世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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小説書くのってすごく眠たくなります。楽しいですけどね。


3.距離感って、大事だよ大事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総介が転校生のヘッドホン少女と食堂にて再会し、どうにか2人でお昼を共にするとこまでこぎつけた。どこか空いてる席はないか、と探していた際、ヘッドホンの子はスマホをいじっていた。何回かタップして再びポケットへとしまったのを見るに、おそらく友達か、海斗の言ってた『きょうだい』へ連絡しているのだろう。

一緒に食べる約束をしていたのだろうか?だとしたら悪いことをしてしまった………

そう一瞬頭で考えたが、彼女がOKを出してくれた以上、今さら無しにするわけにもいかない。ていうかこんな千載一遇のチャンスをくれてやるつもりなど毛頭ない。

そんな事を思っていると、食堂の端っこにテーブルと、2つの空いた椅子を見つけた。なぜかそこは、周りに他の席が無い。個室と呼べるほどでは無いが、他の席からは明らかに遠い場所にあった。

 

「…………あそこでいい?」

 

「…………うん」

 

ようやく席についた2人。正面に向き合って座ったことで、文字通り話し合いのテーブルについたというもの。ここまでは、何とかトントン拍子に事が運んでいる。もしや総介にラブコメの神が微笑んでいるのか………

しかし、ここからは彼のトーク次第。この昼休みという限られた時間で、またおしゃべりしたいと思わせておけば、今回の作戦は大旨成功と言える。次の機会を得るためにも、総介は何か話す事はないかと、高速で思考を張り巡らせていた。すると、

 

「…………お昼、それでいいの?」

 

「ん?」

 

少女の方から、声を掛けてきた。指のさされた方向には、赤色の缶をしたジュース。総介のソウルドリンク、コーラである、

 

「ああ、今はコレで足りるし、戻ったらパンあるから、放課後とかに食えばいい」

 

「そう………」

 

この会話を皮切りに、総介は少女に対して話を掛けていった。

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

「え?黒薔薇女子って、あの黒薔薇女子?」

 

「うん。五人みんな、そこから転校してきた」

 

あれから、ヘッドホンの少女はサンドイッチを食べ、総介はコーラを飲みながら会話を行い、しばらくは少女の話題になった。五つ子だという事は総介にとっては周知の事実だったが、五人全員が女子だということに少し驚いた。彼はその時、(女版『おそ松くん』かよ)と思ったが、馬鹿にしてるように聞こえてはいけないので、口には出さず。さらには前の学校が金持ちの集まるお嬢様学校の『黒薔薇女子』だと聞いて、苦笑いした。

 

(いいとこのお嬢様じゃねぇか。まいったな……)

 

どの程度の金持ちなのかは分からないが、手を出して話がややこしくなるのはあまり望ましくはない。といっても、総介にはそんな事で目の前の少女へのアプローチを止める気はさらさらないが。

 

「………それで、君らは何でここに転校してきたの?」

 

「………………」

 

「あー、ごめん、今の無し。今の質問は無しって事で」

 

どうやら聞いちゃいけなかった質問のようだ。冷静になれば、金持ちの学校から普通の学校に転校してくる理由は大体ネガティブなものが多い。

親が事業に失敗した、前の学校で何か問題を起こした、イジメにあった、落第したなどなど……

 

(この子にそんな事があったとは思えんが……)

 

まぁ理由はさておき、総介は別の話題へと切り替えることにした。

 

「この学校はどう?うまくやっていけそう?」

 

「…………なんとか……」

 

「………そか。ま、時間はあるんだしのびのびやってきなよ。共学で男子に慣れるのは多少かかるかもしれないけど、少なくとも、君らに不埒をはたらくような輩はいないはずだから」

 

ナンパみたいな事をしてる奴が何を言ってんだか………

 

「…………ありがとう」

 

「…………!!!!」

 

総介は少女から目をそらしてしまう。これだ。この子、改めて見てみたがとんでもなく可愛い。

昨日の事が自分の中で誇張されまくって、とんでもない美少女にハードルが上がってるだけ、というのを総介はどこかで考えていた。勝手に美化し過ぎたせいで、いざ実物を見ると『あれ、そうでもないな』っていうアレを期待したのだ。その方が冷静になれるから、と。

ところがどうだ?実際に少女と再会し、容姿を拝み、声を聞き、会話をしてみたら…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……………かわい過ぎんだろぉぉぉおおおおおおお!!!!!)

 

 

 

 

 

総介は頭の中でシャウトした。ハードル高くなってるのに、この子はウルトラマン並みの図体で軽く超えてくるのである。たまったものじゃない。

 

(やべえ、顔見れなくなりそうだ。見たらアレだ、石になっちまう奴だ!あれ、なんだっけ、あの見た奴をみんな石にしていく化物………てこの子は化物じゃねーよ!………何だったっけアレの名前……)

 

総介がくだらん事で頭を悩ませている間、少女は再びスマホを動かしていた。何でも先程の連絡の返事が今さら来たらしい。適当に返信文を打って返信し、画面を消してポケットにしまおうとしたときだった。

 

 

「…………メデューサだ!」

 

「!!?」

 

突然総介が両手をパン!と叩き、意味不明な事を叫んだ。それにビックリした少女はビクッと震えた拍子に、スマホをテーブルの下に落としてしまう。

 

「………あ、ごめん、考え事してて、つい」

 

どんな考え事をしてたのかは言えるわけもなく、総介は座りながら自分の椅子の近くに落ちてきたスマホを拾う。すると、画面が起動した。どうやら傾いてる方向によって起動する画面のようだ。

 

「?」

 

起動した画面には菱形四つ並んだマークと、その中に四つの漢字が記されていた。

 

「………風林火山………」

 

「!!!?」

 

そう口にした瞬間、少女がとんでもない速さで総介からスマホを取り上げる。速っ!?と思う間も無く、彼女はスマホを両手に握りしめ、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………見た?」

 

 

 

途轍もなく冷たい目で聞いてきた。

 

「…………見た」

 

それに正直に答えるしかなかった総介。別に彼女が怖いからではなく、ただ単に聞かれたから答えただけである。

 

「…………!!!」

 

少女は顔が赤くなってから、スマホをしまって両手で顔を覆ってしまう。

 

「…………だ…誰にも言わないで……」

 

「?」

 

「戦国武将、好きなの………」

 

 

そう言われた総介は

 

「………ほー、そうか、あれは武田信玄の……」

 

「…………そう、『武田菱』と『風林火山』」

 

どうやら合っていたようだ。この子、歴史好きなのか……そういや歴女って言葉あったな、と、総介は思い出しながら聞いてみた。

 

「………なるほど。いいじゃん。どんなこときっかけで好きになったの?」

 

相手の土俵に上がり、好きなことを話させてこちらはリスナーに転じる。人の話を聞く上で、相手から信頼を得る方法の一つである。この子が武将が好きなら、話すだけ話させてみようと、総介は考えた。すると少女は、顔を覆っていた手をおろし、ゆっくりと話を始めた

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

「きっかけは四葉から……妹から借りたゲーム……

 

 

 

野心溢れる武将達に惹かれて………

 

 

 

たくさん本も読んだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

クラスのみんなが好きな人は

 

 

 

 

 

イケメン俳優や美人のモデル………

 

 

 

 

 

 

それに比べて私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

髭のおじさん………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………変だよ」

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

「そうか?」

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

少々重そうな話だったにもかかわらず、総介はあっけらかんと答えた。

 

 

 

「………別にいいじゃねーか。人と変わったもの好きになったってよ。

 

 

 

 

 

 

 

言いふらせってわけじゃねーけどさ、

 

 

 

 

 

 

 

自分の好きなモンを好きって言うことに、何をそんなに躊躇する?何をそんなに恥ずかしがる?

 

 

 

 

 

 

 

 

笑われるからか?からかわれるからか?おかしいからか?その好きなモンに自信がもてねーからか?

 

 

 

 

 

 

 

 

それとも、自分に自信がもてねーからか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んなモン勝手に笑わせときゃいいんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

相手がそれを笑ってくるなら、その程度の奴だと逆に笑ってやればいい

 

 

 

 

 

 

それに興味を持ってる人がいたなら、自分がもっと教えてやればいいし、

 

 

 

 

 

 

むしろ相手の好きなものにも興味を持ってやればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんたの事情は詳しく分かんねーし

 

 

 

 

 

 

 

月並みの言葉になっちまうが

 

 

 

 

 

 

 

 

どんな趣味持ってても、そんなのは人それぞれ違うし

 

 

 

 

 

 

 

違ってて当然だろ。

 

 

 

 

 

 

萎縮なんてする必要全くねーよ。

 

 

 

 

 

 

 

自信なんて後からいくらでもやった分だけついてくらー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の自分を信じられるのは友達でも妹さんでもねー

 

 

 

 

 

 

 

自分自身だろうが」

 

 

 

 

 

 

 

 

本音だった。それなりに気を遣った言葉ならいくらでも言える。だが総介は、いつものように、海斗と会話するような口調で話をした。勇気を振り絞って自分に好きなものを教えてくれた彼女に、そんな着飾ったもので答えたくは無かった。

 

 

 

 

 

「…………」

 

「別に言いふらしはしないよ。そうゆうもんは自分で言うもんだからね。」

 

それに、と総介は、自らもスマホを取り出してロック画面を見せる

そこには赤い色の中に金色の文字で『誠』と書かれ、下部には白いダンダラ模様があった。

 

 

「何かわかる?」

 

「…………新撰組?」

 

「正解」

 

と言いながら、総介はスマホをしまう。

 

「俺も漫画がきっかけででね、幕末の侍達にどハマりしてしまった時期があって、今でもそれをみて調べて楽しんでる……程度はどうかわからないけど、君と似たようなもんかな?」

 

無論、その漫画とは『銀魂』のことである?

 

え?『るろうに剣心』の方がちゃんとしてるって?いいんだよ細けーことは。

 

「…………だからさ、変だとは微塵も思ってないよ。俺も戦国武将のゲームやってたけど、幕末より昔の話だから調べようとしても事実関係がわかんない部分もあったし、入り込むの早々に諦めた方だから、もし君が結構深い所まで知ってたなら、むしろ尊敬する」

 

 

ここで言う戦国武将のゲームとは、奥州筆頭が英語を駆使し、馬をハーレーのように乗りこなして『Let's Party‼︎』するゲームのことである。まあそんなことはどうでもいいんだけどね。

 

それにだ、と、総介は続ける

 

「互いに好きなものを教え合ったら、知ってる仲間が増えるし、もっと楽しくならない?」

 

 

少女はスマホの画面を見るとき以外は、俯きながら話を聞いていた。表情が読めない。これ以上どうフォローすればいいのか………そう総介が考えていると、少女が顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………て、……しい」

 

「ん?」

 

 

「……教えて、欲しい。新撰組の、こと」

 

顔を赤くして、目を横にそらしながら、少女は呟いた。どうやらフォローは成功したようだ!伊達にフォロ方十四フォローさんの元ネタ人物を尊敬している総介では無い。彼はここに活路を見出した!

 

「ああ!お安い御用だよ!俺も、君から武将の話をたくさん聞きたい!いいかな?」

 

「…………私の知ってることだけでもなら、構わない」

 

総介は内心とんでもなく大きいガッツポーズをした。もはや彼の脳内が『Let's Party‼︎』である。とはいえ、これで仲良くなれるきっかけは作った。あとは。ゴールテープに向かって走り続けるだけである。

 

 

 

 

 

 

 

あれ?これのゴールって何だっけ?

 

まあいいや。とりあえずは仲良くなろう。話ははそれからだ。

 

 

「じゃあまずは「キーンコーンカーンコーン」げっ!?」

 

こんな時に限って、時間とは非情である。予鈴のチャイムが鳴った瞬間、総介は思い出した。

 

「やば!次移動教室じゃねーか!……ああ、ごめん!この話はまた今度に!!また明日ここに来るから!それじゃ急ぐね!ごめん!!」

 

「え?………あ………行っちゃった」

 

少女の返事を待たずして、総介は手を合わせて謝ってから走り去った。そして道中、彼はとんでもないことに気づいてしまった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「名前聞くの忘れてたぁぁああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緊張とフォローに心が行ってしまったせいで、肝心のヘッドホンの少女の名前を聞いていなかったのだ。それに今更気づいた総介は猛ダッシュしながらシャウトし、通りかかった先生に注意された。愚かにも程がある……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………名前、聞けなかった……」

 

 

 

 

ヘッドホンの少女は歩いて教室へ戻りながら、先ほどの彼との会話を思い出していた。

自分の好きなものを変だと思わず、人の好きなものは人それぞれ違う、と当たり前のように受け入れてくれたこと。それを尊敬すると言ってくれたこと。時代が違うとはいえ、似たような趣味をもっていたこと。武将のことを教えてほしいと言ってくれたこと………

 

 

 

「…………!!」

 

思わず顔が赤くなってしまった。会ってまだ一日しか経っていないのに、初めてまともに会話をした男子だからなのだろうか。暗そうな見た目だけど、悪い人ではなさそう、だがどこか抜けている………そんな印象だった。でも、私が自分の好きなことを言ったとき、彼の雰囲気は変わっていた。ぶっきらぼうでも芯のある口調で自分に物を言う様は、彼と会話した中で1番印象に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………自分を信じられるのは、自分自身だろうが、か………」

 

 

彼の言葉を反芻する。彼の言ったこの言葉には、何か言いようのない重さがあった。彼がそういった経験があるのか、それとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が五人の中で一番落ちこぼれだからなのか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『人はそれぞれ違うし

 

 

違ってて当然だろ

 

 

 

 

萎縮なんてする必要全くねーよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………また、会いたいな」

 

 

 

 

 

 

お礼をするはずだったのに、逆にほんのちょっぴり勇気と自信を貰ってしまった。

昨日から貰ってばっかりだ。お返しもそろそろしたい。

そう言えば、彼は明日も来るって行っていた。

お礼はその時でいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いいや違う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お礼なんて口実だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼に会って話をするための

 

 

 

 

 

 

 

ヘッドホンの少女は未だ名も知らない彼のことを考えながら、少し小走りで教室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで書いて原作キャラの名前が四葉だけって……しかも本当に名前だけ………



今回もこんな駄文を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
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