世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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UA130000突破しました。ここまでこの小説をご覧になってくださった皆様、本当にありがとうございます!

もう60話になっちゃいました。あっという間……
そして、今回は前編後編と分かれています。
全員分の話を2話に渡ってご覧ください。まずは二乃以外の4人をどうぞ。


60.試験でしか測れないものがある

①中野三玖と浅倉総介のイチャイチャ、それだけ

 

 

 

 

「………ダメ、上手くいかない」

 

1月末、三玖は朝早くに起きて、アパートのキッチンでチョコ作りに励んでいた。

理由は単純明白、来月のバレンタインで総介に手作りチョコを渡すためである。

事の始まりは数日前………

 

「ソースケはどんなチョコが好き?」

 

「ん〜、甘めのやつかな。同じチョコでもブラックやビターはそんなに食べないし」

 

「……わかった。じゃあ、ソースケが好きな甘いものを作る」

 

「一緒に作らなくて大丈夫?俺ん家のキッチン貸すよ?」

 

「大丈夫。今回は……私だけで作りたい」

 

「そう……じゃあ期待してるよ、三玖」

 

「うん……待ってて」

 

もう既にラブラブな恋人同士のため、別にサプライズをする必要は無いと感じた三玖は、総介にチョコの好みをストレートに聞き、彼が望むチョコレートを『1人』で作ることにした。今回は総介の力を借りず、自分自身の力で作って、総介に『美味しい』と言って貰いたかった。

 

しかし、日々の料理のことは総介から教わっているが、三玖はお菓子作りは彼から教わったことは無かった。いかんせん総介は、料理全般が趣味という訳ではなく、日々の生活の中で行う料理の方法しか知らない。そんな訳で、三玖は普通の料理はある程度食べれるレベルまでには上達したものの、未だにお菓子、突き詰めればチョコ作りは手付かずだった。

当然、最初から上手く行くはずもなく……

 

「………まずい」

 

チョコ作りは暗礁に乗り上げてしまった。と、

 

「三玖、起きてたんだ」

 

「一花、起こしてごめん」

 

寝室から、ワイシャツ一枚だけを着た一花があくびをしながら出てきた。

 

「いいよ〜。それよりどう、調子は?」

 

「………」

 

三玖がそのまま自身のチョコに目線を移し、一花もそれを辿って見てみる。

 

「甘いのが好きなソースケとは反対で、私は甘いの苦手だからよく分からなくて……一応、試作品を作ってみたんだけど……」

 

「えーっと……ドクロマーク出てるけど……」

 

見ると、ボールの中のチョコが偶然なのか、ドクロのような模様になっている。

 

「これは大丈夫な方のドクロマーク」

 

「大丈夫な方とは……」

 

とはいえ、これを総介に食べさせるわけにはいかないことを、三玖は十分承知している。

 

「もっとシンプルなレシピでいいんじゃない?溶かして固めるみたいな……」

 

と、一花は三玖に提言するが、

 

「………」

 

どうやら三玖の気はそちらには進まないらしい。どうしたものか……

 

「ムムム……うーん、私も料理の腕はイマイチだしなぁ………

 

 

 

 

 

あ、そだ」

 

一花は何か妙案を思いついたようで、三玖に話を始める。

 

「私の知り合いに料理上手な人がいるんだ」

 

「え?」

 

「その人に教えてもらいなよ」

 

「………」

 

そう言われた三玖だったが……

 

「でも、私は『1人で』ってソースケに……」

 

「このままじゃチョコ作り進まないよ。それに、浅倉君には誰かにアドバイスを受けるのは禁止って言われた?」

 

「……言われてない」

 

「じゃあいいじゃん。教わった三玖が作って、美味しいチョコを浅倉君に食べてもらわないと」

 

「………確かに」

 

背に腹は代えられぬ、というわけで、三玖は一花の提案を飲むことにした。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

あれから日にちが経ち、2月。

それまでも期末試験に向けた勉強はしっかりと行い、自身も少しでも上達しようと、合間を縫ってはチョコ作りを継続していた。

 

「……やっぱりダメ……」

 

勉強の方は恐ろしいほど順調に進んでいるのだが、チョコ作りの方は未だ立ち止まったまま。

しかし、この状況を打破すべく、今日は、一花が『料理上手な知り合い』がやって来る日。これを機にどうにかして前に進まなければ……

 

(一花の顔が広くて良かった。今日が約束の日だけど、料理上手な人ってどんな人だろう……)

 

そう考えていると、扉の方からガチャっと開く音がした。そこから入ってきたのは……

 

 

 

 

 

「あれ?1人で何してんのよ」

 

「二乃……」

 

何故か二乃だった。

 

「今日は学校で勉強会のはずじゃ……」

 

「一花に呼ばれて戻ってきたのよ」

 

 

 

 

 

 

「え?一花の言ってた人って……」

 

 

まさか……いや、知り合いと言えば知り合いだけど……と、

 

 

ドンッ!!

 

「「!!?」」

 

ドアの向こうから何かの音がした。

 

 

 

 

どうやら『そのようだ』………

 

 

「?」

 

「何よ今の?びっくりした………って」

 

二乃はキッチン台の上に置いてあったチョコを見る。

 

「こっちにもびっくりだわ。おいしくなさそうだしめちゃくちゃじゃない」

 

そこからは、二乃の辛辣な評価が続いた。

 

「アイツにあげるつもりでしょうけど、これじゃあ全然ダメね」

 

「!」

 

「あんたは味音痴と不器用のダブルパンチなんだから、おとなしく市販のチョコ買ってればいいのよ」

 

「………」

 

ペラペラと口から不評の嵐が出てくる二乃としては、いつものように頬を膨らませた三玖が「うるさい!」と返してくると思っていたが………

 

 

 

 

 

 

チラッっと三玖の様子を伺うと……

 

「……うるさい

 

「ヒッ……」

 

力の弱い反論が返ってきたかと思えば、三玖は目に涙を溜めていた。

 

 

まずい……怒るより恐ろしい本物の地雷を踏んでしまった……

 

 

「で、でも料理は真心っていうし手作りに意味があるのよね、私だって失敗することだってあるわ、それに少し下手っぴの方が愛嬌あるし、これなんて虫っぽくてかわいいわ」

 

ペラペラと次は三玖へのフォローの言葉が出てくる。最後の方はフォローになってるのか……

 

しかし、二乃はこのことが総介がバレたらひとたまりも無いだろう。そんな危機感が彼女を駆け巡ったのと、三玖が本気で頑張ってるところをボロクソ言ってしまったことへの罪悪感から、なんとか彼女の機嫌を戻そうとする。

 

「………わかってる」

 

「え?」

 

「私が不器用なのも知ってる。1人じゃ何もできないことも」

 

「………ごめん」

 

「……でも、ソースケは言ってくれた。『まだ伸び代はある』って。『勉強と同じで、やり方を教わってないだけ』だって………『ちゃんと教わってやれば、私でもおいしく作れるようになる』って」

 

「………」

 

「だから、作りたい

 

 

 

ソースケが、心の底から『美味しい』って言ってくれるチョコを

 

 

 

 

食べさせてあげて、恩返しをしたい

 

 

 

 

だから

 

 

 

 

教えてください

 

 

 

 

お願いします」

 

三玖はそのまま、二乃に頭を下げて教えを乞う。その様子を見た二乃は、彼女の本気の気持ちを目の当たりにして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………

 

 

 

 

 

油分と分離してるわ

 

 

湯煎の温度が高いのね

 

 

それに生クリームを冷たいまま使ったでしょ

 

 

舌触り最悪

 

 

 

っていうか、それ以前の問題がありすぎるわ」

 

 

「………」

 

 

「全く……面倒臭いわ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準備しなさい」

 

 

「!………

 

 

 

うん!」

 

それから、二乃は三玖と長い時間キッチンへと向かい、チョコが上手く作れるように試行錯誤していった。

 

 

 

 

 

「ほんと………面倒な性格だわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

そして、月日は2月14日、バレンタイン当日………

 

 

三玖は総介に、青いリボンで結ばれ、小さな箱に入ったチョコを渡した。

 

「はい、ソースケ」

 

「……ありがとう、三玖。開けていい?」

 

「うん」

 

彼女の許可をもらい、総介はリボンを解いて、箱を開ける。見ると、中には丸いチョコレートがフィルムで包まれていくつか入っていた。

 

「……じゃあ、いただきます」

 

「う、うん」

 

フィルムを剥がして、総介は一つ目を手に取って口の中へと入れる。

 

三玖にとっては緊張の一瞬だった。

 

 

しばらく口の中で転がして味わい、やがては溶け出したチョコを飲み込む。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しい………本当に美味しいよ、三玖」

 

 

総介の一言に、三玖は信じられないと言った表情で驚き、口を両手で隠す。

 

「……嘘」

 

「嘘なんかじゃない。本当に美味しいよ。俺のリクエストした通り、甘いチョコだし、チョコレートとしても、本当によく出来てるんだ。美味しくないはずがないよ」

 

 

「………ソースケ……」

 

総介が本気で美味しいと言っているのは、彼の顔を見れば一目瞭然だった。普段の死んだ魚の目は、三玖の目の前で喜びに満ちた表情を作っており、自分に向けられる目線には、一切の濁りが無い。

やがて、総介は三玖の頭へと手を乗せて、優しく撫でる。

 

 

 

 

 

 

 

「頑張ったね、三玖

 

 

 

 

 

本当にすごいよ

 

 

 

 

ありがとう」

 

 

 

「………うん

 

 

 

 

ありがとう

 

 

 

 

ソースケ」

 

 

 

自分のしてきたことは、間違いじゃなかった。ようやく、愛する人に喜んでもらるものを作れた。

それを心から理解した三玖は、目から涙をポロポロと流し始める。

 

 

 

「………おいで

 

 

 

 

 

一緒にいよう」

 

 

 

 

 

 

「………うん」

 

総介はそのまま、三玖をゆっくりと抱き寄せて、胸の中にすっぽりと収めた。彼女も、今までの努力が報われたことによる解放感から、そのまま総介の胸の中で、歓喜の涙を流し続けた。

 

 

 

「ありがとう、三玖

 

 

 

 

大好きだよ

 

 

 

 

愛してる」

 

 

「うん………

 

 

 

 

私も、大好き

 

 

 

 

ソースケを愛してる」

 

 

やがて、首を上げて、総介を見上げた三玖は、彼の顔が近づいてくることに、一切抵抗せずに、瞳を閉じた。

 

 

唇が、ゆっくりと重なる。

 

「三玖………」

 

「ん………」

 

数秒、2人は口づけを交わして、顔を離した後に、そのまま喋る。

 

「三玖、甘いの苦手じゃなかった?」

 

「苦手だけど……こういう甘いのなら、もっと欲しい」

 

「………了解」

 

総介は再び、三玖の唇へと、自身のそれをくっつけ合い、やがて唇同士を啄み始める。

 

三玖が愛情を努力によって作ってくれたチョコレート以上の甘い時間を、2人はこのまま長く過ごしたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってわけでもなく、

 

 

「お、おい2人とも……そろそろ勉強の続きを……」

 

「シーッ!フータロー君、今の2人を止めるのは野暮ってもんだよ」

 

「み、三玖、浅倉さん、すごくロマンチックですが、せめて別の場所で……」

 

「う〜、私はいつ見ても慣れません……」

 

「………ここまでやれとは言ってないわよ」

 

 

2人がチュッチュしてる場所は、アパートのリビングのこたつ。しかも、周りを他の姉妹と風太郎がガッツリと囲んでいる最中である。

 

が、チョコの甘さにやられたのか、2人はそんな周りに気づくまでもなく、しばらくキスを堪能し、2人きりの時間に入り浸るのだった。

 

 

 

 

 

 

その後、ようやく周りの存在に気付いた総介と三玖は、顔を真っ赤にしながら遅くまで勉強に勤しんだのは、言うまでもない………

 

 

 

 

 

総介マジで爆発しろ!

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

そして月日はさらに経ち迎えた、試験当日……

 

 

 

「ま、三玖のことだからもう大丈夫だし、特に心配はしてないけど、ケアレスミスだけ無いように気をつけてね」

 

「うん……頑張る」

 

総介は学校に着いた際、三玖と2人きり、誰もいない場所で試験前最後の時間を過ごしていた。彼は別れ際に、三玖の額へと唇を落として、激励の言葉を送る。

 

 

 

 

「大丈夫、今まであれほど頑張ってきたんだ。俺だけじゃなくて、今の自分は、過去の自分が励ましてくれるよ」

 

 

「ありがとう……じゃあ、行くね」

 

 

「うん、いってらっしゃい」

 

そう言葉を交わして、クラスの違う2人は、別々の教室へと向かって行った。

 

 

………………………………

 

 

「それでは、試験を始めてください」

 

その教師の号令で、2年生最後の試験が始まった。

 

(ソースケ……私はもう迷わない

 

 

今までの私がやってきたこと

 

 

 

必ず信じる

 

 

 

『自分を信じれるのは、自分自身』

 

 

 

 

最初に、ソースケが私にくれた、この言葉

 

 

 

 

今でもずっと残ってる

 

 

 

 

 

絶対に上手く行く

 

 

 

 

先に言わせて

 

 

 

 

ありがとう、ソースケ

 

 

 

 

愛してる

 

 

 

 

ずっと、ずっと……)

 

 

 

 

 

 

 

中野三玖、試験結果

 

国語……57

数学……52

理科……49

社会……80

英語……40

五計……278

 

 

 

総評(浅倉総介)……やっぱすごいだろ三玖は。俺?俺は何もしちゃいねぇよ。あの子がちゃんと努力し続けた結果なんだよこれが。本当に頑張ったよ。ご褒美もちゃんとあげなくちゃな。あと、チョコレートマジで美味しかった。もう感動して泣きそうだったわ。んでこれは周知の事実だが、やっぱかわいいってのがもう最高でさ、普段はそんな表情動かねぇんだが、俺といるときの嬉しそうな顔を見て何回惚れ直したことか。それと、たまにヘッドホン外した髪形もかわいくて好きでさ、この前なんて……(この後、総介は5時間に渡り三玖を褒めちぎった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②中野四葉、いっきまーす!

 

 

 

 

2月となり、総介と風太郎、そして五つ子姉妹はいつものようにアパートで7人で勉強会を開いていた。しかし………

 

「試験まで残り1ヶ月を切った。いいかよく聞け……(説明中)……ということで、ここでは作者の気持ちを答えるというより、読者のお前らが感じたことを書くわけで……」

 

風太郎がそう説明するも、五つ子、そして総介にも明らかに疲れが見て取れた。無論、総介の疲れは五つ子とは違い、教えることによる疲れもあるので、それが5人、三玖の負担が無いと見ても4人分なので、実は結構きつかったりする。運動とは違う頭の疲れはいくら『鬼童』でもどうにも出来ない。このどんよりとした状況を見た風太郎も、さすがにまずいと思い始める。

 

(……くそっ………行き詰まった)

 

いくら2人で教えているとはいえ、教えている方にも限界が訪れる。

元々、教師としてのノウハウの無い自身の限界と、それにより負担をかけてしまっている総介の限界も出てきている。そして、五つ子たちも、成績は着実に上がってはきているのだが……

 

(くっ、IQの差とはなんと残酷……)

 

「よくわからないけど失礼なこと言われてる気がするわ」

 

「というか問題を解く以前に………みんな集中力の限界だよねぇ……」

 

「連日勉強漬けですからね……」

 

「わ、私はまだできるよっ!」

 

「お前だけまだそんな頭使う問題のとこじゃねーからだよ」

 

「むむむ……」

 

四葉は体力があるとはいえバカだからまだしも、総介にも疲労が見えてきている。その度に三玖が彼の頭を撫でて『よしよし』としたり、膝枕をしてもらったりしているのだが……お前ら別の姉妹のパートでもイチャイチャすんのかよ……

 

風太郎は何かこの状況を打開する方法は無いものかと、先日購入した『良い教師になる為のいろは』という本をパラパラとまくっていると、とある項目が目に入ってきた。

 

『・詰め込みすぎは逆効果』

 

「…….時には飴も必要か……」

 

勉強だらけの日常では、ストレスが溜まってしまい、かえって悪い結果を招いてしまうこともあるかもしれないと、風太郎は考え、やがて『あること』を思いついて、姉妹の前に自身の人差し指だけを出した拳を見せた。

 

「?」

 

「どんだけ〜!ってか?」

 

「IK○Oじゃねーよ!」

 

「んだよテメー、キレてんのか?」

 

「いやいや、キレてないっスよ……ってこれも違う!」

 

総介の一通りの小ボケに付き合った後、風太郎が説明を始める。

 

「決して余裕があるわけではないが……

 

 

 

 

明日1日だけオフにしよう」

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

というわけで翌日。一向は電車に乗って向かった先は、とある遊園地であった。

 

「ふふ、休日デートにここを選ぶなんて、フータロー君もベタだねぇ」

 

「デート………ソースケと……」

 

「そういやこういうとこ三玖とはまだ来てなかったね」

 

「っていうかアンタら、何ナチュラルに手繋いでんのよ……」

 

二乃の指摘した通り、この中でたった1組のカップルである総介と三玖は、当たり前のように指を絡ませて手を繋いでいた。

 

「恋人同士なんだから当然だろうがコノヤロー」

 

「……このやろー」

 

「三玖、何しても良いけどそれだけはやめて」

 

「他に行きたいとこあったら言えよ」

 

「いえ、私たちも久方ぶりなので楽しみです」

 

「……そうね、ママに連れてってもらった以来かしら」

 

「………」

 

「今日だけは勉強のことを忘れることを許そう

 

 

思う存分羽を伸ばせ」

 

 

というわけで、この日は遊園地で存分に遊んだ風太郎たちだったが……

 

ただ1人だけは違った。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

その後、ジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に入ったり、メリーゴーランドでグラサンかけてスナイパーライフルを構えたり、馬に乗り腕を組みながらながら『レッツパーリィー!!』ごっこをしたりして楽しんだ一向だった?………え?

 

「次はあれに乗りましょう!」

 

「五月ちゃん、ちょっと待って……」

 

すっかり絶叫マシンにハマった五月が、くたっとした一花を連れ回して行ったとき、二乃があることに気づいた。

 

「あれ、四葉はどこかしら?」

 

見ると、四葉がその場にいなかった。

 

「今度こそ迷子だったりしてな」

 

「どうせまたトイレよ」

 

「四葉ならおなか痛いからトイレだって」

 

「なぜ直接言わない……!」

 

そんな中で、風太郎はそのまま遠くを見ると、何かに気がついた。そして……

 

「じゃあ、俺も便所」

 

「あっそ。先言ってるわよ」

 

「おう」

 

そう言って、風太郎はトイレへと向かっていった……が

 

「………」

 

総介は、風太郎がトイレではなく観覧車の方向に行ったことに標識を見て気づいたが、特に追うでもなく……

 

「んじゃ、俺も三玖とデート楽しむわ」

 

「うん」

 

「はぁ!?じゃあ、私は一人でどうすんのよ!?」

 

「そうさなぁ………『色々と』考えな」

 

「こんなとこで!?」

 

二乃のツッコミを無視して、総介は三玖を連れて二人でのデートを楽しみに行った。

 

 

「………『色々と』って……」

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

その後、二人でのデートを楽しんだ総介と三玖のラブラブカップル。今はベンチでジュースを飲みながら座っている。

 

「……上杉、四葉を探しに行ったと思う?」

 

「うん、話していた流れから見るに、そう思う」

 

「だよね……」

 

2人は、先ほどから不可解にトイレに行く四葉の話をしていた。

総介は、前回の期末試験の前に、五月から四葉が追試に落ちてしまったことが原因で、前の学校から転校する羽目になったことを思い出していた。もしあの時の負い目があるならば、四葉はトイレという名目で、隠れて勉強でもしているのだろう………

 

「………ま、そこんとこは上杉がなんとかするだろ」

 

「うん……」

 

「それでさ、次はここ行ってみない?」

 

「ふふっ楽しそう」

 

2人は、自分が今出来ることは無いと割り切って風太郎に四葉を託し、その後もその日は遊園地デートを楽しんだのだった。

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

そしてそのまま試験当日となり、それから時間が経ち……

 

 

「四葉!」

 

風太郎は四葉のもとを訪れた。理由はもちろん、彼女の試験結果である。

 

「試験の結果はどうだった!?」

 

 

 

「………上杉さん、すみません」

 

風太郎を見るなり、四葉は頭を下げて謝り、そのままの態勢で続ける。

 

「実を言うと、姉妹のみんなに教えてもらった方が分かりやすい時もありました。不出来ですみません……そして

 

 

 

 

 

ありがとうございました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、初めて報われた気がします」

 

そう風太郎に礼を言う四葉の目からは、ポロポロと涙が溢れ始めていた。

 

 

 

 

 

 

中野四葉、試験結果

 

国語……58

数学……35

理科……34

社会……41

英語……38

五計……206

 

 

 

 

総評(浅倉総介)……ま、赤点回避できたのはよくやったと言ってやらぁ。今更だが、ようやく第一関門突破ってとこか………それでなんだが、あの後三玖といくつかのアトラクションに乗ったんだが、そこで……(この後、総介は5時間にわたり三玖とのデートの話をした)

 

 

 

 

 

 

中野五月(生き写し)

 

 

 

「………で、何?俺に一体何の用なの?」

 

「……すみません、突然呼び出して……」

 

総介は突然、五月に相談があるとLINEで連絡が来たので、風太郎がバイトで働いているケーキ屋(今日は風太郎休み)を話の場所として設けて、そこで五月からの相談を受けるところだった。

 

「実は………」

 

彼女が言うにはこうだ。

毎月の14日、母の亡くなった日の月命日に、母の墓参りを欠かさない五月。1月のその日にも、いつものように母に会いに行ったらそこでかつて教師をしていた母の教え子である『下田』という女性と遭遇。

そのままこのケーキ屋さんに入り、母の昔の話を聞いた。その後、五月は下田が母への憧れから、塾講師になったことを聞き、自分も、以前もらった進路希望調査の紙を取り出し、なりたいものを書こうとしたが、下田から『母になりたいだけなんじゃないか』との指摘を受けた。

 

 

「………というわけでなんですが、どうすれ……ばっ!?」

 

「ど〜おしろってんだよぉ〜おれによぉ〜……」

 

話を聞いた総介は、ぐで〜っと椅子にもたれ、いつもの死んだ魚の目をさらに死なせているという、もう無気力極まりない人間となっていた。

 

「あ、浅倉君、お行儀が悪いですよっ!」

 

「おまえがめずらしく『ご相談があります』ってLINEしてくるからきたのによ〜ぉ、なにそのはなし〜ぃ。おれいる〜ぅ?」

 

「と、溶けてる!?」

 

グニャグニャと動きながら話す総介。まぁ、そのままでいても好奇な目で見られるだけなので、いい加減ちゃんと答えることにする。

 

「……別に良いんじゃねーの?」

 

「……随分とあっさりしてますね」

 

ストローに口をつけてコーラを吸う総介を見ながら、五月は怪訝な目で総介を見る。

 

 

「そうさなぁ〜…………」

 

 

 

総介はしばらく斜め上の天井を見て考えた後、ゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その女が言ってることが間違ってるわけじゃねーけどさ

 

 

 

よくプロ野球選手の息子が親の背中見て親父と同じプロ野球選手目指して、二世選手になるように

 

 

 

お前がもしお前の母ちゃんになりたいって思ってんのなら

 

 

 

母ちゃんがそうなったように、教師目指しすのもいいし

 

 

 

母ちゃんがしたように、誰かと恋愛して、結婚して、ガキ産んで、そいつにいつか教えてやりゃあいいじゃねぇか。

 

 

 

自分の母親は、こんだけすごかったんだぞってよ。

 

 

 

同じことして、死んだ母ちゃんを忘れさせないって考えも十分アリだと思うがな。

 

 

 

 

それを過去に囚われてるだけ、とか言い出す輩もいるが

 

 

 

 

そんな耳障りな外野の野次に耳なんて貸す必要ね〜よ。

 

 

 

 

悩んで悩んで、脳みそ爆発させるまで悩み苦しんで

 

 

 

 

最後はテメーが『これで行く』って思った道を進みな、肉まん娘

 

 

 

 

それがたとえ、お前の母親と同じ道だろうが、

 

 

 

 

上からなぞって歩きゃ、もうそれは自分(テメー)の道だ」

 

 

 

「………」

 

「ま、綺麗に収まっちゃいるが、実際は自己責任ってことだがな。それで何かあっても、言い出しっぺの俺に全部押しつけんじゃねぇぞ」

 

そう言い終わって、残りのコーラを飲んだ総介はその場を立ち上がり、自分のコーラの分の会計だけを済ませるために席を離れようとした。

 

「………浅倉君!」

 

「………」

 

そんな彼を、五月は立ち上がって呼び止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ありがとうございます」

 

彼女は、振り向かない総介に向かって、頭を下げて一礼した。

 

 

「……ま、気楽にやんな、肉まん娘」

 

 

一つも振り向かずに、総介はそのまま店を後にした。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

それから……

 

「これからは全員が家庭教師だ」

 

という風太郎の一言に全員が彼に注目する。

 

「え?」

 

「どういうこと?」

 

「『俺が!……俺達がガンダムだ!!』的な?」

 

「いやそうじゃなくて……ゴホン!自分が得意な得意な科目を他の姉妹にも教えるんだ!俺達がいない間にもお互いに高め合ってくれ!そうして全員の学力を一科目ずつ引き上げるぞ」

 

姉妹はそれぞれ、一花=数学、二乃=英語、三玖=社会、四葉=国語、五月=理科と、得意科目が見事にバラバラだ。風太郎はそれを利用することにした。得意な科目を他の姉妹にも教えることにより、自身や総介の負担を減らしながら、家庭教師以外の時でも学力向上につながる。ということはつまり………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺と三玖がイチャイチャ出来る時間が増えるってわけだ。中々やるじゃねぇか、上杉」

 

「帰れ」

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

『姉妹か家庭教師』案は効果はあったようで、五月もそれを実感していた。教えることで復習も出来る、以前彼女が『教えながら学ぶ』を、見事に実践できていた。そしてもう一つ。

 

 

 

『わっ、すごい分かりやすい!五月ありがとう』

 

『!』

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

お母さん

 

 

 

 

 

私………

 

 

 

 

 

 

先生を目指します

 

 

 

 

 

 

中野五月、試験結果

 

国語……50

数学……40

理科……75

社会……39

英語……45

五計……249

 

 

 

総評(浅倉総介)……俺の先生は『いくらでも迷ってもいい、立ち止まってもいい。それでも自分が思う正しい道を見つけたなら、それを信じ、進み続けなさい』と仰ってくれた。それが俺を『人』としての……『侍』としての道を進む、どれだけ助けになってくれたことか…………何事も、『先生』ってのは、偉大なもんさ。この言葉、お前にやるよ、肉まん娘。

………それでよ、上杉の言ってくれたことのおかげで、この前三玖との時間が久々に取れたんだが……(この後、総介はやはり三玖とのイチャイチャ話を5時間話し続けた……)

 

 

 

 

 

 

 

④中野一花、死す(デュエルスタンバイ!)

 

 

「私、このテストで5人の中で1番の成績をとったら、フータロー君に告白するんだ」

 

「………死亡フラグ?」

 

いきなり死亡フラグで始まった一花の一言。もうタイトルからして結末が丸見えである。

バレンタイン日からそう経っていない日のこと、アパートの階段で三玖と会った一花。そこで、二乃を自分のチョコ作りのことを裏で回してくれたことに、改めて三玖は彼女に礼を言った。

 

「……ありがとう、一花」

 

「喜んでくれてよかったね、三玖。しかもみんなの前でキスしちゃうくらい嬉しかったなんてね〜♪」

 

「い、言わないで……」

 

ある意味三玖の黒歴史となりつつある『こたつでイチャイチャバレンタイン事件』。一方の総介は、それほど気にしてはいないが……

と、ここで、三玖の方から一花に尋ねた。

 

「……よかったの?」

 

「ん、何が?」

 

「……フータローにチョコあげなくて」

 

「………」

 

一花はその言葉を聞いた瞬間、黙り込んでしまう。思えば、花火大会の日からそうだった。

 

花火大会、林間学校、まさかの女優の仕事でのエンカウント……気づけば彼女は、風太郎を目で追い続けていた。三玖が言ったように、このバレンタインでチョコを渡すチャンスはあった。しかし、彼女はそれをしなかった。

 

 

 

「……いいんだ。その代わり、もう決めたから」

 

「?」

 

 

そして彼女は、何かを決意したように、空を見上げながらその言葉を発した。

 

 

 

「私、このテストで5人の中で1番の成績をとったら、フータロー君に告白するんだ」

 

「………死亡フラグ?」

 

というように、冒頭のセリフに繋がるわけである。

 

「不吉なこと言わないでよ!」

 

思わず突っ込んでしまう一花。しかし、前回の試験時点での成績No.1は三玖、次点で一花、決して不可能とは言えないのだが……もう、ね?

 

「一花、この前も映画ですぐ死んでたから、板についたのかも」

 

「せめて役の中だけで許して……」

 

よくゾンビものやホラーもので死ぬ役をもらう一花。それが日常にも影響が出てきたのかと思うと、どうにも不便である……

 

 

 

「……でも、応援してる」

 

「!」

 

と、横に並ぶ三玖が、一花にそう言った。ということは……

 

「三玖……」

 

「……でも、試験で負けるつもりはない」

 

「………だよね」

 

彼女とて、総介に教わってきたことを無碍にするつもりはない。最もいい成績を出すことこそ、総介への恩返しの一つと考えている。そんな彼女が、わざわざ自分のためにわざと成績を落とすとは思えない。つまり……

 

 

「真剣勝負、だね」

 

「中野家冬の陣……今回も私が勝つ」

 

バチバチと火花を散らす両者。が、2人はそれでもお互いの身を思い合っている。

 

「フータローに……上手くいくといいね」

 

「……でも彼、私たちを女子として見てないよね〜。まだセクハラ紛いのことをしてくる浅倉君がまともに見えるよ……」

 

「ソースケはあげない」

 

「わかってるって。彼も三玖のことしか見えてないからね」

 

総介も総介で、中々おかしい気がするが……

 

 

ともあれ、そこから一花は、仕事中の合間を縫って、勉強をし続けた。そこでも風太郎とのなんやかんやあり(風太郎と一花のなんやかんやは原作を買って見てみよう!)、ますます彼の方を目で追ってしまうことになったのだが……

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

そして試験が終わり、姉妹は風太郎の働いてるケーキ屋さん『REVIVAL』へと集結していた。

 

「四葉!やりましたね!1番危なかったのに!」

 

「おめでとう」

 

「えへへ」

 

まず集まった三玖、五月の2人で、四葉を労う。

 

「私史上1番の得点です。200点を超えたなんて今でも信じられません」

 

「よくやったな四葉。ほれ、ご褒美だ」

 

と、総介はポケットに入っていたコーラ味の飴玉を渡す。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「私は249点、ほとんど半分ですが、次も油断出来ませんね。三玖はどうでした?」

 

「私は……」

 

三玖が自分の点数を言おうとした時、店のドアが開いて一花が入ってきた。

 

「あ、一花も来たよ。二乃はまだかな?」

 

「一花、どうでした?」

 

「ふふっ、見事に赤点回避できたよ」

 

「やったー!合計点いくつだった?」

 

「………」

 

「………」

 

三玖と一花の間に緊張が走る。そして、一花がゆっくりと口を開き、結果を発表する。

 

 

 

 

 

 

 

中野一花、試験結果

 

国語……41

数学……70

理科……55

社会……46

英語……50

五計……262

 

 

 

 

 

「………262点」

 

 

 

 

 

「私は……278点」

 

 

 

結果、16点差で三玖の勝利〜。

 

 

 

「ま…………

 

 

 

 

負けた〜〜……」

 

一花はその場でガクッと両手両膝を床につく。対して三玖はというと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………コロンビア」

 

少し斜めになりながらカメラ目線でガッツポーズをする。かわいい。

 

「何だその喜び方?」

 

「色々あんだよ(かわいい)」

 

「あ!あのクイズ番組の!」

 

「あれ、あの後カンニング行為が発覚したらしくて、物議を醸したみたいですよ」

 

 

とまぁこんな感じで、五つ子の内4人の試験結果が明らかとなり、残りは二乃だけとなったのだが……

 

 

 

 

 

彼女については、この次の話で全てを明らかにするとしよう。

 

 

 

 

 

総評(総介&三玖)………「「コロンビア」」2人並んでカメラ目線でガッツポーズ

 

「………ねぇ、私初めて人を本気で殴りたくなったんだけど、いいかな?」

 

 




三玖だけテストじゃなくて、ほとんどバレンタインの話になっちゃいました(笑)。まぁ総介とのイチャイチャを見せることができたんで、大満足です!

次回は『二乃』編です。そこで残りの二乃、総介、風太郎、海斗、アイナの5人の試験結果も次回に出します。
次回は今週中に更新予定です。


今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
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