加えて一時ですが、1月27日に日間ランキング総合9位まで行きました!その直後にアクセスがグングン伸びました!ですがまぁ、すぐに圏外になりましたけど……
活動報告にも書きましたが、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!
前回、総介は三玖とかまくらでしばらくイチャイチャチュッチュした後、色々な意味で温まったということで、かまくらから出ることにした。
「……だいぶ温まったね」
「うん、ぽかぽか……」
かまくらから出た2人は、かまくらで温まったおかげか、顔を赤くさせながら横に並んで歩き出した。いや、それは多分温まっただけでは無いと思う。総介爆発しろ。
総介は目線を横に向けて、三玖の顔を見てみる。その顔は、晴れやかでスッキリとしていて、先ほどまでの悩みは吹っ飛んでいったような面持ちだった。
(……とりあえずは、この子の悩みは解消ってとこか?)
彼が言った『自由』という言葉で、三玖は自身や姉妹のことについて、一区切りついたようだ。そんな恋人の曇りの無い表情を見て、総介も一安心する。
その後、しばらく2人は雪の積もったコースを歩きながら進んでいると、後ろから何者かの影が現れ、そして……
「三玖と浅倉さん見ーっけ!」
「!」
後ろから三玖に抱きついてきた何者か……四葉に対応できずに、三玖はそのまま前に倒れ込んでしまうが、雪がクッションになっているおかげで、ケガをせずに済んだ。
「へへーん、こんな所で油断してちゃダメですよ!」
「忘れてた……」
「そういや俺たち鬼ごっこしてたんだったな」
「ヒドイ!!」
2人はかまくら内でイチャイチャしているうちに、鬼の四葉から逃げることを忘却の彼方へと捨て去ってしまっていたのだった。
「ま、まぁでも、他の3人も捕まえたし、残りは五月を見つけるだけですね!」
四葉は気を取り直し、残りが五月だけだということを告げる。と、同時に、四葉の後ろの物陰から風太郎と一花(?)、それに二乃が姿を現した。その3人を、四葉が呼ぶ。
「おーい、こっちこっち!」
「まったく、私も人捜ししてるのに……」
「ま、まさかあっという間に捕まるとは……四葉は化け物か……」
「やっほー」
3人がこちらへとやってくる中、二乃が総介を見てあることに気がつく。そして、彼を指差してこう言った。
「あら、コレ『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』じゃない。完成度たけーなオイ」
「違うから!明らかに違うよね!どう見ても浅倉だよね!」
「バカヅラさげてホントしょーもないアームストロングね」
「何!?結局なんなのアームストロング砲!!」
前回のやり取りで製作の四葉意外で唯一参加していなかった二乃が、今更『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲』のくだりを持ってきた。それに反射するように、風太郎が即座にツッコんでゆく。おめでとう風太郎、君は二代目新八だ!
まぁもうこのくだりはもう終わりとして、2人の横にいる一花(?)は相変わらずマスクをしている。その様子を見て、三玖は彼女を心配する。
「一花、体は大丈夫?」
「うん、今のとこは大丈夫だよ」
「そう。でも一応安静にしてね」
「わかってる。そろそろ戻るとこだから」
そんな会話をしている中、総介は目を風太郎へと向ける。すると、彼の顔がやたらと赤く染まっていることに、総介は気づいた。そしてその体は、わずかだがフラついている。
「お前ボーッとしてんぞ。大丈夫かよ?」
「あ、ああ……なんとか……」
「汗も結構かいてんぞ?……上杉、お前……」
「………」
風太郎はその場をごまかそうとしたが、さすがに総介は騙せなかった。
(自分はともかく、浅倉を騙すのも限界か……やはりらいはからもらっていたか……ということは一花のも……悪いことをしたな……)
恐らくは、らいはの風邪をそのまま貰い患ったのだろう。そしてそれを、自分が一花へと移してしまった。風太郎はそのことに罪悪感を感じながらも、平静を保つことに精一杯努める。
その中で、総介は四葉に話しかけていた。
「四葉、肉まん娘はあの後見たのか?」
「いえ、五月も捜したんですが、見かけもしませんでした」
「そうか……」
「……!……あ、浅倉……」
四葉の話を聞き、風太郎は少し考えた後、何かに気がついたように、総介に声をかけた。
「ん、どうしたよ?」
「もしかしたら、事態は思ったよりも深刻かもしれない……」
「………」
「「「!」」」
「……話聞かせなさいよ」
今まで沈黙していた二乃が、風太郎に向けて喋り出した。このただならぬ事態に、さすがに危機感を抱いたのだろう。
風太郎は二乃の言葉の直後に、その場にいた皆に説明を始めた。
………………………………
「……遭難?」
「ああ……いくらゲレンデが広いとはいえ、5人がこれだけ動き回って会わないのは不自然だ」
風太郎は皆に、五月がゲレンデで遭難したかもしれないと、持っていたマップを広げて話をした。その話を、多少は疑いながらも、完全に否定せずに一同は聞き入れる。ここで、三玖が一花(?)に話しかける。
「五月はスキーに行くって言ったんだよね?」
「え……うん」
「私たち、雪像を作ってる時に一回会ってるよ」
「だがそれもほんの一瞬だ。俺たちの方に来てからすぐ後に肉まん娘はどっか行っちまった」
「……もしかしたら、上級コースにいるんじゃない?」
「そこは私も行ったけどいなかったわ」
「………」
誰もあの後に、五月を見ていないので、話し合いは暗礁に乗り上げてしまう。その沈黙の中、総介が再び話し始める。
「ま、遭難の線も捨てられねーが、もしかしたらフードコートで飯でも食ってんじゃねーのか?誰も行ってねーんだろ?」
「うん……そうかも」
「……私、一応見に行ってくるよ」
「………!」
一花(?)がフードコートに行き、五月がいないか確かめようとした時、四葉がマップを見て何かに気がつく。
「ここ、まだ見てないかも」
「えっ」
四葉がマップの『ある場所』を指差した。そこは……
「こっちは……」
「えっと……最初に先生が言ってたよね
まだ整備されていないルートで危険だから立ち入り禁止って……」
その言葉に、総介を除いた一同がにわかに慌ただしくなる。
「本当にコテージにいないか確かめてくる」
「私は先生に言ってくるよ」
それぞれが動こうとした時に、一花(?)が何故か皆を止めようとする。
「ちょっと待って。もう少し捜してみようよ」
「なんでよ?場合によってはレスキューも必要になるかもしれないのよ」
二乃が、一花(?)の止める様子を見て疑問を投げかける。どうも彼女の様子がおかしい。
「えっと……五月ちゃんもあんまり大事にしたくないんじゃないかなーって」
「………」
総介は、その一花(?)の言葉が気になった。普段の彼女を知っている訳ではないが、妹の緊急事態かもしれないのに、そのようなことを言う女だろうか?
いや、それよりも、彼女は
総介が頭の隅で疑問を浮かべた直後に、二乃が一花(?)に迫りながら言った。
「……大事って、呆れた
五月の命がかかってんの!気楽になんてしていられないわ!」
二乃のその言葉に、一花(?)は黙り込んでしまい、そのまま謝った。
「……ごめんね」
5人の中で最も姉妹思いの二乃だからこそ、出た言葉である。もちろん、五月を心配しているのは、何より他の3人も一緒なのだが、中でも二乃は人一倍その思いが強かった。それは今回のようなことでもそうであるし、『悪い意味』でも然りである……
「どこにいる、五月……」
風太郎は考えを巡らせるが、立ちくらみで頭が回らない。それでも、五月を見つけるべく、何か手がかりはないかと思い返す。
「フータロー、大丈夫?もう休んだ方がいいよ……」
遂には三玖にもわかるほどにフラつき、顔色を悪くしてしまうが、それでも風太郎は、五月を探そうとすることを諦めなかった。
そして………
「!!」
とある一つの違和感に気づき、そこからある仮説を立てた。
もしかしたら………
「もういい。わたしが先生を呼んでくるわ」
二乃が、その場を離れて先生を呼びに行こうとした時だった。
「待ってくれ、俺に心当たりがある」
「?」
風太郎の一声に、全員がそちらを向く。
「心当たりって……?」
「大丈夫だ、恐らく見つかる」
「………」
自信、いや、何かを確信したような目をした風太郎を、総介は見つめながら何かを考えていた。彼の声に、二乃が確認する。
「………信じていいのよね?」
「ああ。
一花、付いてきてくれ」
「!」
風太郎は一花(?)を指名した時に、総介もとある仮説を浮かべた。
(…………)
総介からすればまだ確証は無いが、風太郎が確信している様子の辺り、恐らくそうなのだろう。
「……んじゃ、俺と三玖はフードコートでもさがしてくらぁ」
「う、うん……」
「ああ、そうしてくれ」
「じゃあ、私と二乃はコテージの方に行きますね」
こうして、三手に分かれて、五月の捜索を開始することとなった。
………………………………
「………やっぱりいないか」
「……そうだね」
一同は別れた後、総介、三玖の2人はフードコートにて五月を捜したのだが、結局見つからずじまいだった。総介は少しため息をつきながら、三玖へと話しかける。
「……ホント、君らは誰かが行方不明にならないと気が済まないのかね?」
「……ご、ごめんなさい」
花火大会の時は三玖と総介がはぐれ、肝試しでは二乃と五月が、その後に一花が、そして今回は五月の行方がわからなくなった。
「いや、三玖が謝るようなことじゃないよ」
「………」
総介は表情を変えないまま三玖をフォローする。それでも、三玖には多少の申し訳なさが残ってしまう。
「………ねぇ、ソースケ」
「ん?」
「五月……見つかるかな………」
三玖は俯きながら、総介に尋ねた。せっかく心の中の曇が晴れたというのに、また別の問題がやってきた。三玖の今の頭の中は、妹の心配でいっぱいだった。総介はそんな彼女の不安が大きくならないよう、優しく声をかける。
「………上杉は何かを確信したような表情をしてた。多分、肉まん娘がいる場所が浮かんだんだと思うよ」
「五月が、いる場所?」
「うん、一応俺たちも別の場所を探してるけど、今は上杉と長女さんが一番見つけられる可能性が高いだろうね」
「………」
「もしもそれでもアウトなら、先生に言って捜して貰うしかない、かな」
「……うん」
(もし上杉の考えも違っていたら最悪、海斗に連絡するか……大門寺を動かすことも視野に入れねーとな……)
同盟を結んだ相手の娘ならば、大門寺の力を用いての捜索も可能となる。総介は最悪の状況をよそくしながらも、その中で想定し得る最善策を常に考えていた。事態が大事になれば、必然と出てくる手段である。
そう思いつつ、そのまま2人はフードコートを後にし、二乃と四葉に合流するためにコテージへと戻ろうとした、その時に、三玖のスマホから着信音が鳴った。
「………一花?」
着信の相手は、一花と表示されていた。
もしかしたら、五月を見つけたのかもしれない……
そう思いながら、通話ボタンを押して、スマホを耳に当てた。すると、そこからは、信じられない声が、彼女の耳に聞こえてきた。
何故なら……
「三玖!大変です!上杉君が……上杉君が!!」
「い、五月!?なんで!?」
「!?」
今現在、全員が探しているはずの五月の声が、一花の連絡先から聞こえてきたのだから。
それは、問題を起こした末っ子が、新たな問題を引っ提げて戻ってきた瞬間だった………
………………………………
事の真相を話すとこうだ。
一花は最初から総介達の前に現れなかった。全ては五月が風太郎が姉妹を見分けられるかを確かめるために仕掛けたトリックだったのだ。
本物の一花はずっとコテージのベッドの上で休んでおり、一花に変装した五月が風太郎と総介、四葉の前に現れ、その後、その場を離れて変装を解いた五月が目の前に現れる事で、一花と五月の2人がゲレンデに来ていると見事に全員を欺くことができた。
本来なら、他の姉妹や総介が違和感に気づくはずなのだが、ゴーグルやマスク、フードで顔以外のところを隠しており、いくら姉妹でも注視しなければ気付くことが出来ない。そして総介も、三玖以外の姉妹についてはほとんど興味を持っていないため、五月が一花に変装していることなどは気づかないし、気にもかけていなかった。
その中で、風太郎は、自分が鬼ごっこで転倒する寸前に、変装した五月が自分を「上杉君」と呼んだことを思い出し、もしやと思って一花(五月)を連れ出して、真相に辿り着いたのだった。
そこで遂に、風太郎の体力が尽きてしまい、寒い中外にいたことも相まって、余計に体調を悪化させてしまった。その異変を感じ取った五月が、借りて出てきた一花のスマホで、三玖に電話をかけたのだった。
コレが、今回の『五月行方不明事件』の真相である………
宿舎に戻った一同は、総介におんぶされた風太郎を先生へとハゲの先生(失礼)へと預けた。
「よく連れてきてくれたな。上杉は一旦この部屋で安静にさせ様子を見る。これ以上悪化するようなら私が病院に送ろう。こいつの荷物を持ってきてくれ」
「………」
「はい……」
四葉が俯きながら、力なく返事をする。二乃は五月の頭を「コツン」とグーで優しく殴り、三玖と総介は黙ったまま風太郎を見ていた。そして一花(本物)は、口元を両手で覆いながら、帰ってきた一同からの説明と、風太郎の姿を見て、ショックを隠せなかった。
「ごめん……私のせいだ」
一花はそのまま、走ってその場を去ってしまった。
「一花!」
三玖が止めようとするが、彼女はそのまま皆から離れて言行ってしまった。
「お前たちは着替えて広場に集合だ。じきキャンプファイヤーも始まる」
「わ、私も残ります」
五月は罪悪感を感じているのか、その場に残って風太郎を看病しようとするが、彼女を風太郎本人が止めた。
「ゴホッ……お前たちがいても仕方ないだろ、1人にしてくれ」
「!」
「………」
風太郎はそのまま、力なくも総介へと目を移して、彼に声をかける。
「すまん、浅倉……こいつらを頼む」
「俺に全部押し付けんな、コノヤロー」
総介が風太郎の頼みを、いつもの倦怠感満載の口調で、目を逸らしながら即答で断る。風太郎ももっともなことなので、すぐに謝った。
「そうか……すまん」
「……今はゆっくり休みやがれ」
「悪い……」
2人の会話の途中の時、二乃が入ってきた。
「ちょっと、冷たいんじゃない?五月はあんたを心配して……」
「ということだ。早く行きなさい」
二乃の言葉を、先生が途中で切ってその場を収めようとする。
「……でも」
「安静と言っただろ!」
それでも食い下がってくる五月や一同に、語気を強めて注意をする。
「これよりこの部屋を立ち入り禁止とする!見つけたら罰則を与えるからな!」
そう言ってハゲの先生(失礼)は、風太郎と共に部屋に入っていった。総介、三玖、二乃、四葉、五月はそれを見届けることしかできなかった。
重い空気が、彼らの周りに立ち込める。
「………」
「フータロー……せっかく林間学校に前向きになってくれたのに……
一人で……こんな寂しい終わり方でいいのかな……」
「………」
唯一、三玖が発した言葉にも、今この場で、答えられる者は誰もいなかった。
それは総介も同じであり、いつもと変わらない死んだ魚の目で、二人が入った部屋の扉を見つめていた……
………………………………
どんな時でも、時間は平等に経過する。そうして時は経ち、キャンプファイヤーが始まっており、多くの生徒たちが火の周りを囲んでいた。
「最後のダンスどうする〜?」
「俺今から誘っちゃおっかな!」
それぞれがダンスのペアを探している中に、二乃の姿もあった。しかし、その表情は、あまり良いものでは無かった。
「………」
「アレ、二乃どうしたの?元気無いね」
「男の子と踊るってテンション上がってたじゃん」
二乃の友達が2人、彼女に話しかけてくる。彼女たちは二乃が誰と踊るから秘密になって知らされておらず、海斗と踊るかもしれないということは、二乃は2人に伝えてはいなかった。
『信じていいのよね?』
『ああ』
そんな中、昼間の風太郎との会話を思い出す。
「……ムカつく」
昼間のこともそうだが、それでも切り替えて、キャンプファイヤーの広場を探しても、海斗の姿は見当たらなかった。それどころか、周りの女子たちも、海斗がどこにいるか躍起になって彼を捜していた。彼がいかにモテているのかを改めて知ると共に、海斗がこの場にいないことに哀しくなってしまう。
(……海斗君……)
「………ちょっとトイレ」
「二乃、早くしないと始まっちゃうよー」
二乃は海斗がこの場にいないため、キャンプファイヤーに参加するのは無意味と感じ、その場を離れることにした。
一方、火を囲む生徒たちの広場の離れた階段に、一花はいた。その目は寂しそうに、中心の火を見つめていた。その時、頬に温かい感触を感じ、少し驚く。見ると、抹茶ソーダを片手に持った三玖が横にいた。
「わっ!」
「……あげる。風邪は水分補給が大事」
「へー……ホットもあるんだ……」
抹茶ソーダのホットって、それ美味しいのだろうか……
と、三玖がそのまま一花の額に、自分の額を合わせて、熱があるか確認する。
「……治ってる」
どうやら、一花の悪化した体調は良くなったようだ。
「やっぱり……私がフータロー君にうつしちゃったかなぁ」
一花は風太郎に申し訳ない気持ちが湧いてくるが、三玖がフォローする。
「フータローは最初からおかしかった」
「えっ?」
「今にして思えばずっと具合が悪かったんだと思う。もっとよく見てあげてたら……
私もソースケや自分のことで必死だったから……」
三玖の最後の一言に、一花は昨日の肝試しのことを思い出す。
「……ごめんね」
「?」
「昨日、三玖にあんなこと聞いちゃって……あれから、だいぶ悩んでたって、浅倉君が言ってたから……」
「………」
一花は総介が風太郎を連れて戻ってきてからしばらくして、総介と軽く話をした。
そこで彼女は、昨日の一花の言葉が、三玖が思い詰めてしまう事のきっかけになってしまった事を知った。それも、総介の言葉で吹っ切れたのだが……
「私ね……少し怖くなっちゃったの……」
そのまま一花は、三玖に向けて話し始めた。
「三玖が浅倉君を好きになって、彼と付き合うようになって、それに夢中になったら……みんな同じように、別々の場所に向かって、バラバラになっちゃうのが……怖くなっちゃった……二乃がああして浅倉君に突っかかってたのも……少しるようになってね……やっぱり、まだ5人一緒にいたいなぁって……」
「………」
三玖は、一花がポツリポツリと本音を吐いて行くのを、黙って聞き続けて、そのまま彼女の背中に手を回して抱きしめた。
「……三玖?」
その行動に、一花が少し戸惑うもの、三玖はそのまま彼女に話しかける。
「一花……聞いてほしい……」
「うん………」
「私たちは、みんな違う……好きになるものも、人も……みんな違う」
「……うん」
「でも、それはバラバラじゃない
みんなが何を好きになるか、誰を好きになるか
それは、みんなの『自由』だから」
「………」
「バラバラになるのは、勝手にそうなるけど
『自由』は、みんな自分の考えで、自分の足で、歩けるの
それは、私たちは、どこにいても、バラバラじゃない
みんなそれぞれが、『自由』に生きているだけだから」
「……三玖……」
「……一花、私ね……」
「?……うん」
「ソースケと………エッチ……したの」
「!!!?えっ?……えっ???」
結構いい話をしていたというのに、三玖はそのまま頬を赤くさせながら、とんでもないことを言い出した。その言葉を聞き、一花も頬を赤くさせて、驚きを露わにする。
「ソースケの家に泊まりにいった日にね……何度も、何度も、したの……」
「ち、ちょっ……三玖?」
抱きしめていた腕を解いて、もじもじとさせながら惚気話を続けた。
「あの日……すごく……幸せだった……初めての私に、ソースケ、すごく優しくしてくれたから……」
「み、三玖、わかった。わかったから、落ち着いて……」
これ以上は流石に聞いているこちらもどんな顔をすればいいか分からなくなってしまうので、一花は三玖を止めようとする。2人とも、顔を真っ赤にさせている。
「落ち着いてる……一花……だからね……私……」
三玖は少し、言葉を切って深呼吸した後に、彼女自身の想いを打ち明けた。
「私は、ソースケと結婚したい」
「!!??」
突然の三玖の一言に、これまでで一番の驚きを露わにする一花。開けた口を、両手で覆いながら、何とか自身を落ち着かせて、三玖の話の続きを聞く。
「ソースケと一緒の時間を過ごして、思ったの。ずっと一緒にいたいって
このまま、2人で暮らしたいって
今はまだ、料理も出来ないし、教えて貰うばかりで、ソースケの後ろを歩き続けるだけだけど……いつか、ソースケの隣に立って、ソースケのそばで支えたい。
私に、『自信』と、『自由』をくれたソースケに、いっぱい恩返ししたい」
「……三玖……」
「だから、一花も『自由』にやったらいいよ
それで、みんながバラバラになるわけじゃない
みんなそれぞれが『自由』な生き方をするだけなんだから」
三玖の総介への想いと、五つ子としての在り方を聞いて、一花は自分の中の何かが、粉々に砕け散る音が聞こえた。
昨日の朝、自分の中に芽生えてきたモノが、崩れ去っていき、三玖の話で出てきた『自由』という言葉が、彼女の中を駆け巡る。
バラバラじゃない。皆自分の意志で、自分の想いで行動するだけ……
そんな時に、誰かが困っていたら、
皆で助け合えばいい
誰かが幸せになれば
それを祝福すればいい
それだけのことなのだ
「………」
一花はようやく、自分の中にあったモヤモヤが晴れたようで、そのまま間の蓋を開けて、中身をゴクゴクと飲む。
「うーん……絶妙にまずい……」
「そうかな?」
どうやら一花のお口に抹茶ソーダは合わなかったようだ。
「でも効力バツグンだよ、ありがとね」
そう礼を言って、一花は残りも飲み干して、立ち上がる。
「じゃあ、行こう」
「うん」
「浅倉君は?」
「友だちとお話してから来るって」
「ふーん、フータロー君はともかく、彼にも友だちいたんだね」
「一花、失礼」
そう話をしながら、2人は『とある場所』へと歩いていった。
……………………………………
「気が晴れない顔だね」
「……わりーかよ?」
一方、総介は海斗と一緒に、宿舎の自室にいた。本来ならば、2人とも皆と同じく広場にいなければならないのだが、特権階級とは凄いモノで、海斗が担当の先生に「気分が悪い」と言えば、事情を察した先生に即座にそのまま自室待機を言い渡された(体調が戻れば任意で参加しても構わないということで)。その際、普段から彼の隣にいる総介に看病を任せるという名目で、2人共にの自室でゆっくりと時間を過ごしていた。ちなみに、別のクラスのアイナも、同じ手法で自室待機を言い渡され、遅れて部屋へと合流し、今は2人の自室を訪れているといった形である。
「……しかし、二乃が肝試しの際に若様と接触していたとは……」
「アイナとの関係は喋っちゃいないよ。安心して」
「……ありがとうございます」
アイナはようやく3人で過ごす時間で、いきなり海斗から肝試しで二乃と出会ったと聞いたのだ。その時は、すぐに海斗と総介と自分の関係が露わになるのでは、とゾクっとしたが、どうやら海斗の人間関係の話にはならなかったようなので一安心した。
しかし、肝試し後の二乃の様子を見るに、完全に海斗に惚れてしまったようである。その点では、今後も3人の関係がバレないとは言い切れない。
「別にいいじゃねーか。いつかバレるんだからよ」
「それは……」
総介の気の抜けた喋り方をアイナは真っ向から否定できなかった。
二乃の妹の三玖が、総介と恋人同士の関係で、まだ早いかもしれないが、2人が結婚も視野に入れているのならば、彼が大門寺の下で働いていることと、アイナや海斗との関係、そして『刀』のこと……全てを知ることとなるだろう。
ましてや、二乃や三玖の義父は先日大門寺と同盟を結んだ関係。まあ力があまりにも違いすぎるため、実質下につく形となるが……
遅かれ早かれ、アイナは二乃に自身の正体を明かす時が来る可能性が高いのだ。
その時、二乃が最も嫌う総介と、二乃が惚れた海斗と幼馴染の関係だということを彼女が知ったときは、どうするのだろうか……
「………」
「でも、今はあまり気にすることじゃないよ」
「……若様……」
不安そうに俯くアイナに、海斗が声をかける。
「僕も総介も、二乃ちゃんを悪くするつもりはないし、こちらから何もしない限りは、彼女もアイナのことはいい友人のままでいると思う。それに、二乃ちゃんは結構第一印象で相手を決めるように見えたから、アイナのことはちょっとのことでは嫌いにならないはずだよ」
しれっと失礼なことを言う海斗。だが実際当たっており、二乃はかなり見た目や第一印象で判断する今時の女の子だった。事実、二乃の総介への印象は、出会った時のから全く変わっていない。
「僕らも出来るだけ勘づかれないようにするよ。もしそれが発覚した時に『万が一』の場合もあるしね」
「………はい、ありがとうございます」
アイナが礼を言ったところで、それまで黙って聞いてた総介はスマホで時間を確認し、立ち上がった。
「んじゃ、俺ァ行くわ。海斗、あとは頼まぁ」
「わかった。うつされないようにね」
「うっせー」
そう海斗と軽口を叩き合って、総介は部屋から出ていった。その様子に、事情を知らないアイナが疑問を浮かべる。
「……総介さんは、どちらに行かれたのですか?」
「……少々お節介をやきにね」
「お節介……」
「その後は、三玖ちゃんと過ごすんじゃないかな?」
「キャンプファイヤーでしょうか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない……さてと」
海斗そこで、立ち上がってへやを出て行こうとする。
「若様、どちらまで?」
「そうだね……
迷えるお姫様からお誘いをうけているから、それにきちんと答えてあげないとね」
「……それって……」
「アイナはここに留まるか、すぐに自室に戻った方がいい。もしかしたら、バッタリと出会ってしまう可能性も十分あるからね」
「……わかりました」
そう言葉を交わして、海斗は部屋を出ていった。誰もいない部屋残されたアイナは、誰に向けるでもなく、独り呟いた。
「若様…………総介さん…………
貴方たちには、一体何が見えてらっしゃるのですか………」
その言葉に答える者は、誰もいない。
その代わりに、アイナが窓の外を見ると、少し離れたところでは、キャンプファイヤーの火が、周りの生徒たちをユラユラと照らしていた。
そして、様々な事が起こった林間学校は、ついにクライマックスを迎えることとなる。
結びの伝説………ホントにあんの?
もうすぐ林間学校編も終わりです。
ちなみに終わってからどうしようか、案がありすぎて困っています(笑)
今回もこんな駄文を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございます!
もう少しでアニメ1期分も終わり……