世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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お待たせしました!第四章開始となります!
この章を書くにあたり、原作5巻を読んでみたのですが、使える話があまりにも見つからなかったので、主に総介をはじめとしたオリキャラ達の話の中に、原作の話をちょこちょこ合わせていく形となります。
そのため、シリアスな話が多めになってしまいそうです。
では、どうぞ!



………これ、『五等分の花嫁』だよね?(2回目)


第四章『人の過去なんざシャボン玉のように儚い』
43.鬼として、人として


もしも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの剣で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたの魂で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にその命をかけてでも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

護るべき人が出来たのであれば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、私のところに来てください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束ですよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総介………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

林間学校から帰ってきて、数日が過ぎた日のこと。とある場所へと向かう人物がいた。黒いパーカーに、黒縁眼鏡、長身痩身の体格に、無造作で、目元までかかるほどの黒い前髪、それが浅倉総介の日常的な出で立ちだった。

 

 

中学を卒業した年の春、総介は『あの人』からそう言われた。そして今、彼は『あの人』との約束を果たすために、草木が生茂る道を歩いていた。

総介が歩いたその先に、その建物はあった。それは、少し年季の入った屋根瓦の木造建築の建物だった。建物の前には、開いた門が存在し、その右側の柱には、木で作られて文字の彫られた看板があった。その看板には、こう彫られていた。

 

(やなぎ)流剣術武術道場』

 

その門を潜り、総介は慣れた足取りで庭の方へと歩いていき、やがて、ある一点の場所へと着いた。彼が着いた先の建物には、直接庭が見える稽古部屋が存在した。その中では……

 

 

『いち!に!さん!』

 

『いち!に!さん!』

 

『いち!に!さん!』

 

小さな男女の子ども達が、掛け声に合わせて竹刀を振っており、その子たちを、優しくも期待をする眼差しで見つめる、着流しの上に羽織を着た長身の男性が一人いた。彼こそ、総介がこの場所に訪ねてきた理由であった。その男性は、外にいる総介に気づくと、子ども達に稽古をやめさせる。

 

「そこまで。少し休憩にしましょう」

 

物腰の柔らかく、丁寧な口調で子供たちに指示を出した男性は、そのまま総介の方へと歩き、縁側へと出てその場で立ち止まる。総介はその男性が立ち止まったと同時に、頭を下げて一礼した。

 

 

 

「お久しぶりです、(やなぎ)先生」

 

 

 

 

 

「待ってましたよ

 

 

 

 

 

 

 

総介」

 

(やなぎ)宗尊(むなたか)。かつて総介が通っていた道場の師範である。彼だけでなく、海斗、アイナ、明人の3人も、この道場で互いに凌ぎを削り合った仲であり、皆、宗尊の教え子たちだ。

宗尊は総介を見て、懐かしさと、慈しみの視線を彼へと送りながら、言葉を続ける。

 

「ここじゃなんですから、上がってください。君と話したいことがたくさんあります」

 

 

「……はい」

 

その言葉に、少し間を開けてから返事をした総介。久々に会う師に何か思うことがあったのだろうか、踵を返す宗尊の背中を見つめながら、彼の言葉に従い、後をついていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

それから、宗尊は稽古の続きを年長の者に託して、六畳の客間へと総介を案内した。2人は部屋の中央にある四角いちゃぶ台に向かい合って座布団の上に正座をして話し合う。

 

「懐かしいですね。君が来なくなって、もう少し経てば2年となりますか……」

 

「……申し訳ありません、稽古の最中にお邪魔してしまって」

 

「ふふっ、構いませんよ。数日前に剛蔵(・・)から、君が近いうちに訪れることは聞いていましたから」

 

総介が宗尊に頭を下げて謝罪するものの、当の宗尊本人は全く気にしていない様子だ。

彼はこの道場を開く前は、現在総介か所属している大門寺家対外特別防衛局『(かたな)』の一員であり、その中でもずば抜けた戦闘力を持つ『異名持ち』でもあり、10年ほど前までは当時から局長の渡辺剛蔵の右腕として、副長の地位にあった。さらに、剛蔵と宗尊、そして海斗の実父であり大門寺家現総帥『大門寺(だいもんじ)大左衛門(だいざえもん)』とは同期にあたる。彼がどのような『異名』を与えられていたのかは、また今度説明するとしよう。

彼は元々、鉄火場の空気を嫌う温厚な性格ゆえに、10年ほど前に『刀』を脱退し、現在は道場を開いて、後進の育成に努めている。

 

「剛蔵さんが、ですか?」

 

「ええ。電話でとても嬉しそうに話をしていましたよ。『総介もしばらく見ないうちに漢になりやがって』とね」

 

「………はぁ、まったく……」

 

「彼から大体のことは聞いています。君に愛する人が出来たことも、その子のために色々と動いたということも、ね」

 

「………勘弁してください」

 

既に剛蔵によって色々と宗尊の耳に入っていたことを知った総介は、恥ずかしさのあまり頬を赤くしながら目から上を右手で覆い隠す。そんな様子を面白がりつつも、宗尊は愛弟子の成長に慈愛を込めた視線のまま総介へと声をかける

 

「本当に、立派になりましたね、総介。『お母さん』もさぞかしお喜びだと思いますよ?」

 

「…………」

 

宗尊の口から出てきた『母』の言葉に、総介はしばらく下を向いて黙ってしまう。それを見た宗尊が、そっと穏やかに尋ねた。

 

 

 

 

 

「………まだ、忘れられませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あの日』のことは?」

 

 

 

 

 

 

 

「…………忘れられる訳ありませんし

 

 

 

 

 

忘れてはいけないと思っています」

 

 

「…………総介」

 

「……ですが、一応の決着はつけました(・・・・・・・・)。今はもう、あの日のことは区切りをつけています」

 

「………それも、剛蔵から聞きました。

 

 

 

君も、海斗も、アイナも、明人も、大変だったと……」

 

「……ええ、ですが、手にした物も大きいです」

 

 

 

 

「………私は、正直それには反対でした」

 

「………先生?」

 

「君の気持ちも十分理解はしているつもりです。ですが私は、それでも君には、血で汚れて欲しくなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの男(・・・)』を葬ることは、本来なら私達の世代の使命だったのですから」

 

 

「………正直、『ヤロー(・・・)』をやったのは、俺の個人的な怨恨です。そのために『刀』という大義名分を利用したに過ぎません」

 

「………そんな君を見て、『お母さん』は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「母はもう『あの日』に死にました。………何かを思うことも、言うこともありません……」

 

 

「………そうですね」

 

 

そう宗尊が呟いたあと、全開になった障子の奥の外に目を向ける。外は、2人の会話とは裏腹に、晴れやかな青空が広がっていた。その端には、夕暮れを知らせる橙の空が覗かせている。

そんな空の様子を確認すると、宗尊は総介へと再び目を向けて、話を変えた。

 

 

「……ですが、今の君は、とてもそういった悲しみを背負っているようには見えませんね」

 

 

「………」

 

 

「……もしかしたら、剛蔵から聞いた『その子』が関係しているのでしょうか?」

 

「………」

 

イジワルそうに尋ねてくる宗尊に、総介は顔を逸らしながらも、チラッと目線だけ戻した。元々この人を誤魔化せないのは目に見えていることだし、誤魔化すつもりもない。総介はそのまま、正直に答えることにした。

そのために、ここに来たのだから。

 

「………一目惚れでした」

 

「ほう、これはまた……」

 

「数ヶ月前まで『抜け殻』だったところに、彼女はやって来ました

 

 

 

まさか自分がこうも簡単に惚れてしまうとは思いませんでしたが

 

 

 

彼女にはそれほどまでに、言葉で上手く伝えるものが見つからないほどに魅力的だったんです

 

 

 

ある時、別の男の計らいで、彼女に勉強を教えることになりました

 

 

 

そして、再度出会った彼女の方も、俺に同じような想いを抱いてくれていたんです

 

 

 

それもあってか、次第に想いが通じ合い、とある出来事がきっかけで彼女と恋人同士になりました

 

 

 

初めは迷いや戸惑いもありましたが、母と昔した話の助けもあって、彼女は今、俺のそばにいてくれてます

 

 

 

その後に起こった出来事は、柳先生が剛蔵さんからお聞きになった通りです」

 

「…………そうですか」

 

 

そのまま愛弟子の話を聞き終わり、感慨深げに総介を見つめる宗尊。そのまま彼は立ち上がり、縁側の方へと足を向け、障子が開いた外を見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

「人を愛した『鬼の子』ですか……

 

 

 

 

 

 

草子に記されているものならば、それは儚くもとても美しいものですが、今私達の居る(うつつ)である以上、それは同時にとても危うい。

 

 

 

 

 

 

いずれは『彼女』にも、その刃の切っ先が向くことでしょう。

 

 

 

 

 

その時、君は自らが『鬼』であることをその子に伝えねばならないことは、分かりますね?」

 

 

 

「………勿論です。

 

彼女には、高校を卒業するまでに全てを話します。」

 

 

「それでその子が君を拒んだとしても?」

 

「………致し方ありません」

 

そう答える総介の瞳は、下を向いて、寂しさが入り混じっている。

 

「………その子の親が大門寺と同盟を結んでいる以上、その子は君から離れることは叶いません。情だろうと任務であろうと、どうあってでも、君は彼女を護らねばならない。

 

それも理解はしていますか?」

 

「はい。任務もそうですが、俺が彼女に対しての情を断つことは、今後一切ありません。どんな形でも、彼女は………

 

 

 

 

 

三玖は、俺が護ります」

 

 

宗尊の方へ、今までとは違う、覚悟を決めた目を向けて総介は宣言する。

その様を見た師は、弟子へと近づき、その頭を撫ではじめる。

 

「うん、偉い。成長しましたね、総介」

 

「ちょ、せ、先生……」

 

穏やかな笑みを浮かべながら、総介の頭を優しく撫でる宗尊。恥ずかしながらも、彼の手を甘んじて受け入れる総介。2人がどれほどまでも師弟としてのモノは、これだけでも十分分かるだろう。

やがて、それも終わり、宗尊は元いた場所へと再び座る。

 

「それほどまでに、その子のことを………」

 

「………出会ってまだ数ヶ月ですが……

 

 

 

彼女とは、このまま生涯を添い遂げても構わないとも思っています。……ていうか、添い遂げたいです」

 

「………一途ですね」

 

宗尊はそのまま、『昔と変わらず』と言いかけたが、その一言は発さずに、そのまま飲み込む。

 

「……どうされました?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

「………」

 

少し首を傾げる総介だったが、それ以上は追求しなかった。

その後も2人は会わなかった時間を埋めるように、それまでの話をしばらく続けていたのだが、その時にポケットに入れてあるスマホがブブブと振動した。メールかと思ったが、それはタイマーをセットしたアラームだったようだ。総介はそのまま電話を取り出して、アラームを停止させる。

 

「どうやら、これまでのようですね

 

「すみません先生、この後行かねばならない場所が……」

 

「構いませんよ。私は君と久しく話ができて、とても満足です。また遊びに来てください。いつでも歓迎しますよ」

 

「………ありがとうございます」

 

優しく促してくれる師に、心からの感謝の礼をする総介。そもそも、彼がここまで敬語を使うのは、剛蔵と宗尊、そして海斗の両親の4人だけという、非常にレアなケースなのである。

総介はそのまま立ち上がろうとしたが……

 

 

 

「……………」

 

 

 

「そういえば、総介………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正座、苦手じゃありませんでしたか?」

 

「…………」

 

 

 

とんだドジをかましてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、「ぎぉぉお、足が、足がぁぁあ!!」と、痺れた足を伸ばした総介に、それを指先でツンツンして悶える弟子を見て楽しみながら、彼を見送る宗尊の姿が、道場の敷地の中で見られ、総介は稽古の途中の弟弟子達に笑いものにされるのだった。

 

 

 

 

 

 

柳宗尊は『S』でした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………行っちゃいましたか」

 

総介を門の前まで見送った宗尊は、久しぶりに気にかけていた弟子に会えた満足感と、あっという間の時間が過ぎて行った虚無感が入り混じった複雑な心境の中、ここにはいない彼に言葉を発していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総介

 

 

 

 

 

 

 

君はそのままでいい

 

 

 

 

 

 

そのまま君の信ずる道を行き

 

 

 

 

 

 

 

 

君の愛した人を護ってください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君がその子を愛し続ける限り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君がその子を護り続ける限り

 

 

 

 

 

 

必ずその子も、君の隣にいてくれます

 

 

 

 

 

 

 

もう二度と、『あのような事』にはならないでしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼であろうが、人であろうが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大切に想う存在を、いつまでも愛し続けてください

 

 

 

 

 

 

 

 

そしていつか

 

 

 

 

 

 

 

 

私も、その子から総介の話を聞くことを楽しみにしています

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ってますよ、総介………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………っつ〜、なんとか痺れは抜けたか」

 

宗尊と別れて、道場を離れてから、総介は近くの有料駐車場に停めた愛車の原付バイク『ベスパ』を走らせて、とある場所へと向かっていた。

しばらく走らせて着いた場所は、『とある』病院だった。その駐車場にバイクを停め、そのまま入り口へと入り、受付の人に

 

「すんませ〜ん、上杉風太郎の連れの者で、見舞いに来たんすけど」

 

と尋ねて、彼の部屋番を聞き、彼が入院している部屋を教えてもらい、その部屋へと向かって行った。

 

風太郎は林間学校の終盤、体調を崩してしまい、林間学校が終了するとそのまま入院する羽目になったのだ。総介も、そのまま適当な時間を空けて見舞いに来る事にしたのだが、どうやらそれが今日だったようだ。

そうして、総介が風太郎の部屋の方へと近づいていた時、廊下を歩いていると、曲がり角で聴き慣れた声がした。

 

「この裏切り者!」

 

「いいじゃん、来たんだから」

 

「ついでだったんだろ!」

 

「も、もちろんフータロー君のことも心配だったよね」

 

「そうです!病院に来てから思い出したなんてことは絶対にないです!」

 

「四葉バレバレ」

 

もう名前が出てしまっているが、めちゃくちゃ聞いたことのある声が、曲がり角の廊下から聞こえたきた。

それに、最後の声を聞いた途端、総介はやる気のなさそうな顔を一変させ、まるでこれからおもちゃを買ってもらう子供のように、嬉しさで表情が弾んでしまう。

林間学校が終わり、ここのところ、メールや電話だけでの会話だったため、会うのは数日ぶりだが、総介にとっては果てしなく長い時間だった。もちろん、『彼女』の方もそうなのだが……

すると、曲がり角のところまできた途端に、聴きなれない男性の叫び声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「君が裏切り者だー!!!」

 

 

 

何やら揉めているようで、総介はその曲がり角を曲がると、四角い眼鏡をかけた若い男性が風太郎の背中を押していた。その周りには、似たような顔の女子が『4人』。その中に、『その子』はいた。

 

 

総介はゆっくりと歩いて近づき、気怠そうな声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やかまし〜ぞテメーら。病院では静かにしねぇと、死んだ婆ちゃんが包丁持って出てくるって聞かなかったのがコノヤロー」

 

「「「!!!」」」

 

 

「あ、浅倉……」

 

「な、何だ君は?……」

 

似たような顔をした3人が驚きの表情を見せ、風太郎が彼の苗字を呼び、若手男性医師が総介を見て何者なのか戸惑う。その中で1人だけ……

 

 

 

 

 

 

「ソースケ!!」

 

1人の少女が、総介を見つけるや、眠たげな表情をパァッと明るくさせて、総介に向けて早足で近づいて行った。青いヘッドホンを首に下げ、前髪で右側の目が隠れたその少女は、総介へと駆け寄り、そのまま彼の胸元に飛びついた。

『ポフッ』という音と共に、総介はその子を受け止めて、右手をその子の頭に置いて撫で、左手で肩を優しく掴む。

 

「三玖」

 

先ほどとは違い、優しく声をかけた総介。彼に抱きついた彼女こそ、総介が宗尊と話をした際に出てきた彼の恋人『中野三玖』である。

 

「久しぶりだね」

 

「うん、久しぶり……会いたかった」

 

「……俺もだよ」

 

総介の胸の中で目を閉じて、頬を胸に擦りつけて甘える様子を見るに、三玖は総介にベタ惚れのようだ。ってかお前ら、『久しぶり』ってほんの数日会ってなかっただけだろ?なに何年ぶりの再会みたいな演出してんだよ。そして総介は爆発しろ。

 

 

「うわ〜、会って早々見せつけちゃってくれるね〜、2人とも」

 

アシンメトリーの薄ピンクのショートヘアの三玖の『五つ子』の姉妹の長女『中野一花』が2人のイチャつきっぷりを見て言う。

 

「すごい!これが世に言うおしぼり(・・・・)夫婦!」

 

おしどり(・・・・)夫婦な。ってか夫婦じゃないから」

 

2人を見て盛大に色々間違えたのは、オレンジのショートボブに、頭の緑色のリボンが特徴的な五つ子の四女『中野四葉』。彼女の言い間違いを、風太郎がすぐさま訂正する。

 

「アンタら人前で堂々とイチャつくな!三玖、アンタも離れなさいよ〜!」

 

「いや……二乃、制服引っ張らないで」

 

三玖の制服を引っ張り、総介から引き剥がそうとするのは、ピンク色の腰まで届くロングヘアを黒いリボンでツーサイドアップにした五つ子の次女『中野二乃』。彼女は五つ子の中で唯一、総介に敵対姿勢を見せており、三玖との仲を未だに認めていない。

 

 

 

自分は海斗にぞっこんなくせに……

 

「おい、三玖の制服思いっきし引っ張んな。破けちまうだろうが桐ヶ谷直葉」

 

「誰がSAOの主人公の義妹よ!アイツと兄妹とかゴメンだわ!」

 

「俺を指差して言うな!」

 

何故か風太郎の方を指差しながらツッコむ二乃に、風太郎も反応する。

だって………ねぇ?仕方ないよ……

 

と……

 

「………リア充爆発しろ」

 

若手男性医師が、総介と三玖をハイライトの無くした瞳で睨みつけながらボソッにと呟く。

彼は医者を目指すため、学生時代は恋愛やら遊びやらを捨てて、勉強一筋でやってきた子なんです、頑張ったんです。それなのに、2人の甘い甘〜い空間を見せつけられたことで、彼の中のドス黒い何かが湧き出てきちゃっただけなんですぅ!

 

しかし、イチャイチャカップルはそんな若手男性医師の怨嗟のこもった眼差しなど全く気にすることなく……

 

「三玖も上杉のお見舞いに?」

 

「うん、でも、私はみんなと一緒に予防接種をしに来たから、そのついでに」

 

「なるほど、予防接種ね」

 

「やっぱついでだったんじゃねーか!」

 

「まあまあフータロー君、三玖は浅倉君一筋だから、しょうがないよ」

 

「そうです!私はさっき気付いたわけじゃないです」

 

「もういいわよそれ」

 

総介の胸に収まりつつ、顔を上げて目を合わせて話す2人に、周りにはその連れと姉妹たちと1人の男性医師という何かとカオスな病院の廊下が出来上がる。

病院では静かにしましょうお前ら、でねーとクロロホルムで眠らせるぞコラ。

 

 

と、

 

「ほら!!病人は大人しくしてる!」

 

「え?は、はぁ……」

 

復活した若手男性医師に背中を押され、風太郎は自室へと連れて行かれた。その途中、風太郎は横にあった診察室の中に目を向けていたが、特に何かあったわけでもなく、歩いて行く。そのまま病室に戻る2人を、総介と三玖は見つめながら会話をする。

 

「………ま、アイツは元気そうみてーだから、見舞いはこれぐらいでいいだろ」

 

「うん」

 

「そういえば、三玖は予防接種終わったの?」

 

「ううん、まだ。五月がどこかに行っちゃって」

 

「肉まん娘?そういやいねーな。どうしたんだ?」

 

「五月は注射嫌いだから逃げた」

 

「………」

 

今は逃げてここにはいないが、五つ子の末っ子である五女『中野五月』は、この病院に着いた途端に、姿を晦ましたのだった。

お化けにビビり、注射嫌いときては、完全に子どものそれだな、と内心そう思う総介だったが、

 

「ちなみに二乃も注射嫌い」

 

「なっ!!?」

 

「……ほほう♪」

 

三玖の一言を聞くや、ゲスい笑みを浮かべてニヤつきながら二乃の方を見る総介。

 

「し、しょうがないでしょ!痛いの嫌いなんだし、注射が好きな奴なんていないわよ!」

 

彼女の言ってることは概ね正解であり、注射が好きな人といえば、相当なマゾヒストか、やばいクスリをしている人くらいだろう。

しかし、そんな反論で総介が止まるはずもなく、

 

「まあそうかもしれねーが、その年でたかだか少しチクってするぐれーでビビるたぁ、テメーの肝っ玉もたかが知れたもんだな〜オイ」

 

「……三玖、アンタ覚えてなさいよ」

 

「二乃が克服してないのが悪い」

 

「だからってコイツに言っていいもんじゃないでしょ!」

 

二乃と三玖がそんな言い争いをしていると、総介はふと、横を見て、先ほど風太郎が少し中を見ていた診察室が目に入った。少し気になり、彼は中を覗く。すると……

 

 

 

 

 

「………」

 

「………なるほどな」

 

総介は中を見て、そこにいた『人物』を確認すると、少しの間目を合わせて、そのまま診察室の前から姿を消した。

 

(………そういやここの病院は『アンタ』のだったな)

 

目線だけで、総介はその『男』へと話をする。当然、テレパシーなんていう特殊能力は持っていないので、椅子に座っている白衣の『男』には伝わらないが。

そして総介は以前、といってもひと月ほど前にこの病院には来たことがあったので、ここの病院の所有者が誰かということは知っている。しかし、まさかすぐ近くにいるとは彼も思いはしなかったようだ。

 

(てっきり他のジジイ医者みてーに医院長室であぐらかいてるもんかと思ったぜ……)

 

さりげなく失礼ながらも、声に出してないのでセーフである。そして『男』は、何とも言えない表情で総介を見続ける。

 

(………んな怖ぇ顔しねーでも、『コイツら』はちゃんと護るっての……)

 

大門寺との『彼』の同盟がある以上、五つ子は総介にとって有事の際は護衛の対象だ。三玖だけではない。一花も、二乃も、四葉も、五月も。

全員1人たりとも失ってはならない。国家だとか機密だとか世界だとか、そんなモノよりも、近くにある護るべき存在を護れてこそ『侍』なのだ。自ら定めた護るべき者すら護れないのなら、それはもう『侍』では無い。

 

 

 

 

 

ただの腰抜けだ。

 

 

 

 

 

(…………腰抜けなのは、『俺』だけで十分だコノヤロー)

 

 

 

 

 

先ほどは、宗尊にはああ言ったが、総介は未だ忘れられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『母』のことを……

 

 

 

 

 

『母』を失った日のことを………

 

 

 

 

 

 

 

「………スケ………ソースケ!」

 

「!?……三玖」

 

「大丈夫?ボーっとしてたよ?」

 

「……大丈夫だよ。少し考え事をね」

 

「そう……」

 

そう心配そうに見つめる恋人の姿を見て、総介は改めて心の中で誓い直す。

 

(………柳先生

 

 

 

 

 

 

 

俺はあの時、言い忘れてました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖は、どんなことがあっても、俺が護ります

 

 

 

 

 

 

 

 

例え、『貴方』や

 

 

 

 

 

『海斗』達を敵に回すことになってでも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総介は、三玖の頭に手を置いて、彼女へと話しかける。

 

 

「………三玖」

 

「?どうしたの、ソースケ?」

 

「今週末に、俺の家来ない?」

 

「え?……い、いいの?」

 

「うん、林間学校でも言ったし、料理や勉強も教えたいからね」

 

「じゃ、じゃあ、泊まりに……行ってもいい?」

 

「もちろん、食材も買ってあるし、いつでも来ていいよ」

 

「う、うん!ありがとう、ソースケ」

 

「どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼として、人を斬り続けた『鬼童(おにわらし)』。

 

 

 

 

人として、人を愛した『浅倉総介』。

 

 

 

 

 

 

 

いずれやってくる運命の日まで、彼女は知る由もない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鬼』が背負いし修羅を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鬼』が流した(なみだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鬼』が犯した業を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刻一刻と、総介と宗尊が話していた『その時』が近づいてきていた。

 




オリキャラ紹介

(やなぎ)宗尊(むなたか)
45歳
身長195cm
体重79kg
『柳流剣術武術道場』師範であり、大門寺家対外特別防衛局『刀』の元一員。かつては異名持ちで、元副長。現局長の剛蔵や、大門寺家現総帥の大左衛門とは同期。
総介、海斗、アイナ、明人は全員教え子で、現副長の刀次は彼の後輩。
穏やかな性格の優男。


柳先生のイメージ、モデルは勘の鋭い方なら分かると思いますが、『銀魂』の『吉田松陽』です。
あと、例によってオリキャラの身長は高いです。

今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
そしてアンケートに投票してくれた皆様、本当にありがとうございました!
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