世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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50話到達しちゃいました。
これ最終回まであと何話書けばいいのやら……と、とにかくこれからも頑張ります!
またまた高評価をしていただき、一時日間ランキング最高20位までランクインできました。本当にありがとうございます!そしたらまた低評価でランク外っていうお決まりのパティーンw
そしてそして!UA110000&お気に入り登録600件突破しました。登録してくださった皆様、重ねて本当にありがとうございます!小説を書くモチベーションとプレッシャーが日に日にうなぎのぼりになっています(笑)


50.最初は目の敵にしてたのに色々あって女の方が男に好意を抱く……なんてご都合主義実際あるわけねーだろバーカ!

話は数日前まで遡る………

 

 

 

 

 

 

「二乃〜、ビッグニュースビッグニュース〜!」

 

「?どうしたのよ、やけにテンション高いわね」

 

昼休み、二乃は昼食を終えて、自販機で飲み物を買ってきて、自分の机で一人で飲んでスマホをいじっていたところ(姉妹や風太郎に見つからないように)、彼女が転校してきてから出来た友人の1人が話しかけてきた。別にそれ自体は珍しいことではなかったのだが、今日は何やら様子が違った。

 

「ふふ〜ん、何を隠そう、二乃をはじめ、いろんな子が狙ってる大門寺君の極秘情報を持ってきたよ〜♪」

 

「えっ、海斗君の!?」

 

海斗の名前を聞いた瞬間、二乃は一気にテンションが上がった。

林間学校で、二人は運命的な出会い(二乃目線)を果たした後、それ以来全く音沙汰が無かった海斗の情報と聞けば、反応を示さないはずがない。

 

「ここじゃなんだから、別んとこ行こ」

 

「そうね、わかったわ」

 

そう言って二乃と友人の2人は、教室を出て近くの階段の踊り場で話をすることにした。

 

「……あれ、二乃はまだ戻ってきていないのですか……」

 

「渡辺さん、中野さんなら山田と教室を出て行ったよ〜」

 

「そうですか、わかりました」

 

それと少し入れ違いで、アイナが戻ってきたことは、彼女にとってこの上なく運の悪い話だったことだろう……

 

 

………………………………

 

 

「で、海斗君の情報って一体なんなの?教えて♪」

 

「まぁまぁ、そう焦らないで……大門寺君が学校でほとんどの生徒が見ないことは知ってるよね?」

 

「ええ、彼とクラスになる人以外は、見つけるのは難しいことは分かってるわ」

 

人気の無い階段の踊り場で、二乃と友人の山田という髪を染めてリボンをつけた女子は海斗のことについて話をしていた。

『大門寺家』の跡取りたる海斗は、その痕跡を極力残さないように学園生活を送っていた。彼をプライベートで写真に収める者に罰則を課し、フォルダ内の画像の全てを念入りに削除、さらには、彼について深く追求することも、看過されるものではない。それらは全て、海斗の身の回りから敵となる者達へ情報を渡さないためでもある。無論、学生として学校内で生活を送る以上、それらは全てクリアできるものではない。裏で流れた情報が、学生達の間で高値で取り引きされている情報も聞く。もっとも、それらの情報は『授業中の発言』『好きな食べ物』『自販機で買った飲み物』という、非常にくだらない類の情報であるが、ほんの稀に、かなり重要な情報も流出したりするのだ。

 

「それで、これは大門寺君のかなり重要かもしれない情報だから、誰にも言っちゃ駄目だよ?」

 

「言わない言わない。何がなんでも守り通すわ♪」

 

先ほどから海斗の事だと聞いて、やたらとテンションの高い二乃。本当に今まで風太郎や総介に当たってきた態度と比べたら、誰だお前状態である……

 

「じゃあ言うよ………大門寺君には1人、付き人のような人がいるのよ」

 

「付き人?」

 

「そう付き人。彼が学校にいる間は、その付き人が、大門寺君の隣にいて、色々とお世話とか守ったりとかしているらしいよ」

 

「へぇ〜、そうなのね」

 

「休み時間とかは、その付き人と一緒にどこかに消えちゃうんだって」

 

「付き人の話は知らなかったけど、海斗君がどこかにいなくなるってことは知ってたわ」

 

噂は一人歩きすると変な方向に行くはずなのだが、この噂は中々に的を射ていた。

二乃も二乃で、海斗のことについて調べていたのだが、休み時間となると彼は消えるようにいなくなること以外の情報は掴めずにいた。

 

「でね、その付き人を通して貰えば、もしかしたら大門寺君に会えるかもしれないってこと」

 

「……なるほどね、それはかなり重要な情報だわ」

 

顎に指を当てて、探偵気取りの如く考察する二乃。馬鹿のくせに……

 

「それで今回、その付き人がどんな人かが判明したのよ!」

 

「付き人の、名前……」

 

その付き人自体は重要ではないが、海斗に繋がる大事な手段である故、二乃はその人の名前を、息を飲みながら聞く。

 

「ゴクリ……それで、その人の名前は……?」

 

緊張の一瞬が、二乃に訪れた。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええと、確か………

 

 

 

 

 

 

 

 

浅倉総介って人。メガネかけた、ヒョロ長の陰キャみたいな男子」

 

 

 

「……なるほど、わかったわ。じゃあその人から海斗君の………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………は?今なんて?」

 

 

 

 

 

「だから、浅倉総介って人」

 

 

 

 

 

あさくらそうすけ………

 

 

 

アサクラソースケ………

 

 

 

 

浅倉総介……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅・倉・総・介

 

 

 

 

 

 

 

 

「でね、その2人って、小さい頃からずっと一緒にいるみたいらしくて、いわゆる幼なじみってやつ。その時から………二乃?」

 

 

 

 

二乃の目の前の視界が徐々にブラックアウトしてゆく。最後に覚えているのは、山田の言っていた『幼なじみ』と言う単語だけ。その後の記憶は曖昧だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

そして時は進み……

 

 

 

 

 

「アンタ……海斗君の幼なじみなんでしょう?彼に会わせてくれないかしら?」

 

あの後、二乃は総介と海斗が繋がっていたことに絶句、数時間は口から白い魂的なものが出っ放しだったが、正気を取り戻してからは、逆を言えば、身近に海斗に会うための近道が転がっていたという思考でなんとか持ち直して、数日後に総介をこの場に呼んだ。が、彼の答えはもちろん

 

 

「やだね」

 

 

当然、総介が出す答えはNOしかない。いつもの死んだ魚のような目をしたやる気の無い表情で返しながらも、今現在の彼の頭は、二乃が海斗と自分の関係を知ったことへの驚きもあるが、それよりも別、その先のことを考える始めていた。

 

(一体どこで知ったんだこのアマ……いや、この際『それ』はどうだっていい。問題は『その後』だ……)

 

総介が二乃に海斗のことを聞かれた直後に考えたことは3つ。

 

①どこで、誰から2人の情報を得たのか

②一体どこまで知っているのか

③アイナのことも知っているのか

 

その中で、彼は真っ先に①について考えることをやめた。2人が学校に通っている以上、総介と海斗が仲が良いのは、いずれ知れ渡ることだ。それ自体に大きく驚く事はない。しかし、総介にとっての想定外は、あまりにも二乃に知れたのが早すぎたことだった。海斗と二乃が林間学校で出会って以降、総介も周りを警戒して教室以外で2人になる時間は極力避けていたのだが、それでも早すぎた。中々にめんどくさいタイミングでバレてしまったのも都合が悪い。

そして、自分と海斗が幼なじみだということを知っている。②は、その辺りまでのことを知っているだろう。そうなってくると……

 

問題は③だ。仮に二乃が、自分達とアイナの関係をも知っているのならば……

 

(この女のオツムからして、間違いなく俺に言ってくるだろうが………とりあえず様子を見るか)

 

会話の中で、二乃がアイナの事を口にするかどうかで見極めるしかない。流石に、3人の関係が知られる危険があったのは、最近では林間学校の最終日くらいだ。ここは、アイナのことについてはバレてはいないということで、会話をしていくべきだろう。

何より、仮にアイナのことを知らない場合、彼女に辿り着く道は塞がなければならない。

アイナから友人を失わせないためもあるが、彼女たち姉妹に『刀』に関する事は、『まだ』知られてはいけないのだ……

 

 

「なっ!?なんでよ!それぐらい良いでしょう!」

 

当然ともいうべきリアクションをする二乃。それに対し、総介は淡々と返す。

 

「アイツもアイツで色々忙しいんだ。そう簡単に呼べるわけねーだろ。第一、今はテスト週間中だ。テメーみたいに呑気にあぐらかいてるわけにゃいかねーんだよ」

 

「ぐ………っ!」

 

嘘です。海斗は勉強しなくても全教科95点以上とれる本物の天才です。必要ありません。まあ忙しいのは本当だけどね。

 

「た、ただお礼を言いたいだけよ!時間はそんなにとらないわ!」

 

「お前と海斗の間に何があったかはヤローから聞いた。肝試しのことも、キャンプファイヤーのことも大体把握してる。それを知った上で、テメーに海斗を会わせる必要はねぇっつってんだ」

 

「なっ!!アンタ……本当に全部知ってるの……」

 

「なんなら言ってほしいか、今この場で?」

 

「………」

 

「?オイ、一体何の話なんだ?」

 

林間学校の肝試しで海斗と出会い、キャンプファイヤーの時に、誰もいない宿舎のエントランスで2人きりで踊ったことを総介が知っていると聞いた二乃は、顔中を真っ赤にさせて俯く。その話を、唯一この場で知らない風太郎が聞いてくるが、本人にとっては毛ほども関係ない話なので、適当に「いや、コッチの話」と返しておいた。そしてここから、総介の二乃への毒吐きが始まった。

 

「大体、勉強から逃げ出したテメーが人をいきなり呼び出したかと思えば、開口一番『海斗に会わせろ』たぁ、随分と偉い身分なこったな、えぇ?」

 

「……何よ、それを言うなら五月だって」

 

「肉まん娘は上杉んところで勉強してるって聞いてるぜ。な?」

 

「あ、ああ……」

 

「なっ!アンタ!五月を家に泊めてんの!?」

 

二乃は五月が風太郎の家にいることを知り、驚愕した。突然二乃にギロっと睨まれた風太郎が、慌てて釈明する。

 

「アイツが財布を家に忘れて行ったんだ!それで俺と三玖がここに来た日に家に帰ったら、五月が勝手にいたんだ!俺が連れ込んだ訳じゃねぇ!」

 

「あんた、ひょっとして手出したりしてないでしょうね!?」

 

「この万年勉強脳が女に手出せるようなタマに見えるか。?短い付き合いだが、それだけはハッキリ分かるぞ俺でも」

 

「ひ、酷い……」

 

総介からの流れ弾をくらい、ガクッと肩を落とす風太郎。そんな彼など無視して、総介は話を戻す。

 

「まぁそれはそれで置いといて、つーわけだ。テメーみてーな女の相手してるほど、海斗も暇じゃねーんだよ。ヤローに会いたかったら自力で探すこったな」

 

「………」

 

「あ、浅倉……」

 

そんな事はとっくにやっている。自力で探せるのなら、今頃総介をこの場に呼んではいない。

二乃は林間学校が終わってから、海斗に何度も会いに行ったが、その度に彼の姿は無く、先生に取り合ってもらうように聞いても『学生生活で、大門寺に会いたいという女子がお前以外にも沢山いる。1人を贔屓して混乱を招くわけにはいかない』とつっぱねられた。ならばと、彼女は生徒たちの間で回っている裏情報にも手を出した。流石に金のやり取りは問題で、多少の抵抗はあったのだが、たかだか数千円を惜しんでいることなど出来なかった。全て、海斗にもう一度会うため。そして、ようやくここまできたのだ。海斗の幼なじみである総介まで辿り着いたのだ。ここで逃すわけには……

 

 

 

 

 

「……待ちなさい」

 

二乃は、踵を返して部屋を後にしようとする総介を呼び止めた。

 

「んだよ、まだ何かあんのか?」

 

「………わかったわ」

 

何かを呟く二乃だったが、それは2人にははっきりとは聞こえなかったが、彼女はそのまま驚くことを言い出した。

 

 

 

 

 

 

 

「……わかったわ。私家に帰るわ……家に帰るから、その代わり海斗君に会わせなさい!」

 

「!!な、何!?」

 

「………」

 

二乃が言ったことに、風太郎が驚愕の表情を浮かべたが、総介の顔色はそのままだ。

普段の彼女なら、絶対に言わないことだったが、この場で総介を逃したら、海斗にはしばらくは会えないかもしれないという危機感が、二乃のプライドを上回った。今の自分の中で、総介に対して切れるカードは、今の自分の状況しかない。自分が姉妹のもとに戻って海斗にもう一度会わせてもらえるなら、場合によってはお釣りが出てくるほどだ。多少はプライドに傷がつくだろうが、海斗に手が伸びることは、五月との意地の張り合いをするより大いに価値がある。

それに……と、彼女はチラッと風太郎の方を見る。

驚きながらも、少し期待をしているような表情だ。それもそうだろう。もし総介が二乃に海斗を会わせれば、それだけで家に戻ると言っているのだ。風太郎からすれば棚からぼた餅、『棚ぼた』もいいところ。彼は思わず、総介への目線を期待のこもった表情で見てしまった。

 

つまり、この場で中立だった風太郎が、二乃側につくことにより、2対1の状況が生まれたのだ。こうなってしまえば、普通は2人に根負けして渋々了承してしまうのが世の常である。

 

 

 

そう、『普通』ならば……

 

 

 

 

 

 

 

「話にならねぇな、論外だ」

 

 

「なっ!!?」

 

「!!?」

 

全く表情を崩さなかった総介が、二乃の条件をつけた頼みを平然と切り捨てた。すると、二乃と同じく彼の返事に驚いた風太郎が、彼に言葉をかける。

 

「ど、どうしてだよ浅倉!?ただ会わせてやるぐらいいいだろ?」

 

「さっきも言ったろうが、上杉。海斗はその辺の男子とは違ぇ。とんでもねぇ名家の金持ち、ボンボンだ。それにあぐらかいてるバカなら知らねぇが、あいにくアイツはそうじゃねぇ。海斗も海斗で、家のためにやる事はある。その中に無理矢理学業を入れてんだ。たかだか小娘1人のワガママで勝手に動くわけにゃいかねーんだよ」

 

総介の言っていることは、概ね正解であるが、海斗はそれほど忙しい身ではない。多少の自由は許されており、ていうか、それらを決定するのは全て海斗自身であるため、場合によっては彼の気まぐれで姉妹の前に現れることも勿論可能だ。

 

物は言いようである。

 

「こ、小娘ですって!?」

 

「ああ小娘だ。テメェごときの小娘なんざ、海斗の周りにいくらでも集まってくる。ムカつくが、あの野郎はそんな連中なんざ歯牙にもかけちゃいねぇ。テメェもその中の1人にすぎねぇんだよ」

 

「そ、そんなのわかんないでしょ!?海斗君は、あの日……林間学校のキャンプファイヤー日、私に会いに来てくれたんだから!」

 

「だからどうした?それがヤローに会うためのパスになるってのか?あんなインチキ臭ぇ伝説とやらで一緒に過ごしたってだけで、テメェは海斗の中では特別な存在だとでも思ってんのか?………

 

 

 

思い上がってんじゃねぇぞクソアマ」

 

「!!!」

 

総介はいつまでも食い下がってくる二乃に対して、先日放った殺気の10分の1以下のモノを向けた。もっとも、常人でも彼のソレは恐怖を感じるのに十分ではあるが……

眼鏡の奥の総介の目が、冷たい刃のような眼差しで二乃へとその切っ先を向ける。

 

「テメェみてぇに、ギャーギャーワガママこいて上から目線で海斗に会わせろだの、話をさせろだののたまう女なんざごまんといんだよ。その点じゃテメェもそいつらと一緒だ。所詮は海斗の表面しか見ちゃいねぇ量産型のミーハー女が……ヤローの事情も考慮しねぇで会わせろだ話させろだ……話にならねぇんだよ。

 

 

 

 

身の程を知りやがれ、コノヤロー」

 

総介はその言葉を最後に、再び踵を返して部屋のドアを開け、出ていこうとした。すると………

 

 

 

 

 

「………わよ」

 

「に、二乃……」

 

プルプルと震える二乃が、目に涙を溜めながら総介の背中を睨みつけて叫んだ。

 

 

 

 

 

「わかったわよ!もういい!!あんたなんかに誰が頼むもんか!!さっさと三玖のとこにでもどこでも行け!!死んじゃえ!!クソ野郎!!!」

 

 

 

 

 

 

「………うるさっ」

 

その一言を残して、総介は部屋を後にし、扉が閉じられた。

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

「二乃……」

 

総介が出て行った部屋で、二乃を心配する風太郎だが、彼女の腹の虫はまだ治まっていないようで……

 

「あんたも、出てって!!二度とアイツに会わせないで!!あんたも二度と会いに来ないで!!」

 

「ちょ、ちょっと待て!俺は何も……」

 

「うっさい!!出てけ!!」

 

風太郎や話を一切聞かず、二乃は近くにあったクッションを投げつけ、それと彼女の怒り様に慄いた風太郎も、やむなくその部屋を退散した。

 

部屋の中が、激しく息をする二乃の呼吸のみになってしまう。

 

「ッッ!!!〜〜〜!!!」

 

やがて、彼女はベッドへとダイブし、顔を埋めて泣き叫び続けた。足や手をジタバタとさせながら、彼女は何分経ってもベッドの中に消えゆくその叫びを止めることは無かった。

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「浅倉!」

 

「……んだよ」

 

ホテルを出てすぐ、風太郎は総介に追いつき、強い口調で彼の背中に声をかけた。総介はめんどくさそうに頭をかきながら振り向く。

 

「せっかく二乃を家に戻すチャンスだったんだ……なのに、どうして、お前は……」

 

「ああ、それか……」

 

思い出したように呟き、そのまま総介は理由を説明する。

 

「海斗に会わせるのも無理だし……そもそもあの女が戻ったところで、どうにかならねぇよ。ただ邪魔なだけだ」

 

「じゃ、邪魔……」

 

なんの迷いもなく、二乃を『邪魔』と断言する総介に信じられないような表情をする風太郎。

 

「だってそうだろ?今の今まで俺らを敵視して、勉強もロクにしねぇどころか、俺らの家庭教師の邪魔をしやがんだ。挙句の果てには文句垂れ流して家出するたぁ、あの女は俺らが家庭教師をする上で害以外の何者でもねぇし、いねぇ方が他の姉妹の成績を上げやすくなるし、あの女に構い続けても、他を疎かにするだけだ。切り捨てる他ねぇだろうがよ」

 

「そ、それは……」

 

「それにだ上杉、お前今回、親父さんから特にノルマ課せられてねぇんだろ?だったら尚更だ。今からどう頑張ったところで、まともに俺らの家庭教師を受けてきていないあの女じゃ、どうにもならねぇよ。もう3日しかねぇんだぞ。今回はあの女の子のこたぁ諦めろ」

 

「………」

 

風太郎は何も言い返せなくなってしまった。正論だ。総介の言っていることは全て。

今、二乃を戻したところで、期末試験まで残り3日。まともに勉強をしてこなかった二乃を、赤点回避させるのは、ハッキリ言って不可能だ。それに、もしかしたら五月と、果てには他の姉妹とも諍いが生じる可能性がある。その結果、姉妹の勉強に支障をきたしてしまい、全員赤点をとってしまうかも知れない。彼女を今戻すこと自体、リスクの塊でしかない。

 

「お前の言いてぇことも分かるさ。だが、あの女があの日にあんなことをした時点で、俺はもうアイツに勉強を教える気は失せた。もうアイツがどうなろうが知ったこっちゃねぇよ。今は目の前で必死こいて頑張ってる三玖や長女さん、ついでに肉まん娘でいっぱいいっぱいだ。それに……もう一つめんどくせぇ事が起きてるようだしな」

 

「もう一つ……四葉?」

 

「ああ、あのバカリボン、まだ陸上部の助っ人とやらに行ってるらしい。ふざけんじゃねぇよったく……」

 

「………」

 

あの日、『零奈』にあった日も確か、四葉は陸上部の連中と一緒にいた。彼女はあれで、勉強に集中できているのだろうか……

と、風太郎の肩に、総介の手が置かれる。

 

「上杉、もう他のことは考えんな。お前は肉まん娘のことに集中しろ」

 

「……浅倉」

 

「俺は俺で、三玖と長女さんを見るからよ。あの子らが成績を上げれば、否が応でもあの女は危機感を持つだろうよ」

 

「………」

 

それでも、二乃を四葉を見捨てたくはない……そう言えなかった。他に頑張っている一花、三玖、五月のことを考えれば、自分たちについてきてくれる3人のことを思えば、そんなことは言えなかった。しかし、総介の言ったことに納得も出来なかった。

必要が無くなれば容赦なく切り捨てる……現代社会で、当たり前のように起きていることだ。そもそもやる気のない人物を、勉強させようということ自体、不毛な行為だ。ならば、それを排除して、志を共にする者たちだけで、歩き続ける。基本にして、最善の策だ。

しかし、総介のは些か冷徹過ぎるようにも思えてくる。三玖を贔屓してることを抜きにしても、前回の五月、今回の二乃と、彼は何の躊躇なく彼女たちを除外した。

 

(………いや、この場合、俺が間違ってるんじゃ……)

 

もしも自分1人なら、二乃も、四葉も、戻そうとして、他の3人のことは放ったらかしにして結果全員赤点という事態になるだろう。自分1人では、一花や三玖すら制御できるかどうか分からない……

もしかしたら、総介が言うように、2人を犠牲にしてでも、3人の成績を確実なものにするのが正しいのかもしれない……

 

 

5人全員を強引に一緒にして、全員散々な結果にするか、残ったメンバーだけでも、成績を上げて赤点回避をさせるか……

 

 

 

 

 

 

家庭教師として、どちらが相応しいのか………

 

「ま、そういうわけだから、俺は三玖と長女さんのところに戻るわ。お前も肉まん娘の勉強、ちゃんと見てやれよ」

 

「あ……」

 

そう言い残して、その場を去る総介を、風太郎は声をかけようとしたが、出来なかった。

 

 

 

ただ、その場を去る………先を行く総介の背中が、あまりにも遠く感じた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの日、二乃は泊まっていたホテルをチェックアウトし、再び行方を晦ました………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………つーこった。どっからか知らねぇが、俺とテメェのことがあの女にバレちまってるぞ」

 

『二乃ちゃんがかい?これはまた……よく気づいたものだね』

 

「あの女の話を聞く限り、アイナのことはバレてなさそうだ。多分学校内でのテメェの情報を金で買ったんだろうな」

 

『裏情報のことだね。僕たちのことを嗅ぎ回っている子たちの間で出回っているという……』

 

「ほとんどはどうでもいい事らしいが、中には馬鹿に出来ねぇ情報もある。そん中にアイナのことがあればアウトだな。俺らがアイナとの仲を知ったらあの女は、アイナに『裏切られた』的なことを考えて被害妄想でも発症して、絶交でもしてしまうだろうよ」

 

『………総介』

 

「わぁってらぁ。俺ァ明人と違って、アイナに恩義はあるが、恨みはねぇ。これ以上は踏み込ませやしねぇよ」

 

『そうもそうだけど……いずれは知られることだ。それなら僕が取り合って伝えた方がいいんじゃないかい?』

 

「そうしてぇが、今の俺とあの女、今一番仲悪いんだ。消化器かけたつもりが、ガソリンでした♪なんて事態は避けてぇ。余計に『学年末試験(・・・・・)』の5人全員の赤点回避が出来なくなっちまうかもしんねぇからな。少し待った方がいいだろ」

 

『……分かった。君に任せるよ』

 

「悪いな、それで、アイナには……」

 

『僕から伝えておく。それと、試験が終わるまで近侍の仕事も休むようにしておくよ』

 

「ああ、頼む……」

 

『じゃあ、何かあったらまた連絡してくれ。僕の方はいつでも二乃ちゃんに会ってもいいから』

 

「切り札は最後まで取っておくもんだ。お前の出番はしばらくはねぇかもな」

 

『そうでもないさ。意外とすぐに来るかもしれないよ、僕の出番』

 

「………何を知ってんだ?」

 

『作者の脳内ではry』ブチっ!!

 

ツー、ツー、ツー、ツー…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いつからメタくなりやがったんだ、あの野郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浅倉総介、大門寺海斗、渡辺アイナ………

彼らの関係を言葉で表すと……

 

 

 

『幼なじみ』

 

 

 

『仲間』

 

 

 

『家族』

 

 

 

 

『兄弟』

 

 

 

 

いや、それらでは小さ過ぎる。

 

幼少から共に過ごし、喧嘩をし、ふざけたり、一緒に怒られたり、泣いたり、笑ったり………

 

 

共に死戦を潜り、死闘を駆け抜けてきた彼らの間に紡がれた(いと)は、そのような言葉で表すことができるもので作られてはいやしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

もはや彼らは、例えようのない、言葉にできないようなもので繋がれているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一花、二乃、三玖、四葉、五月の『五つ子』のような………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いやただの腐れ縁だっつーの」

 

 

 

海斗との電話を切った総介が、誰に言うでもなく、そう呟いた。

 

 

 

期末試験まで、残り3日……もうすぐ2日。

 

 

 

 

 

 




え〜、この話の更新に2週間もかかっててしまったのは、『かぐや様』があまりにも面白過ぎて書くのに集中できなかったからです!!(特に5話と7話)
こうなったら2期終わったら原作全巻買うか……

今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!次回はバカリボンこと四葉の問題です!
……三玖全然出てないorz
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