世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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新年あけましておめでとうございます!
2020年も『嫁魂』をよろしくお願い申し上げます。




新年一発目の投稿ですが、中々に苦しかったです。何度頭を抱えたことか……


39.体育倉庫とかでチョメチョメしようとすると100%誰か入ってくる

二乃が海斗と運命的な出会い(二乃視点)を果たしている頃、先に風太郎たちの元へと到着し、正規のルートで肝試しに回っていた一花、三玖のペアは、少し立ち止まって、話をしていた。

 

「三玖は、どうして浅倉君を好きになったの?」

 

 

 

「……『どうして』……」

 

一花の質問に、三玖は少し戸惑ってしまう。何故そのようなことをいきなり聞いてきたのか……しかし、三玖は質問されたからには、答えようと考えた。元より、一花の質問は、答えられないようなものでもなかったし、答えなければ先に肝試しを進められないような気がした。

 

「……ソースケは、優しいし、私のことを大事にしてくれる。それに普段はあまり表に出さないけど、私以外にも、フータローやみんなのことをちゃんと見ている……それに……」

 

「……それに?」

 

一花がそう尋ねると、三玖は少し俯きながら頬を赤くする。

 

「……私を守ってくれた時、すごくかっこよかった……」

 

「守ってって……花火大会の時?」

 

「うん……」

 

三玖は一花の質問に頷くと、花火大会の日の出来事を話し始めた。

 

「私ね、あの日、何人も男の人たちに囲まれて………すごく怖かった。

 

 

 

でも、ソースケは……怖がらずに、怒って……男の人を、1人倒して……私を抱えて、ずっと走り続けてくれた……」

 

「……なんとまあ」

 

一花は三玖から花火大会の時の事を具体的に聞くのは初めてだったため、総介がとった行動に少し驚いてしまった。

三玖はあの日のことを、鮮明に覚えていた。

何人もの不良の男たちに囲まれ、これから自分がされることを想像して、恐怖で震えてが止まらなくなってしまった。彼女が出来ることは、後に恋人となる総介にしがみつくことだけだった。

しかし、総介1人に頼っても、多勢に無勢。1人と10人近い不良相手では、結果は分かりきっていた……

 

 

 

 

筈だった。

 

 

 

 

三玖が恐怖で慄いていたのに対し、総介は不良達に怒り、挑発をして、殴りかかってきた不良の1人をカウンターで倒したのだ。

その瞬間を、三玖はちょうど目を開けたところで、目撃していた。

不良の顔面目掛けたストレートを、総介は軽く避けて、相手の懐に入って、アッパーカットを決めた。

その後すぐ、彼は三玖をお姫様抱っこで抱えて、何十分も逃げ続けた。

 

「その時なんだと思う……ソースケが好きだって自覚したのは……その前も、好きだったんだと思うけど………ハッキリと好きって出てきたのは、ソースケが私のために、守ってくれた時……」

 

あの時、三玖は総介1人だったにも関わらず、彼は10人近い不良の集団に一切臆することなく、体を張って自分を守ってくれた。元々総介に好意的な三玖だったが、あのような出来事がきっかけとなり、彼女は総介に対する好意を自覚した。あの後に、三玖は総介に告白しようとしたが、二乃からの電話の邪魔が入ったため、その場は持ち越しとなったが、総介への愛は消えることなく、数週間後に恋人同士になることに成功したのだ。花火大会の出来事が、三玖の総介に対する意識を決定付けたのは、間違い無いだろう。

 

「だから、私はソースケが好き。私をいろんな事で助けてくれた……だから私は、ソースケのために、何かできることがあれば、……してあげたい……」

 

「……そう……」

 

一花は、三玖の答えを聞き、一応は理解はしたが、まだどこか腑におちないようだ。と、ここで次は三玖が尋ねてきた。

 

「……ねぇ、一花」

 

「ん、どうしたの?」

 

「どうして、そんなことを聞くの?」

 

三玖は、何故一花が、そのようなことを聞いてきたのか、純粋に疑問に思った。何もこのタイミングで、総介を好きになったことを聞いてきたのか……

次の瞬間、一花がゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

「………三玖は今、幸せ?」

 

「……え?」

 

一花の突然の質問返しに、三玖は思わず声をあげてしまう。

 

「幸せ?」

 

一花はもう一度、三玖にはっきりと質問した。三玖は少し目線を下げて考え、首を縦に振った。

 

「うん……幸せ……」

 

「………そう……」

 

「……一花、何を」

 

「私ね」

 

一花が三玖の言葉を遮り、そのまま話をし始めた。

 

「三玖が浅倉君と一緒に寝てる時の顔、見たんだ」

 

「!!!」

 

三玖は一花の言ったことに、昨日の寝顔を見られたことを思い出して、両手を頬に当てて顔を赤くした。が、一花は気にせずに話を続ける。

 

「すごく幸せそうな顔だった。三玖だけじゃなくて、他のみんなでも、あんな顔見たこと無いぐらい、幸せそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんが生きてたときみたいに」

 

「………」

 

三玖は一花の言葉に、昔を思い出す。かつて、母と一緒に暮らしていた時のことを……

 

 

決して裕福では無かったが、あの頃は本当に幸せだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母がいなくなる、『あの日』が来るまでは……

 

 

 

「一花………」

 

「………前に、五月ちゃんが言ってた、お母さんの言葉、覚えてる?」

 

「………」

 

「『喜びも、悲しみも、怒りも、慈しみも、私たち全員で五等分』だって……

 

 

『誰かの失敗は、みんなで乗り越えて、誰かの幸せは、みんなで分かち合うこと』だって……」

 

「……うん……」

 

 

 

 

 

 

 

「……じゃあ、今の三玖の幸せは、みんなで分かち合えてるのかな……」

 

 

 

「!……それは……」

 

 

一花の一言に、三玖は言葉を詰まらせてしまった。

確かに、今の三玖は幸せだった。初恋の人の総介と相思相愛で恋人同士になり、その後も順調に関係を進めて、つい数日前には、共に夜を過ごすまでに至った。

今のところは、喧嘩の一つもないラブラブな二人であり、互いが相手を尊重し合い、それを苦にしない、恋人としてはこの上なくベストな関係を築けている。

 

しかし、それは『三玖個人』の問題だ。

 

母が言った通り『誰かの幸せは、皆で分かち合うこと』とするなら、今の三玖の幸せは、皆で共有すべき幸せだ。しかし、実際はどうだ。

 

明らかに、三玖と総介の関係を良く思っていない姉妹が一人いる。それに、学生での恋愛は不純だと、表立っては口にしないものの、あまり前向きには捉えていない者もいた。

 

残りの二人は、三玖と総介の関係を応援してくれると言った。しかし、そのうちの1人、長女の一花が今、そのことを三玖へと投げかけている。

 

「……私は、三玖と浅倉君の仲は応援してるよ。でも、二乃があれだけ嫌がってるのも、少しわかっちゃったんだ」

 

「………」

 

「いつか私たちはみんな、別々の道を歩むことになるんだって……そう考えたら、少し不安っていうか、怖くなっちゃって……」

 

「……一花……」

 

一花は話を途中で切って、ははっと笑いながら三玖へと謝った。

 

「ごめんね。こんな事言っちゃって。……何言ってんだろうね、私………そんなの、当たり前の事なのに……」

 

「………」

 

「少し寒くなってきたし、先に進もう。さっきのことは忘れて、三玖は三玖で楽しんで、ね。」

 

一花は三玖に謝り、そのまま歩き始めて、彼女を追い越して先を歩き始めた。

 

三玖はその長女の背中を、黙って見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

忘れられるわけがなかった。あの言葉を………母の言葉を……

 

 

 

 

「………私たち5人は、平等……」

 

辛いことや、嬉しいこと。困難や幸福は、5人みんなで分ち合う……平等に………

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんや、一花が言ってたのがそういうことなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしかして、ソースケが私にくれる『幸せ』も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソースケが、私に誓ってくれた『愛』も

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなで分ち合わないといけないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………私は………」

 

 

三玖の中でも、何かに亀裂が走る音がした。しかし、それに気づいたのは、一花や本人含めて、誰もいなかった。一度ヒビが入れば、あとは割れるのを待つばかり………

 

 

 

『何か』の崩壊が、彼女達の中で始まっていた…………

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

肝試しも終わり、全ての生徒たちはログハウス風の宿舎で自由な時間を過ごしていた。その中で……

 

 

 

 

 

「あ〜〜、林間学校がいつまでも続けばいいのに〜♪」

 

一際機嫌の良い生徒が1人いた。まあ二乃ですよ。海斗に会ってしまった二乃ですよハイ。

彼女は頬を赤くさせて、今まで見たことないような満点のスマイルを浮かべながら宿舎を歩いていた。

 

「………ご機嫌だな、いいことでもかあったのか?」

 

「教えなーい。明日驚かせてあげるわ」

 

そんな中で、風太郎とすれ違うが、一切相手にせずに通り過ぎていく。

 

「気になるなー、教えてくれよー」

 

「…………」

 

「……なんだよ一体?」

 

いつになく上機嫌な二乃が気になって食い下がってみる風太郎だが、二乃は無視を決め込んでその場を去って行った。

と、その場を通る風太郎の知るもう1人の人物が、何やら外へと出て行こうとしていた。

 

「四葉、どこに行くんだ?」

 

「あ、上杉さん!はい、これから明日のキャンプファイヤーの準備をしに行くんですよ」

 

「キャンプファイヤー……」

 

例の伝説のアレか……と、風太郎は考えながら、この後に準備をしに行く四葉のことも考えてみる。

外に先程出ていたが、かなり風が寒く感じた。なるべく早く終わらせて屋内に入らなければ、体調を崩しかねないだろう。

 

 

(…………)

 

 

 

 

 

 

 

『どんな生き物でもな、“借り"はぜってー返さなきゃいけねーんだよ』

 

 

 

 

 

『貸したさ。テメーは俺にデケェもんをな』

 

 

 

 

 

(借りは、必ず返さなきゃいけねー……)

 

 

 

林間学校初日の朝に、総介が言ってた言葉。彼は三玖と自分を巡り合わせてくれた『借り』を返すためだけに、自分のことを後回しにして、風太郎を迎えにきてくれた。あの時、風太郎は総介と、そのきっかけを作ってくれた五月に(心の中で)この上なく感謝した。

 

 

ならば、今自分がすべきことは……

 

 

 

 

 

総介の存在が、少しではあるが、風太郎をも変えようとしていた。

 

 

「………上杉さん?」

 

考え込む風太郎を、四葉が心配そうに顔を覗く。すると、風太郎が突然口を開いた。

 

「……なぁ、四葉」

 

「は、はい、何でしょうか?」

 

 

 

「……俺もキャンプファイヤーの準備、手伝っていいか?」

 

その一言に、四葉が「えっ?」と驚きの声を上げる。

 

「い、いいですけど……どうしたんですか、いきなり?」

 

普段の彼は、総介ほどではないが、他人にはあまり干渉しない。そんな彼が、行事の手伝いを率先して行おうとしている。四葉は少し不思議に感じ、風太郎に尋ねた。

 

「ほ、ほら、肝試しの時、お前も手伝ってくれて、すげー助かったからな……その……その時の『借り』を返させて……くれないか?」

 

風太郎は横を向いて、頬を少し赤くして照れながら四葉に聞いた。それを言われた四葉はというと……

 

「う、上杉さん〜……」

 

目を潤ませて感心していた。彼は血も涙もない冷血人間(失礼)だと思っていたが、今の風太郎の発言に、涙が出そうなほどの感動が、四葉の体をジーンと駆け巡っていた。

 

「上杉さんは他人に氷のように冷たい非情人だと思ってたのに……上杉さんにも人の心は残ってたんですね!私、感動しました!」

 

「そう言われても、全然嬉しくないんだが……」

 

全然褒められた気がしない四葉の言葉に冷静にツッコむ風太郎。普段彼はどんな人間だと思われているのかを知り、遠くを見つめてしまう。

 

「そうと決まれば、善は急げです!上杉さん、早速行きましょう!」

 

「ちょ!引っ張らなくていい!自分で行けるわ!」

 

テンションの上がった四葉は、風太郎の手を引っ張りながら、準備の作業をする場へと走って行った。その場で何人もの生徒に見られるのを、風太郎は恥ずかしがりながらも四葉にされるがままに引っ張られていく。

 

(……うまくいった……のか?)

 

総介のように自然体で言えたとは思えないが、どうやらその気持ちは四葉には伝わったようだ。

そのことに風太郎は一安心しつつ、四葉に手を引かれながら倉庫の方へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこでもまたトラブルが待っているとは知らずに………

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく経ったところで、ここまで出番の無かった総介はというと……

 

「ったく、アイナの奴……グチグチグチグチ、うるせぇったらありゃしねぇ……」

 

肝試しの後、海斗と共に宿舎へと戻った総介に待っていたのは、アイナからの説教だった。

やれ「『刀』としての自覚をちゃんと持ってください」だの、やれ「いかなる場合でも報告はちゃんと聞くべきです」だの、グチグチグチグチと堅い言葉を聞かされたが、海斗が仲介してくれたことと、総介の、

 

「俺は今は休養中の身だって言ったろうが。それに、林間学校ぐれ〜自由にさせてくれや。お前は色々と細かく考え過ぎなんだよ。たまには色んなもん忘れて羽伸ばせ。んなんじゃ一生疲れとれねぇぞ」

 

という言葉で、ようやく沈黙したのだった。その後に、総介は宿舎の自販機まで行き、ソウルドリンクのコーラを買って飲んでリラックスしていた時、よく知る人物が声をかけてきた。

 

 

 

 

 

 

「ソースケ」

 

彼が声のした方を向くと、そこには恋人の三玖と、後ろに五月がいた。

 

「三玖………それと肉まん娘」

 

「『それと』って何ですか!?私はついでですか!?」

 

オマケ扱いされた五月が総介に向かって吠えるが、彼は気にするそぶりも無く、三玖の方へと目を向ける。彼女の表情は、何故か芳しく無かった。

 

「どうしたの?何かあった?」

 

総介が三玖に尋ねると、三玖は用件をすぐに話しはじめた。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「長女さんがいない?」

 

「うん……もうすぐ消灯の時間なのに、誰も見てないって」

 

三玖が言うには、先程から一花の姿が見当たらないらしい。彼女の言う通り、消灯時間も迫ってきているので、心配なようだ。

 

「浅倉君は一花を見ていませんか?」

 

「んや、肝試しで会ってからっきり見てねぇよ」

 

「そうですか……」

 

誰も一花を見ていない……これでは、あとは闇雲に探すしかないのだが、時間がかかってしまう。

どうしたものかと、3人が考えていると、総介の背後からこちらを呼ぶ声がした。

 

 

「あ!三玖、五月、浅倉さん!ちょうどよかった!上杉さんを見ていませんか?」

 

背後から走ってきた四葉が、風太郎の居所を聞いてきた。

 

「四葉……」

 

「上杉君、ですか?……見ていませんが」

 

「てか、行方不明者多過ぎじゃね?」

 

一花に続いて風太郎まで行方をくらますとは……総介は知り合いがこうもポンポンと行方不明になる状況にツッコんだ。まあ肝試しでは二乃と五月もそうなっちゃいかけたからね……総介のせいで。

「一緒にキャンプファイヤーの準備を手伝ってくれてたんだけど、途中でどこにいるか分からなくなっちゃって……」

 

四葉が風太郎が行方不明になった状況を説明していると、ここで五月も、一花の居場所を知らないかと四葉に尋ねる。

 

「四葉、上杉君もそうですが、一花を見ていませんか?」

 

「一花?」

 

「フータローと同じく、一花を誰も見てない……」

 

「え、一花なら、私や上杉さんと一緒に、さっきまでキャンプファイヤーの準備してたよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「……………え?」」」

 

 

四葉の発言に、3人が固まってしまった。

 

 

 

「え?ど、どうしたの?」

 

突然その場にいた全員が固まってしまったため、四葉はあたふたして皆に目を移す。すると、総介が気を取り直して四葉へと質問をした。

 

「おい四葉、それっていつのことだ?」

 

「え?……さ、さっきです。30分も経っていません」

 

「どこでどんな作業してた?」

 

「えっと………倉庫から丸太を持ち出して、広場に運んで行きました」

 

「……倉庫?」

 

「はい。ここから少し離れた場所にある、木材や色んなものが置いてある倉庫です」

 

「………」

 

総介は四葉から聞いた倉庫の話を聞き、少し考えに図った。

そして、四葉へと自身のまとめた考えを話す。

 

「………多分、その倉庫だな、2人は」

 

「「え!?」」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

総介の言ったことに、三玖と五月が声上げて、四葉もそれに続き、総介に話しかける。

 

「で、でも、倉庫は誰もいませんでしたし……鍵もかけちゃって……」

 

「倉庫の中までちゃんと見たのか?」

 

「い、いえ。入り口だけです……」

 

四葉の答えを聞き、総介は更に話を続けた。

 

「だったら尚更、そこにいる可能性が高いな。2人を宿舎で見ていないなら、その倉庫の中か、それ以外なら外だが……外にいるなら、寒さですぐ帰ってくるだろうが、その気配は無い。なら、何かしら帰れない事情があるつーこった。例えば……どこかに閉じ込められてる、とか」

 

「あ……」

 

「……では、一花と上杉君は」

 

ここで、五月が総介へと尋ねるが、どうやら彼女も答えが分かっているようだった。

 

「今ごろ鍵かかった倉庫で2人っきりでチョメチョメでもして体温めてんじゃねーの?」

 

「チョメチョメ……」

 

「あ、浅倉君!破廉恥です!」

 

「オメーは古手川かよ」

 

「さ、さすがにチョメチョメは……」

 

四葉は否定しようとするが、最近の一花を見ていると、もしかしたらこれを機に風太郎と本当にそうなっているかもしれないと、完全には否定出来なかった。

 

「ま、上杉はそんなオツムは持っちゃいねぇし、恋愛なんざ勉強の邪魔だっつーような奴だ。流石にそこまではなっちゃいねぇかもしんねぇが、倉庫には暖房とかは置いちゃいねえ筈だ。もしかしたら、寒さをしのげずに震えてっかもな」

 

「そ、そんな!」

 

「わ、私、急いで先生から鍵貰ってきます!」

 

「私も行く!先生に説明しなくちゃ!」

 

四葉と五月の2人が、鍵を貰うために先生の元へと走って行った。そして残されたのは、総介と三玖だけとなった。

 

「……本当に、倉庫にいるのかな……」

 

「長女さんはどうか知らないけど、この時間に、少なくとも上杉が外にいる理由は無いし、もし片方だけだったとしても、上杉と長女さんが途中まで一緒にいた可能性が高いから、片方を見つけたらもう1人もすぐに見つかる筈だよ」

 

「……そう」

 

「………」

 

総介は、先ほどから三玖の様子が気になっていた。林間学校なのであまり近づき過ぎるのもいいことでは無いのだが、今は2人きりだというのに、2人の間には一定の距離がある。普段なら、彼女は総介のすぐ横に寄り添うはずなのだが、今はそのような素振りは見せない。加えて、総介を見た瞬間に、彼女の表情は少し暗くなったような気がする。肝試しの最中とは、まるで表情が違う。何があったのだろうか……

 

 

「………三玖」

 

総介が、三玖にそのことを尋ねようとしたときだった。

 

「浅倉さん!先生から鍵、貰ってきました!」

 

「急ぎましょう!一花も上杉君も、倉庫にいるはずです!」

 

倉庫の鍵を貰ってきた四葉と五月が戻って来た。四葉の手には、輪っかに繋がれた鍵を持っている。

 

「……わかった。とりあえず急ごう」

 

「………うん」

 

2人は特に話をすることなく、四葉と五月に続いて、件の倉庫へと足を急がせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

その頃、4人の話の中心となっていた風太郎と一花の2人は、総介が読んだ通りに、鍵の閉められた倉庫に閉じ込められていた。

上着を一花に貸した風太郎は、倉庫内にあった木材で火を起こして暖をとっていた。

 

 

途中で、一花は風太郎に女優業の優先のために、学校を辞めるかもしれないとカミングアウトしたのだが、その場では明確な答えを出さないまま、時間が過ぎて行った。

一花とて、何も考えずに学校を辞めようととは思ってはいない。他の姉妹たちとの学園生活も楽しんでいたいし、先ほどはああ言ってしまったが、妹の恋路もまだまだ見てからかったり、応援したい。

 

それに………

 

一花は横にいる風太郎を見つめ、しばらくして『あのこと』を尋ねた。

 

「ねぇ、フータロー君」

 

「なんだよ?」

 

「フータロー君はキャンプファイヤーのダンス、誰か踊る人いるの?」

 

一花はすでに、キャンプファイヤーの伝説のことを知っていた。

『キャンプファイヤーのフィナーレで最後に踊っていた2人は、生涯結ばれる』というもの……

 

 

じゃあ、私が踊りたい人は………

 

 

 

 

 

「いや、いないな」

 

無表情のまま、即答で答えた風太郎を見て、一花は少し黙った後に「プッ」と笑い出す。

 

「やっぱり〜、そうだと思った」

 

「お、俺は浅倉達と違って、あんなくだらないことに時間を割きたく無いだけだ!あんなのに行くぐらいなら、部屋で公式を覚えていた方が効率がいいし、他の奴らとの差もつけられるからな!」

 

「またまた〜♪そんなこと言ってぇ、本当は踊る人誰もいなかったんでしょ〜?」

 

「ち、違う!俺は……」

 

一花はしばらく風太郎をからかっていたが、2人は立ち上がって一花が後ろへと下がった拍子に、後ろに壁に寝かせていた3mほどの丸太に当たってしまう。その衝撃で、丸太が一花目掛けて倒れてきた。

 

「一花!」

 

風太郎は一花を自分の元へと引っ張り、倒れてくる丸太から彼女をなんとか避けさせた。それは奇しくも、2人が踊っているかのような態勢となり、その直後に、丸太が床へと落ちる衝撃音が、倉庫内に響き渡った。

 

「はぁ〜………セーフ」

 

風太郎はニヤつきながら、一花へとからかい返す。

 

 

 

「お前さぁ………

 

 

 

 

 

意外とドジだな」

 

 

 

 

その瞬間、ドアの上にあった、衝撃を感知するブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

ビー!

 

 

ビー!

 

 

ビー!

 

 

ビー!

 

 

 

しばらくそのままの態勢でいた2人だったが、ここで一花が、いち早く状況を理解して、顔を赤くさせながら離れようとする。

 

「は、離して!」

 

「おまっ、暴れんな!」

 

離れようとする一花は態勢を崩してしまい、そのまま風太郎も巻き込んで情けなく倒れてしまう。ここで、風太郎がようやくブザー音に気づいた。

 

「というか、なんだこの音……?」

 

すると、ブザースピーカーか、電子音声が流れてきた。

 

『衝撃を感知しました

 

 

30秒以内にアンロックしてください

 

 

解除されない場合、直ちに警備員がかけつけます』

 

 

 

「まずい、誰か来る前に逃げるぞ!」

 

「う、うん」

 

閉じ込められているというのに、一体何処へ逃げる場所があるのだろうか……

 

と、ここで更なる想定外の事態が起きてしまう。

 

 

 

 

シュワアアアアアアア!

 

 

「うわっ!なんだこれ?!」

 

「スプリンクラー……火消さないと」

 

おこしていた火の熱を感知して、スプリンクラーが起動し、それを2人はモロにかぶってしまい、ずぶ濡れとなった。

 

「ひとまずセンサーをなんとかしよう!」

 

「なんとかって……だから鍵が無いと……」

 

軽いパニックになる2人だったが、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鍵ならここにあんぞ」

 

「「!!」」

 

 

その声と同時に、倉庫の扉がガチャっと開いた。

 

「あっ……」

 

「助かっ……!!」

 

そこにいた人物に、風太郎は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、『お楽しみ』はこれからですか、コノヤロー?」

 

 

「あ、浅倉!?」

 

「浅倉君!?……それに……」

 

風太郎が総介に驚く中、一花が彼の後ろにいる人物に、再び驚かされた。

 

 

 

 

 

 

「一花、2人してこんな所で、何してたんですか?」

 

「………」

 

「三玖……五月ちゃん……」

 

五月、そして何より、一花は三玖がいることに驚愕し、思わず目を逸らしてしまった。

肝試しの時、あんなことを言っておきながら、自分は風太郎と2人っきりで倉庫の中にいた。そして、ずぶ濡れになって、一花が倒れている状況は、誤解されるにはうってつけのシチュエーションだ。

 

彼女は妹の顔を見ることが出来なかった。もしかしたら、軽蔑されてるかもしれない。

自分だけ、風太郎を独占しようとして、妹には不満のようなことを言って………

 

 

 

と、ここで、周りの状況を見回していた総介が、はぁ、とため息をついた後に口を開く。

 

「………なるほどな。

 

 

 

 

 

閉じ込められて暖を取ろうと火を起こしたら、熱感知でスプリンクラーが起動しちまって、ビショビショになってパニクってた所に、俺らが来た。違うか?」

 

総介の推理に、風太郎が頷きながら答えた。

 

「あ、ああ……大体合ってる」

 

「へ、変なことはしてないんですね?」

 

「してないよ!」

 

五月の疑いを、一花は即座に否定した。

 

「上杉はアレだから無いとして、長女さんならここで上杉をってこともあり得るな」

 

「アレって何だアレって?」

 

「浅倉君は普段私をどういう目で見てるの?」

 

「い、一花!やっぱりそういう趣味があったんですね!?」

 

「いや無いから!五月ちゃんまで何言ってるの!?」

 

「………」

 

 

皆がそれぞれに会話をする中、三玖は未だに複雑な表情で一花を見つめていた。

それに、総介が目配せをして、いち早く気付いて、話を変える。

 

「……さっさと戻るぞ。四葉がさっき他の先生に捕まって、事情を説明してるとこだ。説教ぐれぇは覚悟しとけ」

 

「……マジかよ……疲れたのに……」

 

「あ、あはは……仕方ないよ……」

 

2人はげんなりしながらも、立ち上がって倉庫から出て、元に戻ろうとする。

 

「………」

 

すると、総介が自身の黒パーカーを脱いで、一花の肩へとかける。

 

「あ、浅倉君?」

 

「……それ、上杉のだろ?それもビショ濡れじゃねーか。これ使え」

 

「……いいの?」

 

「構わねぇよ。俺は宿舎までそう距離はねぇし、予備もある」

 

「………そうじゃなくて」

 

一花はチラッと三玖に目線を移す。それを見た総介が、はぁ〜、とまたため息をつき、三玖へと声をかけた。

 

「……三玖」

 

「……え、な、何?」

 

突然総介に呼ばれたことに、三玖はビクンとしながらも返事をした。そして総介が、彼女にある質問をする。

 

「ずぶ濡れになった女を目の前にして、それに上着を貸そうとしない男をどう思う?」

 

 

 

 

 

 

 

「…………最低」

 

三玖がわずかな沈黙の後に、一言で答える。それを聞いた総介は、

 

「だ、そうだ。アンタに上着貸さねぇと、俺は三玖から最低の烙印を押されちまうからな。それだけはゴメンだ」

 

「………浅倉君って……」

 

「?んだよ?」

 

「………ううん、何でもない。ありがとう。上着貸してくれて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、レンタル料一回2980円な」

 

「酷い!そして料金が生々しい!」

 

そんなやりとりをしながらも、一行は倉庫から離れて、元の宿舎へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、俺は………?」ガタガタブルブル……

 

「貸せる上着が無いんです。上杉君は宿舎まで我慢してください」

 

「さ、寒い……」

 

ちなみに風太郎と一花は、この後にゴリラ顔の先生から説教を食らうハメになったとさ(主に風太郎が)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

ソースケが言ってたように、一花はあの場所にフータローを連れて行ったわけじゃないのは分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ズルい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしたいいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしたらいいのか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ソースケ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人の少女の亀裂が、徐々に大きくなっていき、やがて起こる崩壊へと足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

 

その亀裂が走る音を、『()」だけは聞き逃さなかった。




この話、多分今までで一番難しかったかもしれません。ですが、次回はハッチャけます。
ヒントは………
「アニメ化飛ぶぅぅぅ!!!」
です。
わかるかな〜?(笑)
今回もこんな駄文を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
改めまして、今年もよろしくお願いします!
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