世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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そしてまた一旦原作の流れへ。そして前回の冒頭を『冬休み後』から『冬休み明けの前』に訂正しました。



時系列の管理めんどくせぇ〜〜!!


59.三者面談の日ほど学校にテロリスト来ないかな〜ってみんな思ってる

海斗の許嫁である『九条柚子』が台風のように五つ子たちの前に現れ、台風のように去って行ってから数日が経過していた。

総介の方は何とも無かったように、いつもの日常を過ごしていた。

その日、彼は一人でショッピングセンターをブラブラとしており、何か目についたものを適当に買って帰ろうという目的で歩いていた。

 

要はウインドウショッピングである。

 

「……♪…♪」

 

イヤホンで音楽を聞きながら歩く総介の視界に、とあるカフェがあった。店内にはチラホラと客がいる中、ある見覚えのある人物が目に映った。

 

 

 

(ん?……ありゃあ肉まん娘と……中野センセーか)

 

見ると、五つ子の末っ子である私服姿の『中野五月』と、彼女達の義父のスーツ姿の『マルオ』が向かい合って座っていた。五月の方は緊張しているのか、妙にソワソワしている。対して、『マルオ』の方はいつものような無表情だ。

 

「………」

 

総介はなぜ2人が一緒にいるのかが気になった。彼女たち五つ子が、『マルオ』の所有していた『PENTAGON』を離れてからひと月あまり。理由は風太郎が辞めたことへの反発と、父親に甘え続けてしまっている現状への申し訳なさだ。そのため、風太郎の家庭教師継続と、父の力を借りず、5人だけで暮らしてみたいということで、姉妹は今まで住んでたマンションより狭いアパートへと引っ越した。

 

(肉まん娘でも戻しにきたのか………まぁいいや……うしっ)

 

総介は思考を巡らせるよりも、直接会話を聞いた方が早いと感じ、何故かカフェの『逆方向』へと小走りで去って行った。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

数分後、彼は手に安売りされていた変装用の『ハッチング』と『サングラス』を買ってきて、それを持って同じ場所に現れた。そのままハッチングを頭に被り、黒縁眼鏡を外してサングラスをかけたら変装完了。さらには『鬼童』として自身の気配をほとんど消すことにより、2人には『背景』『赤の他人』としか認識されずに、カフェに入店出来る。

 

そのまま総介は入店し、五月とマルオが視界に入り、なおかつ2人のの会話が聞こえるほどの近い席に座って、適当にカフェオレでも注文した。

 

すると、2人が早速会話をしているのを聴き入る。

 

「君たちのしでかしたことには目をつぶろう………しかし、どうやら満足いく食事もとれていないようだ」

 

「……ッ!」

 

(……多分、肉まん娘だけだと思うが……)

 

五月の大食っぷりは総介も周知のところで、彼女の前には空の皿が一つ。どうやら何かしら完食したらしい。

三玖から定期的に、生活事情を聞いて把握しているが、今のところは食事面での問題は無いと言っていた。が、おそらく五月はそれでも腹に満たされてはいないのだろう。

 

「すぐさま全員で帰りなさい、姉妹全員にもそう伝えておいてください」

 

「………それは、『彼』も含まれるのでしょうか?」

 

『彼』とは十中八九風太郎のことだろう。

 

「上杉君のことかい?これは僕たち家族の話だ。上杉君はあくまで外部の人間ということを忘れないように」

 

それにはっきり言って……と『マルオ』は少し間を空けて静かに言い放つ。

 

 

 

 

「僕は彼が嫌いだ」

 

 

(………大人気ない!)

 

(はい上杉アウト〜。完全に期末の件を引きずってますこのリヴァイ兵長〜〜)

 

期末試験の後、風太郎は『マルオ』との電話で『少しは父親らしいことしろよ!!馬鹿野郎が!!!』と怒鳴って電話を切った。

 

(………上杉の気持ちはわからんでもねぇが、それを言うのは悪手だっての)

 

『マルオ』からすれば、余計なお世話もいいところだ。何故一家庭教師如きにそんなことを言われなきゃいけないのだと。さらには、その家庭教師が原因で、姉妹は自分の元を離れて行った。暗に『自分よりも風太郎の方が信頼されている』という遠回しの決別の言葉は、『マルオ』に風太郎に対する敵対心を持たせるには十分だった筈だ。

 

「……で、では、浅倉君も、ですか?」

 

「彼の名前は今後一切出さないでもらえるかな?」

 

「は、はい……(上杉君よりも嫌われてる……)」

 

(………なるほど、ありがてぇこったねぇ〜)

 

『マルオ』は、総介の名前が五月から出た途端、食い気味で彼の話を終わらせた。五月から見たら、彼が風太郎よりも総介を嫌っているようにも見えたが、実際には『総介のことを安易に話せば、どこから五月に自身の大門寺との同盟、及び総介が『刀』に属しているか事が漏れかねないという可能性を潰すため』でもあった。

 

……『マルオ』が総介をどう思っているかはこの際置いといて。

 

それを徹底していることを瞬時に読み取った総介は、心中『マルオ』にほんの少しの敬意を持つ。

 

 

と、総介がふとした拍子にカウンターの方へと目を移すと、そこには見慣れた背中が2つ、五月たちの様子を伺うのが見えた。

 

 

(……なんでいんのお前ら〜?……)

 

 

それは風太郎と二乃だった。中々珍しい組み合わせだ。2人で五月を尾行してきたのだろうか、それとも偶然出くわしたのだろうか……まぁそこは総介にはどうでもいい話だった。それよりも……

 

「………」

 

総介の目線は、サングラスの中から二乃を捉えていた。数日前、彼女は柚子から海斗へのことを聞いた。その後、総介はアイナから

 

『二乃に若様のことについての相談を受けました』

 

という旨の報告を聞いた。二乃からしてみたら、何も事情を知らないであろう友人の1人に、第三者からの意見を伺ったつもりだったのだが………その相談相手がバリバリ当事者の1人だと、夢にも思わないだろう。アイナからしても、二乃と柚子のことで胃痛と頭痛に悩まされた後での相談だったので、それを聞いた総介はさすがにアイナに申し訳なく感じ、今度菓子折りでも持って行こうと考えていた矢先のことだった。

 

 

(………まだ答えは見つけれねぇか)

 

 

相談に乗ってはもらったが、今でも悩みは晴れていない……チラチラと振り向いて五月たちを見る二乃は、そんな顔をしていた。

当然だろう。海斗の許嫁から聞いた、彼の本質……言い返すことも出来ない事実を突きつけられて、二乃は相当落ち込んでいるはずだ。それでも、誰かに相談して、答えを見つけようと足掻いている。

 

 

 

そして、二乃が海斗のことであそこまで悩み苦しんでいること、それはつまり………

 

 

「まだ……帰れません」

 

と、途中で五月が話し始めたため、総介は今は無駄な思考はやめて、そちらに集中する。

 

「彼を部外者と呼ぶには、もう深く関わりすぎています。せめて次の試験まで私たちの力だけで暮らして……」

 

「君たちの力とはなんだろう」

 

五月の辿々しい話を、『マルオ』の抑揚の無い口調が遮る。

 

「家賃や生活費を払ってその気になっているようだが、明日から始まる学校の学費は?

 

携帯の契約や保険は、どう考えているのかな?

 

僕の扶養に入っているうちは、何をしても自立とは言えないだろう」

 

「……それは……」

 

『マルオ』の言っていることは、至極当然のことだ。

 

例えば、五月の携帯が壊れた場合、ショップに修理に持って行った際に、未成年の五月1人ではなく、その保護者の同意が必要な場合がほとんどだ。それを勝手に家を出て行って『携帯の修理に行きますので同意をお願いします』などとは、あまりにも虫が良すぎる話だ。

 

(……そりゃそうだわな)

 

総介は『マルオ』の言っていることを、否定はしない。彼にも、娘たちを養う義務がある。どういう経緯であれ、それを最低限でも怠りたくはないのだろう。

 

「君たちの自立したいという考えも結構だ。僕にも尊重したい気持ちもある。しかし、皆が学生であり、職に就いてない以上、僕にも扶養する義務もある。

 

君たちまだ親に甘えていい年なんだ。分かるね?」

 

「………」

 

それでもまだ、五月は首を縦に振ろうとはしなかった。

 

ならばと『マルオ』は、次の手に打って出た。

 

「………ならばこうしよう。

 

 

 

 

 

上杉君の立ち入り禁止を解除し、家庭教師を続けてもらう」

 

「え!?」

 

「「!!」」

 

(………な〜んて、そんな都合のいい話はねぇよな〜)

 

『マルオ』の言葉に、五月と、それを聞いてた風太郎と二乃の2人が反応を示すも、総介は全く動揺せずに、話の裏を探っていた。

 

「ただし、僕の友人のプロ家庭教師、そして浅倉君も入れての3人体制。2人には彼女のサポートに回ってもらう」

 

(やっぱりな〜。が、決して悪い条件じゃねぇ……)

 

五つ子の勉強を見る上で、1番のネックがその数だ。5人を相手にするのだから、一人一人を見るのにも時間がかかるし、全員が素直に従うはずない。事実、風太郎も総介も、幾度となく振り回されてきた。

 

まあ総介はそれほど苦にしていなかったけどね。

 

が、ここに来て人数を増やすという提案、さらには『マルオ』の口ぶりからして、女性の家庭教師だ。異性ではなく同性なら姉妹ともうまくできるはずだという彼なりの配慮もあるだろう。

 

総介は、それでも良いと考えていた。

三玖はすでに自分が教えなくても最低限のラインまでは成長できたし、一花も伸びてきている。残りの二乃、四葉、五月を風太郎と2人で基本を教え、成績の伸びてきている一花と三玖は、その女性の家庭教師に見て貰い、さらなる成績向上を目指せば良い。

 

ただ一つ、これには大きな欠点があった。それは………

 

 

 

 

 

 

 

(三玖とイチャイチャできる数が減る……)

 

 

どこまでも自分と三玖の都合しか考えていない総介であった……

 

 

 

「君たちにとってもメリットしか無い話だ。二対五ではカバーできない部分もあるだろう」

 

「………しかし、皆この状況で頑張って………」

 

 

 

 

「四葉君は赤点回避できると思うかい?」

 

「!」

 

『マルオ』が四葉の名前を出した途端、五月が固まってしまう。

 

「二学期の試験の結果を見せてもらったがどうだろう

 

 

 

 

とてもじゃないが、僕にはできるとは思えないね」

 

「っっ!!」

 

(…………)

 

『マルオ』の一言を聞いて、風太郎は今にも彼の元へ行こうとせんほどに歯を噛み締める。

対して総介は、サングラスの中にある死んだ魚の目を、一切動かすことなく、至って冷静、なんだったら呑気にカフェオレのストローを吸っていた。

 

今現在の状況で、赤点回避が1番危ぶまれているのは四葉だ。二乃はそもそも2人に反抗していたため、どうなるかは未知数ではあるが、少なくとも、基礎的な部分を見れば四葉の方が低いのはわかっていた。

さらには、彼女の困っている人を助けられずにはいられない精神が原因となり、姉妹は黒薔薇女子から転校することとなり、前回の期末試験も足を引っ張ることとなった。

それを鑑みての『マルオ』の発言は、総介にも充分理解出来ており、それについては、今回は全面的に彼の言うことが正しいとも思っている。が、欠点も一つ………

 

 

(ガキどもに正しさだけで対抗すんのは、ちぃと分が悪いかもな……)

 

元々、模範生のような性格ではなく、むしろ『掟は破るためにこそある』のような精神を持つ総介だからこそ、正しさをこれ見よがしに突きつけれた子供が、それにますます反抗したがるのは知っていた。

理屈、理論、メリット、正義……それらはもちろん、世の中を渡る上で非常に有効な武器だ。それらを味方につければ、時には自分より上の者にも勝ちうることもできる。

 

 

 

 

 

ただし、それもあくまで『大人の世界』の話……

 

 

子供の世界は『感情』によって決まることの方が多い。

 

恋愛然り友情然り、それらは子供、学生の大部分にとって、時には『正しさ』よりも優先される事柄だ。若者たちはそれらを刺激すれば、上手く行くことの方が多い。好きな人のためにテストでいい点を取ろうとしたり、友人のために部活でいい結果を出そうとしたり、親に褒められたくて欲しくて学業を頑張ったり……感受性豊かな子供たちの物事への始まりのきっかけは『感情』を刺激される部分が多い。

そしてそれらは、時には『理論』や『正しさ』をも上回る力を発揮する場合も存在する。

無論、大人でも『感情』を優先したり、理屈っぽい子供も少なからずいるが……

逆に、『感情』を一切伴わない『理論』や『メリット』ばかりの『合理主義』を振りかざしたり、それらを押し付けてくる大人は、『感情』を大切にしている子供たちからは煙たがれる傾向にある。悲しいかな、今の『マルオ』のように………

 

 

「………そう、ですね……

 

 

3人体制の方が確実ですが……」

 

流石に今回は、姉妹の中では理論やメリットを理解している五月の方が折れそうになってしまうが、その時だった。

 

 

 

「やれます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちと上杉さんならやれます」

 

 

どこから現れたのか、いつから聞いていたのか、五月と『マルオ』のそばには、姉妹の中でも特に『感情』の化身にような存在である四葉が立っていた。

 

「四葉……」

 

「七人で成し遂げたいんです。だから信じてください。

 

 

 

 

 

もう同じ失敗は繰り返しません」

 

 

 

 

「………では失敗したら?」

 

まさかの横槍にも動じず、『マルオ』は冷静に四葉に返す。

 

 

「東京に僕の知人が理事を務める高校がある」

 

「「?」」

 

「あまり大きな声で言えないが、無条件で三年からの転入ができるように話をつけているんだ」

 

「え……」

 

「もし次の試験で落ちたらその学校に転校する。

 

プロの家庭教師と2人体制なら、そのリスクは限りなく小さくなると保証しよう

 

 

 

 

 

 

それでもやりたいようにやるのなら、後は自己責任だ。わかってくれるね?」

 

「………」

 

マルオの出した条件に、四葉は黙り込んでしまう。一度、自分のせいで姉妹ごと転校する羽目になってしまったことが、やはり今でも心の中に残っているようだった。と、ここで、

 

 

 

「………わかりました」

 

「!」

 

五月が口を開いた。どうやら、こたえをきめたようだ。それに総介も聴き入る。

 

「……では、こちらで話を進めておこう。五月君なら分かると思っていたよ」

 

「いいえ」

 

マルオは五月が三人体制に同意したのだと思ったのか、それで話を進めようとしたが、五月が止めた。

 

 

 

 

 

「もしだめなら、転校という条件で構いません。

 

 

 

 

 

素直で、物分かりが良くて

 

 

 

 

賢い子じゃなくておやすみません」

 

 

 

 

 

「………そうかい」

 

自虐なのか、呆れなのか、それ以外なのか……笑顔を浮かべながら謝る五月を見て、『マルオ』は立ち上がる。

 

「どうやら子供のわがままを聞くのが親の仕事らしい。そして子供のわがままを叱るのも親の仕事………

 

 

 

 

 

 

 

 

次はないよ」

 

最後の通告をして、『マルオ』はその場から立ち去ろうとする。

 

「前の時とは違うから」

 

その彼の背中に、四葉が言葉を放った。

 

 

 

 

「………期待しているよ」

 

『マルオ』は振り向きもせず、その店を後にした。

 

そのタイミングで、風太郎と二乃が2人の元へと現れる。

 

「行ったか」

 

「うわっ!」

 

「見てたのですか……」

 

「想像通り手強そうな親父だな」

 

 

その後、少しの話をした4人は、改めて転校の話へともどる。

 

「しかし、転校なんて話まで出てくるとは、責任重大じゃねぇか」

 

「我が家の事情で、振り回してしまって申し訳ありません」

 

「転校……したくないね」

 

五月は風太郎に謝るが、彼はそのまま返さずに言い続ける。

 

「………だが、どうでもいい」

 

「?」

 

「お前らの事情も、家の事情も、前の学校も、転校の条件も、どうでもいいね

 

 

 

 

俺はやりたいようにやる!お前たちを進級させる!この手で、全員揃って笑顔で卒業!

 

 

 

 

それだけしか眼中にねぇ!」

 

決意を新たにする風太郎に、三人は笑顔を見せた。二乃も、風太郎がおかしくなったのか、一時ではあるが、少し口角を上げて久しぶりに笑顔を見せる。

 

「ふふっ、頼もしいですね。

 

 

 

 

 

 

でも、浅倉君にも事情を説明しないといけませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あ」

 

 

 

完全に総介を忘れていた風太郎。また勝手に決まったことを言わなきゃいけないことに、彼は冷や汗を流すのだった。

 

 

 

 

そして、五月と『マルオ』の会話を逐一聞いていた総介の座っていたテーブルには、空になったカップしか残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

一方、『マルオ』は駐車場にて、江端の運転する車に乗り込もうとしていた。その時………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、いい親父根性してるなぁ、中野センセー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何故ここにいるんだ、浅倉君」

 

後ろから話しかけられた気怠げな声に、無表情で振り向きながら、『マルオ』近づいてきた総介に返した。

 

「たまたまそこらへんを歩いてたら、肉まん娘とアンタを見かけてな。そんな中で話しかけんのも野暮なもんだから、一部始終を聞かせてもらったわ」

 

『マルオ』は総介が先程の五月との話を全て聞いていたことに眉を顰めながらも、話を続ける。

 

「……では、事情も知っているようだね」

 

「ああ、俺のスッカスカの脳味噌でも分かるぜ。

 

 

 

とりあえず、めんどくせぇってことぐらいはな」

 

「………よく言えたものだな」

 

明らかにこちらを警戒しているようだ。まぁ『色々』あったしな。

 

「そんな警戒せんでも、俺ァ別に今回は上杉の味方をするつもりはねぇよ」

 

「………どういう事かな?」

 

総介の発言に疑問を持った『マルオ』。それにすぐさま答える。

 

「あくまで主役はアンタの娘っ子たちだ。俺と上杉は連中が舞台で輝けるよう演出する裏方に過ぎねぇ。

 

 

 

 

 

つまり、次の試験の失敗は即ち、客であるアンタから見れば、全面的に舞台に出ているあの五人の責任にもなるわけだ」

 

 

「………」

 

 

「一応、上杉の家庭教師の件は保留にはなってはいるが、今のあいつはアンタが雇っている身じゃねぇ。ただのボランティアでしかない……てなったら、それらの責任は、上杉ではなく全てあの五人に降りかかっちまうってわけだ。

 

 

 

 

 

良くも悪くもな」

 

 

「……だから、今回の君は裏方ではなく、中立……つまり客として傍観するのかい?」

 

 

「いや。俺ァ家庭教師の助っ人を続けるさ。だがあくまで、結果は五人が出す。

 

 

 

 

後は転校でもなんでも、アンタの自由にすりゃいい」

 

 

「……意外だな。僕は三玖君のいるそちら側につくと思っていたのだが」

 

『マルオ』は総介が、万が一の際は三玖だけでも自分の元に置いておくつもりだと考えていた分、総介の言ったことに少なくも驚きを見せた。が、総介は『マルオ』の言葉を聞いた瞬間、「ハッ!」と笑いながら、そのまま言葉を放つ。

 

 

 

 

 

「中野センセーよぉ〜………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三玖を………俺の女をなめんじゃねぇぞ」

 

 

「………」

 

「あの子はもう自分で勉強する方法も確立できてる。俺が教えてやらんでも、後は細かい修正は上杉が入れてくれるだろうよ。当日に体調不良みてぇなイレギュラーさえ無ければ、今回も姉妹で1番の結果を出すだろうな」

 

「……だろうね。三玖君の成績も見せてもらったが、やはり君の影響が大きいようだ」

 

 

「それと、後の4人は知らん。それこそあそこにいた3人は、さっきのアンタの発破がどれくらい効いてるか、それ次第だな」

 

 

「清々しい程の贔屓だな、恐れ入るよ」

 

総介の三玖に対する贔屓っぷりに、『マルオ』は少し呆れてしまう。と、ここでもう一つ大事な問題が浮かんだ。

 

「それで、もしも四葉君が転校ということになれば……」

 

「ああ、それも『大門寺』でどうにかするよう頼むさ。ちょうど今、俺の一個下で『刀』で働いてる奴がいるから、そいつを密かに護衛として四葉と同じ転校先の学校に入れてくれりゃいいさ」

 

「………そうか、僕の勝手な真似にそこまで配慮してもらってすまないね」

 

「………まぁ、それも転校すれば、の話だがな……」

 

「…………」

 

そのまま『マルオ』は、目を下に向けるが、そんな彼に総介が声をかけた。

 

 

 

 

 

「………野暮かもしんねぇが、一つ言わせてくれ。

 

 

あれでも、アンタは十分父親やってるよ」

 

「………」

 

「上杉はああ言ってたがな、人の家の形なんざその家庭ごとにあるさ。それを他人がとやかく言う権利はねぇが……それでも言わせてもらうなら、俺から見りゃアンタは立派な父親だと思うぜ」

 

「………」

 

片手で頭をくしゃっとかきながら、総介は言葉を続ける。

 

「アンタが5人の母の思いを継いで、あの5人全員を引き取ったことも、今までああいう形で接しながら見守ってきたのも、間違っちゃいねぇさ。

 

 

あいつらにも多少現実は知ってもらわないきゃいけねぇ部分もあるしな

 

 

 

 

理屈っぽいところで押さえ込もうとしても、アンタの娘たちへの思いはダダ漏れだっての。

 

 

 

 

ホント、どっかの娘命で筋肉モリモリマッチョマンな局長と同じで

 

 

 

 

 

アンタも稀に見る『親バカ』だよ」

 

 

「………」

 

「ま、そんだけだ………じゃあな、中野センセー。俺が言うのもなんだが、娘たちの武運を祈ってるわ」

 

総介はそう言い終えると、踵を返して帰ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浅倉君」

 

「………」

 

 

と、そんな総介の背中に、『マルオ』は声を掛けて止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「借りは必ず返させてもらう」

 

 

 

 

 

 

 

「………へぇ〜、そりゃ楽しみだ

 

 

 

 

 

期待してんぜ、中野センセー」

 

 

そのまま振り向きもせずに、総介は右手を適当な感じで振りながら、駐車場を後にした。

 

 

「………」

 

 

「………旦那様?」

 

 

「何でもない………江端、出してくれ」

 

 

 

「………かしこまりました」

 

 

総介の背中が見えなくなるまで、彼を見続けた後、『マルオ』は何事も無かったように車に乗り込み、江端の運転する車で帰路についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な〜にまた勝手に話進めてくれちゃってんですか〜コノヤロー?」

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ぐるじい゛い゛い゛い゛い゛!!!!」

 

 

後日、事情を全て総介に説明(全部知ってるけど)した風太郎は、彼からの『愛ある(?)チョークスリーパー』により、首を絞められていた。

 

 

 

「あ、あの、もうそれくらいで……」

 

「う、上杉さん、白目になってる……」

 

そんな2人を恐ろしげに見つめる四葉と五月だったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何言ってんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次お前らだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「………え゛?」」

 

 

もちろん、元凶である2人にもきっちり技を決めましたとさ。

 

 

 

 

大丈夫!総介は優しいから本気の『ほ』の字も出してないよ。良かったね♡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はそれぞれの試験までの話となります。二乃のあれからに関しては、そこで詳細を書くつもりです。できれば2話で終わらせたいので、『三玖、四葉、五月、一花』と『二乃』の前後半で分ける予定です。



今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
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