世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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温泉回第二回。それだけです。


63.振り返れば色々とそこにいる

総介が前回、五つ子の祖父に押し倒された光景を見るまでの経緯をざっくりと話そう。

 

 

 

 

風太郎は温泉から上がった後、自身の着替えが置いてある籠の上に

 

 

『0時 中庭』

 

 

というメモを見つけた。差出人はおそらく、お昼に後で話があると言っていた五月だろうと見当がついた風太郎は、約束の時間に中庭へ行くために、フロントに一度降りたところで、五月(?)と偶然遭遇。ちょうど良かったと思い、風太郎はその場で五月(?)に話とはなんだと尋ねたところ、

 

 

 

「私たちはもうパートナーではありません」

 

 

 

「この関係に終止符を打ちましょう」

 

 

 

そう言った五月(?)に困惑してしまった風太郎は、気が動転したのか、彼女に掴みかかって理由を聞こうとしたところ、今まで微動だにしなかったフロントの老人、もとい五つ子の祖父に技を決められて、風太郎は一瞬宙に浮いた後、仰向けで床に叩きつけられた。そして五つ子の祖父(以下祖父)が彼の耳元で一言。

 

 

 

 

「わしの孫に手を出すな

 

 

 

殺すぞ」

 

 

 

 

総介が見たのは、風太郎がちょうど空中散歩をしている瞬間からだった。彼はその光景を見て一言。

 

 

「………な〜るほ〜どね〜」

 

 

何かを察したのか、彼はその場にはこれ以上踏み入れず、そのまま自室へと戻って行った。

 

ちなみに、五月(?)は風太郎に腕を掴まれて迫られた際、壁の柱の部分に足を打ってしまったという、無駄かもしれない話が一つ……

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

(………そろそろいいだろう)

 

 

それから数十分後に、総介は再び行動を開始するのだった。

 

「………まずは、っと」

 

手始めに総介は、枕元に置いてあったスマホを手に取った。

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

(くそっ……なんだったんだあの爺さん。五つ子の祖父だと?

 

いや、今は五月だ)

 

『私たちはもうパートナーではありません』

 

(説明してもらうぞ)

 

 

一方の風太郎も、祖父の妨害により取り逃してしまった五月(?)を置い、彼女たちの部屋へと続く階段を登ったのだが……

 

 

 

「!」

 

階段を登った先には、『マルオ』がいた。

 

「お、お父さん……」

 

「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ」

 

何故この時間に、ここにマルオがいるのか?そして何故、彼は浴衣を着ずに昼間と同じシャツにベストなのか?着替え忘れたのか?

 

「この先は僕の部屋と娘たちの部屋しかないが、何か用かな?」

 

「……えー……五月、さんに……」

 

 

「……上杉君、君には先の試験で娘たちを赤点回避させてくれた功績がある。依頼者としてはその願いはぜひ叶えてやりたいね」

 

「!……あ、ありが」

 

「しかし、父親としては眉をひそめざるを得ない。こんな夜中に娘たちの部屋に男を入れてやる父親がいると思うかい?」

 

「………」

 

一瞬行けると思ったが、やはりこの堅物の父親は隙が無かった。こうなってしまった以上、もう風太郎に残された手段は一つだけだ。

 

 

「………嫌だなぁ、トイレですよ、トイレ」

 

「トイレは向こうだ」

 

『マルオ』は姉妹の部屋とは逆の方向を指差す。くそっこれでは……

 

 

携帯の充電も切れてしまっているため、連絡する手段も無い。しかも、会おうにも『マルオ』という壁が立ちはだかる。

 

 

風太郎は完全に詰んだ………

 

 

 

 

「おう上杉。お前色んなとこいるなオイ」

 

「!!!」

 

「……待ちたまえ」

 

と、風太郎がやむなく退散しようとしたところ、階段をゆっくりと上がってきた総介が、そのまま2人を素通りしようとした。

 

 

「ん?中野センセーじゃねぇの?まだ起きてたの?てか何で私服?そのカッコ苦しくねぇの?」

 

 

「……浅倉君、どこへ行くのだね?」

 

呑気に質問してくる総介。『マルオ』はそんなものを受け流して彼に質問で返す。

 

「いや何、三玖に用があってな。連絡入れたら来ていいって帰ってきたから、ここまでやって来た訳よ」

 

「そうか……しかし今は夜中だ。また明日にしてもらいたいものだね」

 

「いやいや、どうせアンタこっち警戒して、明日からもしれっと三玖から俺遠ざけようとすんだろ?

 

 

まぁアンタの気持ちも分からなくもねぇが、こっちもこっちで話してぇことがあんだ。明日以降、アンタが俺が行った通りの行動を取るなら、そりゃ尚更、今話して起きてぇことでね」

 

 

「………三玖君には、僕から伝えておこう。用件を言いたまえ」

 

あくまでマルオは、いくら総介でもここを通すつもりは無いようだ。いくら『大門寺』の人間とはいえ、父親として、夜中に娘とその恋人を逢わせるのは、あまり気分の良いものではない。

 

あくまで三玖の父として、彼は総介を通そうとはしない。総介はそれを見て、どっかの親バカ局長を思い出して、笑いがこみ上げて来た。

 

「……クククッ」

 

「……何がおかしい?」

 

「いや何、アンタホントにどっかの『親バカ』と同じだと思ってな。つい昔のことを思い出しちまった」

 

「?」

 

「………」

 

風太郎は皆目見当がつかないが、『マルオ』にはだいたい分かっていた。『刀』の局長であり、アイナの父親である『渡辺剛蔵』のことだろう。『マルオ』は剛蔵と一度会った時に、やたらと娘の『アイナ』の写真を見せて自慢されたのを覚えている。普段は情に厚い『武人』と呼ぶべき漢だが、娘の話をする際は表情をデレデレに崩して延々と話をしてくる完全にうざったい巨人と化すのだった。

総介の方も、昔『大門寺邸』にて偶然アイナの着替えに遭遇してしまった際に、剛蔵に鬼のような形相で追いかけ回されたことを思い出す。が、その際、剛蔵もちゃっかりアイナの着替えを見ようとして、頭にアイナが投げた壺を喰らったとか。

 

閑話休題。と、総介は『マルオ』ではないとある方向を見る。

 

「……が、中野センセー、それ、可愛い娘本人の頼みだったらどうすんだ?

 

 

ほれ」

 

そして、総介が指差した方には、

 

「………」

 

「み、三玖!」

 

浴衣姿の三玖がいた。

 

「……三玖君、どうしたんだね?お手洗いかな?」

 

「………お父さん、ソースケに、話があるの」

 

「………」

 

「2人っきりで話がしたいから、少し、時間が欲しい……」

 

三玖は総介の連絡を受け取って、彼を待っていたのだが、いつまでたっても来ないため、外に出てみると、そこには総介と『マルオ』と風太郎

がいた。おそらく、自分たちに会おうとしている2人を止めていたのだろう。しかし、こちらにも話をしなければならないことがあるので、ここは譲るわけにはいかない。

 

「お願い、お父さん………」

 

「………」

 

『マルオ』は黙ったま三玖を見つめる。いつになく真剣な表情で頼みをする娘。

 

 

 

それほどまで、彼に……

 

 

 

 

 

 

 

「…………30分」

 

「!」

 

「事前に連絡を入れていたのであれば仕方ない。が、夜も遅い。30分だけ目を瞑ろう」

 

「あ、ありがとう!お父さん!」

 

『マルオ』からの許しを得た三玖は、パァッと顔を明るくさせて、総介の隣へと歩み寄る。

 

「悪りぃな、中野センセー……」

 

「……行きたまえ、既に時間は進み始めている。時間厳守を忘れないでいただこう」

 

「……礼を言わせてもらうぜ」

 

総介のその一言を最後に、2人は階段を降りて行った。

 

「………」

 

隣り合って階段を降りる2人の背中を、『マルオ』は見つめる。その表情は、誰にも見えなかった。

 

 

 

 

 

 

「………じゃあ俺も」

 

「君は駄目だ」

 

「うっ!」

 

ちゃっかり風太郎も行こうとしたが、そうは問屋が卸さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、ソースケ。お父さんが……」

 

「構わないよ。それより本題に入ろう」

 

階段を降りて、2人きりになれる場所に来た総介と三玖は、時間が無いため、早めに目的の話をすることにした。

 

 

 

 

「さっきフロントにいた肉まん娘……あれ、三玖だよね?」

 

「……うん」

 

やはり総介には、バレていた。総介は三玖に関する変装だけは、見ただけで見破ることが出来る。誰かが三玖になっていようが、三玖が誰かになっていようが、それは彼の前では意味を為さないのだ。

 

これに関しては、三玖から旅館に着く前に詳細を聞いていた。

 

 

昔、五つ子全員は皆、同じ容姿、同じ服装で皆が仲が良かった。

祖父もそれを見て喜んでいた。そして月日は経ち、皆が別々の格好をして、再び祖父に会ったところ、

 

祖父は五つ子が仲が悪くなったのでは?心配して、しまいには倒れてしまったそうだ。

 

それ以来、祖父の前では皆がそっくりな姿で会うことを決めたのだった。話し合いの結果、容姿は五月に合わせることとなり、現在に至る。つまり、この旅館にいる間は、全員が五月の格好をして外に出ることとなるのだ。

 

 

 

が、総介には三玖さえ判別できればそれで良いので、あっさりと協力することにした。が、問題は見た目だけで判別がつかない風太郎である。

 

「で、上杉の方はどうだった?」

 

「……やっぱり、私を五月と勘違いしてた」

 

「やっぱな……てか、何があったの?」

 

総介の質問に、三玖は先ほどの出来事の一部始終を話した。

 

 

それを聞いて、総介の頭に浮かんだ疑問があった。

 

 

「……どうしてそんなことを?」

 

「……フータローは、未だに私たちを家庭教師の生徒としか思っていない」

 

「そりゃあ、野郎も鉄球並みに硬ぇ脳ミソしてっからね」

 

「……でも、私以外の姉妹の中にはフータローを想う子もいる」

 

「………」

 

大体見当はついている総介だが、そこはあえて聞かないことにした。

 

「このままじゃ、フータローにとってずっと私たちは生徒のまま……だから、一度この関係を終わらせたかった」

 

「んん〜、だからって、そんなまどろっこしい事しなくても……いや、相手は上杉……『だからこそ』か……」

 

「うん、どうせ直接言っても、『所詮俺とお前らとは教師と生徒、それで十分だ!』って言い返してくる」

 

「確かに……だからあえて濁して、あいつに考えさせるようにしたと」

 

「そう。フータローは頭は良いけど、ソースケみたいに視野が広くない」

 

「………全く、前しか見えないのも考えものだね。たまには周りや後ろを見てみろっての」

 

「………それに、このままじゃ、フータローはずっと1人のまま……」

 

「………」

 

三玖の最後の一言に、総介は目を下に向ける。

風太郎は言うならば、『昔の自分』だ。

母を殺され、『ある一方向』しか見なくなって、それが絶対だと、それしか自分の生きる意味は無いと信じ続けた『鬼童』のままだ。しかしそんな時でも、総介には海斗やアイナ、明人や剛蔵、宗尊や刀次が周りにいた。彼らが周りに常にいてくれた。それに気づけた自分は、何と運が良かっただろう。それ故か、総介は風太郎に、何かにつけて目を掛けている。もしかしたら、何にも気付かずにその道を進み続けた『自分』を見るかのように……

 

 

「………ま、上杉にとっちゃこれが課題だな。見分けるようなれとは言わねぇが、自分(テメー)の周りにあるモンをよく見ろってことか……果たして野郎は気付くかどうか……」

 

「……わからない。でも、フータローは五月に会おうと必死だった」

 

「……問題も分からずにそれを解くってか………かなり難しいが、あいつには知って貰わなきゃいけねーしな」

 

「……あとは、フータロー次第」

 

「そうだね……じゃあ本題は終わりってことで」

 

 

 

「………うん」

 

そう言って、総介は三玖の背中に手を回して、抱き寄せる。三玖も、総介の背中に手を回して、彼の胸元に収まった。

 

 

「……ずっと、こうしたかった」

 

 

 

「俺も………本当に、会いたかった………」

 

 

「……ソースケ………大好き……」

 

 

 

「俺もだよ、三玖………愛してる」

 

 

 

 

「私も、愛してる。ソースケ………」

 

 

 

青白い月明かりが窓から差し込む。2人は、それに照らされながら、そのまま顔を合わせ、やがて唇を重ねた。

 

 

「ん………」

 

「………久しぶりだね」

 

「うん……もっと、いい?」

 

「……もちろん」

 

長い間、会っていなかった2人は、もちろんキスも久しぶりなので、幾度となく重ね合わせて、唇同士を啄ばみ合う。

 

 

「………ねぇ、ソースケ」

 

「ん?どうしたの?」

 

やがて、総介の胸元に顔を埋める三玖の頭を、優しく撫でながら、彼女の話を聞く。

 

「どこかで一回、一緒にお風呂入ろう?」

 

 

「混浴?」

 

「うん」

 

「いいけど……他の男に三玖を見せたく無いしな」

 

この旅館には、何故か男湯と女湯の間に混浴が存在する。覗き防止か、家族風呂に入り易くするためだろうか……

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、清掃中の看板の場所は知ってるから」

 

「それラブコメの『キャッキャウフフ♡』なシーンでよくあるや〜つではあ〜りませんか三玖さんや」

 

「……そうすれば、ソースケと一緒にお風呂入れるし……それに……

 

 

 

 

 

 

『色んなこと』、できる」

 

「………」

 

 

総介は『色んなこと』を想像して、ある一点がとんでもない事態になりそうだが、今ではない今ではないと、どうにか抑え込む。

 

(いかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかんいかん)

 

流石に今、彼女と『そう』なってしまえば、2人の逢瀬の時間を設けてくれた『マルオ』にも申し訳がたたなくなってしまう。仮に彼が娘を心配してやって来て、そんな場面を見つかりでもしたら、いくらなんでも弁明出来ない。ここは我慢だ……

 

「……まぁ、2人っきりで入れるのなら、それに越したことはないしね。俺はいつでも空いてるから、好きな時に呼んでね」

 

「う、うん!ありがとう。ソースケ、大好き」

 

そう言われて喜ぶ三玖は、顔をパァッっと明るくさせて、再び総介の胸に顔を埋め、ギュウッと抱きしめる。そんな彼女が、たまらなく愛おしく感じて、総介も、三玖の髪を梳きながら撫でていく。

 

 

(上杉……今のテメーはまだ否定するかもしれねぇがな

 

 

 

 

愛する人ほど、この世でかけがえのねぇもんはねぇぞ

 

 

 

 

俺はこの子のためなら

 

 

 

 

いつでも死ねるな

 

 

 

 

まぁ、三玖はそれを許はねぇと思うけど

 

 

 

 

 

でも、この子が生きてくれるなら

 

 

 

 

 

こんな俺の命の一つぐらい、

 

 

 

 

神だろうが悪魔だろうが閻魔大王だろうが

 

 

 

 

 

いくらでもくれてやらぁ

 

 

 

 

 

 

 

それくらい想うからこそ

 

 

 

 

 

 

時には限界以上の力が出せるんだよ

 

 

 

 

 

 

 

テメーも前だけ見ずに

 

 

 

 

 

 

横でも見て、並んで歩いている奴を見やがれ

 

 

 

 

 

 

 

みんなついてんぞ

 

 

 

 

 

 

テメーだけの道だけじゃねーんだ

 

 

 

 

 

 

三玖をはじめ、

 

 

 

 

 

 

長女さんや四葉、肉まん娘や、えーっと…………バンビエッタ・バスターバイン(違う)もいんだよ

 

 

 

 

 

 

いい加減くだらねぇ独りよがりはやめろ

 

 

 

 

 

 

その道を歩くのは、

 

 

 

 

 

 

 

俺だけで十分だコノヤロー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、『マルオ』の設けた制限時間が迫ってきたため、2人の逢瀬は終わることとなり、最後に軽く口づけをしてから、それぞれの部屋へと戻ることとなった。

 

 

 

「またね、ソースケ」

 

「またね、三玖」

 

いつもの別れの言葉。また会えるということを信じて交わし合う、約束の言葉。

 

それを言い合った2人は、そのまま自室へと戻り、就寝の床につくのだった………

 

 

 

 

 

 

 

総介爆発しろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

温泉旅行2日目。

 

 

 

「なんで俺まで巻き込まれてんだよ」

 

「い、いや、せっかく浅倉がいるんだから、これほど便利なことはないだろって」

 

「誰が一家に一台の家電だコノヤロー。しばき回すぞ?」

 

風太郎は総介を連れて、五つ子たちの部屋へと向かっていた。

 

 

ここまでの経緯を説明しよう。

朝、らいはの携帯を借りて、五月と話をしようとした風太郎。そこで彼は、昨日会った五月が、五月本人ではないことを知る(三玖です)。それのことを含めて、話をしようとしたのだが、生憎『マルオ』の監視の目もあり、なかなかその機会は訪れそうに無い。ならばと、風太郎は、温泉に入り、その隔たりの向こうから五月と会話をすることにした。

 

途中、風太郎のいる湯に二乃が現れたり………

 

 

 

 

 

 

するわけねぇだろバーカ!

 

てなわけで、そのまま話は進む。五月に変装した何者かの存在(三玖です)。そして五月がなぜ、話があると風太郎を呼び出したのかというと、それは変わりゆく姉妹の現状への戸惑いだった。

 

 

三玖は総介と愛し合うまでのラブラブな恋人同士。

二乃も海斗と形だけは恋人ということになった(姉妹には、特に四葉には入念に緘口令をしいた)。

さらには、春休みに入ってから、一花と四葉の様子もおかしい。何か心当たりは無いかと、風太郎に聞いてみようと思い、彼を呼び出したのだった。

無論、風太郎はそれもだが、今は偽五月(三玖)のことを優先しようとする。

 

が、五月は偽五月(三玖)の言うことも共感できると返した。

 

試験勉強、花火大会、林間学校、その他のゴタゴタ……数多くのことを経験してきた風太郎と総介と五つ子たち。

 

それらを思えば、自分たちはもはやただ利害関係だけのパートナーだけではいられない………

 

ただの1人の友達として、これからも付き合ってほしい……

 

 

 

それに風太郎は、答えを言わなかったが、今の姉妹の悩みの相談に乗ることを決めたのだった。

 

 

 

というわけで、途中で出会った総介を連れて、五月が『マルオ』の注意を引いている間に、2人は姉妹の部屋へと向かう。が、

 

 

 

(……多分、上杉知らねぇよな)

 

ことの事情を知っている総介はそう大して驚かないだろうが、風太郎は……と、なんやかんやで部屋の前。そしてそのふすまを開けると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4人の『五月』がいた。

 

 

 

 

「五月の森……

 

 

なんで全員五月になってんだ……?」

 

(やはりとは思ってたが、ここまでくると壮観だな)

 

その光景に、空いたままの口が塞がらない風太郎と、いつもの死んだ魚のような目の総介。

 

「フータロー君、ノックくらいしてよ」一花

 

「びっくりさせちゃった」三玖

 

「これはですね」四葉

 

「待って……ちょうど良かったわ。あんたらにはもう一度試して見たかったのよ」二乃

 

五月(二乃)がそう五月(四葉)の説明を遮り、こう提案した。

 

 

 

 

「覚えているかしら?五つ子ゲーム

 

 

 

 

 

 

私たちが誰が誰だか当ててみなさいよ」

 

 

前回は指だったが、今回は正真正銘本人を当てる。そして、風太郎と総介の五つ子を探すゲームが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、

 

「くだらねぇ」

 

そう吐き捨てた総介は、五月の森にいるとある一人の五月へと歩み寄り、やがて頭を撫で始めた。

 

「………」

 

その五月は、喋りこそしないものの、嬉しいのか、照れているのか、顔を赤くしてそのまま総介のなでなでを甘んじて受け入れている。

 

「……それが三玖だな?」

 

と、風太郎が総介の行動によって、今彼が撫でているのは三玖だということを確信した。

 

「いや、他に誰がいんだよ?普通わかるだろ?」

 

当たり前のように言う総介。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……違う」

 

「?」

 

「……残念、三玖は私」

 

なんと、別の五月が、『自身が三玖』だと言い出した。そしてその証拠にと、彼女はウイッグをとり、セミロングの長い前髪の髪型を見せる。

 

「!み、三玖!?」

 

「………」

 

その様子に驚く風太郎。彼の視線からは、総介の表情が窺えない。

 

「……ソースケ、私、信じてたのに……」

 

今にも涙を流しそうになりながら残念がって項垂れる三玖(?)に、総介は反応すら忘れてしまった。

 

 

 

 

 

 

いや、正確には『反応しなかった』。

 

 

「あ、浅倉………」

 

心配そうに総介を見る風太郎。と、総介はそのまま撫でていた五月から手を離して、三玖(?)に歩み寄る。

 

「いやー気づかなかったわー。本当にごめんね三玖。まさか俺が恋人を当てられないなんて、彼氏失格だなー」

 

三玖(?)は妙に棒読みでそう言いながら近づいてくる総介を見た。彼女が見た総介なや顔は……

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

 

 

それはそれは下衆な笑みを浮かべていた。

 

 

が、気づいた時にはもう遅く、彼は三玖(?)の背中に手を回して、抱き寄せた。

 

「キャッ!?そ、ソースケ!?」

 

「ごめんねー三玖。こんな俺だけど許してほしいよ。お詫びに三玖がもういいって言うまでキスしてあげるから」

 

「キッキス!?」

 

「折角なんだから、仲直りの印に、いいよね?昨日もしたんだから、今日しても?」

 

「きっ、昨日も!?」

 

「あれあれー、忘れちゃったのかなー?悲しいなー。三玖も俺とのこと忘れてしまったかー、なら………

 

 

 

 

 

思い出すまでたーくさん愛し合わないとねー」

 

 

下衆な笑みを浮かべた総介はそのまま、三玖(?)へと唇を近づけていく。そして、後1センチで唇同士が重なろうとする時だった。

 

 

 

 

「ダメ!!!」

 

と、突然、総介の背中に、先程まで頭を撫でられていた五月が抱きついた。そして……

 

 

 

「………『一花』、もうやめて」

 

偽三玖、即ち一花へと向かってそう言った。彼女は五月のウィッグの中に、もう一つ三玖の髪型のウィッグを被っていたのだ。総介はそのまま一花から顔を離して、本物の三玖へと振り向く。

 

 

 

「………三玖、これは君の指示かな?それとも……」

 

「………」

 

「………私が言ったんだ」

 

と、一花が口を開いた、

 

「本当に浅倉君は、三玖を見抜けるのかって思ってね。三玖に提案して試してみたんだけど……やっぱり三玖の言った通り、駄目だったかぁ……」

 

「え!?でも、浅倉さんは一花に……」

 

「ううん、多分、いや絶対最初から気づいていたよ」

 

一花が総介にバレていると気がついたのは、総介がこちらに下衆な笑みを浮かべて近づいてきた時だった。

 

 

 

 

やばい、とっくにバレてる……

 

 

 

「俺の三玖への愛をその程度だと思ったのか長女さん?俺も罪なもんだね〜。周りから見たら、俺らは所詮はそんな関係だったと……」

 

と、次の瞬間

 

 

「そ、ソースケ……ん!?」

 

「「「「!!!!?」」」」

 

総介は右手で三玖(本物)の頭に手を回して、皆の前で唇を重ねた。

三玖は驚きのあまり、目を見開いて驚くが、やがて総介の舌が三玖の舌を捕らえると、ゆっくりと目を閉じて、濃厚なキスに没頭した。

 

 

「ん、んん、ちゅっ、ちゅる」

 

「んん。れりゅ……ちゅう」

 

10秒ほどして、2人はようやく唇を離す。その唇からは、2人の唾液が糸なって繋がっており、やがて切れた。その瞬間に、三玖は総介にこう告げた。

 

 

 

 

 

「もし俺が本当に三玖を間違えたら、その時は

 

 

 

 

 

 

俺を殺して構わないよ」

 

 

「……ソースケ……」

 

 

「もしそうなら、俺の三玖への愛はその程度ってことだから

 

 

 

 

 

口だけで『愛してる』なんて言っといて

 

 

 

 

三玖を見分けることすらできない

 

 

 

 

 

 

ただの男以下のゴミクズだ

 

 

 

 

 

 

そんなものの『愛』なんてのはすぐに剥がれ落ちて、朽ち果てるさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なら俺は

 

 

 

 

 

 

 

その程度でしか三玖を愛せないなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んだ方がマシだよ」

 

 

「………そんなこと、言わないで」

 

三玖は、顔に涙を溜めながら、総介に抱きつく。

 

 

「死ぬなんて、言わないで

 

 

 

ソースケがいなくなったら、私……」

 

 

 

「三玖……大丈夫

 

 

 

 

俺はちゃんと気づいていたから

 

 

 

 

 

三玖じゃない奴を見たところで、なんとも思わないよ

 

 

 

 

 

俺が愛したのは、三玖だけだから、

 

 

 

 

何度も笑い合って

 

 

 

 

何度も手を繋いで

 

 

 

 

何度も抱きしめあって

 

 

 

 

 

何度も愛し合ったのは

 

 

 

 

 

三玖だけだから

 

 

 

 

 

 

絶対に間違えたりはしない

 

 

 

 

 

今後一生、ずっと三玖だけを見ているから

 

 

 

 

 

三玖だけを愛するから

 

 

 

 

大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

 

「……うん……うん」

 

 

何度も頷きながら、涙をポロポロとこぼす三玖。その頭と背中を優しく撫でながら、慈愛に満ちた表情で抱きしめる総介。2人はもう、ただの恋人という言葉だけでは繋がっていない。

 

 

それはいつの間にか、総介にとっては海斗やアイナ、三玖にとっては他の姉妹たちのような、唯一無二の存在へと変わっていた。

そうして一通り、三玖をあやしてから、総介は振り向く。

 

 

 

 

 

 

「………さて、長女さん」

 

「!!!」

 

いい感じの雰囲気で終わりそうだと思ったが、総介にはまだやることがあった。彼が振り向いた先には、三玖に変装して総介を騙そうとした一花の姿が、そこにあった。

 

 

 

 

「三玖を騙っていらんことしようとした罪、その身で償ってもらうとするか〜、え〜?」

 

 

 

「え?そ、それは……どどど、どうすればよろしいのですかな?」

 

冷や汗をダラダラと流しながら総介からの判決を待つ一花。そして、彼が下したのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この旅行中、アンタは風呂に入る時は混浴以外は禁止な。あ、タオルとか持ち込むのも禁止な。生まれたままの姿でいろ」

 

「い、いや!それ裸丸見えじゃん!もしフータロー君や他の男の人の誰かに見つかりでもしたらどうするの!?」

 

「知るか。そいつのオカズのネタが増えるだけだ。お前さんは失うもんは何も無いし、男湯オンリーって言われないだけ感謝しろ」

 

「あるよ!色々失っちゃうよ!ていうか感謝するところなんて無いよ!

 

 

 

 

あ、浅倉君、お願い。た、頼むからそれだけは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っつーわけで今回の話はここまで!次回、改めて『五つ子ゲーム』行ってみよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってぇぇぇええええ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一花は、総介を敵に回せばどうなるかというのを、改めて思い知らされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




2011年、東日本大震災が起こって、日本中が悲しみに暮れた際に『銀魂』の作者である『空知英秋』先生が、横に並ぶ銀さん、神楽、新八、近藤、土方、沖田の絵を描かれ、メッセージも添えられていました。

『悲しい事がたくさん起こって
前向きになんてなれない時も
あると思いますがそんな時は
気負わず横でも向いてください
みんなついております、
みんなで一歩ずつ前へ
進んでいきましょう』

このメッセージに、私はしばらく涙が止まりませんでした。今でも、この絵は画像として私のフォルダの中に保存して、たまに見て元気を貰います。
見たことない方は、是非一度ご覧になってください。もしかしたら、とてつもなく胸の奥がジーンとなるはずです。

今回の総介のモノローグは、これを参考にさせて頂きました。このメッセージは、今でも私の生きるしるべとなっております。
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
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