世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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今回の話から4巻に突入します!いやぁ、3巻の分長かった〜(19.から35.の17話)。



4巻表紙の三玖、めっちゃかわいいです………。


36.旅行でテンション上がって調子乗ってるやつって大体財布とかなくす

「『五つ子ゲーム』!」

 

「「「「「「イエーイ!」」」」」」

 

説明しましょう!『五つ子ゲーム』とは、隠した手から伸びる指を当てるゲームで、

一花=親指

二乃=人差し指

三玖=中指

四葉=薬指

五月=小指

です。by四葉

 

と、車中で移動に暇を持て余した中野家の五つ子と、その家庭教師と助っ人は、学生らしく皆んなでできるゲームに興じていた。何ゲームか行い、現在の親は二乃。彼女の左手で覆われて隠された右手から指が一本伸びているが、どの指かは分からない。それに、他の皆が答えていく。

 

「二乃」

「三玖かな」

「四葉!」

「二乃です」

「お前」

 

あ、最後の総介ね。しかもジャンプ読んでるから完全にテキトーに答えたっていうね……

 

「………」

 

風太郎はしばらく迷い、やがて二乃の指に手を伸ばす。

 

「ちょっと!触るの禁止!つーか触んな!」

 

指の感触で確かめようとしたのだろうか……てか、一歩間違えたらセクハラである。

 

「くっ……二乃だっ!」

 

こうなったら感で当てるしかないと、風太郎は目をくわっ!っとさせて回答した。

 

 

 

果たして正解は………

 

 

 

 

「…………残念、三玖でした」

 

「なぜ裏返ってる?」

 

二乃が正解を見せたが、何故か手の甲が外側を向いており、完全に『FU○K!』のポーズをしてるようにしか見えない。

 

「ざーんねーんだったわねぇ〜」

 

「………」

 

二乃はさらに、隣にいた四葉を越えて、総介の目の前までその中指を持っていったのだが、総介にはまるでどこ吹く風であり、全くそちらを向こうともしない。

 

と、総介はジャンプを閉じて、二乃の中指の方を見てから、右手で二乃の中指を掴もうとする。

 

「ち、ちょっと!何しようとしてんのよ!?」

 

二乃は慌てて手を引っ込め、あえなく総介に中指を掴まれる事態を避けた。

 

「いや、もうその指使ったんだから、次に回ってくる時に使えないようにへし折ってやろうかと」

 

「物騒過ぎるわ!たかがゲームで指犠牲にする奴がどこいんのよ!」

 

総介と二乃がギャースカ言い争いをしている中、風太郎が大きな声を出して次に進もうとする。

 

「くそー!!次、俺な!」

 

「やけにハイテンションですね」

 

普段より高いテンションに、隣に座る五月が突っ込む。

 

「お前たちの家を除けば、外泊なんて小学生以来だ

 

 

 

もう誰も俺を止められないぜ!」

 

一体何を止めろというのか分からないが、風太郎の高いテンションとは裏腹に、車内の空気は若干重かった。というのも……

 

「………」

 

「………まぁ

 

 

 

 

 

 

 

もう一時間以上足止め食らってるんですけどね」

 

外は一面、猛吹雪の世界が広がり、渋滞が起こって車が動かない状況になっていたのだ………

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

「おおっ!なかなかいい部屋だな!」

 

場所は変わり、とある温泉旅館。中野家五姉妹と男2人の七人は、林間学校の宿泊地には時間までには辿り着けないと判断して、1番近くの温泉旅館に泊まることにした。

 

「でも、四人部屋ですよ?」

 

「ねぇ、本当にこの旅館に泊まるの?」

 

二乃には一つ心配なことがあった。

 

「こいつらと同じ部屋なんて絶対嫌!」

 

二乃は風太郎、総介と一緒の部屋で寝るのを、断固拒否した。しかし……

「団体のお客さんが急に入ったとかで一部屋しか空いてなかったんだもん、仕方ないよ」

 

キーキー喚く二乃を四葉が沈めるが、二乃は眉間にシワを寄せたままであり、受け入れようとはしない。

 

「車は⁈」

 

「午後から仕事があるって帰っちゃった」

 

「ほら、旅館の前にもう一部屋あったでしょ」

 

「あ、明日死んでるよ……!!」

 

それは旅館の前にある犬小屋を指しており、二乃は2人をそこで寝さそうとする。この吹雪じゃ、風太郎はともかく、さすがの総介も死んじゃうわさ……

 

ところで、その総介はというと……

 

 

 

「……つーわけだ。初日は合流出来そうにねーわ」

 

『そうか、分かった。アイナや先生には事情を説明しとくよ』

 

「わりー。頼むわ」

 

彼は皆と離れたところで、海斗へと電話をしていた。とは言っても、今の状況の連絡だけなので、大した用事ではないのだが……

現に、海斗と数回言葉を交わした後、総介は電話を切って部屋へと入った。すると、部屋の中では、風太郎はらいはからの手紙と、お守りのミサンガを手にして気持ち悪い笑みを浮かべており、五つ子は部屋の隅っこに集合して、何やら話をしている。

 

「不本意だけどご覧のありさまよ。各自気をつけなさいよ」

 

「気をつけるって何を……?」

 

「それは……ほら……一晩同じ部屋ですごすわけだから……

 

 

 

 

 

あいつらも男ってことよ………」

 

「………」

「………」

 

 

 

「私は別に……」

 

 

「……そんなことありえません」

 

三玖と五月が何か言おうとするが、そんな時に風太郎が姉妹へと近づいていき……

 

 

 

 

 

 

 

 

「やろうぜ」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

その一言で、姉妹はドタドタと部屋の隅に逃げて固まる。何をそんなに怯えているのか……

 

(………三玖含めて、全員意識し過ぎじゃね?)

 

一連の様子を見ていた総介は、少し呆れながら考える。まだ何も直接的なことを発してすらいないのに、何かを察しているかのように体を震わせる。それは、彼女たちも『そういうこと』を意識していることの裏返しに他ならないのだ。

 

「な、何を!?」

 

その質問を、風太郎は手に持っていたものを突きつけて、ハイテンションで答えた。

 

「トランプ持ってきた、やろうぜ!」

 

風太郎が持っていたトランプのケースを見て、姉妹はとりあえず安堵を見せる。

 

「き、気が利くねー。懐かしいなぁ」

 

「何やります?」

 

「七並べっしょ!」

 

(………やけにテンション高ぇなコイツ)

 

林間学校というイベントのせいか、それともトラブルによるものなのか、とにかく今日の風太郎は、どこか様子がおかしい。

 

(だ……大丈夫ですよね……私たちは生徒と教師ですから……)

 

頭頂部のアホ毛をフニャらせながら心配する五月をよそに、風太郎はケースを開けてトランプを配り始めた。それに総介も彼の隣に座って参加をし、夕食まで暇を潰していった。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

時は流れ、部屋には旅館の豪華な食事が並んでいた。

 

「すげぇ!タッパーに入れて持ち帰りたい!」

 

「やめてください……」

 

「ここで貧乏症だすなよ……」

 

「なんだよ浅倉、テンション低いぞ!」

 

「お前が高すぎんだよ。俺ァ平常運転だコノヤロー」

 

「お、今のはバイクの免許とってるからそれにかけてるのか?うまいな!」

 

「めんどくせぇ。コイツの旅行のテンションめんどくせぇ。誰かコイツつまみ出してくれ。バニシングしてくれ」

 

風太郎の意味不明に高いテンションに、総介はもう完全にお手上げ状態という、珍しい構図が出来ている。

 

「こんなの食べちゃっていいのかなー、明日のカレーが見劣りしそうだよ」

 

四葉の言う明日のカレーとは、翌日の飯盒吹さんで作るカレーのことである。……おこげって美味しいよね?

 

「三玖、あんたの班のカレー楽しみにしてるわ」

 

「うるさい、この前練習したから」

 

二乃のからかいを三玖はムスッとした表情で返す。

 

「そういえば、スケジュール見てなかったかも」

 

一花の言葉を聞き、風太郎が即座に答えた。

 

「二日目の主なイベントは

10時オリエンテーリング

16時飯盒吹さん

20時肝試し

 

三日目は

10時から自由参加の登山、スキー、川釣り

そして夜はキャンプファイヤーだ」

 

「なんでフータロー君暗記してるの…?」

 

この前まで林間学校に乗り気じゃなかったり、しおりは読んでいないと言った時と同じ男とは思えない。まぁ、風太郎はしおりには付箋をはり、しわくちゃになるまで読み返しまくったのだから、覚えていて当然なのだが……天邪鬼にも程がある。

 

「あと、キャンプファイヤーの伝説の詳細がわかったんですけど」

 

「またその話か」

 

「あ、あー、あれね……」

 

四葉の言った伝説の話を聞き、一花は先日、三玖に入れ替わってもらい、ダンスパートナーとして三玖が多串君(前田)から誘いを受けてしまった件を思い出した。あの後、総介に恥辱的な『OSHIOKI(オシオキ)♡』をされ(性的なものでは無い)、後日ちゃんと本人が断りの返事をしにいったのは記憶に新しい。彼女はそれ以降、総介に対してだいぶ苦手意識を持つようになった。普段話す分は問題ないが、オイタをしでかした時が怖いと思うようになり、彼の前で調子に乗った発言は極力控えるようにしているのだ。

 

「関係ないわよ、そんな話したってしょうがないでしょ、どうせこの子たちに相手なんていないでしょ」

 

「私はソースケと踊ry」

 

「あーあー!聞こえない聞こえなーい!!」

 

食事をしながら二乃は三玖の言葉を大声で遮る。

 

「……二乃、誰からも誘われなかったんでしょ?」

 

「そっか、拗ねてるんだ」

 

「あんたたちねぇ……」

 

「そんな性格してたら男も寄って来ないわな」

 

「あんたは黙ってなさい!」

 

二乃がやたらと伝説の話を避ける理由を推察した三玖と四葉。それに冷やかしを入れる総介に、二乃は怒鳴り散らす。

 

「そういえば、ここ温泉あるって書いてたよ」

 

一花はパンフレットを見ながら言っていると、視線がある場所で止まった。

 

「……え、混浴?」

 

「「!」」

 

「「!!?」」

 

一花の言った一言に、三玖と四葉がピクっと反応し、二乃と五月は驚愕の表情を浮かべる。

 

「はぁ!?こいつらと部屋のみならずお風呂まで同じってこと!?」

 

「言語道断です!」

 

「なんで一緒に入る前提?」

 

2人の慌てふためく様子に、四葉が力なくツッコんだ。すると、テンションの上がった風太郎が、

 

「二乃……一緒に入るのが嫌だなんて心外だぜ……俺とお前は既に経験済みだろ〜?」

 

こんな事を言いやがるので、二乃は汗を流してガクガクと震える。おそらく、風呂上がりの二乃に遭遇したことを言ってるのか、風太郎が入浴中に二乃が入ってきたことを言ってるのか、両方か……

 

「二乃、ハレンチ」

 

「学生ながら不純だなまったく」

 

「あんたらに一番言われたくないわ!あんたも、わざと誤解招く言い方すんな!」

 

「ははは!いつものお返しだ!」

 

三玖の冷めたツッコミと総介の便乗、風太郎の変な言い方に二乃はツッコんでいく。普段ボケ倒してる総介だけでも大変なのに、ここに来て風太郎まで変なテンションで来られたら、二乃の負担も倍になってしまう。現に、ツッコンだあとの彼女は、息を荒げて呼吸している。誰か二乃に新八を派遣してあげてください……。

 

「あ、混浴じゃなくて温浴でした」

 

まぁそれも、一花の漢字の見誤りで収束したので、新八は必要なしとのことで………

 

 

 

 

「おいいいいいいい!!」

 

おや、どこからか聞き慣れたツッコミの声がしたような……

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

「今日の上杉(あいつ)、絶対おかしいわ」

 

そんな二乃の怪しむ一言も、夜空の星々まで届かずに消えてゆく。

姉妹は食事を終えた後、全員一緒に温泉に入っていた。無論、混浴ではないので、風太郎と総介はいないが……

 

「あー気持ちいい」

 

一花が伸びをして疲れをほぐす。

 

「みんなで一緒にお風呂に入るなんて何年ぶりでしょう」

 

五月は久々に5人で入る風呂に懐かしさを覚える。

 

「三玖のおっぱい大きくなったんじゃない?」

 

四葉は三玖の豊満な胸部を見て、もしやと思い尋ねてみる。

 

「みんな同じだから……多分……」

 

三玖はその答えに、何故か歯切れが悪くなってしまう。というのも……

 

 

「……もしかして、浅倉君に大きくしてもらっちゃったりして〜?」

 

「!?」

 

一花の一言で、三玖は湯に浸かって赤くなっていた顔が、さらに赤く染まっていく。彼女は、総介の家に泊まった日の夜のことを、姉のからかいで思い出してしまっていた。

 

「そ、それは……あうぅ……」

 

三玖は顔半分まで湯の中に沈め、ブクブクと泡を吐かせる。

 

「あ、あはは、本当だったみたい……」

 

「あ、み、三玖がだんだん沈んでいく!」

 

「は、破廉恥です!」

 

「………ギリっ!」

 

一花は三玖の反応を見て、顔を引きつらせて苦笑いをする。ある程度察してはいたのだが、三玖の反応で何があったのかを完全に知ってしまった。

顔半分どころか、全部沈みそうになる三玖を四葉が慌てて救出する。

五月もまだ、2人のこういった交際は不純だと思っているようだ。

そして二乃は、そんな様子を見ながら歯軋りをさせて、余計に総介への憎悪を募らせてゆく。

先日、彼から言われた『いつか5人はバラバラになる時が来る』という旨の話を聞き、彼女なりに少しは納得したかに思えたのだが、それでも三玖と総介が恋人同士で交際し、増してや2人が『体の関係』をも築いたことには、とてつもなく敏感に反応し、拒否反応を示した。

元は五つ子で、同じ顔、同じ体なのだから、三玖が体験したことがどうしても自分の体験のようにも思えてしまう。実際はそんなことはないのだが、まるで総介に自分の体をいじくり回されたような感覚を覚えて、気持ち悪さと彼への嫌悪がますます増えていった。と、そんな彼女の心情に気付いてはいないのか、四葉が別の話を切り出す。

 

「上杉さん、普段旅行とか行かないのかな?」

 

「まるで徹夜明けのテンションだったね」

 

四葉と復活した三玖が語るように、風太郎はその後もハイテンションのまま総介を温泉へと連れていった。

 

……………

 

『浅倉、温泉行くぞー!』

 

『はぁ……コイツの相手誰か代わってくれ……』

 

……………

 

「珍しくソースケがフータローに困ってた」

 

「あはは、そうだったね〜」

 

「………それなんだけどさ」

 

「「?」」

 

2人が会話をしていると、一花が割って入ってきた。そして、彼女の口から、そもそもの原点とも言える疑問が飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……浅倉君って、何者なんだろうね?」

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

一花が出した疑問に、誰も答えられなかった。それは、総介の恋人である三玖も例外ではなかった。と、沈黙の中、二乃が真っ先に口を開く。

 

「何者って………どういうことよ?」

 

「だって、初めて会った時にさ、私と五月ちゃんは隠れて見てたけど、二乃が私たちを大切に思ってくれてることを見抜いてたし」

 

「あ、あれは……」

 

「そのあとも、私たちのテストで、得意不得意がバラバラなのをすぐに見つけたり、三玖だけじゃなくて、私と四葉の勉強のこともちゃんと見てくれて、五月ちゃんを全く容赦なく叱ったり」

 

「…今思い出しても怖かったです」

 

「何より、『あの』お父さんが、浅倉君の説得で、浅倉君と三玖の交際や、家庭教師の件をフータロー君ごと認めたんだよ……これって、普通できる?」

 

「………それは」

 

「確かに………」

 

「浅倉君は、一体お父さんに何と言ったのでしょうか?」

 

「………」

 

それぞれが総介に対する疑問が出てくる中、三玖だけは、言葉を発さずに、下を向いたままだった。それを見た一花が、三玖へと話を振る。

 

「三玖、何か彼のこと知らない?」

 

そう言われた三玖は、顔をゆっくりと上げて答えた。

 

「……わからない……」

 

「三玖、浅倉さんの家泊まったとき、何か分かったことある?」

 

続いて四葉も聞いてくる。

 

「……料理が上手い」

 

「へぇ、アイツそんな特技あんのね……ま、あたしほどじゃないでしょ」

 

何故か二乃が反応して張り合ってくる。料理上手のプライドが刺激されたのだろうか?

 

「……一人暮らし」

 

「え?親と住んでないの?」

 

「……分からない……ソースケは、『過去なんてそう簡単に語るものじゃない』って言ってたから」

 

「はぁ!?アンタ、アイツのことなんも知らないで付き合ってんの!?」

 

「まぁまぁ、人間言いたくないことはあるもんだって」

 

「あとは……昔道場に通ってて、喧嘩が強い」

 

「ケンカ?浅倉さんケンカするの!?」

 

「……花火大会の時、悪い人達が10人くらいきて、ソースケに殴り掛かろうとしたけど、すぐに交わして、カウンターを決めて倒した」

 

「すごっ。二乃から聞いてたけど、三玖を抱えて逃げたって時だよね。浅倉君ってもしかして有段者なのかな?」

 

「……剣道やってたって」

 

「剣道、ですか……意外です」

 

「……カッコ良かった」

 

「いやそれアンタの感想じゃないの!」

 

「でも浅倉さん、三玖を守るヒーローみたいだね!」

 

「ヒーローは言い過ぎかもしれないけど、浅倉君は悪い人じゃないよね。私たちの面倒もなんだかんだで見てくれるし……ちょっと怖いけど」

 

「……正直、怖い人だと思いますが、彼が言ってることは的を射ていますので、逆らえません」

 

「人を中の人でイジッできたり、セクハラしまくりの奴だけど、三玖を守ってくれたことだけは感謝してる。それだけよ。他は全部嫌い」

 

「……ソースケは、優しいし、カッコいい。私を大事にしてくれる……大好き」

 

 

 

 

 

皆、それぞれ総介に対する印象を言い合うが、彼女たちは知る由もないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が世界最強の特殊部隊の一員で、その中でも指折りの実力を持つ侍であるということに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が、その手で何人もの人間を斬り殺してきた『修羅』だということに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、二乃が話を変え、部屋に布団が六枚しかないことを告げた。人数は一花、二乃、三玖、四葉、五月、風太郎、そして総介の7人であり、1人余りが出てしまう。それをどうするかの会議を、湯に浸かりながら始めた。とりあえず、現状で5人それぞれの意見が出る。

 

二乃「やっぱアイツらどっちも追い出しましょう」

 

四葉「それじゃかわいそうだよ!私が出るから、浅倉さんと上杉さんは布団で寝させよう!」

 

五月「それもダメです!上杉君と浅倉君には一緒の布団で寝てもらいます」

 

一花「う〜ん、私は五月ちゃんと同じかな。それが一番丸く収まるしね」

 

三玖「ソースケは私と一緒の布団で寝ry」

 

「はい!一花と五月の案で決まり!」

 

三玖の言葉を遮って、二乃が結論を出した。これ以上三玖に喋らせたらとんでもないことを言い出しそうなので、追い出せないのは残念だと思いながらも折衷案として五月の出した案で結論づけた。三玖は、自分の意見の途中で終わってしまったことで、プクーっと頬を膨らませながら二乃を睨む。かわいい。

 

そんなわけで、姉妹の会議により、風太郎と総介が一緒の布団で寝て、その隣に三玖が寝るというフォーメーションで話は決まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

一方、こちらは男子湯。

 

「………」

 

風太郎は、腰にタオルを巻いて湯に浸かりながら、総介の体をジロジロと見つめていた。

 

「……さっきからなんだよ、ジロジロ見やがって」

 

「い、いや……浅倉、すげーなって」

 

「何がだよ、ったく……」

 

風太郎が目を奪われるのも無理はなかった。更衣室で共に脱衣したとき、風太郎は総介の体を見て驚愕したのだ。

細身ではあるが、腕や足はしなやかではあるが、ちゃんと筋肉がついており、二の腕や太腿は隆起して、血管が浮き出ている。肩の筋肉もしっかりとついており、胸の筋肉も、太くはないががっしりとし、少し胸筋が前に出ている。極め付けは、見事に亀の甲羅の如く、6つに割れた腹筋。おそらくそこらの不良が一発本気で殴っても、ビクともしないだろう。

この体つきに、180cm以上ある長身も手伝って、総介は一流アスリート並みの肉体美を持っていた。

 

 

そら、まあ、これは剣術をはじめとした護身術の道場や、『刀』で鍛えた努力の賜物であり、本人も、この肉体を崩さない程度の努力は日々行なっている。いつまた、『鬼童』として任務に復帰しても支障がないように……

 

そんな『究極の細マッチョ』とも言える肉体を目の前で見せられたのだから、風太郎が釘付けになってしまうのも当然である。

 

とまぁ、2人は特段変わった会話をする事なく入浴を終えたため、女子どもとは違い、30分ちょっとで風呂から上がり、部屋へと戻った。すると、ここで風太郎の様子に異変が出てくる。

 

「いやぁ……いい湯だったぜ……」

 

「お前大丈夫かよ?フラッフラだぞオイ」

 

「……すまん浅倉……先寝るわ」

 

どうやら、限界が訪れたらしい。風太郎は先に1人端の布団へと入って、夢の世界へと旅立っていった。

 

「………」

 

その様子を見た総介は、頭の中で今日一日の風太郎のテンションが終始高かった答えを、ある程度予想していた。

 

「………なんだかんだで、俺らの中で一番楽しみだった林間学校に、妹の看病での徹夜……そらおかしくなるわな」

 

風太郎の寝顔を見ながら、総介は口角を上げて微笑む。

 

「……無理しやがって………

 

 

 

 

 

 

しっかり休みやがれ、コノヤロー」

 

その数分後に五つ子が部屋へと戻ってきて、彼女たちから就寝の配置を聞いた総介は、消灯とともに、風太郎の布団に入り、目を閉じるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、一花が目覚めると、何故かその横には風太郎がいた。

 

「んー……

 

 

 

 

 

!」

 

横に寝返りをうった拍子に、目が覚めた一花。その視線の先には、何故か風太郎。

 

「フータロー君……なんで…」

 

一花は何故彼が横にいるのか、それは彼女が周りの状況を見て知ることとなる。

 

「って、はははっ……みんなめちゃくちゃ」

 

皆、布団から出てバラバラな場所で就寝していたのだ。って、子供がお前ら……と、一花はここである違和感に気づく。

 

「……あれ、五月ちゃん?……三玖に、浅倉君もいない……」

 

五月、三玖、そして総介の姿が無いのだ。と、ここで、もう一つの違和感が視界に入る。それは、ある一つの布団だった。そのひとつだけ、ちゃんと布団の中に入っている人物がいた。しかも、その布団の配置で寝ていた人物を思い出し、一花は冷や汗を流しだす。

 

「……三玖……まさかね……でも……」

 

その布団に、三玖が寝ているはずの布団だった。そしてその布団は今、三玖が入っているには明らかに膨らみが大きい。つまり……

 

 

 

 

 

 

 

「………よし」

 

一花は意を決して、その布団をめくることにした。頭まで被って、何も見えない布団を、恐る恐る剥がしていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

すると中には………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やっぱりねーーーーーーーーーーーー!!!!!)

 

 

その中を見て、一花は予想していた事態に、心の中とはいえ、大きな声でシャウトした。

布団の中には、安らかな表情で眠る総介と三玖が、互いに絶対に離すものかと言わんばかりに、がっしりと抱き合いながら眠っていた。両者共に浴衣をちゃんと着ているため、『そういった行為』は行われていないようだが、2人の顔は、鼻先がチョン、と当たるほど近づいており、今にもキスしそうなほどの距離にあった。

 

実を言うと、この2人は寝相が悪くてこうなったわけでは無い。それは、昨晩消灯してしばらく経った後のこと……

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

消灯してからしばらく経ったその時、総介の肩をつつく感覚を感じた。

 

「(ソースケ、ソースケ、起きてる?)」

 

「(……起きてる)」

 

「(よかった)」

 

声にならないほどの小さな声だったが、総介にはそれが三玖の声だとすぐにわかった。

 

「(どうしたの?)」

 

「(………あのね……)」

 

三玖は暗闇の中、もじもじとしながら、総介へと顔を近づけて告げた。

 

「(……私の布団、来る?)」

 

その言葉に、総介の心臓が飛び跳ねる。

 

「(……いいの?)」

 

「(うん、もうみんな、寝ちゃったから、大丈夫)」

 

「(……じゃあ)」

 

三玖が他の全員寝たことを確認したと聞いた総介は、風太郎の布団から隣の三玖の布団へと移動して、一緒に掛け布団を被って横になった。

 

「(……ソースケ)」

 

「(み、三玖……)」

 

三玖は、総介と一緒の布団に入った瞬間に、背中に手を回して抱きついた。総介も、初めは戸惑ったが、やがて心を落ち着かせて、三玖の背中に手を回す。やがて、2人は互いに想いを打ち明け合う。

 

「(私ね、こうしてソースケと一緒になれて、嬉しい)」

 

「(俺もだよ、三玖。こうやって一緒になれるなら、こんなトラブルも有りかなって思えてきたよ)」

 

「(ふふっ、フータローに感謝しなくちゃね)」

 

「(……まぁ、こうなったのも間接的とはいえ、上杉が原因になるか……)」

 

そこまで話を続けて、三玖は暗闇に目が慣れてきたのか、ソースケと目を合わせて、うっとりとした表情で見つめる。

 

「(……ソースケ……)」

 

「(三玖………)」

 

自然と2人の顔が近づいていき、やがて唇が重なった。数秒、重ね合うだけのキスをしてら顔を離して見つめ合う。

 

「(……好き、ソースケ。大好き)」

 

「(俺もだよ、三玖。愛してる)」

 

愛の言葉を交わし合い、2人は再び唇を重ねた。

 

「……ん……んっ」

 

「んっ……んん」

 

流石にリップ音が激しい濃厚な口づけはできないので、重ねたり、啄み合うキスをして、2人きりの時間を堪能する。やがて、唇が離れて、互いに鼻先がくっ付くほどの距離で会話が始まる。

 

「(ふふっ、すごくドキドキする)」

 

「(さすがにね、バレたらやばいし……)」

 

「(バレてもいい。私たち、恋人同士なんだから)」

 

「(いや、そうなんだけど……)」

 

総介は少し周りを気にしながらも、三玖を抱きしめた腕を一切緩めようとはしなかった。彼も彼で、三玖と一緒に入れる時間が嬉しいのだ。すると三玖が、総介の耳元で悪魔ならぬ天使の囁きをしてきた。

 

「(このまま一緒に寝よう?)」

 

「(このまま?大丈夫なの?)」

 

「(浴衣着たままだから、エッチしたとは思われない。抱き合うだけならセーフ)」

 

「(あのヒス女的にはアウトなんだけどな……)」

 

「(……二乃は関係ない)」

 

二乃のことを出したのが少しふまんだったのが、三玖は少し頬を膨らませて抗議する。かわいい。

 

「(……そうだね。このまま寝よっか)」

 

「(!……うん!)」

 

総介が承認したことで、三玖の機嫌が一気に良くなる。総介も、三玖の当たる乳房や、太腿の感触に、理性が飛びそうになるが、今ここに他のメンツがいることと、林間学校が終わってから三玖と再び『お楽しみ』をする事を頭の中で計画して、この場は我慢をすることにした。第一、三玖とこうして抱き合って寝れるだけでも幸せなので、彼の心は既に十二分に満たされているのだが……

 

その後も、抱き合ってキスをしながら過ごした後、互いに眠気がやってきて、そのまま寝ることにした。

 

「(おやすみ、三玖。愛してるよ)」

 

「(おやすみ、ソースケ。愛してる)」

 

もはや恋人というより、夫婦のような就寝の言葉を掛け合って、その日最後のキスを交わした総介と三玖は、抱き合いながら夢の世界へと落ちていったのだった……

 

 

 

 

 

総介大爆発しろ!!

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、そんな夜があって、一花が見ているのは今この三玖と総介が抱き合って寝ている状態である。

 

「………どうしよう……起こした方がいいよね?」

 

この2人を起こすのは億劫だが、やがて全員起きてしまう。しかもこの状態を二乃に見つかったら、どうなってしまうのか、それは一花には想像に難くないことだった。

意を決して、一花は2人を起こそうしたが、2人の顔を覗き込んだ時に、見てしまったのだ。

 

 

 

 

 

「んん……そーすけ」

 

「………!!!!」

 

 

 

 

三玖が、あまりにも幸せそうな顔をして、愛する人の名前を呼ぶ。一花は、その幸福に包まれたような妹の顔を見て、茫然としてしまった。

 

「………三玖……」

 

今まで、三玖のこんな顔を見たことがあっただろうか。あのあまり人の前に出ない三玖が、愛する男の人に抱きしめられて、安らかに、そして幸せな表情を見たことがあっただろうか……いや、三玖だけではない。他の姉妹で、こんな幸せに微笑む顔を、している子はいただろうか?

 

 

 

「………五等分」

 

 

 

花火大会の日、五月が言ってた『お母さんの言葉』。

 

 

 

 

『誰かの失敗は、5人で乗り越えること。誰かの幸せは、5人で分かち合うこと』

 

 

 

 

『喜びも、悲しみも、怒りも、慈しみも、私たち全員で、五等分』

 

 

 

 

昔、お母さんはそう言った。でもこれは……浅倉君は、三玖だけの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この三玖の幸せは………私たち4人も分かち合うモノなの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は……」

 

この時。一花の心の中で何かに亀裂が生じた。ほんの、ほんの小さな亀裂だったのかもしれない。しかし、亀裂はいずれ、大きなものとなり、終いには割れてしまう。それがいつになることか、明日か、10年後か…確かなことは、今、一花の中で、何かの崩壊が始まろうとしていたことだった。

 

 

と、その時、部屋のドアが開いた。

 

 

 

「もう朝ですよ。朝食は食堂で」

 

「い、五月ちゃん!?」

 

外から五月が入ってきた。一花は咄嗟に、2人に布団を隠した。

 

「一花、起きてたんですね」

 

「あ、あはは、おはよう、五月ちゃん」

 

一花は目を右往左往させながら末っ子に朝の挨拶をする。そんな長女に、五月は違和感を覚えた。

 

「?どうしたんですか?」

 

五月がそう聞いた瞬間、彼女の後ろから声がした。

 

「中野、ここで何やってるんだ?」

 

「えっ?」

 

振り向くとそこには、

 

「先生……?」

 

ハゲとゴリラとメガネの先生たちがいた(超失礼)。

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

『例年より早い猛吹雪で足踏みしてしまいましたが、1組の皆さんが揃ったということで、今日こそ楽しい林間学校にしましょう!』

 

そうバスガイドさんのアナウンスで、バスは目的地へと向かっていた。バスの中には、風太郎と五月のクラスメイトである1組の生徒たちがいた。

 

「まさかこいつらも同じ旅館で泊まってたなんてな、よく会わなかったもんだ」

 

「そうですね。びっくりしました」

 

1組のバスも、猛吹雪により、急遽風太郎たちが泊まった旅館へと泊まっていたのだ。クラスは違うが、総介、三玖、一花、二乃、四葉も、同じバスで目的地まで乗せてもらうことになった。

 

「はい、ソースケ」

 

「ありがとう、三玖」

 

「あ、三玖!私にもアメちょうだい!」

 

「はい」

 

「ありがとう!」

 

「あ、四葉、その味アタシ欲しかったのに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

三玖があげたアメを舐める中、一花は1人スマホの画面をじっと見ていた。画面には、このような一文が見え隠れしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『女優業に専念』

 

 

 

『休学も選択肢の一つ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、林間学校の1日目が終わり、2日目が始まった。

 




どうやら原作は『彼女』で決まるようですね。
良かった。でも油断できない。ちゃんと決まるまでは予備プランも考えとかなきゃ……



今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!

次回、カレー作りと肝試し!そしてついに……
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