世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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いやぁ、もうこの小説書き出してから7ヶ月以上ですか……よく飽きずにやってるな自分……




というわけで、ついに『2人』が出逢っちゃいます。


37.人生とはオールタイムで肝試し

林間学校2日目、夕刻。

 

生徒達は、16時の飯盒吹さんで、カレーを作るスケジュールである。生徒は各自、班での役割を全うして、それぞれのカレー作りへと勤しんでいた。それは、風太郎や五つ子はもちろん、総介や海斗も同じである。

 

「じゃあ、私たちでカレー作るから、男子は飯盒吹さんよろしくね」

 

「うーい」

 

ここの班では、料理が得意な二乃の指示のもとで、カレー作りは進んでいた。彼女はその女子力の高さを遺憾なく発揮して、トントン拍子で食材を捌いていく。

 

「わっ、二乃野菜切るの速っ」

 

「家事やってるだけのことはあるね」

 

「これくらい楽勝よ」

 

彼女の手際の良さに、班の女子は感心し、二乃はドヤ顔で返す。

 

(ついに始まったわね、林間学校)

 

まぁもう一日過ぎてるんですけどね……

 

(あの子たち、うまくやれてるかしら)

 

二乃は、食材を切る傍ら、他の姉妹たちの心配をしていた。

 

てなわけで、他の姉妹たちがどうなっているのか、見ていきましょか……

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「これ、もう使った?片付けておくね」

 

「は、はい」

 

一花の気遣いたっぷりの振る舞いに、男子どもは彼女に釘付けになってしまう。

 

「中野さん、美人で気が利いて、完璧超人かよ」

 

「俺の部屋も片付けてほしいぜ」

 

自分の部屋もろくに片付けられない彼女に、片付けられる部屋など存在するのだろうか……

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

一方、四葉はまさかりを大きく振りかぶって、薪を割っていた。のだが……

 

「いや、もう薪割らなくていいから!」

 

「あはは、これ楽しいですね」

 

四葉の横には、山盛りの割られた薪が置かれていた。一体どんだけ燃やすつもりなのだろうか……

 

「これ、もらってくぞ〜」

 

「はーい、どうぞ!」

 

割りすぎた薪は、他の班の人に持っていかれたそうな……

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、五月は……

 

「そろそろ煮込めてきたかな」

 

「待ってください、あと3秒で15分です」

 

「細かすぎない……?」

 

この子は食に対するこだわりが、いささか強すぎではないだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

んで、最後、問題の三玖はというと……

 

「三玖ちゃん!何入れようとしてるの⁈」

 

「お味噌、隠し味」

 

「自分のだけにして!」

 

 

 

………これはちゃんと総介に料理教わった方がいいな………

 

無論、毒味役は総介で。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

んで、その我らが総介は……

 

 

 

ザクッザクッ……

 

トントントントン……

 

「…………」

 

「大門寺君、食材切り終わったよ」

 

「ああ、ありがとう。じゃあ、お鍋に入れて煮詰めようか」

 

「う、うん、じゃあ釜に薪入れて火焚けるね(かっこいい)」

 

「大門寺くーん、お米ってこれくらいの量でいいかな〜?」

 

「どれどれ……うん、これでもいいけど、もう少し多くてもいいんじゃないかな?」

 

「わかった。じゃあ、もう少し増やすね」

 

「うん、よろしくね」

 

「は、はい(かっこいい)」

 

「大門寺くーん」

 

「大門寺君」

 

「海斗様〜♡」

 

「大門寺殿!」

 

「大門寺さん!」

 

「大門寺氏ー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

女子達は全員、海斗へと寄ってたかっており、総介に話しかける者はほとんどおらず、彼は1人、黙々と四葉からもらった薪を火の中にぶち込む作業をしていた。

 

 

割といつも通りである……

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

そのころ、風太郎は、飯盒吹さんのご飯の具合を見にきた時に、先日トラブルのあった『多串君(前田)』に遭遇し、絡まれるが適当に受け流し、最終的には愚痴を聞かされる始末。早くカレーできないかな、とうんざりしていた時、少し離れたところで何やら言い争いのする声が聞こえてきた。

 

「なんでご飯焦がしてんのよ!」

 

見たところ、女子がご飯を焦がしてしまった男子に怒っているようだ。そしてその生徒たちは、二乃と同じ班の生徒達だった。

 

「どーせほったらかしにして遊んでたんでしょ!」

 

「ち、ちげーよ、少し焦げたけど食えるだろ!」

 

「こっちは最高のカレー作ったのに!」

 

ここで、坊主頭の男子が、やけくそに大声で喚く。

 

「やったことねーんだから誰だってこうなるんだよ!」

 

「なっ……」

 

男子の開き直りに、驚いて固まってしまう女子達。だが、その沈黙を1人の人物が破る。

 

「……そうかもしれません。ですが、そのように自身の失敗を棚に上げていい理由にはなりませんよ」

 

その一言を発したのは、金髪の地毛を左側のサイドテールでまとめた碧眼の女子だった。

 

「わ、渡辺さん……」

 

「アイナ……」

 

その女子、『渡辺アイナ』は表情を一切崩さず、物腰も柔らかいまま言い争いをしている双方へと話しかける。

 

「失敗してしまうことは、必ずしも悪いということではありませんが、それを一切悪びれもせずに他の何かに責任を押し付けるのは、良いことではありません。……それに、失敗した理由を勝手に決め付けるのもいけないですよ?」

 

「そ、それは……」

 

「………」

 

「……まだ時間はあります。もう一度、炊き直しましょう。予備のお米を先生から貰ってきますから……二乃、それでよろしいですね?」

 

「……はぁ。ええ、それでいいわ」

 

アイナは後ろにいた二乃へと振り向いて確認をとる。彼女は不機嫌な顔でため息をつきながらも、アイナの提案を受け入れた。

 

 

「……すげーな」

 

その様子を遠目で見ていた風太郎は、アイナの立ち振る舞いに感心していた。

言い争いをする男女の双方を鎮静化し、その原因の解決まで一人ですみやかに持っていった。さらには、顔を見れば、かなり不機嫌な様子の二乃を、二つ返事で納得させたのだ。よほど皆が彼女のことを信頼しているのだろう。

 

「結構頭きてたはずの二乃を……本当にすげーな」

 

「そうか?」

 

と、ここで前田が風太郎の独り言に返してくる。

 

「それでだ……どうやったら彼女が作れるか……」

 

「まだ続いてた!」

 

先程が続いてた愚痴がまた始まるのはごめんなのでと、風太郎は話を切ることにした。

 

「勘弁してくれ。他人の世話焼いてる場合じゃないんだ。

俺は今夜の肝試しをやりくりしなきゃいけない……

 

 

これだけが嫌だったんだよなぁ……」

 

そうため息をつこうとした時だった。

 

「上杉さん!肝試しの道具、運んじゃいますね」

 

そう声をかけられた風太郎は横を見ると、◯の中に肝という字が書かれた段ボール箱を持つ四葉が立っていた。

 

「四葉……お前、キャンプファイヤーの係だったろ?」

 

「はい!でも、上杉さん一人じゃ無理だと思って、クラスの友達にも声かけました。

 

 

 

 

勉強星人の上杉さんがせっかく林間学校に来てくれたんです。私も全力でサポートします!」

 

「………」

 

四葉の言葉に、風太郎は少しの間黙り込み、やがて立ち上がる。

 

「よし、『多串君』、俺の班の飯の世話もしててくれ」

 

「俺は前田だっつてんだろーが!命令してんじゃねーよ!つーか、俺の話の続きは⁈」

 

「肝試しは自由参加だ。クラスの女子でも誘って来てみろ」

 

四葉から荷物を受け取りながら、風太郎は振り向いて彼に向かっていやらしい笑みを浮かべる。そして、

 

 

 

 

 

 

 

「ただし。こっちも本気でいくからビビんじゃねーぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は経ち、夜がやってきた……

 

 

 

 

 

 

 

「このように!!!」

 

「ひぃ!!」

 

「うわぁぁあ!!!」

 

肝試しの時間となり、金髪のカツラを被り、道化師の仮面をつけてカラフルな衣装を着た風太郎は、突然茂みから現れてはコースを通る生徒たちを脅かしていた。先程の多串君(前田)も例外ではなく、ペアの女子と共に驚いて逃げていった。

 

「くくく……」

 

「絶好調ですね。ジャケットどうぞ!」

 

隣では、顔や体に包帯を巻いた四葉が風太郎にジャケットを渡す。

 

「私、嬉しいです。いつも死んだ目をした上杉さんの目に生気を感じます」

 

「そうか、蘇れて何よりだよ」

 

なんかそれはそれで失礼な気もするが………

ていうか、身近にもう1人、死んだ魚のような目をした男がいるし……

 

「……もしかしたら、来てくれないと思っちゃったから……」

 

四葉は地面に指で渦巻きを描きながら、言葉を続けた。そして……

 

 

 

 

 

「後悔のない林間学校にしましょうね」

 

 

 

 

 

ししし、と風太郎に向けて笑う顔を見せる四葉。

 

「………」

 

その様子を見た風太郎は、夕方と同じように黙り込む。と、そんな2人の後ろに、何やら怪しい影が迫っていた。

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しそうなことやってんじゃね〜か〜、え〜?」

 

 

 

 

「うわぁぁあ!!」

 

「キャアァァア!!」

 

風太郎と四葉の2人は、突然後ろからかけられた声に驚き、飛び上がってしまう。何だと思い、立ったまま後ろへと振り向くと、そこには黒いパーカーに黒縁眼鏡、死んだ魚の目をした男が、しゃがみながらこちらに不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

ていうか……

 

 

 

「あ、浅倉!?」

 

「浅倉さん!?どうしてここに?」

 

総介だった。彼はいつもの服装に、手には何かが入った紙袋を持っていた。そして何故彼がここにいるのかというと……

 

「なぁに、肝試し自体には興味はねぇが、俺ァ他人の泣き叫んで逃げ惑う様が大好きでね。夕方のストレス発散がてら、俺も参戦して、来る連中を恐怖のどん底に落として回ろうと思ってな。んで今日はそんな連中の悲鳴を肴にぐっすりと寝る予定だ」

 

「うわぁ、筋金入りのクズ人間ですね」

 

「まさに外道だな」

 

四葉と風太郎のトゲのある言葉が炸裂するが、総介は全く気には留めていない。と、風太郎が彼に尋ねる。

 

「しかし、本当にできるのか?」

 

「ま、論より証拠だ。見てろ、今にお前ら以上の悲鳴を聞かせてやっからよ………そら、来やがった」

 

 

そう言った総介が指を差すと、その先には、人影が2つと、ライトが一つ点いていた。風太郎と四葉のふたりは、総介の脅かし方がどれ程のものか見極める為に、一旦茂みへと隠れる。そして総介は、近づいてきた人影に向かって、紙袋から何かを取り出して、人影の方へと向かい、そして、ライトを照らして叫んだ。2人が見守る中、果たして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マヨネーズが足りましたぁぁぁあああ!!!!!

 

 

総介は手に上がマヨネーズまみれの焼きそば(食品サンプル)を持ちながら、2人の人影へと迫って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャッ!………って、浅倉君!?」

 

 

「………何やってるの、ソースケ?」

 

 

 

 

 

「……………(´・ω・`)」

 

 

ぜぇ〜んぜぇん怖がってくれませんでした。ていうか、この2人おもっくそ知り合いでした。ていうかていうか、そのうちの1人は恋人でした。

 

 

 

 

 

 

 

テヘッ(≧∀≦)☆

 

 

 

 

 

「っておいいいいいい!!!全然驚かせてねぇじゃねーか!!何だよマヨネーズ足りましたって!!?」

 

「あ、あはは、私は元ネタ知ってますので、何とも……」

 

茂みから、2人が現れる。四葉はそのままだが、風太郎はカツラをかぶっただけで、仮面は外している。

 

「あ、フータロー君に四葉まで!」

 

「そこに隠れてたんだ……」

 

一花と三玖は全く驚く様子もなく、そのまま5人は少しの間談笑するのだった。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「じゃあ2人とも、看板が出てるからわかると思うが、この先は崖で危ない。ルート通りに進めよ」

 

「オッケー」

 

「気をつける」

 

風太郎の注意を受けた一花と三玖は、そのまま先へ進もうとする。すると、三玖を総介が呼び止める。

 

「三玖」

 

「?どうしたの、ソースケ?」

 

三玖は自然と彼の近くまで寄り、話を聞こうとする。総介は、すぐそばまで来た彼女に、自身のスマホを見せる。

 

「何かあったらいつでも連絡してね。すぐに駆けつけるから」

 

「……わかった。ありがとう、ソースケ」

 

三玖が礼を言うと、総介が三玖の方へと頭を下げて、2人は互いの額をコツンと合わせる。

 

「無事でね」

 

「うん。ソースケもね」

 

顔を触れそうなほど近づけて、言葉を交わして微笑み合う2人を、風太郎と四葉は頬を赤くさせながら見ていた。

 

「三玖……もぉ……」

 

「アイツら、本当に遠慮を知らないよな……」

 

 

 

 

「………」

 

一方の一花は、2人を見ながらなんとも言えない複雑な表情をしていた。

 

 

「じゃあ、行くね」

 

「うん」

 

三玖は惜しみながらも、徐々に離れていき、総介手を控えめに振りながら一花と一緒に先に進んで行った。

 

「………うし、今のはウォーミングアップだ。次からは容赦しねーぞ」

 

「いやマヨネーズのどこが容赦しねーんだよ?てか何なんだよそれ?」

 

風太郎は総介が手に持っているマヨネーズのかかりまくった焼きそばを指を差しながら、

 

「焼きそば土方スペシャルだ。生憎だが食品サンプルだけどな」

 

「いやこれのどこが焼きそばだよ!もうこれ焼きそばじゃねえーよ!黄色いヤツだよ!」

 

花火大会に続いて、土方スペシャルに突っ込む風太郎。コイツ意外と好きそうなんじゃね?と作者は思ったような思わなかったような……

 

「上杉さん、コレは『銀魂』に出てくる真選組の副長『土方十四郎』さんがよく食べているんです。彼は極度のマヨラーなんで、実はこの量じゃ足りないんです。ですがさっき浅倉さんが『足りました』って言ったのは、アニメでの最後のおまけシーンでマヨネーズが足りた時に言ったオリジナルのセリフなんですよ!」

 

「どうでもいい情報をありがとよ!」

 

風太郎は『銀魂』を見たことが無いので、彼にとっては本当にどうでもいいムダ知識、トリビアである。ていうか、マガジン連載の主人公が『ジャンプ』作品読んでたらそれはそれで問題だけどね……

 

「さて、次の生贄(きゃく)のために準備すっぞ〜」

 

「今生贄っつったよな?言い方は『きゃく』だったけど、文字は『生贄』だったよな?」

 

「こまけーこと気にすんなよ上杉。3日目に熱出してぶっ倒れんぞ?」

 

「いやネタバレしてんじゃねーよ!!」

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

そして、次の生贄(きゃく)がやって来た……

 

 

 

 

 

「うううう………やはり参加するんじゃありませんでした……」

 

「ちょっと、離れなさい」

 

五月はオバケの類は苦手のため、二乃にしがみつきながら歩いている。彼女も注意はしながらも、無理やりは引き剥がそうとはしない。

 

「クラスメイトが言ってたのですが、この森は出るらしいのです。森に入ったきり、行方知らずになった人が何人もいるのだとか」

 

「デマに決まってるじゃない。伝説もそうだけど、信憑性がなさ過ぎるわ」

 

2人がそう話をしながら歩く道の途中には、いかにも手作り感満載の赤い舌を出したちょうちんがあった。

 

「こんなチープなおもちゃで誰が驚くのよ」

 

2人は矢印のマークを頼りに、先へと進んでいく。

 

「はぁ……林間学校ってもっと楽しいと思ってたんだけどなぁ」

 

「?まだ始まったばかりじゃないですか」

 

五月は怯えながらも、二乃の言葉に疑問を感じた。

 

「始まりから躓いてたでしょ!昨日のこと、忘れたとは言わせないわよ」

 

「まぁ……それは……」

 

昨日のこと、すなわち、風太郎を迎えるためにバスに乗るのを見送り、雪の中で立ち往生。近くの旅館で嫌いな男ども2人と一緒の部屋で寝るという事態にまで発展したことを二乃は言ってるのだろう。そして、彼女の不機嫌の最大の原因は間違いなく総介の存在である。

 

「『何もなかった』から良かったものを……」

 

「……まぁそうですけど」

 

まあ実際は総介と三玖がチュッチュしながら抱き合って添い寝したんスけどね(笑)

多分コレ二乃に言ったら発狂しちゃうよね?そうだよね?

 

 

 

 

 

 

 

と、突然、近くの茂みがガサガサと揺れる。

 

「な、何ですか!?」

 

「ど、どうせタヌキとかそんなんでしょ?」

 

身構える2人の前に現れたのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マヨネーズが足りないんだけどおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあああああ!!!!!もう嫌ですぅぅぅぅ!!!!!」

 

「!!五月、待ちなさい!!」

 

総介が物凄い形相で飛び出した瞬間、五月は二乃を置いて一目散に逃げ出して行った。二乃は慌ててそれを追い、やがて2人は見えなくなった。

 

 

 

 

「………どんだけ怖がりなんだよ」

 

「本当に苦手だったのか……」

 

「五月、マヨネーズで逃げちゃいました……」

 

2人が離れていく様子を見ていた3人だったが、ここで風太郎がふと気づいた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ………?

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつら……どっちに行った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、こちらは一花、三玖のペア

 

「三玖、せっかく浅倉君に会えたんだから、もうすこしいたらよかったのに……」

 

「大丈夫……今は、あれで十分だから」

 

一花の心配をよそに、三玖は頬を赤く染めながら口の角が上がりっぱなしだった。

当初は、総介とはそれなりに会えなくなることも覚悟していたのだが、蓋を開けてみると、トラブルで一緒の布団で夜を明かし、つい先ほどの肝試しでも出会えたのだ。思ったよりも、多く彼の顔を見ている。それはさも自分の恋人が近くにいてくれるような気分だ。うん、総介は爆発しろ。

と。ここで、一花が、とんでもないことを言い出した。

 

「………浅倉君と抱き合って寝てたもんね」

 

「!!?」

 

一花の不意に発した一言に、三玖は一気に顔中が赤くなってゆく。なぜ彼女がそれを知っているのかという表情だ。

 

「……み、見たの?」

 

「うん、浅倉君を起こしたの、私だから……」

 

あの時、先生が五月と話をしている隙に、一花は総介を先に起こした。彼の方を先に起こせば、大きなトラブルにはならないだろうと思い、総介の肩を叩いて先に目覚めさせた。すると、案の定彼は、何もなかったかの様子であくびをしながら「おはよ〜さん」と挨拶をし、横で寝ている三玖を起こしたのだ。その間、彼は一切そのことを恥ずかしがったり、抱き合って寝たのを見られたということを一つも気にせず、あたかも自然なことのように振る舞っていた。……やっぱ総介爆発しろ。

 

「大丈夫、私以外は誰も見てないし、他のみんなには言ってないから」

 

「……そう」

 

三玖は少しホッとする。もしも二乃か五月に最初に見つかっていたなら、彼女らは大声で叫んだり、総介を糾弾してややこしい事態になっていただろう。ましてや偶然とはいえ、他の生徒や先生が同じ旅館で泊まっていたので、あんな状況を見つかってしまえば、どうなっていたことか……あまり想像はしたくない。もっとも、総介からすればそんなこと気にするような事でもないのだが……

 

「……ねぇ、三玖」

 

一花はその場で立ち止まり、少し先を行く三玖の方を向きながら話しかける。三玖も、彼女がその場で止まったことで、数歩先で歩みを止める。

 

「どうしたの、一花?」

 

 

そして一花は、朝から心の中にあるしこりを解消するため、三玖へと聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして浅倉君を好きになったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わり………

 

 

 

「五月ー、どこ行ったのよー」

 

案の定二乃と五月の2人は、看板の矢印とは違う方向へと行ってしまい、二乃はどこかへと走り去ってしまった五月を探していた。スマホのライトを照らしながら、周りを見て彼女を捜索する。

 

「こっちで合ってんのかしら?一旦戻ろうかな……」

 

と、その時……

 

「えっ?」

 

フッと、突然スマホのライトが消えた。

 

「嘘っもう!?昨日充電するの忘れてたかも……」

 

いかにもなタイミングでライトが消えるとは、何のホラー作品だろうか……ちなみにパニックホラーの場合、いきなりライトが消えるのは大抵は死亡フラグです。

 

 

「……なんなのよ……せっかくの林間学校なのに……

 

 

 

 

 

 

あんな奴らと同じ部屋に泊まらされるし、

 

 

 

 

 

 

班の男子は言うこと聞かないし……まぁアイナがなんとかしてくれたけど……

 

 

 

 

 

 

しまいにはこんな所で一人に……」

 

 

二乃がぶつくさと愚痴をこぼしていると、突然風が吹き出し、あたりの草木がザァァァっと音を立てて揺れだす。そして彼女が周りを見渡す先には、何もない暗闇の世界が広がっていた。

 

 

「…………」

 

 

それを実感し、そのまま茫然と立ち尽くす二乃。すると、後ろの方から突然『ザッ』という物音がした。

 

 

「いやっ!」

 

彼女は思わず反射で驚いてしまい、その場に蹲ってしまう。

 

「……最悪」

 

彼女の機嫌は、今や最底辺へと落ちていた。

 

 

 

 

思えば、今の学校に転校してから、嫌なことだらけだった。

 

 

アイナや他の友人に出会えたことはともかくとして、転校してすぐに同級生のストーカーもどきが家庭教師とか言って家に上がりにくるし、

 

 

その自称家庭教師が連れてきた見た目陰キャの助っ人には、終始主導権を握られてイジられまくるし、

 

 

 

何より、姉妹の一人がその見た目陰キャの助っ人と仲良くなって、最終的には恋人同士で交際して、不確定ではあるが、『体の関係』を持ったことを匂わせるし、

 

 

 

それでも、チャンスはあった。テストで赤点を取れば、あの2人は目の前からいなくなるチャンスが。

 

 

 

それも、義父に何を吹き込んだのか知らないが、全ておじゃんになるし、妹カップルは余計にイチャイチャしだすし………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『変わらねぇ日常が永遠に続くと思ったか?』

 

 

 

 

 

『いずれお前らは、バラバラになる時が来る。その時お前はどうするんだ?』

 

 

 

 

 

 

『どうしようもねぇ時は、受け入れていくしかねぇんだよ。それが人生ってやつだ』

 

 

 

 

 

 

『まだ分からんでもいいさ。いずれ分かるときがくらぁ』

 

 

 

 

 

 

「………ッッッ!!!」

 

 

思い出すのは、一番嫌いな男の言葉。

 

 

 

「……何なのよ……一体………」

 

 

二乃が、その場で大きな声で同じことを叫ぼうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

突然後ろから声をかけられた。それに振り向くと、1人の男がいた。

 

 

 

 

 

 

それは、金髪の髪をした、どこかで見たことのある少年

 

 

 

 

 

 

 

 

写真で見たことのある、あの時の少年が大きくなった少年

 

 

 

 

 

 

 

 

ていうか、金髪のカツラをかぶった風太郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇の中ですら、光を放っているのかというほどに、星のようにきらめく銀髪(・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他の男とは比べものにならないほどの高い身長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とても落ち着いた大人のような雰囲気

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして何より、10人中10人の女性たちが、道ですれ違ったら振り向き、話しかけようとするほどの美貌を持った顔立ち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな男が、二乃の前にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが、『大門寺海斗』と『中野二乃』の突然すぎる出会いであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボキッ!

 

 

「………あっ」

 

「どうしたんだ浅倉?二乃か五月がいたのか?」

 

「………すまん、上杉」

 

「………は?」

 

「今、とんでもないフラグの折れる音がした」

 

「何言ってんだお前」

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、出逢っちゃいました。予想していた方も多いのではないでしょうか?
何故海斗がここにいるのか、それは次回明らかになります。

できれば今年中にもう1話仕上げたいです。

今回もこんな駄文を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
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