大な入り口の門へとスクーターを走らせて到着した総介。そんな彼を待っている人物がいた。

 

「お疲れ様です、総介さん」

 

「出迎えが来てくれるとは思ってなかったんだがな、アイナ」

 

大門寺家の一人息子『海斗』の侍女であり、『刀』の一員で『戦姫(いくさひめ)』の異名を持つ渡辺アイナが、いつもの学生服ではなく、給仕の格好で、雨の中黒い傘をさしながら門の前で待機していた。

 

「父が早くあなたに会いたいと言うものですから、ここまで迎えに来た次第です」

 

「………なるほど、セキュリティ厳しいもんな」

 

この巨大な門を潜るには、来客ならば事前に交付される大門寺の推薦状が必要であり、更に、指紋照合、網膜スキャン、必要ならばその他の本人確認の工程をパスしなければ、この巨大な門は開くことはない。門や塀を越えようものなら、直ちに見張りの者に取り押さえられ、それでも突破しようとすれば、敵と見なされて『刀』が出動し、世界最強の特殊部隊により捕獲又は始末されてしまうのがオチである。

とまぁ、これ程に厳重なセキュリティなのだが、例外として総帥や一部の幹部、それらの人物の了解を得た者のみが、この門の開け閉めを自由に行えるのだ。

 

アイナは今回、『刀』の局長である父の了承を得て、門の前で総介を待っていたのだ。

彼女は門の脇にあるスキャン装置に、カードをかざし、パスワードを入力した後に、門がゆっくりと開いた。大門寺家の造りは日本風の建物だが、中はハイテクノロジーで出来ているのだ。

 

「どうぞ、お入りください」

 

「サンキュ。休養中の身だし、色々と手間が省けたぜ」

 

総介は門が完全に開いたのを見て、『ベスパ』を敷地内の駐車スペースへとトコトコ知らせていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

バイクを駐車スペースへと置いて、総介はアイナと共に屯所の廊下を歩いてゆく。その途中で、総介がアイナへと話しかけた。

 

「海斗は?」

 

「若様は只今、奥様と別の場所にお出掛けになっておられます」

 

「そうか……」

 

「……まさか本当に無傷だったとは思いませんでした」

 

「あ?何がだよ?」

 

「いくら『鬼童(おにわらし)』とは言えど、三日三晩休み無く戦い続けるのは無謀だと考えていたので……」

 

アイナは一週間程前、総介が風太郎から連絡を受けて、たった一人で『マルオ』にちょっかいを出そうとしている連中の全てを制圧しようという事を心配していた。3日前に総介が最初の事務所を潰しに行く際も、愛銃を取り出して付いて行こうとしたが、再び総介と海斗に止められ、やむなくそれを飲み込んだのだが、それでも万が一の為にと、そのまま屯所にていつでも出動できるように待機をしていた。

もっとも、その心配は結局取り越し苦労となってしまったが……。

 

「あんな武器持ってイキってる連中なんざ数に入んねーよ。どこもかしこも剣やら銃やら振り回して暴れるだけで、てんで歯ごたえのねー奴らばかりだ。おかげで移動の時間にグースカ寝れる余裕まであったわ」

 

「まったくあなたは………」

 

アイナは総介に呆れつつも、未だ気だるげな表情を崩さない彼に末恐ろしさを感じた。

 

彼は今年の3月から、『刀』の一員としての活動を休んでいた。約半年もの間、実戦から離れていたにも関わらず、そのブランクなど一切無かったかのように、5つの組織を流れ作業のように壊滅させて行ったのだ。

総介は余裕だと言っていたが、5つの組織の中には、『刀』が名を挙げてマークするほどの手練れも何人か存在した。その手練れも、事後処理を行った『刀』の同志の報告によれば、全員がズタボロに叩きのめされていたと聞く。

 

(あなたは……一体どこまで……)

 

アイナ自身も、総介や海斗と共に、幼き頃から道場で武術を鍛え上げてきた。彼女も、周りと比べてズバ抜けて身体能力が高く、体術の達人とも言えるまでに強くなっていき、『戦姫(いくさひめ)』の異名を与えられる程、『刀』の中でも上位の戦闘能力を持つに至っている。

それでも、全てにおいて人の倍のクオリティを持つ海斗や、こと戦闘になれば海斗以上の強さを誇る総介には幾分か劣ってしまう。

海斗の場合は、産まれてすぐにその才能を遺憾無く発揮し、大門寺の後継として申し分ない程の実力を持つ神の子を意味する『神童』の異名が与えられた。勉学、運動、芸術、人柄、政事、容姿、その他にも全ての事柄を150%まで昇華できる程の100年に1人出るか出ないかの逸材、それが大門寺海斗である。大門寺家の跡取りとして、一つの文句の付けようがないだろう。

 

 

 

しかし、総介は違う。一般家庭の生まれで、身体能力は周りと比べて少し優れはいたものの、容姿や頭脳、感性も、最初は平々凡々とした一般人のそれだった。剣術においても、最初は海斗に連戦連敗を重ねており、一度も勝てていなかったのだ。それでも二人は親友であり、強さは違えど、互いを認め合い、剣術を日々鍛え上げていった。しかし……

しばらく経った時に、総介の人生の全てを変えてしまう、『ある事件』が起きてしまう。それは、アイナの記憶にも刻まれており、彼にとってはあまりにも唐突に訪れた、残酷な悲劇であった。

その時を境に、総介は『それ』を開花させた。いや、させてしまった。『それ』は、才能と呼ぶにはあまりにも強大な力であったが為に、彼は自分を見失ってしまい、自分以外の全てを壊そうとした。アイナの『父』や道場の師範が止めてくれなかったら、何もかもが無茶苦茶になっていたかもしれない。

そこから、総介は海斗をも凌駕する『力』を手に入れた。その力で敵をなぎ倒していく様はまるで、無力な人間を容赦なく蹂躙する『鬼』に見えた。そこから、あまりにも圧倒的な力を持つ『鬼の子』から由来し、彼は『刀』の入局時から異例の早さで『鬼童(おにわらし)』の異名を与えられた。今の彼にとっての救いは、その力を使うべき場所が与えられたことと、半年前、運命のあの日(・・・・・・)に、全てを終わらせたことだろう。そう、悲劇の発端となった全てを断ち切ったあの日………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イナ……アイナ」

 

 

「!!は、はい!何でしょうか?」

 

アイナは屯所の廊下を歩きながら、後ろを振り返る。見ると、総介が怪訝な表情で彼女を見ていた。

 

「考え事も結構だが、呼びかけに応えられないほどの事なら、一人の時にしてくれ」

 

「も、申し訳ありません……」

 

どうやら深く考え過ぎたようだ。あまりにそちらに頭が回ってしまっていたため、総介の再三の呼びかけも全く耳に入ってこなかった。

いけない。もうすぐ局長室だというのに。気を引き締めなければ……

 

首をブンブンと振って、アイナは局長室へと歩を進め、総介もその様子をいつもの気だるい目で見ながら、その後に続いていった。

 

 

 

………………………………

 

 

2人は、屯所の奥の部屋にある、『局長室』の襖の前に到着した。

 

「特別防衛局、『戦姫』渡辺アイナ、『鬼童』浅倉総介、入ります」

 

アイナが襖の向こうの人に向かって言い、襖をゆっくりと開けた。

 

 

 

すると………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイナちゅわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んぬっ!!!!!」

 

 

 

巨大な物体が、アイナと総介、厳密にはアイナへと向かってすごいスピードで向かってきた。てか飛び掛かってきた。しかし、アイナはそれに全く慌てる事なく、

 

 

 

 

 

「……ふん!!!」

 

「ぐぼぁぁぁぁあ!!!!!」

 

巨大な物体に対して見事なカウンターでアッパーカットを決めた。巨大な物体は綺麗な弧を描いて、畳の床へと落下していった。総介は一連の様子を呆れ果てながら見ている。

 

(………まぁそうなるわな)

 

「何度申せばお分かりになるのですか、お父様(・・・)?私を見つけるなり抱きしめに掛かるのはお止めくださいと、あれほど口を酸っぱくして貴方の耳に入れたのですが?」

 

「分かっている!分かっているさ!!でも、キュートでビューティフォーなマイラブリードーター『アイナちゃん』を目の前にしたら、どうも条件反射で抱きしめたくなってだな!!」

 

ま○ぐり返しで床に倒れこむ巨大な男という、誰得な姿をした人物は、アイナに向かって自身の彼女への愛を叫ぶが、当のアイナは、冷たくゴミを見るような目で、その巨大な男を見下す。

 

「今すぐ死ぬか消えるか失せるか灰になるか選んでください。さもなくば、押入れに保管してある私の成長過程という名の盗撮写真のアルバムを全て燃やし尽くします」

 

 

「そんな!!?そうなったらどの道死んでしまうじゃないかアイナちゃん!!頼む!!それだけはやめてくれ!あれは俺の、俺たち家族の宝なんだ!家宝なんだ!それを燃やすだけは勘弁してくれ!その代わりに、俺を気が済むまで踏んづけるだけで勘弁してくれ!いや、むしろ踏んづけてくれ!!!」

 

「死んでください」

 

 

変態的な言動をする男にただ見下したまま冷たく突き放すアイナ。と、ここで、さすがにこれ以上放置すれば話が出来ないと悟った総介が、男へと声を掛けた。

 

「お久しぶりです、剛蔵(ごうぞう)さん。相も変わらず激烈な親バカっぷりを発揮してますね」

 

「その声は、総介!?総介か!久しぶりじゃねぇかあ!半年ぶりだな!元気にしてたか?」

 

「おかげさまで。休暇を楽しませてもらってますよ」

 

総介が普段は殆ど使わない敬語で声を掛けたこの男こそ、大門寺家対外特別防衛局『刀』の局長、渡辺剛蔵(わたなべごうぞう)であり、アイナの実父でもある。

勢いよく立ち上がった彼を見て、まず目を引くのは、その巨体であろう。身長は驚きの200cmジャストであり、他の人物たちと一線を画している。そして体格も、身長に見合うよう筋肉質であり、いかにもパワーめっちゃありまっせ!というのが隊服の上からでも手に取るように分かる。

人相も、どこかのゴリラ……じゃなくて、武人らしく、短髪のオールバックであご髭を蓄えた武骨な表情をしており、その性格も、見た目通りに豪快な人物である。

『刀』のトップとしての実力やカリスマ性も十二分に兼ね備えており、今現在の世界で、最も最強に近い男である事は間違いないであろう。さらに、『刀』の局長以外にも、様々な肩書きを持っており、名実共に『大門寺のNo.2』『総帥の右腕』と呼ばれて、組織の内外から大いに信頼を寄せられている。当然、彼も異名持ちであり、彼の固い意思と、強靭な肉体に因んで、『金剛(こんごう)』の異名を持つ。しかし、そんな彼だが、先ほどのやりとりからも分かるように、剛蔵は病的なまでに娘思いというとんでもなく残念な面を持っているのである。

この前も、娘の成長を見届けるという口実で、アイナの入っている風呂場を覗こうとしたら、速攻で見つかってしまい、娘に半殺しにされたところである。

 

 

 

「いや〜よく来てくれたな!海斗と学校楽しんでるか?」

 

「ええ。大分青春させてもらってますが………今は世間話はまた今度にしましょう」

 

総介も、半年ぶりに上司に会えた懐かしさに浸りたいが、話を進める方が先だと判断して、早速本題へと入った。

 

「……剛蔵さん、今回の件での情報収集と、移動手段の手配、そして俺に独自行動権を与えてくださり、本当にありがとうございます」

 

 

総介は腰を曲げて、頭を深々と下げて剛蔵に感謝の意を示した。今回、五つ子の父親の『マルオ』の情報を集めてもらい、彼や娘たちに手を出そうとした組織の場所まで、移動の手助けをしてもらい、また、それらを単独で潰すことを許可したのは紛れも無い、目の前にいる『刀』の局長の剛蔵である。

剛蔵は自身の大きな手を、未だ頭を下げる総介の頭に置いて、まるで息子を見るような優しい目で、彼の頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

「気にするんじゃねぇよ、総介。顔を上げてくれ」

 

その優しく放たれる言葉に、総介は顔を上げて剛蔵の顔を見上げた。

 

「俺たちもお前に小さくねぇ借りがあるんだ。東町での花火大会の件、あれと総帥一家出席のパーティがバッティングしちまって、例年なら5人ほど配置させていたうちの連中を、そっちの警備に持っていけなかった。そのせいでお前や、お前の想い人の子に迷惑をかけちまった。いや、そうならなかったとしても、民間人に被害が出ていたはずだ。それを休んでいるはずのお前が、処理をしてくれたことには、とても感謝しているし、デカイ借りを貰った。その借りを返せる機会を与えてくれたんだ。ここで返さなきゃ男じゃねぇだろうよ」

 

「剛蔵さん……」

 

剛蔵はとても義理堅く、人情に厚い人物だ。それも、彼が四方八方から人望を集める一つの要因だろう。もちろん総介も、彼の懐の深さを心から尊敬しており、大門寺家、何より剛蔵を慕っている。

 

「……本当に、ありがとうございます」

 

こんなにも大きな漢を前にして、総介は自分のわがままに協力してくれたことにただただ礼を言うことしかできなかった。剛蔵はそれを見てにかっと笑い、総介の肩をポンポンと叩く。

 

「だから気にすんじゃねぇって。それより、アイナちゃんから聞いたぞ?オメェ好きな子の為に頑張ったんだってな?その子の話も、色々聞かせてくれないか?」

 

「それはまぁ、剛蔵さんにも話をしたいんですが、時間が無いもんですから……」

 

 

 

 

 

 

 

「気にいらねぇな」

 

2人の会話に、局長室にいたもう1人の人物が割って入った。その男は、座布団の上にあぐらをかいて座っていたが、立ち上がって総介へと近づいてきた。

日焼けしたような褐色の肌に、銀と言うより灰色といった方がしっくりくる髪の色。目つきはとても鋭いが、顔立ちは整っているワイルド系イケメンである。服装は剛蔵と同じ『刀』の隊服に、腰には日本刀を指している。身長は剛蔵ほど高くはないが、総介よりも若干背丈はある高身長。

 

彼こそ、渡辺剛蔵の右腕であり、『銀狼(ぎんろう)』の異名を持つ『刀』の副長『片桐刀次(かたぎりとうじ)』である。

 

「………刀次さん」

 

「俺らは便利屋じゃねぇんだ。てめーのくだらねー色恋沙汰ごときに、『刀』が時間を割いてる暇なんかねぇっつーのに、余計な手間かけさせてんじゃねえよ」

 

剛蔵とは違い、バッサリと切り捨てる刀次。彼は何より規律を重んじる性格であり、厳格で気難しい性格も相まって、隊内からは一部恐れられているが、人情家な剛蔵といいバランスが取れており、刀次を支持する声も多い。

総介は、彼の突き刺すような鋭い視線に一切怯むことなく、睨み返す。

 

「……アンタでしょ、刀次さん?」

 

「あ?何がだよ?」

 

「花火大会の人員を、そっちのパーティに全て持ってくることを提案したのは、アンタだと海斗から聞きました」

 

花火大会の日の朝、総介は海斗からの電話で、パーティに毎年配置する警備が、全て大門寺一家の護衛に回ったと聞いた。そしてそれが刀次が提案し、指示をしたことも………

 

「……チッ、海斗の奴……」

 

刀次は舌打ちをして、海斗に恨み言を言った。本来なら、大門寺家の跡取りの海斗には『若様』と呼んで敬語を使のが当たり前だが、海斗も『刀』に所属しているため、刀次は彼を『部下』として名前で呼び扱っている。無論、海斗もそれを了承済みである。

 

「アンタの指示のおかげで、こちとら色々手間取るハメになったんですが?あの豚野郎どもが来ることが予想されていたにも関わらず、人員をそっちに持ってくってのはどういう了見なんですか?」

 

総介が鋭い視線を刀次へと送るが、それも彼は全く気にせずに淡々と答えた。そこから、2人の怖すぎる世界最強クラスの口喧嘩が幕を開けた。

 

「俺たち『刀』が何より優先すべきは、『総帥一家の安全確保』だ。今回のパーティには、大門寺を良く思わない連中もいくつか出席していた。そんなチンピラどもに構っている暇なんざどこにもねぇんだよ」

 

「『大門寺の縄張りの治安維持』も、俺たちの役割の中に含まれているでしょうが。それに今回は、ただのチンピラじゃねぇ。あらゆる場所で罪なき人を食い物にしてきたクソ豚どもの一味だ。下手したら死亡した人もいたかもしれねぇんだ。そんな中で、俺の大切な人が、奴らのターゲットにされた。一家の安全が最優先なら、いくらでも民間人に被害が出てもいいって言うのかよ、アンタは?」

 

「ナマ言ってんじゃねーぞクソガキ。その程度の連中に、『刀』を動かす価値があんのか?俺らは呼ばれりゃホイホイ出動する警察じゃねーんだ。少しは『大門寺の懐刀』としての自覚を持ちやがれ。恋愛なんてくだらねーことして、脳みそ溶けちまったのか?え?」

 

「救えるはずの命を見捨てて、何が侍だ?アンタこそ、その腰につけたモンは飾りか?ただただ番犬としての役割を果たすだけのマニュアリストが、それこそ警察みてぇじゃねぇかよ。そこんとこどう思うんだ『銀狼』さん?いや、番犬だから『銀犬』?『銀チワワ』でいいか?それとも『銀トイプードル』………どっちがいいスか?好きな方にワンって吠えて答えてくださいよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に、刀次がいよいよぶち切れそうになった。彼は人1人殺せそうな視線を総介に向けて、静かに口を開けた。

 

「……上等だ。抜きやがれ」

 

「……殺りますか?」

 

総介も殺気を全開にする。2人は激しく言い合った末に、腰につけた日本刀に手をかけた。一触即発の重く不穏な空気が流れる中、剛蔵が止めに入る。

 

「やめろ刀次!今回は俺が総介に許可したんだ。剣を抜くのは許さんぞ」

 

「剛蔵さん……しかし……」

 

「総介も、落ち着け!ここに斬り合いをしに来た訳じゃねぇだろう?」

 

「………分かりました。すみません」

 

剛蔵の注意に総介は平静を取り戻して、日本刀から手を離したが、刀次は未だ不服そうだ。と、ここで、局長室の入り口から声がした。

 

「ありゃりゃ、皆さんお揃いで。浅倉の旦那が来てるって聞いて警備すっぽかして来てみたら、何の騒ぎですかい、この状況は?」

 

抑揚のないマイペースな声が、室内へと響き渡る。全員が、入り口の方へと向いた。その姿を見で、総介が口を開く。

 

明人(あきと)か……久しぶりだな」

 

「お久しぶりです旦那。何でも、女作って孕ませたって言う噂じゃないですかい?」

 

「孕ませてねーよ!てか何なんだよその噂!?」

 

「俺が今作りやした」

 

「今かよ!それぜってー周りにその嘘流すんじゃねーぞ!!」

 

抑揚の無い江戸っ子口調で淡々と話す彼は『刀』のメンバーの1人である『御影明人(みかげあきと)』。

青っぽい黒髪に、くりっとした目とやる気のなさそうな表情が特徴的な美少年である。身長はそれほど高くなく、総介と10cmほど差がある。服装は、標準の『刀』の隊服だが、その両腰には一本づつ日本刀が差さっており、つまりは『二刀流』の使い手である。年は総介やアイナより1つ下だが、学校には通っておらず、刀の仕事を専属でこなしている。

彼は元々、幼い頃に両親を失った孤児であり、剛蔵が引き取って息子のように育てて来た経緯を持つ。この事から、彼は剛蔵を誰よりも深く尊敬し、慕っている。総介や海斗、アイナと幼い頃より知り合い、現在までに至る。

彼は大門寺の中で何か別に肩書きがあるわけではないのだが、こと戦闘に関しては、総介と同等の才能を持っていると言われており、そこからも由来の一因となって、『夜叉(やしゃ)』の異名を与えられている。そして、前回にも記述した通り、僅か十代にして『異名』を与えられた総介、海斗、アイナ、明人の4人は、『刀』の中でも『新世代の(やいば)』と呼ばれて、剛蔵から期待と信頼を寄せられている。

と、現在の上司である刀次が明人へと注意がなされる、

 

「テメー何サボってんだ?さっさと持ち場に戻りやがれ」

 

「いいじゃねーですかい片桐さん。こっちの方が面白そうじゃありやせんか。それに俺んとこの警備はその辺にいた局員に押し付けてきたんで大丈夫ですぜ?」

 

「何が大丈夫なんだ?お前の頭が大丈夫か?」

 

「片桐さんの石頭よりマシでい」

 

「テメー……」

 

マイペースな明人は、刀次が睨みつけてきてもどこ吹く風。全く気にしていない。

 

「明人、俺があげた『沖田のアイマスク』ちゃんと使ってんのか?」

 

「使ってますぜ旦那。これのおかげで、午前の仕事もぐっすり眠れたんで、今すこぶる元気なんでさぁ」

 

「一日中サボってんじゃねーか!」

 

刀次が明人に思いっきり突っ込み、追いかけ回す。が、明人は全く意に介さずに飄々としたまま部屋中を逃げ続けた。やがて、その様子を見て呆れた様子の剛蔵が2人を止める。

 

「もういいだろ刀次。明人ももうすぐ勤務終了の時間だ。丁度いい、ここで話を聞いて行きなさい」

 

「さすが剛蔵さん。話わかってくれてありがてえ」

 

「………納得いかねぇ」

 

3人の様子を見ていると、いつ見ても『銀魂』の真選組の3人にそっくりだなと総介は思う。剛蔵がゴリラ局長、刀次がマヨラー副長、明人がサド王子、見事にシンクロしている。まぁそれもいいが、今は話を進めよう。

 

「………剛蔵さん、『彼』から連絡はまだ来ていないんですか?」

 

『彼』とは総介が先程交渉に行った相手『マルオ』のことである。

 

「ああ。今んとこはまだだ。まぁお前が交渉に行ったのがさっきだからな。まだ期限まで5日ある。気長に待とうじゃねーか」

 

数時間前、総介は『マルオ』に大門寺との同盟を結ぼうと持ちかけた。『マルオ』の周りに不穏な動きを感じた総介は、このままでは五つ子の姉妹にも牙が向いてしまうことを懸念し、剛蔵へと話を持って行き、彼の承諾を得た上で、同盟の交渉へと臨んだ。もちろん、大門寺も、お得意様となり得る医者との同盟成立はプラスとなるため、それらを考えた上での今回の事態であるが。

 

「……はい」

 

「大丈夫だ。『彼』にとっても、この同盟は得する方が多い。パーティでも少し拝見したが、そこまで己の考えに固執するような男でも無かったしな。きっと上手くいくさ。後のことは、俺に任せてくれ」

 

総介の肩に手を置いて、厳しい表情の彼を落ち着かせる。

 

「………分かっています。そちらの方は頼みます」

 

「うむ。お前さんはその想い人のところに行って、彼女を安心させてやれ。きっとお前のことで頭が一杯の筈だ」

 

「それは……そうかもしれませんね」

 

総介は頭の中に、愛する恋人の姿を思い浮かべる。自分をあんなに好きだと言ってくれた三玖のことだ。きっと気が気でない状態だろう。

 

「………」

 

「それに、刀次はくだらねーと言ってたが、俺はそうは思わねー。誰かを愛するということは、相当な覚悟を持った上で愛さないきゃいけねー。それをお前は、俺たち『刀』を動かしてでも、彼女を護ろうとした。その時点で十分覚悟は伝わってきたんだ。花火大会の件や、今回の同盟の件でも、お前はたった1人、その娘の事を第一に考えて、行動した。すげーじゃねーか。俺は、それこそが『侍』のあるべき姿だと思っている。忠義を尽くす主君もそうだが、まず何より、愛する人、大切な人をどんな事があっても護り通す事こそが、侍の真のあるべき姿だとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前は立派な侍だよ、総介」

 

「………剛蔵さん」

 

剛蔵の言葉に、総介は感極まってしまう。自分のわがままを肯定してくれて、さらにはその姿勢が『侍』としての本分だと言ってくれる。この人はどこまで器が大きいのだろう。総介は改めて、この人と出会えて良かったと、尊敬を込めて心の底から思った。

 

「それにだ。俺も刀次の言う『くだらねー恋愛ごとき』ってやつのおかげで、今の妻と出会い、結婚してアイナを授かったんだ。

 

 

 

 

 

そこんとこどう思ってんだ、刀次?」

 

ニヤついた顔を浮かべて、剛蔵は刀次にイジワルな質問をする。その様子に、先程まで刺々しい雰囲気を出していた刀次が狼狽えてしまう。

 

「い、いや………それはだな……」

 

「俺は良くても、総介はダメだって道理はねぇだろう?俺も今の妻を手に入れるために無茶苦茶やったもんだがな。それと今回の総介のとは違うのか?なら俺もお前に説教されなきゃいけねーなー」

 

「………それは……その……」

 

イジワルに迫ってくる剛蔵に、言葉が出てこない刀次。その様子を見ていた明人が、同じくニヤついた笑みを浮かべて割って入ってきた。

 

「あーあ、こりゃ一本取られやしたね片桐さん?確かに旦那のことばかり責めるだけで、剛蔵さんのことは別件だから関係ねぇって筋のねー道理が通るわけありやせんよねー。

 

 

 

 

 

つーわけで、矛盾だらけの事言いまくった片桐さんには切腹してもらいまさァ」

 

 

「いやなんで切腹!?そこまでやんなきゃいけねーのかよ!?」

 

刀次のツッコミをよそに、その中に総介まで参戦してくる。

 

「明人、俺が刀次さんの腹掻っ捌くから、お前は介錯の方頼まぁ」

 

「いいですねー旦那。それで行きやしょうか」

 

「しくじんじゃねーぞ」

 

「へい」

 

「へい、じゃねーよ!!何サイコなミーティングしてんだテメーら!!!」

 

2人の猟奇的な打ち合わせに大きなツッコミを入れる刀次。剛蔵はその様子を見てガハハと笑い、アイナは男衆のアホなやり取りに呆れ果てていた。『刀』の中では、これが日常茶飯事なのである。

 

 

 

 

本当に、沖田と銀時のドSコンビにツッコむ土方みたいだよな………

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ俺は、帰ります。待っている人がいるんで」

 

総介は話を終えると、最後に向かう場所へといくために、屯所を後にしようとした。

 

「また遊びに来てくだせー旦那。今度いいコーラでも用意してますんで」

 

「サンキュー明人。また来るわ」

 

「いやここ友達ん家!?屯所を何だと思ってんの!?」

 

ふざけた2人に突っ込む刀次。総介はそれを無視して、出口の襖へと手をかけた。と、ここで剛蔵が彼の背中に声をかけた。

 

「………総介」

 

「……はい?」

 

総介は振り返り、離れたところに立つ剛蔵を見る。そして剛蔵は、総介に言葉を送った。

 

 

 

 

 

 

 

「お前はもう、『あの時(・・・)』とは違って、誰かを護れる『力』があるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度こそは、何が何でもその剣で護り通してやれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛する人を、その魂で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精一杯愛してやれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の母親に出来る、最高の親孝行だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………はい、ありがとうございます」

 

総介の返事に、もう迷いは無かった。彼は剛蔵に頭を下げて礼をして、局長室を後にした。

 

「お父様、総介さんのお見送りに行って参ります」

 

「うむ、頼んだよ」

 

「はい」

 

アイナは総介の後に続いて、部屋を出て行った。残されたのは剛蔵と刀次、明人の3人となる。

 

 

 

 

 

 

「………旦那、変わりやしたね」

 

明人が、誰もいない襖を見て呟く。

 

「そう見えるか?」

 

「はい……今まではスゲーギラギラしてた感じだったんですけど、落ち着いたっていうか……かといって、弱くなったって訳じゃありやせん。あれは寧ろ……鋼の刀のように真っ直ぐな魂みたいでさァ」

 

「………お前にもいずれ分かるさ、明人。大切な人を護る力っていうのは、本当に強いもんだということがな……」

 

「………そうですかねぃ」

 

剛蔵と明人の会話が、静かな部屋へと響き渡る。しんみりとした空気が、この空間に流れかけていた。

 

 

 

 

 

 

が、

 

 

 

「さて、俺は仕事も終えたし、部屋帰って寝まさァ」

 

「いやお前仕事サボりまくってただけじゃねーか。一日中寝てたじゃねーか」

 

「寝る子は育つって言いますからね。もっと寝て、もっと成長しまさァ」

 

「何が成長してんだ!?むしろ寝すぎて退化してんじゃねーのか!?」

 

「片桐さんの成長しねーガチガチの脳みそに比べたらまだマシですけどねー」

 

「今日こそ決着つけるか?え、コラ?」

 

 

こんなやり取りが、今日も『刀』で繰り広げられるのだった。

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

一方、バイクを拾って門の前まで来た総介。それに見送りに来たアイナも横に並んで歩く。雨はすっかりと止み、夕方の陽が差しこんでいた。

 

 

「じゃあ、俺は姉妹のとこに向かうわ。見送り、ありがとな」

 

「いえ。総介さんも、久々に皆さんに会えて、どうでした?」

 

「変わんなかったな、あの人たちは。色々話せた事もあったし、来てよかったよ全く」

 

「そうですか」

 

総介はヘルメットを被り、鍵をさして『ベスパ』のエンジンを起動させる。どこか嬉しそうな表情をしているのは、気のせいだろうか。

 

「………総介さん」

 

「ん?」

 

アイナが、出発しようとした総介に声をかけた。

 

「……二乃のことですが……お役に立てず、申し訳ありませんでした」

 

アイナは頭を下げて、総介に謝罪する。どうやら、二乃のことで、うまく立ち回れなかった事を悔いているらしい。

 

「気にすんじゃねぇよ。お前が上手くやってくれても、他の連中の赤点は回避できなかった。アイツも色々と考える事もあったようだしな」

 

「………はい」

 

自分(テメー)を責めんじゃねーぞアイナ。お前の悪い癖だ。今回はアイツのせいにしておけばいいんだよ」

 

「………ありがとうございます」

 

少し落ち込むアイナをフォローして、総介はバイクにまたがった。

 

 

「じゃあな。他に報告する事があったら、学校で直接するか、海斗にでも伝えといてくれ」

 

「分かりました。お気をつけて」

 

その言葉を最後に、総介はバイクを走らせて去っていった。

 

 

彼の心にはもう、最愛の人の事しか浮かんでいないのだろう。アイナは、その人の事を考えながら、豆粒のように小さくなって行く総介をただ見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人を容赦なく殺すことしか知らなかった『鬼』が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人を護る力を知り、愛する人を手に入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方は、一体どこまで行かれるのですか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総介さん」

 

 

 

 

 

誰にも聞かれる事のないアイナの独り言が、雲が晴れ上がった夕焼けの空へと、小さくなって消えていった。

 

 

 




・オリキャラ紹介

渡辺剛蔵(わたなべごうぞう)
45歳
身長200cm
体重98kg
大門寺家特別防衛局『刀』局長
異名は『金剛(こんごう)
武器は大太刀。豪快で義理人情に溢れたカリスマ性抜群の『刀』のトップで、大門寺のナンバー2の大幹部。アイナの父親で、娘を溺愛しており、時折度が過ぎてアイナから鉄拳制裁を受けている。

片桐刀次(かたぎりとうじ)
27歳
身長188cm
体重76kg
大門寺家特別防衛局『刀』副長
異名は『銀狼(ぎんろう)
武器は日本刀。褐色肌に灰色の髪が特徴。規律に厳しく気難しい性格だが、実は子供好きで世話焼きな面もあり、部下たちから信頼されている。

御影明人(みかげあきと)
16歳(高校1年相当)
身長174cm
体重60kg
大門寺家特別防衛局『刀』所属
異名は『夜叉(やしゃ)
武器は二刀一対の日本刀。青っぽい黒髪の甘いマスクをした弟系美少年。マイペースな性格で、大抵は総介があげた『沖田のアイマスク』をかぶって寝ている。

この3人のモデルはもちろん『真選組』の3人です。今後も要所要所で登場する予定です。

今回もこんな駄文を読んでくださり、本当にありがとうございます。
初めて原作キャラが1人も出てきませんでした。コレ、本当に『五等分の花嫁』だよね………?
後半へと続きます。
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