そして2021年早めに銀魂映画公開。
これは、つまり………そういうことだよね?
林間学校3日目の朝……
「おはよー」
「今日どこ行く?」
「やっぱスキーでしょ」
この日は朝から自由参加で『スキー』『登山』『川釣り』の選択制となっており、生徒たちは各々自由に選ばことができる。そしてその後の夜にはメインイベントと呼ばれる『キャンプファイヤー』が待っている。
そんな朝……
「三玖ちゃん。おはよ」
「……うん、おはよう」
同じ部屋で寝ていたクラスメイトが先に起きていたのを見て、三玖は軽くあくびをしながら朝の挨拶を返した。
上半身だけを起こしながら、三玖は窓の外を見る。
『今の三玖の幸せは、みんなで分かち合えてるのかな……』
「………」
昨日から、肝試しで一花に言われた一言が、頭から離れなかった。それは、睡眠を挟んでもなお頭の中にこびりついていて、三玖に問いかけてくる……
総介と共にいれる幸せは、他の四人にも分けなければいけないのだろうか……
(私たちは平等……だとしたら、私はどうしたら……)
あの後、総介と会う機会はあったのだが、特に話をせずにそのまま別れて就寝した。というより、三玖自身が少々避けてしまったのもある。
(……ソースケ……)
できれば今日、ちゃんと話をしなければならない。
でもこのままでは、総介に会わせる顔が無い。
もしかしたら彼なら、何か知恵を貸してくれるかもしれない。この心の中に住み着いた黒い何かを追い出してくれる方法を教えてくれるかもしれない。
でも、答えを知るのが怖い………
三玖は今はただ、ぼーっと窓から見えるキャンプファイヤーが開催される広場を見つめながら、曇った心の中に恋人の姿を浮かべるのだった。
………………………………
「…………最終日か」
同じ頃、風太郎も目覚めて、ベッドから上半身を起こした。その髪は寝癖でボサッとしており、頬も少しやつれていた。
昨日あの後、四葉が説明したゴリラ顔の先生に大目玉を食らい、色々と疲れた風太郎は部屋に戻った後に倒れるように眠った。
総介や三玖と五月は状況を見て色々と察してくれたようだが……
(楽しいはずの林間学校がなぜこんなことに……)
風太郎はトラブル続きの我が身を嘆きながら、今日はこの後どうしようかと頭の中で考えを巡らせた。
その結果………
「………だるいし寝よう」
何もしないことを選択した。
しかし!
「上杉さん!」
扉がばん!と勢いよく開き、四葉がやってきたのだ。
「うおっ!四葉!」
「自由参加だからって逃しませんよ!スキー行きましょうスキー!!」
こうして、四葉に無理やり起こされた風太郎は、二度寝する間も無くスキーをしに引き摺られてゆくのだった……
………………………………
「………寒い、眠たい、帰って寝たい」
一面広がる銀世界。リフトに登る親子に、一緒に滑るカップル。まさにスキー場の典型的な光景である。その中に、風太郎はスキーウェアを着て一人ポツンと置物のように突っ立っていた。
「てか、四葉はどこ行ったんだよ……」
スキー場に着いた途端、四葉は「すこし手伝うことがあるので、ちょっと外しますね」と言って何処かに行ってしまった。
「………帰るか」
風太郎はそのまま四葉をほったらかして帰路につこうとし、振り向いた先にある人物を見つけた。ていうか、思いっきり知り合いなのだが……
その人物は、同じスキーウェアを着て、雪で作った台の上に、これもまた雪で作った球状の丸いものを2つ、少し距離を開けて並べて置いていた。
「………何してんだ、浅倉?」
「ん?おお、上杉か」
呼ばれて振り向いた男、浅倉総介は、風太郎を見つけるや軽く挨拶をしただけで、そのまま視線を元に戻して球を固める作業を続けながら言葉を続けた。
「何、スキー場が殺風景なもんだからな。なんだったら雪像の一つでも作ってやろうと思ってよ」
「雪像?」
総介の言った事に、風太郎は首を傾げる。雪像を作っているのは分かったが、玉を2つ置いて、何を作ろうをしているのだろう?
「雪像って……一体何を……」
「まァこんなトコか………
あとは真ん中に棒を立てて……」
「小説終わるぅぅぅぅ!!!!!」
総介の最後の一言に全てを察した風太郎が、目を血走らせて絶叫をあげながら左に置かれている玉を思いっきり右足の欧州サッカーばりのキックで粉々にした。
「オイオイ、なにすんだお前は。俺がその左の玉つくるのにどれだけ苦労したかわかってんのか、コラ?」
「お前こそなに考えてんだ!小さな子どももいんのに、どんだけ卑猥なモン作ろうとしてんだコラ!」
玉を壊されてもなお、冷静に風太郎に怒る総介に対し、風太郎を冷や汗を流しながら大声で怒鳴り散らす。
2人が口論をしていると、総介の後ろから、人影がやってきた。
「浅倉さーん!棒できましたー!」
「きゃああああ!!何もってんだ四葉あああああああ!!!」
女の子のような悲鳴を上げて風太郎がツッコむ先には、先っぽが盛り上がっている、明らかに『ソレ』を意識したデザインの大きな棒を肩で担いできた四葉がいた。彼女が言ってた『手伝い』とはどうやらこの事だったようだ。
そんな彼女にも突っ込んでいるとここで、風太郎の様子を見かねた総介が彼に向かって釈明する。
「上杉よォ、お前何?何を勘違いしてるか知らないけどよ、これ、アレだよ。『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』だよ」
「アームストロング2回言ったよ!あるわけねーだろこんな卑猥な大砲!!」
全然釈明になってなかった。あろうことか訳の分からない名前の大砲を言い出して(笑)言い逃れをしようとする始末。
ここまで行ってもなお食い下がってくる風太郎に、総介と四葉は呆れながら雪像作りを再開する。
「ったく、思春期はエロい事ばっか考えてるから、『棒』とか『玉』があればスグそっちに話もってくんだよ」
「マジキモいです。しばらく私に話しかけないでください」
よいしょ、と棒を玉の間に立てる総介は割といつも通りだが、壊れた左の玉を作り直しながら珍しく毒を吐きながら軽蔑の眼差しを風太郎へと向ける四葉だが、当の風太郎はそんな彼女を気にする暇もなく、2人に疑問を投げかける。
「いや……だって明らかにおかしいだろ……アレじゃないとしてさ、じゃあ一体何よソレ?」
風太郎が力なく2人に聞いている最中、後ろからとある人物が声をかけてきた。
「やっほー、寒いねー」
その声に風太郎は振り向いて、誰かと確認しようとしたが……
「……誰だ!?」
マスクとフードとゴーグルで誰か分からなかった。すると、その謎の人物がマスクとゴーグルを外して正体を現した。
「一花だよ」
「一花!?」
「おいおい、大丈夫かよ」
姿を現した一花(?)に、3人は驚きを露わにした。風太郎は先程、四葉から一花は体調を崩して五月に看病してもらっていると聞いた。そんな彼女が今目の前にいるのだ。風太郎や四葉はもちろん、総介も驚いて一花(?)を見ていた。
「体調はよくなったのか?」
「ゴホゴホッ、まだ万全じゃないけど、心配しないで」
咳をしながらも、一花(?)は心配はいらないという。
「五月は?」
「1人で滑ってるって」
そう風太郎と話をしていると、一花(?)は総介たちの方を向いて、何かに気付いたような顔をする。すると、風太郎がすかさず一花(?)に2人を止めるように説得しようとしたのだが……
「一花!ちょうどよかった。2人を止めてくれ!こいつらとんでもないものを作ろうと……」
「あ、コレ、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』じゃん。完成度たけーなオイ」
「えええええええ!!!!?なんで知ってんの!???あんの?マジであんの?!俺だけ知らないの!!?」
なんと、一花(?)が『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』の存在を知っていたのだ。最後の方は何故かオッサンっぽい口調になっていたが……それにしても、こんな卑猥な大砲をなぜ知っているのか……そもそも本当に存在するのだろうか……
とここで、総介が皆に補足を入れる。
「黒船来航の折、日本に開国を迫ったペリー艦隊の決戦兵器だ」
「ペリーこんなカッコ悪い大砲持ってる訳ねーだろ!!」
絶対嘘だろ、というような補足を入れる総介。それを聞いた一花(?)が、何かを思い出したかように言い出した。
「あ、そうだ。私、お薬飲むの忘れてたから、飲んでくるねー」
「はーい」
「お大事にな〜」
一花(?)がその場を去っていくのを、総介と四葉は手を振って見送り、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』の製作を再開するのだった。
「オイ、俺今スゲー事思いついた。翼つけよう翼」
「浅倉さん凄いです!どうしてそんな発想ができるんですか?」
「いや、なんかしらねーけどピンときた、ピンと」
「お前らいっそ逮捕されてしまえ」
作業をしながらアホな会話をする2人と、その光景を死んだ目で見つめる1人。と、そこに、
「あなたたち、ここにいたんですか」
「五月……」
「一花とすれ違って、ここにいると聞いたものですから」
五つ子の末っ子の五月がやってきた。どうやら途中で、先程やって来た一花(?)から3人がここにいると聞いて来たらしい。五月は目線を風太郎から四葉と総介へと移し、2人が作っている雪像に反応する。
「コレは……『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』ですね。完成度たけーなオイ」
「だからなんで知ってるんだよ?」
五月もまた、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』のことを知っていた。そして五月も一花(?)と同じく最後は何故かオッサン口調。この姉妹どもは一体どういう教育を受けてきたのだろうか………と、今度は五月が続けて補足を入れた。
「別名『走る雷』。ヤキニク戦役における惨劇『火の7日間』を引き起こした地獄の兵器です」
「さっきと話違うんですけど。何、ヤキニク戦役って?何、『火の7日間』って?ソレただ7日間焼肉してただけじゃね?」
総介が言った補足とは全く違う事を言う五月にツッコむ風太郎。彼も新八ポジションが板についてきたようだ。
「私はこのまましばらく滑りますが、皆さんはどうされるのですか?」
「私と浅倉さんはもうちょっと作ってるね〜」
「俺はこいつらがこの小説サイトの規約に違反してないかどうか監視してる」
「上杉君、メタいです。ですが分かりました。では私はこれで失礼します」
そう言うと五月は、スキー板とポールを持ちながら山の上へと向かっていった。ここで、風太郎は一つ疑問に思った。
「……なんでアイツ、ここに来たんだ?」
疑問に思う風太郎を尻目に、総介と四葉は『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』の製作を続けるのだった。
てか作者、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』言いたいだけだよね?文字数稼げるし……
………………………………
それからしばらくして………
「オイ、コレすごくね?四葉、お前もしかして天才じゃね?普通『すべり台』つけようなんて思いつく?」
「よくわかりませんけど、フッと降りてきました!インポテーションです!」
「インスピレーションな……」
あの後、四葉が棒の真ん中にすべり台を足そうとの案を総介が採用し、結果完成したのが『男のナニにすべり台と翼がついた意味不明な雪像』である。………コレ、R-15で済むのか?
そして総介と四葉の2人は、完成した『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲+すべり台と翼』を、感慨深げに見つめていた。と、その時、こちらへとやってくる人物が三度現れた。
「どーも」
「………今度は誰だ!?」
風太郎が振り向けば、次に来た人物は一花(?)と同じような感じで、ゴーグルとニット帽を着用しており、またもや正体が分からない。が、すぐにゴーグルを上げてその者は正体を現した。
「……三玖」
「あ、三玖!」
「!」
三玖という名前に、総介がピクッと反応して、彼女の方に目線を遣る。彼女はいつものとは違い、隠れる前髪を真ん中で分けて、ニット帽を被って両眼がはっきりと見えるようになっていた。ふと目が合い、三玖が総介に軽く手を振ってくるので、彼も胸元で小さく手を振って返す。
(かわいい……でも)
愛おしい恋人のスキーウェア姿を見れて大満足の総介だが、昨日の一花と風太郎の捜索から、三玖の表情が優れないのは、総介にとっては見逃せるようなことではなかった。そのまま三玖を見つめ続けると、彼女は何かやましいことがあったのだろうか、そのまま目線を外して、総介と四葉が作った雪像へと目を向けた。
「……コレは、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』。完成度たけーなオイ」
「もう原型ねーのになんでわかるんだよ!?」
毎度のことながら、最後に謎のオッサン口調で2人の製作した雪像を当てて見せた三玖。しかも、すべり台やら翼やらをドッキングしているにもかかわらず、何故『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』だと言い当てられるのだろうか?この姉妹勉強出来ないくせに……と、ここで三玖も五月と同じく補足を入れる。
「惑星『イエヤース』と『ミツナリン』の星間戦争において、『イエヤース』側を勝利に導いた『タダカツ砲』とは裏腹に、ずっと倉庫に入れられっぱなしだった悲しき兵器」
「どーでもいいし長げーよ!!てか関ヶ原?その戦い関ヶ原だよね!?星間戦争じゃないよね!?」
戦国武将好きの三玖らしいっちゃあらしいが、なんかもう説明がめちゃくちゃになってきている。と、ここで、風太郎が三玖に尋ねる。
「ていうか、何でここに来たんだ?」
「……それは」
「私が呼んだのです!」
四葉が2人の話に割って入ってきた。
「上杉さんと三玖の運動神経は壊滅的に悪いので、2人は私と浅倉さんがレクチャーしてあげようと思いまして呼んだんですよ!」
えっへんっといった様子で、四葉はスキーウェアの上からでも分かるほどの大きな胸部を前に突き出すように張る。
「壊滅的……」
「合ってるがもう少し柔らかく言ってくれ」
「てか、俺も教えんのか?」
「もちろんです!浅倉さんは三玖を見てあげてください。私は上杉さんをお世話するので」
「!」
「……まぁそれなら構わねぇけど」
四葉にそう言われて納得した総介だったが、三玖の方は少し、いやかなり動揺していた。思い詰めている渦中の人物とのマンツーマンでのスキーの指導なので、ほぼゼロ距離まで近づくことになる。三玖は突然この状況で総介と2人きりになることに、少し恐怖を覚えてしまった。
「………」
そんな恋人の様子を、総介は横目で見ていた。
「じゃあ、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』も完成したことですし、ビシバシいきますよー!」
「え、アレ放置したままなの?」
そういうことで、しばらくこのゲレンデには、誰が作ったかは知らないが、とてつもなく卑猥に見える翼の生えたすべり台の雪像が存在ているという噂が、この冬の期間流れ続けるのだった。
「ねぇ。何アレ?」
「変な形ぃ」
「わー、すべり台だー!」
「なんだあのヘンテコなオブジェは?」
「んアレか?なんだよ、『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』じゃねーか。完成度たけーなオイ」
何人かの人間には存在を知られているというね………
………………………………
その頃、二乃はというと……
「………海斗君はどこ行ったのかしら……」
ちゃっかり海斗とエンカウント出来ないかと期待してスキーをしていたが、残念、海斗は川釣りに行ってましたとさ。
あ、アイナは山登りね。
………………………………
その後、しばらく風太郎は四葉から、三玖は総介から滑りを教わっていたのだが、どうも2人はぎこちなかった。風太郎の場合は元々の身体能力の低さもあるのだが、三玖は平静を保って総介から教わっているものの、昨日のことを気にしてか、イマイチ総介の教えたことわ飲み込めずにいた。
そんな時に、薬を飲んで帰ってきたという一花(?)が合流し、四葉が鬼で逃げる鬼ごっこを提案し、他の皆も別に断る理由も無いので、なし崩し的に行うこととなった。
「……さて」
総介は1人、ブレーキの仕方が分からずに盛大にズッコケた風太郎を無視して、軽く下に滑って逃げおおせ、フードを被って正体が見えないようにして、とある建物の裏で今後どうするかを考えていた。四葉から逃げおおせることなど彼にとっては造作もないことなのだが、そんなことより三玖のことが気になる。
「……何があったんだ?」
総介自身、三玖の元気の無さの原因を、根本的な意味では把握していない。表面では、自分が関わっていることはうっすらと分かるのだが、いくら恋人同士でも、細部まできっちりと理解できるわけでもなく、このなってしまってはもう当人に聞くしか術が無い。
総介がそう三玖の事へと考えを巡らせていると、建物の影から声がした。
「あれ?」
その声に、総介はだいぶ聞き覚えがあった。そして……
「もしかして………海斗君?」
人の気配を感じたのか、その声の主、二乃は建物の向こうにいる総介の気配を、もしや海斗では?と思い覗いてみることにした。それにしても……
(どんだけ恋愛脳なんだよこの女)
未だ姿が見えない気配を海斗と誤認するほど、二乃の頭は海斗一色のようだ。
(………はぁ)
そんな二乃に総介は呆れてため息をつきながら、彼女と会うとややこしい事態になるのは目に見えているため、その場を離れようとして逆方向へと歩き出したのだったが、その建物の角を曲がった時だった。
「あ〜、浅倉さん見ーっけ」
「………あれま」
そこには、鬼の四葉が待ち構えていた。
(………どうしましょ?)
総介は建物の角を曲がらずに、中央に戻って高速で思考する。
一方は鬼の
(………よし
2人とも殴って気絶させよう)
人として最低最悪の手段に打って出ようとした。
総介が両手をあげて、ニヤリと外道の笑みを浮かべながら握り拳を作り、二乃と四葉を待ち構える。そして………
「海斗君!」
「浅倉さん!」
2人が建物の角を曲がった時にあったのは……
「「!」」
雪の山に置いてあるスキー板やスノボだけだった。総介の姿など、微塵も無くなっていた。
「……あれ、四葉じゃない」
「二乃みっけ」
偶然出会った2人。てか、二乃は鬼ごっこしてません。どっちかというと追う側です(海斗を)。
「そっちに銀髪の男子行ってない?」
「二乃こそ、浅倉さん見なかった?」
「?見てないわよあんな奴………おかしいわね……」
「わたしも、銀髪の人なんて見てないよ」
2人は探している人物を互いに尋ね合うが、どちらも覚えがないようで、しばらく会話をしてからその場を離れていった。
んで、総介がどこに消えたかと言うと………
「………助かったよ
三玖」
「……危ない
捕まるとこだった」
総介の後ろの建物の前にあるスキー板やスノボが置いてある雪山は、実はかまくらであり、そこに隠れていた三玖が、総介を引っ張って中へと入れ、スノボで蓋をして2人をギリギリでやり過ごしたのだった。これにより、総介の理不尽極まりない暴力で哀れな犠牲者2人を出さずに済んだわけだ。えかったえかった。
「かまくらか………もしかして、作ったの?」
「ううん、元からあった」
「そう……結構あったかいね」
「うん……」
2人は体制を整えて、体育座りで自然と身を寄せ合う。
「俺もしばらくここにいていい?これなら四葉から逃げきれそうだし」
「うん、それがいいよ」
「…………」
「…………」
そのまま2人は、しばらく沈黙してしまった。普段なら、何も考えずともポンポンと話の話題が出てくる2人なのだが、今の総介と三玖の間には、微妙な気まずさが漂っていた。
「……ねぇ、三玖」
「!!」
それでも、総介はいつもの気怠そうな表情を崩さずに、三玖に昨日からのことを尋ねた。
「……な、何?」
「昨日から、まあ正確には長女さんと上杉を探す時から様子が変だけど………何があったの?」
「…………」
三玖は一瞬、誤魔化すことも考えたが、自分が総介を小手先の手段で誤魔化せるとは到底思えないし、誤魔化したとしても、この距離は続いたままだ。何より、総介にできる限り嘘はつきたくは無い。
少し怖いが、三玖は昨日のことを話すことを決めた。
「………あのね、ソースケ」
「ん?」
「昨日のことなんだけど………」
三玖はそれから、昨日一花から言われた言葉や、それについてずっと悩んでいることを打ち明けた。
嘘偽り無く、自分がどうすればいいのか分からずにいるということも、全て………
「……だから、私たち5人は、平等にしなくちゃいけないのかなって……」
「…………」
三玖の話が終わるまで、総介は一切喋らずに黙って聞いた。
そして三玖が悩んでいたことを全て話し終えたとき、彼は膝の上に置いていた手を彼女の頭へと伸ばし、ニット帽と手袋越しで触れて、自身の方へと引き寄せた。そして……
「………辛かったろう」
「!!………ソースケ……」
「一人で抱えることも、すごく苦しいのは分かるし、それを誰かに相談することが、とても勇気がいるのは、俺も知ってる。
ずっと苦しかったかもしれないけど、もう一人で悩まなくていいよ。
三玖の苦しみも、悩みも、不安も、怖さも、全部俺にぶつければいいし、
恋人なんだから、遠慮なんてしなくていいよ
俺でよかったら、全部受け止めるから
三玖が苦しかった分を俺にぶつけて欲しい
だから、もう大丈夫だよ、三玖」
「………」
三玖は総介の言葉を聞いて、ようやく肩の荷が降りたように軽くなった
感覚と同時に、目頭が熱を帯び、その中から溢れ出てくるものが頬を伝い、冷たく冷えていく感触を感じた。
今までの不安を、全て総介にぶつけるかのように、三玖は横から彼に抱きつき、彼のスキーウェアの胸部に顔を埋めた。総介も、顔を埋めながらプルプルと震える彼女を、黙って受け入れて、右腕を三玖の背中に回して、手でポンポンっと優しく叩く。
「君は泣いてばっかりだね」
「ぐすっ……ごめんね……私、ずっと……ぐすっ、こわくて……ふあんで……」
「いいよ。三玖がいいって言うまで、ずっと隣にいるから………がんばったね」
「………うん」
それから数分は、三玖は総介の胸中で泣き続けた。不安だった気持ちを涙とともに流して、総介がそれらを全て受け入れた。その間、総介はいつものやる気のない表情とは違い、優しく慈愛に満ちた眼差しを三玖の頭へ向けて、慰め続けた。
コイツ、さっきまで三玖の姉妹を殴って気絶させようとしてた奴と同一人物です。
………………………………
「………落ち着いた?」
「うん、ありがとう……」
少し経ち、ようやく涙を流し終えた三玖は、総介の右肩に体を寄せ
頭を乗せていた。その目の周りは、少し赤くなりながらも、どこかスッキリとしたように透き通った瞳が映っていた。しかし、そんな目元とは裏腹に、彼女の表情は完全に晴れたものではなかった。
「でも……どうすれば……」
総介に自身の悩みを吐露したものの、未だ一花の言葉が三玖の心の中から消えず、解決できずにいた。
「そうさなぁ………」
総介はそう言いながらも、言い方に全く悩んでいるような感じがしなかった。もっと言うなら、彼は少し笑っていた。そのまま、彼は口を開いた。
「………俺はさ」
「……うん」
「長女さんの言うことも分かるけど、三玖の幸せは、別に他の連中に分けないでいいと思う」
「……え?」
その言葉に、三玖が総介の肩から頭を離して、彼の横顔を見つめる。
「いや、ていうか、分けないで欲しいな。それは、
「私だけの……幸せ?」
「うん。三玖の幸せを祝福するのはいいけど、俺はそれを、他の4人に分けるために、三玖を愛してるわけじゃないから……
俺の愛は、三玖だけが独占していいものだから」
「独占………」
総介の言葉を、繰り返して口にして考えながら、三玖は総介の次の言葉を待った。
「……三玖、前に俺は、三玖だけが『特別』だって言ったよね?」
「……うん」
「俺は、今でもそれは変わらないし、今後も、変わりはしない。俺にとって、『三玖だけ』が、特別な存在だし、三玖にとっても、俺は『特別』な存在……だよね?」
「うん……もちろん、ソースケは、特別な人……」
「ありがとう………でね」
「?」
「でもそれは、他の5人にも言えることだよ?」
「!?」
三玖はその言葉に、口を開けて驚きを露わにした。
「長女さんには長女の特別があるし、それは四葉だったり、肉まん娘だったり………まぁアイツもそうだ。他の四人にとっても、それぞれ『特別』があるんだよ」
「………」
「それが一緒のものか、別のものなのか、そんなのは俺は知ったこっちゃないけど………でも、それを無理やりに一緒にして、『平等』にする必要なんてないよ」
「………」
総介の話を、三玖は黙ったまま耳を傾け続ける。そして……
「君らは五つ子だけど、1人1人は全く違う人間なんだから、いつかは別々の道を行くんだ………
どうせ違う道を行くなら、もうちょっと『自由』にしてもいいんじゃないかな?」
「……『自由』……」
総介が言った『自由』という言葉を、三玖は頭の中で何度も響かせた。
今まで、一緒にいた自分達5人。容姿もそっくりで、昔はそれこそ影分身の如く同じ容姿、服装だった。それがいつしか、それぞれが違う髪型、服装、アクセサリーが変わった。一花はピアス、二乃は蝶々型の2つリボン、三玖はヘッドホン、四葉は緑のリボン、五月は星形のアクセサリー。見た目、服装、装飾も変わり、次第にそれぞれの好みも変わっていった。
それでも心の中では皆平等で、皆同じだと思っていた。
いや、違う。『バラバラ』だと思いたくは無かっただけなのだ。
5人『平等』だと思わなければ、どこかでバラバラになってしまう。そうなれば、あの頃の仲の良かった姉妹に戻れなくなってしまう。
実際そうなるかは分からないが、5人の意識の中には、それぞれ同じ考えが存在していた。それが一番顕著に出ていたのが、二乃であっただけである。
それは三玖とて変わらず、だからこそ悩み、不安になったのだ。
しかし、三玖のその悩みや、自身をや姉妹を支配していた『平等』という意識を、総介の『自由』という言葉が粉々にぶっ壊す感覚が、彼女の中に響き渡り、やがて消えていった。バラバラに崩れるのではなく、自分の足で自分の道を歩く『自由』……
やっと
やっと見つけた
私だけの『特別』
「………自由に……」
総介の言葉を、もう一度反芻する三玖。
その表情にはもう、不安の破片は一欠片も残ってはいなかった。
「……とまぁ、愛する人の手前カッコつけてみたものの、俺が言えるのはこれぐらいしかないかな………こんな俺でも、少しはお役に立てたかね、三玖さんや?」
「うん、充分………もう、大丈夫」
「そりゃよかった……」
「……ありがとう」
「………どういたしまして」
横目で三玖の表情を確認した総介は、どうやら悩みは解消できたようだと悟って安堵した。
と、
「………ねぇ、ソースケ」
「ん?どうし……!」
総介が三玖に呼ばれてそちらに顔を向けると、すでに間近に迫っていた彼女の顔面があった。
そのまま三玖は、横を向いた総介の唇に、自身のそれを重ねた。
「ん………」
「…………」
初日に、布団の中でして以来のキスだったが、不安が心の中を占めていた分、長い時間していなかったように感じた2人。2日ぶりの口付けも、すごく久しぶりに感じたようで、しばらく2人は唇を重ねたまま動かなかった。
「………はぁ」
「………三玖」
やがて、2人はようやく顔を離して見つめ合う。総介も三玖も、寒さが原因ではないほどに頬赤く染まっていた。
「……ふふっ、唇冷たいね」
「……ふふっ、そうだね。かまくらとはいえ、外だから」
小さく笑い合った後、三玖は総介の背中へと手を回す。総介も、それにつられて三玖を抱きしめ、そのまま顔を再び近づけて目を合わせる。
「じゃあ、暖かくなるまで温めて欲しい」
「………承知」
少しわざとらしく総介か答えた後、2人は再び唇を重ねあった。
「んっ……はぁ」
「はぁ……三玖……」
「ソースケ………大好き」
「三玖……俺もだよ。愛してる」
「私も、愛してる……ん」
2人は視線を一切外すことなく見つめ合いながら、互いに愛を伝え合うと、三度口付けを交わした。
(ありがとう、ソースケ
私に『自由』を教えてくれた
私の大切な
『特別』な人)
この後、総介と三玖はめちゃくちゃキッスとハグで温め合い、かまくらの中の温度と2人のラブラブ係数が比例しながら上昇し続けるのだった。
総介久々に爆発しろ
しかしこの後、2人や姉妹にまたまたトラブルが舞い込んできちゃうのですが、コイツらはまともに林間学校を満喫できない運命のようですはい。
この話の前半は、林間学校の中で一番書きたかった部分です。後悔はしていません(笑)
そして、イチャイチャラブラブカップルが戻ってきました。しかも更にレベルアップして……クソリア充め……海斗もそうだけど……
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
『かぐや様』の2期と、『銀魂』の映画を見るまでは死ねない……