世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の第2期第1話を先日視聴しました。
なんかもう色々悩んでたことなんてどうでもいいやって思うぐらい笑い転げました!
2期特有のマンネリも全くなく、相変わらず生徒会のドタバタ劇と少しラブコメチックな展開が絶妙です!今、自宅待機が各地で行われている中、皆さんもどうか今からでも1話でいいので『かぐや様』をご覧になってください!人生変わります(大げさ)!





46.子の心親知らず

「………おい、上杉」

 

「どうした、浅倉?」

 

「………なにこの状況?」

 

総介がそう疑問を呈するのも無理はない。

本日は風太郎の家庭教師の日であり、総介もその助っ人としての責務を全うすべく、五つ子の住むマンション『PENTAGON』を訪れていたのだが、少し遅れてやってきた総介の目の前に広がっていた光景は、少し異様なものだった。

 

 

 

 

ていうか、この冒頭文前回のまんまコピペである。まぁここから違うから、安心して読んでください。

 

 

冒頭の続きの前に、こうなるまでの経緯を説明するとしよう。

本日はいよいよ期末試験のテスト週間『前日』。風太郎はここで一気に追い込みをかけて、今度こそ五つ子全員の赤点を回避させんと息巻いていた。

 

 

しかし……

 

「上杉さんすみません!今日は陸上部の皆さんのお手伝いがあるんです!」

 

放課後、四葉はあろうことか、陸上部の助っ人に駆り出されてしまったのだ。さらにさらに……

 

「試験勉強は明日からでしょ?今日くらい映画観に行かせなさいよ」

 

二乃は五月を連れて、映画を観に行く始末。そのことを後から知った総介はというと……

 

「んじゃあ3人帰ってきたらめでたく全員血祭りだな」

 

と、平気な顔して物騒なことを言い出すので、さすがに暴力沙汰はマズイと慌てて止めた。

こうして、本日まともに参加するのは一花と三玖の2人だけになってしまった。仕方なく、それぞれマンツーマンで教えることになったのだが、一花が何かを隠している様子だったので、風太郎が問いただすと、

 

『所属している事務所の社長が急な出張をすることになったので、その間娘を預かることになった』

 

という答えが返ってきた。しかし、それを勉強から逃げたいために嘘をついていると考えた風太郎は、

 

「そんな娘が本当にいるんなら、俺の前に連れてきてみやがれ!!!」

 

と、盛大なフラグを建設。

そして冒頭に至り、見事にフラグ回収。風太郎と総介の視線の先には、黙々とお絵かきをする三つ編みのおさげ髪の少女『菊』がふてぶてしい顔をして鎮座していた。

 

「菊ちゃん、おとなしくしてて偉い」

 

「本当にいたんだ」

 

「フラグ回収乙」

 

「だから言ったじゃん」

 

まさか本当にいるとはと、本気で思っていなかった風太郎は、拍子抜けした顔をしていた。

 

「急な出張が入った社長の代わりに面倒を見ることになったんだ」

 

「あのおっさん結婚してたのかよ……」

 

一花と風太郎の会話を聞く限り、風太郎はその『社長』とやらと面識があるようだ。そんなことを考えていた総介も、どうでも良いことだとすぐに忘れて、三玖の隣に座った。

 

「でもまぁ、おとなしくしててくれりゃそれでいいじゃねーか。こっちもゆっくり出来っからよ」

 

「……ああ、そうだな。子どもは静かにさせて今は勉強……」

 

 

 

 

 

 

「おいお前」

 

すると、その子どものいる方向から、声がした。そちらを向くと、菊が立ち上がって、風太郎を指差している。

 

「お前、アタシの遊び相手になれ」

 

ふてぶてしい態度と、これまたふてぶてしい命令口調で、風太郎に命令する菊に、一同は唖然とした。そんな中、一花が猫の人形を持って菊に近づいていくが……

 

「菊ちゃん、あそぼー」

 

「子供扱いすんな!」

 

一花の持っていた人形が、バチーンとはたき落とされてしまう。

 

「人形遊びなんて時代遅れなんだよ。今のトレンドはおままごとだから」

 

(子供!)

 

「結局ガキの遊びのまんまじゃねーか」

 

心の中でツッコむ風太郎とは違い、総介は子供相手にもズケズケと切り込んでいく。

 

「うるさい。お前、生意気だぞ」

 

「そりゃテメーだ小娘。もうちょいエレガントに振る舞えねーのか?」

 

「えれがんと?」

 

「いいか、エレガントってのはな〜………上杉、説明してやれ」

 

「知らねーのかよ!」

 

とまぁ、途中変なやりとりがあったが、改めて、菊がおままごとの配役を指名していく

 

「お前、パパ役、アタシ、アタシ役」

 

「あ、じゃあ私ママ役やる」

 

と、何故だか三玖までも名乗り出て参戦してきたのを見て、総介も眉を上げて少し驚いた。

 

「一度ちゃんとやってみたかった、おままごと」

 

と、少しウキウキしている三玖を見て、総介は

 

(かわいい)

 

惚気ていた。が、菊は三玖の方を見てこんなことを言い出した。

 

「うちにママはいない。ママは浮気相手と出て行った」

 

「そこはリアルなんだ……」

 

「クレ◯ン◯んちゃんのリアルおままごとかよ……」

 

「あのおっさんのシリアスな過去なんて知りたくなかったぞ……」

 

と、それぞれが菊の親の事情にリアクションを取る中、リアルおままごと発言をした総介が、彼女を少し同情的な目で見る。

 

(なるほどな……道理でこんなに……)

 

菊の周りに刺々しく当たる姿に、総介は少し自分と重ねてしまった。

今の総介には母どころか、父すらいない。彼が物心ついた時には、既に母1人になっていた。何故父がいないのか、総介は一度たりとも聞こうとはしなかった。死んだのか、それとも離婚したのか……それを聞きたい時もあったが、その話をすると、母がもしかしたら悲しむかもしれないと、子供心に大好きな人が悲しむ姿を見たくなかったのだ。

 

そしてその母も、総介の目の前で……

形は違えど、親を失くす瞬間を見てきた総介と菊。そんな彼女にシンパシーを感じたのも、今目の前にいる少女の振る舞いが、過去の自分と重なるからだろう。もっとも彼の場合はだいぶ違うが……

それにしても、

 

(浮気相手と出て行くってのも、この娘からしたら相当なトラウマもんだったろーよ……)

 

それは即ち、菊は母に『不要』と判断されたも同然なのだ。彼女が母をどう思っていたかは知らないが、そんな現実をこんな小さな年で真正面から突きつけられて、まともでいれるはずはないだろう。

それも総介と同じだ。母を失くしたという出来事は、今でも夢に出てくるくらいトラウマな出来事なのだ。加えて、失った直後はその比ではなかったのだから……

 

「所詮は子供の戯れだ。俺が適当に相手してるから、お前らは手を動かして、わかんないとこがあったら浅倉に聞け」

 

そう言って、風太郎は一人で菊の相手をすることにした。それを大丈夫なのか?と心配と疑問の眼差しを彼へと向ける3人。

 

「オホン………菊、幼稚園で友達はできたか、パパに聞かせてごらん」

 

「あいつらガキばっかだ」

 

「コラコラ、お前もクソガキだろ?」

 

本音が少し漏れる風太郎。総介はその様子を、ソファーで肘をついて顔を支える体勢で横になりながらニヤニヤ眺めている。

 

「お勉強の方はどうなんだ?パパが教えてあげてもいいぞ」

 

「断る。やっても意味がない。どうせすぐに忘れるんだ」

 

ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。それを地で行がごとく、風太郎の発言はことごとく菊によって返される。そんな様子を、さらに顔をにやけさせた総介が『おいおい、かの学年1位の秀才様が、ガキ1人のお守りもできねーんですかコノヤロー?』と言ってるような目(風太郎目線)で見守る。が、それでも風太郎はまけないもん!

 

「……いけないぞ菊。失敗を恐れてはいけない。諦めず続けることで報われる日がきっとくる。

 

 

 

成功は失敗の先にあるんだ」

 

手を広げながら、まるで渾身の一撃を喰らわしたかのようなしたり顔をしながら、菊の返答を待つ風太郎。菊はしばらく風太郎を見上げてから、風太郎へ一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗ごとを」

 

 

 

「」

 

 

「あっははははは!違ぇねぇ!上杉、テメー小娘相手にたった一言で黙らされてんじゃねーか!あはははは!!」

 

菊の返答に、凍ったように固まった風太郎と、それを見てソファーで笑い転げ回る総介。完全に地獄絵図である。

 

「このガキ」

 

「まぁまぁ」

 

「い、いいこと言ってたと思う」

 

笑顔のまま拳を上げる風太郎の服を、一花が引っ張って止め、三玖もフォローに入る。

すると、菊はそんな3人を無視して、おままごとを続けた。

 

「ガラガラ」

 

「?」

 

「へー、ここがパパの会社か」

 

「会社来たんだ……」

 

舞台は家から会社へと移ったようだ。ていうか、会社が舞台ってそれもうおままごとじゃなくね?すると、菊は唐突に一花と三玖の方を向いて、指を差す。

 

「二人はここの事務員さん」

 

「え、私たちもやるの?」

 

「……事務員さん?」

 

菊の姉妹で、二人もおままごと(?)に参加することになった。

しかも……

 

 

 

 

 

「そう、二人ともパパに惚れてる」

 

「「!!」」

 

「!」

 

菊が言った二人の設定に、一花と三玖、そしてソファーでくつろいでいた総介までもが驚きの表情を浮かべた。

 

「なんだその設定?菊、こいつらは……」

 

一方、気付いていないのか、そのまま菊に喋りかけようとした風太郎だったが……

 

 

 

 

 

「社長、いつになったらご飯連れてってくれるの?今夜行こう、今夜」

 

「!」

 

「!!!」

 

なんと、三玖が風太郎へとぐいぐい迫っていったのだ。いくらおままごと(?)とはいえ、その事態にさすがの総介も、横になっていた身体を起こして立ち上がった。

それを察したのか、三玖はチラッと総介に振り向き、

 

(……フータローを笑ったおしおき)

 

(!……この子は〜っ……)

 

頬を膨らませながら総介をジト目で見つめる三玖。かわいい。彼女の意図を察した総介も、これでは動けない。苦い顔をしながらも、観念したようにその場に立ちつくす。次に、三玖は一花の方を向く。

 

(……なるほどね、これぐらいやらなくちゃ、ってことか)

 

三玖が風太郎に迫ったのは、何も総介に対するお仕置きだけではなく、一花を焚きつけるためでもあった。以前に、一花が風太郎に気があることを知った三玖は、恋が実ることを肌で体験しているので、それを一花にも味わって欲しいと、彼女を応援しようと決めていた。

もちろん、これはおままごとの演技でもあるが、一花が風太郎に近づくチャンスでもある。

そう思い、未だ燻っている彼女への発破をかけたのだ。

 

(……私も負けてられないな)

 

その思いは、一花にもちゃんと届いていた。 三玖の思いを無駄にしたくないし、何より自分が後悔したくない。

 

「菊ちゃん、新しいママ欲しくない?」

 

「あ、ずるい」

 

「………」

 

そんな彼女は、まさかの菊を懐柔するという姑息な手段に打って出た。そんなカオスの様相を呈してきたおままごとを、風太郎と総介は黙りながら見守る。

 

「じゃあ私もママになる」

 

「三玖になれるかな〜」

 

軽く言い合う中、菊が二人を見てこんなことを言い出した。

 

「じゃあ、二人ともパパのどこが好きか言え」

 

「「!」」

 

相変わらずの命令口調で、二人に風太郎の好きなとこを言わせようとする。内容で決めるのか、それとも多く行った方がママになるのか……

 

「「………」」

一花と三玖は、横目で風太郎を見ながら考える。三玖は出てこないのか、少し詰まってしまい、その間に一花が先に答え出した。

 

「えーっと……なんだろ、よくわかんないけど……こう見えて男らしい一面があったり……」

 

少し頬を赤くしながら、答えていく一花。言い方も少し曖昧である。

その間も三玖はう〜んっと考えていたが、途端にそれも終わり、そのまま一花に続いて答えた。

 

「普段はやる気ないけど、ちゃんと周りを見てくれている。相談事にも乗ってくれて、困ったことがあった時に助けてくれる。侍みたいに強くて、私を守ってくれる。元気がない時にそばにいてくれる。頭がいい。頼りになる。背が高い。カッコいい。あとは……」

 

「ストップ!三玖ストップ!さすがにそれ以上は恥ずかしいから!逃げ出したくなっちまうから!」

 

風太郎の好きなところが思いつかなかったので、三玖は仕方なしに総介の好きなところを答え始めた。初めの方で、自身のことだと察した総介は、その後も止めどなく溢れ出る三玖の言葉に、顔を赤くさせて制止させた。二人きりならともかく、周りに人がいる状態で言われるのは一層恥ずかしい。総介爆発しろ!

 

「……パパはそんなに背が高い方じゃないんだけど」

 

「そ、そうだった。社長のことだったね」

 

そんな様子をガン無視し、菊のまさかのマジレスに上がりそうになっていた場の気温も冷めて元に戻る。

 

「菊ちゃんはどっちがいいと思った?」

 

三玖が菊に対して判定を求めるが、彼女からは意外な答えが返ってきた。

 

 

 

 

 

 

「……アタシは…ママなんていらない」

 

「え?どうして?」

 

二人にパパの好きなところを合わせておいて、ママはいらないと言われたら、総介からすれば、ただ自分が恥ずかしい思いをしただけである。

一花がそれは何故か尋ねると、菊がそのまま続けた。

 

「だって寂しくないから……ママのせいでパパはとっても大変だった。

 

 

 

 

パパがいれば寂しくない」

 

「………」

 

(………怖ぇんだろうな……また失うのが)

 

吐き捨てるように言った菊だが、その体はプルプルと震えている。総介にはそんな彼女が、とても脆く見えた。

母の浮気のせいで、家庭は崩壊して、父も大変苦労したことだろう。仕事もある中、年端もいかない娘を育てるのは、無理ではないにしろ難しいことだ。それを見てきた菊からすれば、新しいママが出来たとしても、100%信用出来る訳なんてない。むしろ、いつまた裏切るか、いつまた失うかの恐怖が増していくだけだ。もしそんなことにでもなれば……

 

(んなもん俺だって怖ぇさ…………増してやこんなちっこい娘じゃ、さすがに無理だろうな……)

 

総介とて、いつまた三玖を失ってしまうかもしれないか……先日の夢に出てきてからというもの、心の隅にはいつもその怖さがわずかだが残っていた。これで幼い子供の精神を均衡に保つ方が無理な話なのだ。ヘタをすれば、一生トラウマとして残ってしまうかもしれないものだ。こうやって『寂しくない』と強がるのも、残された父親に心配させないためか、無意識に自分に対して言い聞かせているのだろう。そうでもしなきゃ、仕事や子育てで大変な父に、ますます迷惑がかかってしまうし、自分自身の心も保っちゃいられないと、本能で行なっているのだろう。

 

 

 

「無理すんな」

 

と、突然風太郎が菊の頭に手を伸ばして少女の髪を手荒にわしゃわしゃし始める。

 

「な、何をする!やめろ!」

 

「お前みたいな年の女の子が、母親がいなくなって寂しくないはずがない

 

 

 

 

 

可愛げもなく大人ぶってないで、ガキらしくわがまま言ってりゃいいんだよ」

 

「………」

 

風太郎の言葉が何かに響いたのか、菊の両目のまぶたから、ウルウルと涙が浮かび上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……50点……いい感じだが、まぁ普通はこんなもんか……)

 

そんな中総介は、いつもの死んだ魚のような目で、一連のやりとりをソファで座りながら見て心の中で呟く。

 

「おい小娘」

 

「!」

 

そして、菊を呼び、チョイチョイと手招きをして、彼女を目の前まで招いた。そして、彼女の頭に、優しく手を置いて、普段『誰かさん』にやるみたいに、優しく撫で始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……頑張ってんじゃねーか」

 

「!」

 

総介から出た言葉に、菊の肩がビクッと反応した。

 

「強がるってのもそいつの一つの強さだ。それをこんな年から、自然と身につけてるたぁ、すげぇよお前は」

 

優しく頭を撫でたまま、総介は彼女に話を続けた。

 

「でもな……物事には何にでも限界ってのがあんだ。そんな小せえ体に、嫌なモン溜めたままでいたら、すぐにパンパンになっちまって、しまいには爆発して何にもなくなっちまうぞ。

 

 

 

 

それは大人でも子どもでも、どっかで吐き出さなきゃなんねーんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

小娘、お前もいつかは、いつまでも親父に頼ってないで、一人で生きてかなきゃいけねー。でも今のお前の年じゃ、そりゃさすがに難しいってのは分かるな?」

 

「………」

 

「「!!」」

 

総介が菊にそう尋ねた時に、今度はそばにいた一花と三玖がビクッと反応した。菊はそんな2人を気にすることもなく、無言で総介の問いにうなずく。

 

「なら、今は親父や、周りに思いっきり甘えてやれ。嫌なもん吐き出してやれ。親ってのはガキ作った瞬間から、仕事に子育てと、いつも大変なもんだ。んなこといちいちガキのテメーが気にしてたら、いつまで経ってもガス抜きできやしねー。

 

 

 

 

それが出来んのは、ガキだけに許された特権だ。

なぁに、誰もうっとうしいなんて思やぁしねーよ。

 

 

今はまだ、自分(テメー)の思うままに生きりゃいい。そん中で大人ぶんのも、母親をどう思うかも、お前の自由だ。

 

 

 

もし今が辛ぇなら、もしお前が遠い未来に、大人んなって結婚してママになったときゃ、そのガキに同じ思いをさせないようにしてやれ。

 

 

 

それだけだ。今は何も背負いこもうとせず、嬉しかったら笑って、辛かったら泣いて、思いっきりガキライフを楽しみやがれコノヤロー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………う、うぅぅ……」

 

総介が言い終えると、菊は今まで溜めていたものを、涙として吐き出し始める、そのまま、彼の足元まで行き、しがみついて、顔を埋めた。

彼女が泣き止むまで、総介は菊の頭を優しく撫で続けた。

その様子を見ていた三玖も、彼が言った言葉に、胸を熱くさせる。

 

 

(同じだ……ソースケに初めて出会ったときも、試験のときも、私が悩んでいたときも……いつもソースケは、こうやって、全部包み込んで、優しく受け入れてくれた……)

 

 

 

『別にいいじゃねーか。人と変わったもの好きになったってよ』

 

 

『今の自分を信じられるのは友達でも妹さんでもねー……自分自身だろうが』

 

 

『頑張ったのは、三玖自身だよ。三玖が頑張ろうと思わなかったら、赤点回避は出来なかった…………ありがとう』

 

 

『余計なお世話ってのは、野暮な男の特権だからね。これぐらいはさせてくれなきゃ、君の恋人として顔が立たないよ』

 

『一人で抱えることも、すごく苦しいのは分かるし、それを誰かに相談することが、とても勇気がいるのは、俺も知ってる。

ずっと苦しかったかもしれないけど、もう一人で悩まなくていいよ。

三玖の苦しみも、悩みも、不安も、怖さも、全部俺にぶつければいいし、恋人なんだから、遠慮なんてしなくていいよ。

俺でよかったら、全部受け止めるから。

三玖が苦しかった分を俺にぶつけて欲しい。

だから、もう大丈夫だよ、三玖』

 

 

 

 

 

 

 

 

(だから、私は、ソースケのことが……)

 

三玖はそのまま、総介のところまで歩いて行き、菊をあやす彼の右側から、ギュッと抱きついた。

 

「!……三玖……」

 

「……フータローを笑ったのはいけない……」

 

「……あい。すんませんでした」

 

「でも……フゴフゴ…」

 

「え、なんて?」

 

「ふふっ……何でもない……」

 

三玖は最後に、総介の右腕に顔を埋めてから、何かを言った。曇って聞き取れなかったが、彼女が機嫌良く笑っているので、悪い事では無いのだろう。菊もやがて、泣き止んだのか、総介にしがみついていた腕を離して、三玖がハンカチで涙を拭いてあげた。

一方、残された風太郎と一花は……

 

「ああいうところだよ、フータロー君」

 

「……何がだ?浅倉が俺のいいところを全部持っていったところか?」

 

「……はぁ、君はまず女心と子どもの扱い方を覚えなきゃいけないね」

 

一花が風太郎に呆れてため息をついていると、リビングのドアから足音が聞こえてきて、中に残りの姉妹たちが入ってきた。

 

「ただいまー……ってあれ!?可愛い女の子だ!」

 

「あんたらまで、なんでうちにいるのよ」

 

「何してたんですか?」

 

真っ先に入ってきた四葉が、菊に反応する。その後に、二乃と五月が入ってきて、二乃が何故かいる男2人にしかめっ面で反応し、五月が何をしてたのか聞いて、それに風太郎が返答した。

 

「ままごとだ。俺が父親だったんだが、今浅倉に全部持ってかれたところだ」

 

「本当に何してたんですか……」

 

風太郎の説明が、完全にぶっ飛んでしまっていることに動揺を隠せない五月。と、それも気にせずに、四葉が菊に話しかける。

 

「いいなー。私も混ぜてください!誰の役余ってますか?」

 

そう言って、ままごとに参加しようととする四葉を、菊はじーっと見つめ、そして……

 

「うちの犬!」

 

「ワンちゃん!?わんわん!」

 

まさかの犬指名だった。四葉を見てそうイメージしたのだろうか?しかし、指名された当人も、驚きながら鳴き真似をするあたり、自身が犬っぽいことを自覚しているという証拠では……というか、適任だと思う。

続いて、菊は参加するとも言っていない二乃と五月を見て……

 

「そこの二人はおばあちゃん!」

 

「………」

 

「あらー私たちも入れてくれるの?」

 

「おばあちゃんw」

 

「黙ってなさい浅倉インキャ総介!」

 

「浅倉インザスカイみてーに言ってんじゃねーよ」

 

まさかまさかのおばあちゃん指名。五月は口を開けて呆然とし、二乃は目が笑っていない笑顔で菊へと近づき、頬をむにーっと引っ張る。

 

「で?なんの役だって?」

 

「お、おば……」

 

「聞こえなーい」

 

「やめてやれよ中野インザババア」

 

「何よその名前!?私の原型どこにも無いじゃないの!」

 

と、いつもの低レベルな口喧嘩のやりとりをする総介と二乃。その様子を、一花と三玖はソファのところにいながら眺めている。

 

「……にぎやかだね」

 

「うん、楽しい……」

 

風太郎が家庭教師としてやってきて、総介がその助っ人として連れてこられてきて……やがて、総介は三玖と恋人同士になって……

今の学校に転校してから、五つ子の周りはだいぶ変わった。それでも、一花と三玖は前まで5人でいた時よりも、2人を入れた『7人』でこうして過ごすことの方が、よっぽど楽しいと思えてきていた。

 

「いいの、フータローのこと?」

 

「……うん、私は私のペースで進むことにするから」

 

「……そうだね」

 

三玖は、一花のことを応援しているが、どう進むかは一花の自由なので、このまま行く末を見守ることにした。無理に近づくよりも、徐々に距離を縮めた方がいい時もある。自分と総介はその限りでは無かったが、人のペースはそれぞれに違うのだ。それは五つ子でもそうだ。ゆっくりと、見守っていけばいい……

そんな思いを巡らせていた三玖。

 

 

そして一花は………

 

 

 

 

(……いつまでも父親に頼ってないで、か……)

 

総介の言ったことが、頭の中で妙に引っかかっていた。

今、この場にいることも、こうして高校に通えているのも、義父が全て用意してくれたからなのだ。今思えば、自分たちはただ、与えられてきて、甘えるだけだった。まだ、彼に何も返せていない……

 

(………もう少しだけ……まだ、いいよね……)

 

一花は、その考えは一旦閉まっておくことにした。今はただ……

 

 

 

 

 

 

「……このままみんなで楽しくいられたらいいね」

 

 

新しく加わった2人と一緒に過ごす日常が、少しでも長く続くことを願うばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、五つ子と風太郎、そして総介の7人は、期末試験の1週間前を迎えることとなる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケェ……ままごとェ

 

「よろしくなお袋」

 

「あんたの母親なんていやー!!」

 

「オイオイ、ババアなめんじゃねーぞ。これからの時代、ジジイよりババアだ。スゲーぞ、ババアは。

『苦しい時、そんな時、頼りになるババア』

略して………」

 

「『クソババア』じゃねーかコノヤロー!!!」

 

「浅倉さん、それ言いたかっただけですよね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回、しれっと総介の家族構成が出てきました。
ここで一つ、決定事項がございます。総介の父親は今後一切出てきませんのであしからず。メタ的に理由を言えば、最初は出す予定でしたが、色々と面倒になったのでいないことにしました(テヘペロ)。
今回もこんな駄文を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
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