銀魂狂のみなさん、ぜひ見に行きましょう!
………ほんとに最後か、銀魂よ?
「俺達の戦いは劇場版第二弾からだぁぁぁあ!!」
なんてことは………
1月も半ば差し掛かろうとしていた明くる日のこと。総介は三玖を連れて町をぶらりとデートしていた。適当に歩き回った後の夕刻……
「でさ、そん時海斗が『僕はいいかな、また今度にするよ』ってよ。爽やか笑顔で言いやがったが、ありゃ完全に逃げたとみた」
「ふふっ、大門寺君もかわすの上手いね」
2人で、それぞれの身のまわりの話をしながら手を繋いで町を歩く微笑ましい様子は、どこの誰がみてもラブラブなカップルのそれだ。しかも2人の首元には、クリスマスの日にお互いに買ってプレゼントしたマフラーとヘッドホンが身につけられている。あの日以降、総介は三玖に買ってもらったマフラーを出かける際はほとんど首に巻いていた。
仲睦まじい2人を、街ゆく人は
「あらあら、青春ねぇ」
「ワシも若い頃はああじゃったな」
「いいなぁ、私も彼氏欲しいなぁ」
「リア充爆発しろ」
「リア充じゃない桂だ!」
ん?なんかいたような……まあいっか。
と。様々な思いで見られる中、2人の歩く道の横にたこ焼き屋の屋台があった。その匂いが、2人の前に漂い、鼻へと入っていく。
「いい匂い……」
「ちょっと買っていく?」
「うん、一つ買って2人で分かれば大丈夫」
「オッケー」
そう言って2人は屋台の店主に、6個入りのたこ焼きを一つ注文した。
「はい、ソースケ」
三玖は値段の半分の金額を総介に渡そうとするが、
「いいよこれぐらい。俺が買うから」
「で、でも……」
「あのアパートに引っ越してから、お金は少しでも貯めた方がいいって。あの時に俺もその一端を担ってしまったんだから、こういうところは俺に出させてよ」
「………わかった。ごめんね、いつも出してもらって」
「気にしなくていいよ。その分三玖とこうして過ごせるだけで、充分お返しになってるから」
すると
「くぅー!兄ちゃんイイコト言うね!彼氏の鑑だ!気に入った!!6個入りも一つサービスしてやる……ほれ、持ってきな!」
と、2人のイチャイチャ会話を聞いていた店主が、総介の三玖を想う心に感激したのか、同じたこ焼きの入った袋を差し出してきた。
「い、いや、俺は何もそんなつもりじゃ……」
「いいから持ってきなって!近頃ぁオメェさんみてぇな男はそうそういねぇ。どいつもこいつも見てくれだけがチャラチャラしやがった腑抜けた男ばかりよ。建前だけ一丁前に言うが、その実、内っ側は下心しか出しちゃいねぇ。オメェさんのように、心の底からそこのお嬢さんを大切にしてるって思える言葉を聞けたのは久しぶりだ!そのお礼に、ここは俺の顔を立たせてくれってなもんよ!」
ほれ!っと店主は再度総介にたこ焼きの袋を差し出してくる。それを総介は、渋々と受け取った。
「……じゃあ、いただきます」
「あいよ!あ、お嬢さん、アンタもいい男捕まえたもんだね!ぜってぇ離しちゃいけねぇよ!」
「……あ、ありがとうございます………あと、ソースケから離れるつもりは……ない、です」
「………」
「くぁー!お嬢さんもお嬢さんでいい子だねぇ!まさしく別嬪さんだ!羨ましいねぇどうも!」
なんだかテンションの高い江戸っ子気質の店主に話しかけられた三玖はビクッと反応したが、礼を言って、頬を赤く染めながら総介から離れることはないことを伝える。
無論、本心だ。
それを聞いた総介も、赤くした顔を気付かれまいと、横に逸らすのだった。
総介爆発しろ!
………………………………
「いい人だったね」
「あの店主、ぜってぇ俺らの反応見て楽しんでただろ」
「ふふっ………でも、6個も食べちゃ夕飯どうしよう……」
「肉まん娘にでもあげりゃ大丈夫でしょ?残ったのはあれが全部胃袋に収めてくれるって」
「………五月、残飯処理係……」
たこ焼きを買い、そのまま帰路へと着こうと数十メートル歩き出したところで、2人の前から人が歩いてきた。
それは1人の女性だった。普通に三玖と会話をしていた総介は、その女性の気配を感じ、視線を正面へと移動させた途端………
言葉を失い、その場に足を止めた。
「?……ソースケ?」
手を繋いでいた三玖も、それに釣られて足を止めた。彼の目線を辿って正面を見ると………そこには、若干茶髪の入った黒髪をポニーテールに結び、ベージュのロングコートを着た美人な女性が立っていた。外見から見て、自分達よりも少し年上に見える。
「……なんでここに……」
すると、総介が驚愕する視線の先にいる人物が……
「総く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
突進してきた。
「!?おわっ!!!」
「!??そ、ソースケ!?」
驚きのあまり反応を遅らせてしまった総介が、その人物によって抱きつかれて、総介もろとも倒れてしまった。それに驚きを隠せない三玖。
「久しぶり〜〜総君!!元気だった?背も少し伸びたね〜!少し男前になったかな?てか何その眼鏡?オシャレ?あ、そうだ!海斗やみんなは元気にしてる?私これからね、……」
「は・な・れ・や・が・れぇ!!」
「きゃっ!?」
マシンガントークで話しかけてくる謎の女性を、総介は倒れた状態からその人物を思いっきり引き剥がすため、腹に足を当てておもいっきり伸ばす。すると、女性はそのまま空中へと浮かぶが、3回ほど回って綺麗に着地する。
「ひどいじゃない総君!昔のよしみでありながら私を蹴り上げるなんて!女の子を大切にする君はどこに行ったのよ!」
「誰もアンタを女だと思ったこたぁねぇんだよメスゴリラ。今すぐ檻に戻りやがれ!」
「なっ!?乙女にそんな酷いこと言うなんて……総君、あんなに優しかったのに……ぐすっ……こんなに変わっちゃって……私どうしたらいいの……」
「とりあえず消えてくれ。あと俺は昔から優しくねぇ」
シクシクと嘘泣きをする女性を尻目に、 総介はパッパッと地面についた尻や背中の汚れを払う。すると今までポカーンと見ていた三玖が、彼に話しかけた。
「ね、ねぇ、ソースケ、この人って……」
「ん、あぁ、三玖達には話してなかったね。この人は……」
「んん?おやおや?総君、このかわいい女の子は誰かな?」
「今説明するから黙ってろ」
「ぶー、いじわるー」
ぶーたれる女性をほっといて、総介は三玖にその人物を紹介した。
「この人の名前は『
海斗の許嫁だよ」
「だ、大門寺君の、許嫁?」
「そうで〜す♪」
三玖が言ったことを、その女性……柚子は楽天的に肯定し、今度は三玖へと尋ねた。
「さ、私の紹介は終わったし、次はあなたの番ね。総君と2人っきりでいたってことは、もしかして、そこの総君の彼女だったりして〜?」
「…………」
「………え?」
「…………」
「……ちょ、アレ?……え?」
柚子としては、からかったつもりだったのだが、三玖はそのまま、頬を赤くして俯き、コクンと小さく頷いた。
「え?嘘?……え、総君、本当なの?」
柚子は念のため、総介に確認をとる。
「はぁ〜………そうだ。この子は中野三玖。この秋から俺の恋人として付き合ってる」
総介はそのまま、三玖の肩に手を回して抱き寄せる。その様子を見た柚子は、そのまま黙り込み、しばらくして………
「えええええええええええ!?????」
「うるせーー!!!」
大きな叫びと共に驚愕した。あまりにうるさくて総介に怒鳴られたが。
「総君が、あの総君が!?知らない人に全く心を開かなかった総君が!?あの外道畜生な総君が!?あの他人をゴミ屑としか見ない冷酷非情で誰にも容赦しないで有名な人間だった総君がーーーー!!!?」
「あんなに優しかった総君はどこ行った?てかあんたどんだけ俺をボロクソ言えば気が済むんだ」
「だって………嘘ぉ!?え!?ど、どうして!?って、なんで!?ていうか、どこで!?」
「落ち着け柚子さん、頼むから落ち着いてどっか行ってくれ」
総介ははぁ、とため息をつきながらも驚き過ぎてあたふたし続ける柚子を落ち着かせて、三玖と会ってからこれまでのことを簡単に説明した。
………………………………
「なるほどねぇ〜。そんなことがあったのねぇ〜」
「あんたが向こうにいる間、こっちは色々あったんだよ」
「む、向こう?」
「ああ、この人イギリスの大学行ってんの。それで殆どの時間はイギリスで過ごしてるってわけ」
「そ、そうなんだ………」
「お恥ずかしながら、日本に私が合う大学が無かったのよね〜。それで受験もほどほどにして、海外の大学探してたら、イギリスに良いところがあったから、そこを受けて通ってるの」
柚子は日本でも名家の一つとされる『九条家』の人間である。大門寺には及ばないものの、歴史ある家系として知られており、さらには大門寺家の最古の同盟関係にある、それはそれは由緒正しい一族なのだ。
なお、柚子自身は頭も良く、イギリスの大学の試験も難なくパスするほどの頭脳を持ち、さらには学生時代、薙刀で日本一にもなったことがある程身体能力も高い。
「それでね、どうせなら知ってる人がいるところがいいなぁって思って、そしたらイギリスならアイナちゃんのお母さんがry」
「どわぁぁあ!!!!ちょっと待てぇぇぇえ!!!!ちょっとこっち来い!!!」
「え!?ちょっ、総君!?」
「三玖、少し待っててね」
「え?う、うん……」
総介は柚子の口から『アイナ』の名前が出たことに焦った総介は、彼女の腕を掴んで、いったん曲がり角に身を隠して、柚子に説明をする。
………………………………
「………え!?総君『刀』のことあの子には言ってないの?」
「色々と事情があんだよ。今は時期尚早だから、アイナのことは内緒にしてんだ。三玖の姉妹がアイナの友人で、そいつが海斗のことが好きってめちゃくちゃめんどくせぇ関係なんだよ。これ以上自体をややこしくしないでくれ」
「ふーん……」
総介の説明を聞いて、柚子はあることに気がついた。
「……あれ、アイナちゃんの友達があの子の姉妹ってことは、総君が付き合ってる女の子は、年下?それとも年上?」
「………いや、同い年だ」
「へぇ、双子なんだぁ。そりゃややこしいね〜」
「……いや、五つ子だ」
「……へ?五つ子?」
「五つ子」
「六つ子じゃなくて?」
「それは松野家。あっちは中野家」
「……ほ、ほんとに?」
「ほんとに」
「な、なにそれーー!?」
目をキラキラとさせながら、あたかも面白いものを見つけたような顔をしながら総介へと迫った。
「五つ子!すごく珍しいじゃない!面白そう!私も会って見たいわ!ねぇ総君、今からその子達の家に連れてってよ」
「やだね」
「即答!?」
柚子が突然言い出したことに、総介はもちろん反対する。
「えぇ!?何でよ、いいじゃない」
「アンタが来たら来たでさらにややこしいことになんだよ。特に『あの女』がギャーギャーうるさくなんのは目に見えてらぁ」
無論、『あの女』とは二乃のことである。
「ええいいじゃ〜ん、五つ子のみんなに会わせてよぉ総く〜ん」
「嫌だっつってんだろ」
腕に抱きついてひたすら胸を押し付けてくる柚子を引っ剥がして断る総介。
「もう、こんな美人がおっぱい押しつけてまでお願いしてるのに、本当酷い子ね」
「アンタのどこにおっぱいってのがあんだよ?『お』の字もねぇだろ、その『火曜サスペンス劇場』のラストシーンみてぇな断崖絶壁に……」
「黙れ殺すぞ」
「………しまった」
「あの女の家に連れてけっつってんだよ、いいなおい?」
「………はい、わかりました」
「やった〜!じゃ、早速あの子にも言わなくちゃね!」
総介は長く会っていなかったことに失念していた。美人な柚子の唯一のウィークポイントである貧乳をイジってはいけないことを
「誰が貧乳つったオイ?殺すぞ?」
………申し訳ありませんでした。
というわけで、一度ブチ切れた柚子を止めるには、彼女の言うことを聞くしかないことを知っている総介は、素直に従うしか無かった。
「………終わったかも……すまんアイナ」
一応、柚子には念を押しておこう。
………………………………
「お邪魔しま〜す!わぁ〜、すご〜い!本当にみんな同じ顔なのね〜!」
「…………誰?」
突然部屋に入ってきた女性に、こたつに入っていた一花、四葉、五月は呆然とした。
「はい、五月、たこ焼き」
「たこ焼き!三玖、ありがとうございます!」
あの後、帰り道に総介と三玖はたこ焼きを食べながら(総介の分1個柚子に食われた)帰路につき、柚子にはアパートに着く前に三玖に少し離れてもらって『刀』と『アイナ』のことに関しては絶対に口にするなと、口を酸っぱくして念を押した。総介の剣幕に、さすがの柚子も、「わ、分かったから」と、若干引きながら了承したので、何も無ければ彼女は秘密を守るだろう。元々、そういう秘密をバラして楽しむ性格ではないので、総介も少しの警戒で済ませているが……それにしても、
「何でお前がいんだよ、上杉」
「……いや、たまたま四葉と一花に会って『家でトランプやりましょう』って強引に誘われてな」
「……あっそ」
そこには何故か風太郎もいた。見たところ、彼は四葉、一花、五月と4人でこたつトランプをしていたようだ。これ以上ややこしくしたくはないが、風太郎が1人増えたところで、海斗とはそんなに関係無いので、そのままスルーすることにした。
「ちょっと〜、騒がしいわね、一体何なの……ってアンタまで何で来てんのよ!?」
すると、キッチンの方からエプロン姿の二乃がおたまを持って姿を現した。
「うっせぇ。色々あったんだよ」
「……ていうか、その人誰なの?」
二乃が柚子を目にした瞬間、頭の上に『?』を浮かべる。すると、柚子がプルプルと震えだし、そして……
「か、か、………」
「?」
「かわいいぃぃいいいいい♡♡♡」
「えっ、ちょっ!?きゃあ!?」
「に、二乃ーー!!」
二乃に思いっきり抱きついた。その衝撃を受け止めきれず、地面へと倒れる両者。それを見て叫ぶ四葉。のっけからカオスまっしぐらである。
柚子はそのまま、二乃に頬擦りをする。
「かわいいわぁこの子♡この2つのリボンも、ちょっとオシャレでしてる薄化粧も、若干漂う香水の匂いも、全部ドストライクよ!ああもうお持ち帰りしたいわぁ♡!」
「ち、ちょっと!いきなり、何なのよーー!?」
どうやら二乃は、柚子のストライクゾーンのど真ん中だったようだ。かつて、四葉が風太郎の妹の『らいは』を抱きしめていたのを思い出す。そのまま二乃を抱きしめて離さない柚子だが、さすがに埒があかないので、二乃から彼女を引き剥がす。
「ほら、もう終わりだ柚子さん」
「え〜、もうちょっとしたかったな〜」
「ガキかよあんたは」
ようやく解放された二乃。彼女はこの人物が総介と親しそうに話していたのを見て、彼に大きく怒鳴りつける。
「ちょっと!!このよくわかんない人連れてきたのあんただったのね!死ぬかと思ったわよ!」
「そうか、そりゃめでてぇまでだな」
「めでたく無いわ!大体何で知らない人を連れてくんのよ!」
「二乃、落ち着いて。今から説明する」
三玖がなんとか二乃を落ち着かせて、説明する。
「彼女は大門寺君の関係者」
「え!?か、海斗君の?」
すると、海斗の名前を聞いた二乃の態度がガラリと変わる。わかりやすっ!!
「そ、それで、海斗君とは一体どういう関係で……なんですか?」
最後には敬語をつけやがったぞこの女。なんだお前!?
「まぁまぁ、わけはゆっくり説明するから、ほら、料理の途中だったんでしょ?出来るまで待ってるから、後で話しましょう?」
「は、はい、わかりました」
「なに勝手に仕切ってんだよあんた」
総介のツッコミを最後に、二乃はそのままキッチンへと戻っていった。
………………………………
その後、二乃は料理を作り終え、リビングへと持ってきた。何故か柚子の分まで用意して。
「おい、俺らの分は?」
「あるわけないでしょ?どんだけうちの家計圧迫する気なのよ?」
「じゃあこの人の分はなんなんだ?」
「大事なお客様の分に決まってんでしょうが!」
清々しいほどの掌返しの二乃に、総介は言葉も出なくなってしまった。結局、総介の分は三玖が、風太郎の分は四葉と一花が少し分けることとなった。五月?頑なに譲ろうとしませんでしたとさ。
「んふ〜♡おいし〜!二乃ちゃんって料理得意なんだね〜!」
そんなこんなで、狭いテーブルで8人という大人数で食事をとっていると、二乃が柚子に話しかける。
「で、その……あなたは海斗君とは、どういった関係なのでしょうか……」
すると早速、二乃が柚子について聞いてきた。聞かなきゃ良かったのにね。まあ時はすでに遅く、彼女はそのまま話を始める。
「そうだね、まずは自己紹介からかな………
私は『九条柚子』。海斗とは3年前から『許嫁』の関係なの」
「!!!!!」
「い、許嫁、ですか?」
「いいなずけ……って何ですか?」
「四葉、許嫁っていうのは親達の間で事前に両方の子供たちを将来結婚させようっていう関係のことだよ」
「一花、やけに詳しいんだな」
「え?そ、そんなことないよ〜♪」
「ただの恋愛脳なだけだろ」
「………」
総介の一言で、風太郎に言われて機嫌の良かった一花が真顔に戻った。
が、もっと深刻な事態の人間がいた。
「………二乃?……」
「…………」
二乃に目を向けると、彼女の口から白い何かが出てきた。
「み、三玖!二乃の魂出てきちゃってる!!」
「ええ!?」
「ベタかよ」
「落ち着いて四葉。こういう時は…… 臨兵闘者皆陣列在前」
「何で印の結び方?」
「風林火陰山雷」
「それ信玄公ね……ていうか、それでどうにかできるの?」
「………できない」
「も、戻して戻して!!」
役立たずの三玖をほっといて、天に召されようとしている二乃の魂を四葉が掴み、五月が二乃の口を開けてそのまま押し込む。
「二乃!起きてください!まだお母さんのところに行くのは早いです!」
「そうだよ!目を覚まして、二乃!………よし、入った!」
「……ぷはぁ!はぁ……」
なんとか二乃を蘇生できたことに安堵する一同だが、本人はそういうわけにはいかなかった。
「い、許嫁って………どういうこと?そんなの、一言も………」
明らかにショックを受けたように青ざめた顔をする二乃。そんな顔を見て、総介が口を開く。
「そりゃ、大門寺って名家の一人息子なんだから、いても不思議じゃねぇだろ」
「だ、だったら、何でそれを早く言わないのよ!」
「俺が言ったところでどうせお前は『そんなの嘘よ!』『アンタの言うことなんかこれっぽっちも信じられないわ』とか言うだろ?」
「っっ!!」
どうやら図星だったらしい。それを聞いてらますますショックを受けた様子の二乃を見て、今度は柚子が口を開く。
「ふ〜ん、海斗を好きな子って、この子だったんだ……」
「………」
「二乃ちゃん、だったかな?確かに私は海斗の許嫁だけど……
安心して
私はあの子に、一つも恋愛感情なんか無いから」
「……え?」
柚子の言ったことがうまく耳に入ってこない二乃。柚子はそのまま話を続ける。
「所詮は家同士が決めた約束に過ぎないんだもん、もちろん海斗とは懇意な関係にあるのは確かだけど、お互いに好き勝手してる方がいいってことで同意してるし、その気になれば、許嫁の関係なんて簡単に返上できるしね」
「………」
そして柚子は、二乃にとんでもない提案をし始めた。
「何だったら、海斗を二乃ちゃんにあげようか?」
「!!!???」
「!」
「おうおう、そうきたか……」
事情を知っている総介は、そんなに驚きはしない。が、二乃は違った。
あげる?
海斗君を?
この私に?
イケメンで、背も高くて、勉強運動もできる天才で、お金持ちの御曹司で、誰からも慕われる海斗を……
自分が、貰える?
「………い、いいんですか?」
「いいよいいよ。二乃ちゃんが欲しいならあげるよ。
あんな気持ち悪いのと一緒にいるのなんて、私はすごいストレス溜まるだけだもん」
「!!!!」
「!!」
「………」
柚子の言ったことを、二乃は信じられないように目を見開く。
「……気持ち、悪い?」
「うん、気持ち悪いよ
だってそうでしょ?
イケメン、成績優秀、スポーツ万能、モテモテ、お金持ち、カリスマ性……その他のあらゆるプラスの要素も兼ね備えている、
まさに完全無欠な男
これ以上気持ち悪くて
つまらない男はいないよ」
「…………」
「そ、そんなことないです!」
「よ、四葉!?」
ここで、意外にも四葉が柚子に食ってかかった。
「大門寺さんはとても優しい人です!浅倉さんや上杉さん達と同じで、思いやりがあって、真っ直ぐな人です。つまんなくなんか」
「つまんないよ」
四葉の海斗への弁護を、柚子は無情にも切り捨てた。
「完璧な人間………それってつまり
『これ以上は無い』ってことでしょ?
それって、ずっと一緒にいても、なにも変化が無いってことじゃん
海斗にも、私にも
そんなのと結婚するくらいなら、そこにいる総君や上杉君とやらと結婚した方が、何倍もマシだし、何倍も楽しいよ」
「「!?」」
総介と風太郎を名指して言ったため、それに三玖と一花が反応した。
「まぁ総君には三玖ちゃんがいるし、その上杉君とやらにもいずれは訪れるかもしれないしね………
ねぇ二乃ちゃん
もしあなたが海斗と結婚したとして
その先の完璧という停滞に、耐えられるのかな?」
「………私は………」
「まぁ、結論を出すには、まだ早いから、しょうがないよね
でも、これだけは覚えといて
人間はね、欠点があるから輝けるの
勉強が出来ないとか
運動が苦手だとか
料理が下手だとか
性格が悪いとか
見た目が良く無いとか
家が貧乏だとか
それらが一つでもあるからこそ、
それらを補おうとするし
いい部分を伸ばそうと思うし
目標に向かって努力して、前に進んで、
結果を出した瞬間が、人は1番輝けるんだよ
でも海斗は違う
あの子は生まれてから
なにも頑張らなくても
全てを手に入れ
全てに結果を出して
全ての頂点に立って
他人の努力を全て否定してきた
普通は、そこで自分の才能に溺れて
無茶苦茶するはずなんだけど
あの子は溺れるどころか
一切鼻にかけることなく
さも自分が『人間』であるかのように振る舞い続ける
性格面でももはや欠点のない、完璧な存在
でも、それってもう
人間じゃない
ただの化物だよ」
「…………そこまでだ、柚子さん」
柚子の言葉を、総介が止める。そして次に、彼は下を向いて黙る二乃に話しかけた。
「……おい」
「………」
「………悪いが、今柚子さんが言ったことは俺もそうだと思っている」
「!」
「あいつは完璧すぎるほど完璧だ。それ故に人を多く惹きつけるが、逆に敬遠するやつもいるし、柚子さんのように、海斗を気味悪がる奴も少ないがいる。それは事実だ。どうにもならねぇ……
まぁ、だからといって、俺があのヤローの元から去る理由にはなんねぇがな」
「!!」
「………ふふっ、総君もモノ好きだね〜」
「うっせぇ」
「………二乃ちゃん、今言ったこと、私は変えるつもりは無いよ」
「………」
「………でも、二乃ちゃんがどうしたいかは、二乃ちゃんが決めることだからね。
私はそれを肯定も否定もする権利は無い。ただ、私が作った海斗のガイドブックを渡したつもり。
それを生かすも殺すも、二乃ちゃんの自由よ」
そう言って柚子は、残った食事を口の中へと入れ、夕飯を食べ終えた。
「ご馳走様でした!さてと……」
すると柚子は、持っていたバッグの中から財布を取り出し、一万円札を5枚手にする。
「美味しい料理をありがとね、二乃ちゃん。これ、少ないかもだけどもらって」
「え!?そ、そんな……悪いですよ!」
「いいのいいの!美味しい料理を味わえたし、海斗のことで悪く言っちゃったしね。あ、そうだ!連絡先も渡しとくね……海斗のことで何かあったらいつでもかけてきてね♪」
そう言って柚子は、紙に連絡先を書いて二乃の手を取りお金と一緒に渡す。
「自分で使うのが億劫だったら、みんなのために使って。私は大丈夫だから」
「……あ、ありがとうございます」
多少強引ではあったが、二乃はそのまま紙幣と紙を受け取る。
「お邪魔しました〜!さて、五つ子という希少種にも会えたし、二乃ちゃんは可愛かったし、じゃあ私はこれから海斗の家に泊めてもらいに行くかな!総君、送ってよ」
「俺はタクシー代わりかよコノヤロー!」
「ええ〜いいじゃ〜ん、バイク後ろ乗せてよ〜。こんな美人を後ろに乗せれるんだから、ありがたく思って欲しいな〜」
「こんなメスゴリラ乗せたところで何がありがたいだよ。ありがた迷惑だよコンチクショー」
そう言い合いながら、総介と柚子は言い合いをしながら、アパートを後にした。
「あ、三玖、また帰ったら連絡するね!」
「う、うん。またね、ソースケ」
「またね、三玖……ほら、行くぞ」
「ヒューヒュー、ラブラブカップルですなぁ総君♪もう行くところまで行っちゃってたりして〜♪」
「よし、あんたは海斗ん家まで縄で縛って引きずりながら送ってやる」
「西部劇!?それ普通バイクじゃなくて馬だよね!?」
言い合いを続けながら、2人はそのまま家を後にした。あまりの台風のような出来事に、シーンと黙り込む原作キャラ達。
「………何だったんだろう?」
「知らん」
「………ごめん、私……」
「!」
二乃はそのまま立ち上がり、寝室へと向かう。
「に、二乃……」
「ごめん五月、今は1人にさせてちょうだい……」
「………」
五月はそのまま、寝室のドアが閉まるのを見ているしかなかった。
「二乃………」
「どうしたんだ二乃のやつ。体調悪いのか?」
「………はぁ、フータロー君」
「上杉さん、それは……」
「空気読んで」
「え!?俺が悪いの!?」
相変わらず他人の感情に興味を持たない風太郎であった。
………………………………
その後、総介はそのまま柚子を連れていいまで戻り、彼女を後ろに乗せて星空の下『ベスパ』を大門寺邸まで走らせていた。
「ったく、何で俺がこんなことせにゃならねーんだ……」
「いいじゃんいいじゃん♪。お姉さんと夜道のデートってことで」
「あんたは三玖の足元にも及ばねーよメスゴリラ」
「つれないな〜もう。そんなに三玖ちゃんがいいの?」
「あんたに無いもんを全部持ってる。文句なしの理想の子だ」
「ふ〜ん、あの総君が女の子にベタ惚れとはね〜、人生とは分からないものね……」
そんな中で、総介は海斗から聞いた柚子とのお見合いのことを思い出していた。
海斗は13才になった時から、あらゆる女性とお見合いをしてきた。将来の結婚相手を探すために。最もそれは、彼自身望んだことではなく、母の『天城』によりセッティングされたものだった。海斗も嫌々ながら、それに付き合ったのだが……
大臣の娘。財閥の娘。有名企業会長の娘……何十人もの女性とお見合いしたが、全て自分を同じような口調で称賛する者ばかり。どうせカンペを覚えたり、見た感じだけの感想を述べた者たちなのだろう。それからは延々と続く容姿、能力、家柄、それら全ての上っ面だけの称賛に、海斗もいい加減飽きていた。
そんな時だった。
『あなた、すごくつまらないわね』
海斗が14才の時、当時17才の柚子に言われた一言が、彼に衝撃を与えた。
今までのように建前や嘘ではなく、本気で、自分をつまらないような目で見ている人間からの本音。
人生で初めて、他人から本気で罵られた。こんなのは初めてだった。
海斗は一発で、柚子を許嫁に決めた。
無論、それは恋愛感情ではない。彼女に興味を持ったからだ。
そこから、海斗は柚子を許嫁に決めたが、互いに恋慕の感情を持たないため、あくまで海斗が18才になるまで待つ、保留という形となったのだ。しかし、海斗はその後お見合いは行わず、実質柚子が正式な許嫁となったのだった。
………………………………
「………総君!総君!」
「……わり、運転に集中してた」
「もう、せっかく面白いこと言ってたのに〜」
「あんたの胸がどうして成長しないか?についてか?」
「いいからとっとと走らせろゴミ屑、事故らせるぞ」
「………イエッサー」
またしても地雷を踏んでしまった総介。彼はそのまま、『ベスパ』を大門寺邸まで走らせて行った。
その後、総介から事情を知ったアイナが、ストレスによる腹痛と頭痛で侍女の仕事を丸一日休んだのは言うまでも無い。
オリキャラ紹介
・『
20歳
身長168cm
体重49kg
イメージcv.ゆ○のさつき(銀魂『志村妙』の中の人)
海斗の許嫁であり、大門寺と同盟を組む名家『九条家』の娘。学生時代は薙刀の全国王者。
頭も良く、現在はイギリスの大学に進学し、アイナの母のもとで下宿している。
かわいいもの好きの楽天的な人なのだが、冷めた考え方も持ち、自身の貧乳をいじるものなら作者だろうがなんだろうが容赦はしない。
見た目のモデルはまんま『銀魂』の志村妙です。でもキャラは少し変えています。貧乳をイジると怖いのは変わりません。
前回の話で大体予想できてた人もいたと思いますが、その通りでした。海斗の許嫁がこのタイミングで登場しました!
今回もこんな駄文を最後まで読んで頂き、本当にありがとうございまさした!