そういえば、この前『この作品が低評価の数が多くなり過ぎて話の続きが投稿できなくなる夢』を見ました。めっちゃビビりました。自己満足でやってる小説なのですが、アレは本当にこたえました。
なのでお願いです。もし本当に面白いと思ってくだされば、高評価ならびにお気に入り登録よろしくお願いします!
めっちゃあの夢怖かったんです!マジで!
『完全無欠』
この言葉ほど、大門寺海斗に相応しい言葉は無いだろう。
日本だけではなく、世界の経済をも自在に操れるほどの力を持つ名家に生まれた海斗。
容姿は、異性である女性はもちろん、同性の男までも虜にするほどの顔立ちを持つ『イケメン』というにはあまりに言葉足らずなほどの美貌を持ち、
191cmというモデルもビックリの超高身長、
学業成績は常にトップクラスであり、全教科満点の上杉風太郎に続く2位、加えて言えば、彼はほとんど勉強をしない。
あらゆるスポーツも、彼が少しかじれば、プロ顔負けのレベルにまで昇華できるほどの身体能力を持つ。
さらには、そのことを一切鼻にかけず、誰に対しても物腰の柔らかい穏やかな対応をする人の良さ、
社交的で、教師や生徒だけではなく、生徒の保護者たちからも信頼されている顔の広さで、誰からも慕われる人間性とカリスマ性。
どれをとっても、海斗を『天才』という言葉で片付けるには、あまりにも簡単過ぎて他の『天才』達が霞んでしまう。
故に人々は彼をこう呼ぶ。
『神童』と………
そんな彼が今、森の中で迷った妹を探す1人の少女の前に現れた。
何故海斗がこの場所にいるのか。
それは少し前に遡る………
………………………………
「………駄目です。電話にも出ません」
「恐らくサイレントモードにしているんだろうね……」
「もう、総介さんは……」
数十分前、宿舎のとある部屋に、海斗とアイナはいた。2人が揃っているのは、総介も入れて『とある話』をするために集まったのだ。それは、彼らが所属している大門寺家の対外特別防衛局『刀』に関する話である。無論、そのことを海斗は昼に総介に伝えたのだが、彼はこう返した。
「緊急を要することじゃねーんだろ?こんな時ぐらい忘れさせてくれや、ったく」
と、一切取り合わなかった。総介が言ったように、緊急の連絡というわけではなかったが、一応耳に入れておいて欲しいと総介を招集したのだが、緊急ではないことを知った総介は、林間学校の時はそういったことは忘れたいようで、すぐにその場を離れていった。なので、部屋には海斗とアイナだけが残っていた。
「一体どこに行かれたのでしょうか……?」
「もうすぐ肝試しの時間だからね。それが実施される近くの森に行ったんだろう」
「肝試し……ですか?」
肝試しは自由参加なので、参加しない生徒にとってはフリータイムとなり、各々が思い思いの時間を過ごしていた。海斗とアイナも、その内の2人である。
「多分総介の恋人も参加してるはずだから、彼女と一緒に回ってるんじゃないかな?」
「中野三玖さんとですか……はぁ、あの人は……」
総介は三玖と恋人同士になってからというもの、彼女に夢中になっている。片思いならまだマシになるだろうが、当の相手の三玖も、彼を愛しており、相思相愛の関係のため、余計にイチャイチャイチャイチャとしているのだ。総介爆発しろ。
それを海斗やアイナも知っており、海斗の場合は時々、三玖とのバカップルエピソードを聞かされていた。
「それか、彼は明人ほどじゃないけどイタズラ好きだから、もしかしたら驚かす方に行ってるかもしれないね」
「……仕方ありませんね。私が呼び戻してきます」
アイナは座っていた椅子から身を起こして、部屋を出て行こうとする。が、それを海斗が止めた。
「いや、僕が行こう」
「若様が、ですか?」
海斗も椅子から立ち上がって、アイナを止め、自分が行くと言った。
「森は広いけど、総介のことは僕の方が知ってるからね。どこにいるのか、大体分かるよ」
「しかし……」
「大丈夫、見つけたら必要事項を伝えて戻ってくるから、アイナはゆっくり休んでていいよ」
「………申し訳ありません」
アイナが謝ると同時に、海斗は上に紺色の厚めのセーターを来て、スマホをズボンのポケットへと入れる。
「何かあったら連絡するよ。アイナはそれまで宿舎で待機、それでいいね?」
「……"主"の指示ならば、逆らう訳には行きません。ですが、夜の森ですから、迷うことの無いようにお気を付けてください」
「ありがとう……行ってくるよ」
………………………………
こうして、海斗は総介を探しに単身、肝試しが行われている森へと向かい、ライトを照らして総介を探している途中に、遠くに見覚えのある人物を見かけた。
「……あれは?」
見ると、彼女は以前にアイナの写真で見せてもらった、総介の恋人である三玖の姉の二乃だった。彼女も肝試しに参加いたようだが、どうも様子がおかしい。
「五月ー、どこ言ったのよー」
どうやら逸れてしまった妹を探しているようだ。
(……この辺りには崖もある……)
そう海斗が周りの地形のことを考えていると、二乃の持っていたスマホのライトがフッと消えた。恐らく電池切れだろう。
(……まずいな)
二乃の妹のこともそうだが、このまま彼女を一人で歩かせるには、あまりにも危険だと判断した海斗は、彼女の元へと歩いていき、そして声をかけた。
「大丈夫かい?」
………………………………
そして、話は前回の終わりへと戻る。
「………」
二乃は、海斗の顔を見たまま、固まってしまっていた。
……が
(か………
カッコいいいいいいいい!!!!!!)
心の中で、思いっきり叫んでいた。
元々、ワイルド系のイケメンが好みの彼女だが、面食いであることは間違いなく、そんな彼女が、海斗の容姿を見て反応を示さない筈がなかった。整った美しい顔立ちに、星のように輝いてるように見える銀髪。キリッとした力強い目元に、シャープな鼻筋。どれをとっても、文句の付け所が無いイケメン・オブ・イケメンだった。
(え、ウソ⁈何この人、超カッコいいじゃん!っていうか、大学生?大人?宿舎の人かな?何でこんなところに?)
二乃は海斗を見て、大学生か、大人だと勘違いした。何せ、高い身長に、大人びた青年の雰囲気を出しているイケメン。どう見ても他の男子達よりも年上に見えてしまう。と、暫く心の中で考えていると、海斗が再度声をかけてきた。
「……立てるかい?」
そう聞いて、海斗は二乃に手を伸ばす。
「え?あ……はい…」
二乃は海斗の手を取って、地面に座っていた体を立ち上がらせる。
(背、アイツより高い……それに、手もすごく綺麗で大きい)
二乃は立ち上がって海斗と向き合った時に、改めて彼の背の高さに口を開けて驚いてしまう。
彼女が最近出会った人の中で、一番背が高かった人物は総介(183cm)だった。だが目の前にいる海斗は、それよりも大きい(191cm)。それに、自分があまり力を入れずに立たせてくれたところを見ると、かなり力もあるようだ。体型は少し細く見えるが、大きく力のあった手のことを考えると、ナヨっとしているとは思えない。それに、自分に気を遣って、立つのを支えてくれたさり気ない優しさも、イケメン好きの二乃にとっては申し分なく、それも海斗を見つめてしまう要因となっていた。
「あ、ありがとうございます……」
思わず敬語になってしまう二乃。どうやらまだ海斗を年上だと思っているらしい。そんな彼女の言葉に、海斗はクスリと笑って返す。
「ははっ、いいよ、敬語じゃなくて。同級生なんだから、そんなにかしこまらないで」
「え、え?同級生?ウソ!?」
海斗の言ったことに、二乃は目を見開いて驚く。信じられなかった。目の前の青年が、自分と同じ高校生だということに。最低でも、大学生くらいだろうとふんでいたのだが、答えはまさかの『同級生』だった。それほどまでに、海斗の雰囲気は、自分が今まで関わってきた男子高校生とはまるで違う次元にいるほどに大人びていたのだ。
「本当だよ、『
二乃は海斗の口から自分の名前が出てきた事に、驚愕する。
「!!私の……名前、知って……?」
「有名人だからね、君たち五つ子は。特に君のような可愛い子の噂は、よく流れてくるよ」
「!!!………」
海斗が自分の名前を知ってくれていたことと、自分のことを可愛いと言ってくれた海斗に、二乃は嬉しさで顔を真っ赤にしてしまう。
「そ、そんな、私……」
今までの強気の態度は何処へやら。今の二乃は完全に、恋する乙女へと成り果ててしまった。
どうしてこうなった?
と、海斗が顔を赤くした二乃に向かって尋ねる。
「見たところ、誰かを探してたように見えたけど…違うかな?」
「あ、はい……妹とはぐれちゃって……」
二乃はなんとか正気に戻り、海斗の質問に返す。そして、今度は二乃の方から海斗へと尋ねた。
「あ、あの……」
「ん?どうしたの?」
手をモジモジとさせて頬を赤くしながら、二乃は勇気を出して彼に尋ねた。てか、誰だお前?
「な、名前、教えてくれませんか?」
「………」
その質問に、海斗は少し間を開けてから、自分の名を名乗った。
「……僕は大門寺海斗、よろしく」
「だいもんじ……かいと、君……」
二乃はその名前に聞き覚えがあった。それは、今の学校に転向して、アイナをはじめとした他の友人が何人かできて、彼女らと話をしていた時に、海斗のことが話題になった。海斗はこの学校で一番の有名人であり、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、実家は超大金持ち、人当たりもよく、自分のことを鼻にかけないため、多くの生徒たちから信頼され、女子たちの憧れの的だということを聞いた。
そして、その話を聞いた二乃も、彼を一目見てみたいと思っていたのだが、あいにく、写真の類は誰も持っていなかった。それは、先生たちが、生徒に海斗の写真を故意に撮らないように警告していたからであり、万が一写真を撮ったことが発覚すれば、写真をフォルダごと『全て』消去される上に、厳しい罰則が課せられてしまうからだ。従って、海斗の容姿を確認するには、彼を直接目にするしか無いのだが、彼は休み時間になると、まるで消えたかのようにフラッと何処かへといなくなるのだ。それも、1人の男子生徒(総介)とともに……
そんなこともあって、海斗はこれまで、二乃はおろか、五つ子と誰一人とも会わずに、過ごしてきた。いや、関わるのを避けてきたと言うべきか……しかし今宵、ついに、五つ子のうちの1人との接触をしてしまったのである。
「あなたが、『大門寺海斗』君だったのね……」
「その様子を見ると、僕のことを知ってるようだね?」
「すごく、噂されてたから……カッコよくて、頭も良くて、運動もできる人だって……」
「買い被りすぎだよ」
二乃の言った事に、海斗は表情を変えずに返した。
「噂が一人歩きしすぎてるだけだよ。僕はそれほど有能じゃない」
よく言うよ、学年2位の成績でアスリート並みの身体能力持ったイケメンのくせに……
「そ、そんな!」
そんなことない、とも二乃は言おうとしたが、海斗がそれを止めて言葉を続けた。
「妹とはぐれちゃったんだろ?なら、直ぐにでも探さないとね」
「……う、うん」
話をここで区切って、海斗はライトを周りに照らしながら最適な道を選んで歩き出そうとする。
「僕も手伝うよ。ここの森は一歩間違えたら危険だ。君一人で行かせたら、君も危ない目に遭いかねない」
「い、いいの?海斗君も人を探してるんじゃ……?」
この女、ちゃっかり下の名前で読んでやがる。森の中で超絶イケメンに出会えたことで、気分はもう有頂天なんだろう。が、海斗は別にそんなことを気にするような男ではないので、何もなかったかのようにスルーした。
「僕の探してる人は後回しでも十分見つかる奴だし、最悪放って置いても勝手に帰ってくるさ。
それよりも、早く君の妹を探そう。時間が経てば経つほど、見つけ辛くなる」
「う、うん。分かったわ」
海斗が先を歩いて、二乃がそれについていく。海斗の背中を見ながら、二乃は先を行く彼の背中を見て、その頼もしさに心を打たれてしまう。
(アイツらとは、全然違うわね……)
二乃は頭の中に、ゴチャゴチャと文句やらなんやら言い返してくる家庭教師と、死んで欲しいほど嫌っているその助っ人を思い浮かべて、海斗と比べる。彼女の中での男の像が、海斗一人によって全て覆された。
この人なら……
そういうわけで、二人は五月を見つけるまでの間、暫く行動を共にする事にした。
………………………………
「……へぇ、普段はみんなのご飯も作ってるんだ。二乃ちゃんは料理得意なんだね」
「ええ。他の子たちがあまり料理しないからっていうのもあるけど」
「じゃあ僕も一回食べてみたいな。二乃ちゃんが作った料理を」
「も、もちろん!海斗君が食べたいなら、お弁当だけど、作ってくるわ!」
「ふふっ、ありがとう。期待してるよ」
それから十数分ほど経ち、二人並んで歩いている最中にも、何気ない会話で話は続いていた。二乃は海斗の一言一言に、胸がキュンキュンと鼓動を高鳴らせ、頬がリンゴのように赤くなってしまう。
それに加えて、話をしてみれば、そこら辺の男子どもとは比べ物にならないほど大人びており、一つ一つの言葉に説得力と重みもある。ただイケメンなだけではない。精神的にも成熟しており、常時冷静で落ち着いた態度で、自分を気遣ってくれる。二乃はそんな海斗に、完全に"ぞっこん"となっていた。
(あ〜んもう!なんで今までこんなステキな人と会わなかったんだろう私!)
二乃をはじめとして、五つ子は全員海斗の存在を知らなかった。いや、それぞれに耳にしていたのだが、結局それまでであり、半ば伝説のようになっていたのだ。
ちなみに、三玖は総介が大好きなので、海斗の噂などこれっぽっちも気にかけていなかった。
何故海斗の存在が噂で止まっているのかというと、それは彼が世界経済界のトップに君臨する財閥の跡継ぎでもあり、その中の世界最強の特殊部隊の所属のため、あらゆる手段の根回しで彼の存在を極力消しているのが原因なのだが……と、二乃には一つ気になることがあった。
「ねぇ、海斗君?」
「どうしたんだい?」
「さっきから普通に歩いているけど、道分かるの?」
二乃は海斗の後をついていってるだけなのだが、その彼が、なんの迷いもなく森の中を進んでいるのだ。二乃はそれが気になって海斗に尋ねた。
「覚えてるからね、来た道を」
「お、覚えてるの?」
「ここに来るまでに見た木の形や、配列は全部僕の頭の中に入っているから、それを辿って戻れば、ひとまずは森を抜け出せる。もしかしたら君の妹も、既に森から出ているかもしれないからね」
「す、すごい……」
『絶対記憶』
海斗には、見たものを即座に頭の中に記憶し、それを必要なときに瞬時に取り出すことができる天性のスキルを持ち合わせている。彼が普段、勉強をほとんどせずに最高クラスの成績を残せるのも、この絶対記憶が助けになっているからに他ならないのだ。まあ、それだけではなく、ちゃんと読解力や計算力、応用力も海斗には十二分に備わっているのだが……
その甲斐あって、海斗はただ闇雲に森の中を歩いているのではなく、来た道を自分の記憶と照らし合わせて戻っているのだ。
「本当にすごいわね、アイツとは大違いよ」
「アイツ?」
「自分の成績をこれ見よがしにひけらかしてくる奴がいるのよ。本当ムカつくわ〜」
「………」
二乃の言ってる人物を、海斗は風太郎のことだと理解するには秒もいらなかった。今ここで、彼の存在を言えば、なぜ知っているのか聞いてくるだろう。色々とごまかせはするが、もしかしたら二乃は、自分と関わってきた人物を思い返すかもしれない。そうすれば、いくら馬鹿の二乃でも、総介との関わりにたどり着くはずだ。
彼女が総介を目の敵にしているのは、海斗も本人やアイナからよく聞いている。今自分が総介と幼馴染だとバレて、それにショックを受けた二乃が、単身どこかへ行ってまた迷子になる事態はできれば避けたい。それに……
(……結構面白い子だしね)
彼は二乃ことを以前から総介やアイナに聞かされていたが、実際に本人を見て、海斗は彼女を面白いと興味の対象として見ていた。今まで人生の中でそんなに会ったことのないタイプの二乃に、彼は若干興味が湧いたのだ。
と、ここで二乃が何かに気づく。
「!……ねぇ、何か、声みたいなの聞こえない?」
「声?」
「うん……」
「………いや、僕には聞こえなかった」
「そう……」
と、その時
『あああ……』
「「!」」
遠くから、何やらうめき声のようなものが、二人の耳に確かに聞こえた。二乃は驚きのあまり、海斗の背中にくっつき、海斗も彼女を庇うように声の方向から二乃の前に立つ。
「……今の声かい?」
「そ、そう!この声!」
「………」
海斗は幽霊を信じている訳ではないが、頑なに信じないというわけでもなく、もしもの場合も存在すると柔軟な思考を持っているので、その場での対応力や適応力も持ち合わせていた。
「……今はとにかく、先を急ごう」
「わ、分かったわ……!」
声を気にするよりも、海斗は先に森を抜け出すことを選択した。海斗の提案に二乃も賛成し、そのまま歩き出すと、二乃が横に抜けた道を見つけた。
「この道の方が楽そうだわ。こっちからいきましょう!」
「ん?……!」
海斗は二乃の方を振り向いて、その道を確認すると、何かに気付いて止めようとする。
「ほら、森も抜け出せる」
それよりも早く、二乃が走り出していく。
「二乃ちゃん!駄目だ、そっちは!」
海斗は二乃の走り出した方向に何があるのか、気付いていた。しかし、二乃はそのまま足を止めずに、足を出して地面を踏もうとしたが……
「!!!!………え?」
二乃は地面の感触が無いことを感じ、下を向いた。そこに地面は、無かった。
いや、はるか下に存在した。
「あ……」
彼女やようやくそこで、崖だということを自覚した。そして、頭の中で一瞬、大好きな姉妹たちや友人、そして遠い昔に大好きだった『母』のことを思い出した。
そして……
「!!!!」
自分の手を何かに掴まれ、真っ逆さまに落ちようとしていた身体が、急にふわりと浮く。
「くっ!!」
二乃の腕を掴んだ海斗が、力一杯に引っ張り、彼女を引き揚げた。
ガシッ!
ドサッ!
「キャッ!」
思いっきり引っ張った反動で、海斗は二乃を胸元に収めたまま、仰向けに倒れる。幸い、雑草がクッションとなって、強く打つことは無かった。
二乃は海斗に抱きかかえられたまま、そのまま彼の上に一緒に倒れ込んだ。
「……危なかった……二乃ちゃん、大丈夫かい?」
「う、うん……ありがとう……」
二乃は海斗の胸におさまったまま、顔を赤くして礼を言った。
二乃はもう死ぬかと本気で感じ、走馬灯も頭の中で駆け抜けたが、その絶望の縁から、海斗が自分を救ってくれた事に、心から感謝すると同時に、彼がもう、自分というお姫様を助けに来た白馬の王子様にしか見えなくなった。妄想ですありがとうございます。
彼女の顔が、真っ赤に染まり、心臓の鼓動が早くなる……
海斗はそのことを知ってから知らずか、抱きしめていた二乃をゆっくりと離して、座り込ませる。
「怪我はない?」
「う、うん。大丈夫……」
「そうか、よかった……この辺りは崖が多いから、十分注意して進んだ方がいいよ」
「……ごめんなさい……」
海斗の優しい警告に、素直に謝罪する二乃。本当に誰だお前?
そして、海斗はそのまま立ち上がり、服についた草を払って再び歩き出そうとしたが、二乃はそうはいかなかった。
「……立てそう?」
「……ごめん、ちょっと動けないかも……」
一瞬とはいえ、本当に死ぬかもしれないと思ったのだ。実際に、海斗がいなければ、最悪崖から真っ逆さまに落ちてデザイアー♪……じゃなくて死んでいたかもしれない。その恐怖が、今になって二乃に降り注ぎ、全身が震えて立ち上がらなかった。が……
「その……海斗君」
「何だい?」
「………怖いから……手、握って……」
「………」
「って!初対面の男子に何言ってんだろ!今のなし!」
二乃はすぐ否定したが、彼女はこの状況をも利用し、海斗とイチャつくことを選択した。それは天然なのか、計算なのか……いずれにしても、二乃が死の恐怖に慄いてしまって立ち上がれないのは、確かである。が、この女はそれをいいことに積極的に海斗へスキンシップを求めてくる。
やれ
と、両者が一瞬沈黙したところで、二乃が引っ込めようとした手を、海斗が優しく包み込み、ゆっくりと引っ張る。
「え?……」
彼女も、手に伝わる感触と、先ほどまでに震えていたのに、ふわりと起き上がる体に、疑問を感じたが、引かれる手に決して逆らうことなく、そのまま立ち上がった。
「……これでいいかい?」
「あ……」
海斗が持ち上げた手には、二乃自身の小さな手が、繋がれていた。彼女は互いの握られた手を見て、赤面するが、同時になんの躊躇いもなく自分のお願いを聞いてくれた海斗に、心臓を射抜かれてしまった。
「……ありがとう、海斗君」
「どういたしまして」
海斗は赤くなった二乃の礼を、穏やかに微笑みながら返した。多分、この微笑みを見た女子は全員、海斗に心臓を今度はビームライフルで射抜かれて倒れてしまうだろう。もちろん、二乃も例外ではない。
「……!!!」
海斗の優しい微笑みに、二乃もまた、倒れそうなほどに胸キュンしていた。おい。誰かコイツら止めろ!てかさっさと五月探せや!
が、しかし、なんとか正気を保ち、二乃は気絶することは無かった。
二人はそのまま歩き始め、しばらく森の中を進んだところで、二乃が海斗に『あの事』について尋ねた。
「……ねぇ、海斗君」
「どうしたの、二乃ちゃん」
「海斗君は『キャンプファイヤーの伝説』のこと、知ってる?」
「……ああ、キャンプファイヤーの終了の瞬間に踊っていたペアは結ばれるって言う伝説のことだね?」
「う、うん、そう!……でね、あの伝説って結構大雑把だから、手を繋いでるだけで叶うって話もあったりで、生徒たちは脇でこっそりやってるみたい」
「……らしいね」
「………それでね、海斗君」
二乃はその瞬間、海斗の手を離して、彼の前に立ち、正面と向き合う。そして、スカートの裾を両手で摘んで持ち上げ、姿勢を低くして、彼女は海斗へと、
「大門寺海斗君
私と踊ってくれませんか?」
二乃は自分の中に秘めた全ての想いを込めて、海斗へとダンスパートナーの申し込みをした。
「…………」
「……待ってるから」
「……二乃ちゃry」
ガサッ!
『あぁああぁ……』
「「!!」」
海斗が二乃に何かを言おうとした瞬間、奥から先ほどのうめき声と、草木をかき分ける音がした。それは、だんだんと二人に近づいてくる。
「さっきの……」
「………」
海斗も少し警戒する。そして、音と声がすぐそばまで迫ってきた。
「……来るっ!」
ガササッ!
「わあぁあぁ……二乃ぉ……どこ行ったんですか〜」
ガサッガサッ
「………」
それは、草木をかき分けて、泣きながら二乃を探す五月だった。
「五月!」
「ふぇぇ」
五月は二乃に名前を呼ばれて、そちらを向く。
「あんた紛らわしいのよ!」
「よかった〜心細かったです〜!」
先ほどのうめきも、全部は五月の声だったのだ。二乃からすればなんとまぁややこしいことだろう。
五月は二乃を見つけるなり、全力で走って二乃へと駆け寄った。二乃もなんやかんやで妹が心配だったようで、ようやく会えたと一安心する。
「もう帰るわよ」
「二乃はよく一人で平気でしたね」
「違うわ、私は……!」
そう言って振り向いて、海斗を紹介しようとした二乃だったが、その後ろには、誰もいなかった。
「あれ……?」
「?どうしました?」
二乃の様子を、五月が少し不思議に思う。しかし二乃は、何事も無かったかのように返した。
「ううん、なんでもないわ……
……待ってるから」
いなくなってしまったが、『彼』は確かに存在した。かねてより少し会いたいと思っていた人は、たった数分で、自分を虜にした。
必ず、また会えるだろう
その時は………
二乃は、海斗と繋いでいた手を握り締めて、明日のキャンプファイヤーを待ち望むことにした。
そして、二乃と五月の2人は色々あったが、森から抜け出して、宿舎へと戻ることに成功したのだった。
………………………………
「……危なかった」
一方、海斗は五月の姿を確認すると、木の影に隠れて、その場をやり過ごした。
("彼女"にはまだ、会うわけにはいかないからね……)
林間学校初日に、五月は総介の元まで足を運んで、海斗の姿を見ていた。五月自身はさほど気にしてないように見えたが、万が一のことを考えて、海斗は五月と会うのは避けたかった。五月を介して二乃に自分のことがバレてしまえば、総介やアイナに迷惑がかかると思ったからである。特にアイナは、二乃と『親友』のような関係を築いているため、今は彼女と総介の関係を結びつけては絶対にいけない。
そう思いながら海斗は、2人がその場を離れて、元の道へと戻っていったのを見計らい、再び総介を探すのだった。
………………………………
そして……
「お、海斗じゃねーか」
「まったく探したよ、総介」
「何だよ、お前も肝試しに来たのか?」
「そうじゃなくて、君を探しに来たんだよ」
「俺?……ああ、例のやつな……別に林間学校終わってからでいいだろうよ〜」
「まぁそうだけど……アイナが呆れてたよ」
「んな林間学校来てまで『刀』のことなんか考えてんじゃねーよ、ちったぁ休んで羽伸ばせって伝えとけ」
「はぁ……そうするよ。僕も少し疲れたしね……」
「?……そうだ。ところで海斗、途中で三玖の姉妹たち見なかったか?2人なんだが、肝試しのコース外れて迷っちまってよ……」
「ああ、それなら大丈夫。偶然出会って道を案内して、無事に戻っていったよ」
「そうか、それならよかっ………え?出会った?」
「いやなに、本当にたまたま姉妹の子の1人と出会って、その子としばらく行動を共にしただけだよ」
(……………まさか)
「………ちなみに、それはどっちだ?」
「?二乃ちゃんだけど?」
「………………」
「………二乃ちゃんだけど?」
「2回も言わんでいい………はぁ……んで、あのヒス女はお前と会ってなんか言ってたか?」
「とても赤い顔をしながら、ダンスパートナーを申し込まれたね」
「………………………………」
総介はここで、先ほどへし折れたフラグの音が、気のせいではなく本物だったと確信したのだった。
(本当にすまん、原作の上杉……)
ちなみに……
「……ていうかお前、ダンスパートナー誘われたの、何人目なんだよ?」
「二乃ちゃんでちょうど50人目だね」
「…………海斗、お前爆発しろ」
お前もな、総介。
本年最後の投稿が『総介と三玖』じゃなくて『海斗と二乃』になるとは……総介に殺されそうだ。
というわけで、今年一年本当にありがとうございました!また来年お会いしましょう!皆さん、良いお年を!!
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
本当に気に入ってくださったなら、高評価とお気に入り登録、お待ちしてます!マジでショックだったんです、あの夢!