そんなことより!第六章スタートです!いよいよ『嫁魂』が本格的に始動します!
言ってしまえば、第五章までは前座だと思ってください(前座で65話消費w)。
ついにオリ主勢力『大門寺』そして『刀』が動き出します!
沢山の応援があり、私も我を貫き通すことを決めました!
もう誰にも止められない……
66.ジャンプといえばやっぱり熱いバトル展開
その日は、雨が降っていた……
少年はボロボロで地に伏し、倒れていた。
その少年を見つめる、剣を手に握る大人が2人。
2人とも、少ないが傷を負っている。
2人は、虚無感、悲しみ、やるせなさ……静かな感情のままに、少年を見下ろしている。
その少年はそのまま動かず、泣いていた。泣き続けた。
雨か涙か、彼の顔の水滴は、もはや分からない
彼は、壊れたラジオのように、ただただ同じ言葉を延々と呟いていた。
「……おかあさん………おかあさん……」
総介は、そこで目が覚めた。
「………」
パチッと目を覚まして、未だ外は明るみを見せる気配のない、真夜中であることを確認した彼は、ゆっくりと上半身を起こす。起こされた身体から、かけ布団がスルリと滑り落ち、彼の鍛え上げられた細身の肉体が露わになる。
「………ふぅー」
彼は深呼吸をして意識をはっきりとさせ、今しがた見た夢……過去の事を、無言で考えていた。
それは、絶望に暮れた小さな少年に、皮肉にも、何もかもを失った後にとてつもない力が開花した日……
『鬼が生まれた瞬間』のことを……
「………んん」
ふと、総介の横で、声を上げて寝返りを打つ者がいた。
「………」
彼は彼女を起こさないように、寝返りで白い肌が露になった肩が隠れるようにゆっくりと布団をかけ直すと、そのままぐっすりと眠る三玖の長い髪を優しく撫でる。
「………」
普段のやる気の無い表情からは想像出来ないような、彼女にしか向けることの無い、柔らかく、穏やかで、慈愛に満ちた優しい表情で、最愛の恋人を見つめ続ける。
「………」
しかし、そのまま優しく髪を撫でる手とは裏腹に、その表情は徐々に柔らかい笑顔が消え、寂しさ、恐怖を含んだ複雑なものと変わっていった。
「………」
彼は口にはしないものの、たった今見た夢と、三玖を無意識に重ねてしまう。
もし、この子が母のようになってしまったら、と…………
「………そのために『鬼』になった筈なんだがな……」
『力』を手にして尚、大切なものを失う恐怖は、総介の中に残り続けていた。
しかし、そのおかげで得たものある。
「…………ああ、護るさ、今度こそ……必ずな……」
誰への返答かは彼にしかわからないが、総介は、三玖の頭を撫でていた手のひらを見ながら、心の中で、改めて生涯をかけて三玖を護っていくことを決意するのだった。
………………………………
温泉旅行から帰宅して幾日か経過し、春休みも残り一週間と迫った頃………
「お家賃を五人で五等分します」
そう切り出したのは中野家の五つ子の長女『中野一花』。
今現在、5人は自分たちの判断で、元々住んでいたタワーマンション『
なので、彼女の一言に、妹達は逆らえる筈もなく……
「払えなかった人は、前のマンションに強制退去だから
みんなで一緒にいられるように頑張ろ!ということで……
よろしくね♡」
全くもって『イイ顔』でお願いする一花には、誰も意見は出来なかった。
………………………………
その後、近くのカフェに行き、事前に集めていた求人募集のチラシたちをテーブルに広げて何の仕事をするか考える妹達4人。
元々、一花だけにかける負担を減らしたいと思っていたので、こういったものは前から集めていたのだが、いざやろうとなると悩むものである。
そんな中で、三玖が風太郎の働いているケーキ屋さん『REVIVAL』の募集のチラシを見つけた。それを見た二乃が……
「……まぁ、知らない人ばっかってのもアレだし、とりあえずそこに面接行ってみるわ」
とりあえず妥協で、知り合いがいる店を受けようとする二乃。と、そこに……
「あ、じゃあ私も行く」
三玖も乗ってきた。
「あんた大丈夫なの?料理の仕事出来んの?」
「りょ、料理は総介から教わってるから大丈夫……多分」
「へぇ〜、じゃあケーキ作りも教わってるのね〜?」
「…………」
もちろんそんなはずはなく、三玖が総介から教わっている料理は、基本的に和食の作り方や包丁の扱い、そして何よりコンロ周りのこと(一番重要)だけであり、ケーキ等の洋菓子は教わったことは無い。この前のバレンタインのチョコレートで、ようやく一品目である。
「味音痴のあんたは大人しく諦めなさい」
「………」
その二乃なら一言が、別に点かなくていい三玖の心に火を点けてしまった。
………………………………
それから、二人は同じタイミングで店に面接へと行き、風太郎を絶句させた。そりゃそうじゃ。
しかし、『REVAIVAL』の店長によると、向かいのパン屋のせいでキビシイらしく、定員は1名までということなので………
………………………………
「負けた………」
「あんたが料理対決なんて言い出すから……何の勝算があったのよ……」
その定員を、料理対決(お題はケーキ)で決めようと言い出した三玖。結果、見事に玉砕。
『REVAIVAL』で働くことになったのは、二乃となった。
「まぁ、でも、私も大人気ないとは思ってるわよ……」
「………」
そう言う二乃を尻目に、三玖はトトトっと歩き出し、店長が言ってた向かいのパン屋へと足を運び……
「向かいのパン屋も募集してるんだ……こっちにしようかな」
「切り替え早っ!?」
ケーキ屋のことはさっぱりと諦め、パン屋のことを考え始めた。
「チョコであんなに喜んでもらったんだから………
ケーキは無理だったけど、今度はパンで、ソースケに喜んでもらうんだ」
「………」
グッと握り拳を作って決意する三玖(かわいい)。それを二乃は、どこか複雑な気持ちで見ている。
(………何事にも消極的だった三玖が………
こうやって色々しようって思えるのも、やっぱり浅倉が関係してるのよね……)
総介と出会ってから、三玖は大きく変わった。
彼と恋人同士になり、ただ一途に総介のことを想い続け、いろんなことを教えてもらい、彼と色々と交わることで、三玖は女性として、人間として、2つも3つもアップグレードを果たした。
未だに素の彼女のままでは、人付き合いは苦手のようだが、それでも、前に比べれば大分マシだ。自分からここでバイトしたいなんて言わなかったはずだ……
それを、あの男はこうまで変えたのだ………
(………いいえ、変えたのは三玖自身よ。アイツが変えたっていうのは、なんか腹立つ……)
それに、こうして三玖を変えてくれた礼を言わなければならないので、それだけは死んでも嫌だと、二乃は心の中で思うのだった。
少し後の話だが、三玖は見事パン屋でバイトを始めることとなり、他にも四葉は清掃のバイト、五月は遅れて、進級後に塾講師のお手伝いのアルバイトをそれぞれスタートさせることとなった。
………………………………
そして、その総介はと言うと………
「盗まれた?」
「ああ。いや、正確にはコピーされて持ち出された痕跡が見つかった、と言うべきか」
彼は自宅に海斗を招き入れていた。何でも、緊急で話したいことがあるとの海斗からの要望だった。
只事では無いと悟った総介は、これを承諾し、海斗が自宅に向かうとのことで、そのまま彼が到着するのを待った。
家に招き入れて挨拶もそこそこに、二人はリビングにて、早速本題へと入った。
それは、数ヶ月前、総介が中間試験終了後に、五つ子の義父であるマルオに、海外からの違法な薬品や医療器具を高値で売りつけて儲けようとしていた『わる〜い組織』の連中を完膚なきまで叩き潰したことの話だった。
数日前、その組織から回収した資料やデータに、一つの怪しい『痕跡』が見つかったのだ。
海斗によれば、それは『何者かが、その資料を大門寺が回収する前に、コピーして盗み出した』のだと言う。
「情報処理班の子が運良くそれを見つけてね。それを解析させたら、その事実に行き着いたということさ」
「そんな潰れた連中のもん持ち出して、何しようってんだよ?」
「さぁ……でも、僕も君も、大体検討はついてるじゃないのかい?」
海斗の言ってる内容に、眉間に皺を寄せる総介。
「………それで、そのコピーされたところってのは……」
総介は海斗がここに来たということは……と、最悪のシチュエーションを想定していた。願わくは当たって欲しくは無いのだが、どうやらそれは無理な相談だったようで……
「………その組織が今まで、そしてこれから標的にしようとしてた者たちの名簿だよ……もちろん詳しい情報付きでね。
そしてその中に、中野先生の名前も入っている」
「…………」
総介の表情は、全く変わらなかった。ただただ厳しい視線を、海斗へと向けるばかり……
「何者が、何の目的で、それを持ち出そうとしたのかは皆目検討はつかないけど、
もし、中野先生やあの子たちに危害が出ようものなら」
「海斗」
海斗の話を、総介が呼んで遮る。
「『もし』じゃねぇよこりゃ。色々と出来すぎてる。
考えてみろ。奴らの次の標的は中野センセーだった。そこに俺が来て、根こそぎ潰した。
そこからお前らが資料を回収するまで、数日だがタイムラグがあった。
どこからか知らねぇが、そこで嗅ぎつけたってことになりゃ、納得だ。
それを持ち出した連中も大体検討はつくさ」
「………僕も、その可能性が頭には浮かんださ。しかし、今の『彼ら』に、そのような……」
「『ヤロー』がいなくても、『奴ら』ならやりかねねぇさ。ったく、1年前に決着つけた筈なんだがな……」
総介は舌打ちをした後、ソファから立ち上がり、そのまま写真の並んだラックから、一つの写真を手に取る。
それは、幼い頃の自身と海斗とアイナ、そしてその後ろに彼らと同じ高さまでしゃがみ、カメラに向かって微笑む女性の姿……
「……確かに、『彼ら』なら、それが出来る『力』も、それをする『理由』もある……」
「………だがあくまで、今のは最悪の状況を話したまでだ。もしかしたら、俺らに関係のねェ他の連中の仕業で、目的も標的も全く別かもしれねぇ。タイミングも、たまたま悪かっただけかもしれねぇが………いや、そうであって欲しいもんだぜ……」
しばらく写真を見つめながら喋る総介。
と、その時………
prrrrrrr、prrrrrrr、
「「!……」」
テーブルに置いてある総介のスマホが、電話の着信音を鳴らした。
「………」
彼は、嫌な予感を感じつつも、写真を置いて、スマホを手に取る。その画面を見た瞬間、彼はガクッと肩を落としてため息をついた。
「……はぁ〜〜……」
「………総介?」
「悪りぃな海斗
とんだフラグを建てちまったらしい」
総介がその着信先の相手が記された画面を、海斗に見せた。
「!」
そこには、『中野センセー』と表記されていた。嫌な予感はまたしても的中してしまった。
それを見た海斗は、両の眉を上げて驚きを露わにする。
総介はそのまま、通話ボタンを押して、電話に出る。
「………どうしたんだ、中野センセーよ?」
『………浅倉君』
電話の向こうのマルオの声は、上手く誤魔化そうとしているが、それでもわずかに震えていた。
「何があった?」
その総介の一言から、マルオはゆっくりと説明を始めた。そのタイミングで、総介はスピーカーモードのボタンを押して、海斗にも聞けるようにした。
先程、マルオのもとに、一つの電話が入ってきた。
それは、総介が潰した組織の系列を名乗る別組織のようで、その連中はマルオに、引き続き違法な取り引きを持ちかけたのだ。
無論、マルオはそれに返事をするつもりは無く、バックに大門寺もいるため、毅然とした態度で断ろうとしたが、その電話の相手はこう言ってきたのだ。
『明日の24時までに良い返事をもらえなければ
五人で仲良く暮らしているあのアパートに是非とも気をつけて頂きたい。
まだ春先ですからな、うっかり火の後始末を怠ってしまって……
火事になってしまったら大変ですからな』
「………」
総介はそれを聞き、表情を一つも動かさない。
『……渡辺さんには、先に僕の方から連絡を入れた。後に君の元にも入ると思うが……』
「いや、今中野センセーがくれたおかげで、思ったよりも早く詳細を知れた。そこは助かった。礼を言わせてもらうわ」
『?……どういうことだ?』
「今、それ関連で海斗がうちに来てんだ。それで色々と合点がいったところだ」
『!……そうか……』
「安心しな。あんたの娘達には、指一本触れさせやしねえ。何があろうともだ。これからそれについて海斗と話をする。中野センセーは剛蔵さんにもう一度連絡を入れて、[『鬼童』と『神童』が動く]ことと、海斗の方に連絡を寄越して欲しいと伝えてくれ」
『………分かった
娘を、頼む』
「……ああ、任せてくれや」
その言葉の後に、マルオからの通話は途切れた。
しばらくスマホを見つめる総介。
「……どうやら俺には、未だ『死神の傷』が残ってるみてぇだ」
「……やはり、中野先生に脅しを入れたのは……」
「ああ。データをコピーしたのもそうだろうな……だが、『奴ら』が直接出てくるとは限らねぇ。ここで決戦とくりゃあ、分があるのは圧倒的に俺達『大門寺』だ。去年の抗争から、あちらさんも大分疲弊してる筈だしな」
「………だとすると、『彼ら』はやはり生きて……」
「連中が『何人』生きてんのかは知らねぇ。が、この回りくどいやり方には直接俺らを打倒しようって意思は見えてこねぇ……」
総介は考えを巡らせる。『奴ら』の大義は、『大門寺への復讐』だということは十中八九明らかだ。しかし、今回のマルオへの脅迫の目的が見えて来ない……そんなことをしても、戦力を無駄に捨てるだけだ……
一体何が狙いだ………
「………海斗」
「………何だい?」
「今から俺が立てた作戦を話す」
「……聞こうか」
海斗のその一言で、総介は自身の考えた作戦を話し出した。
………………………………
「………以上だ」
「………」
全てを話し終えた総介。その時の海斗の表情は、いつもの爽やかな雰囲気とは違い、眉を顰めた厳しものとなっていた。
「無茶だ…………あまりにも危険すぎる」
「危険すぎるのはむしろ『今』だろ?連中は資料に書いてない『五つ子がアパートに住んでいる』ってことも把握してやがった。つまり、遠くから監視の目があるってことだ。そんな状況で連中が猶予を破棄して1人でも掻っ攫われてみろ、それこそ詰みだ。そうなるよりも、こっちの方が何よりも安全だ。違うか?」
「………」
総介の言い分に、珍しく海斗も黙り込んでしまう。
「……お前やアイナは嫌がるだろうが、中野センセーをこれ以上心配させるわけにもいかねぇ。そして今、五人は連中の監視下にいる危険な状況だ。俺も今からそれを確認しに向かうが、手出しはしねぇ。そうすりゃ連中も警戒を強めて何しでかすか分からねぇし、尻尾も掴めなくなっちまう。その間もアイツらは危険なままだ。あくまでケリは明日の24時だ。そこで一網打尽にする。今打てる手はこれ以外ありえねぇよ」
「………わかった。君の作戦で事を進めよう」
海斗も、自分たちに一刻の猶予も許されないという事もあり、総介の作戦を承認することにした。
「ああ……俺もすぐにあいつらのアパートを見に行く。お前は剛蔵さんからの指示を後で伝えてくれ」
「わかった」
「……ああ、それと……
アイナに『その時』が来たとも言っといてくれ」
「………そうだね、彼女には辛いけど、僕らにも立場はある」
「ま、一発ビンタされるぐれぇ構やしねぇさ。それじゃ、鍵置いてくから、後は頼まぁ」
総介はそのまま、上着に黒パーカーを着て、『ベスパ』の鍵と『ある物』を引き出しから取り出して出て行こうとする。
「総介!」
そんな彼の背中に、海斗が声をかけて、総介は一瞬止まった。
「もう、失うなよ、相棒」
「………ああ、護るさ、今度こそ……必ずな……」
その言葉を最後に、総介は急いで部屋を出て行った。そして、一人部屋に残った海斗は、先程総介が手に取っていた写真を見つめる。
「………君は変わったと思ってたんたけどね
どうやら違ったみたいだ
『戻った』というべきかな
あの頃のように
大切な人を護りたいと、
僕達と腕を磨いていた
あの頃の君に………」
………………………………
総介は『ベスパ』を走らせて、五つ子が現在住んでるアパートへと向かっていた。
やがて、その近くまで到着して、ゆっくりとバイクを走らせて、周りを警戒する。すると……
(………いるな、一人……二人……)
川沿いを走っていると、川の向こうからアパートの様子をチラチラと伺う男が一人、そしてアパート側にも、近くの物陰に隠れているのが一人。
それ以外の気配は、言葉では感じ取れない。
(遠くから様子を見てる可能性もあるが……標的は小娘5人だ。そう警戒はしてないだろう……問題は……)
問題は、今監視している者達が、どこまでの情報を握っているか、だ。
大門寺、そしてその防衛部隊である『刀』は、裏世界では一流のサッカー選手や、ハリウッドスター並に有名だ。
彼らに敵対したら最後、首だけで実家に帰宅することになるとも言われている。そんな化物揃いの連中を敵に回していることを、今の監視員、そしてそれらの組織はは知っているのか………
総介は、それを『否』と見ていた。
(奴らはおそらく『捨て駒』だ。恐らく大門寺のことも知らされてない連中を操って、何かを探ろうとしている……その何かが分からねぇ……)
答え一歩手前まで辿り着いてはいるが、最後のピースが見つからない。本来なら、得体の知れないものに深入りはしないものなのだが、今回に限っては違う。
今、狙われているのは他でも無い、自身の最愛の人でもある人物なのだ。躊躇などしている暇もない。
失えば、もう二度と戻って来ないのは、よく知っている………
だからこそ、今の総介は行動を起こすのだ。
失わないために………
護るために…………
(……とにかく今は)
総介はベスパでそのままアパートを通り過ぎようとしたその時だった。
「………浅倉君!」
アパートのすぐ側に、見慣れた姿が見えた。その人物は、『ベスパ』を走らせる総介を見つけると、彼に手を振って声を掛けた。
総介はそれを見て、その人物のそばに『ベスパ』をゆっくりと停車させた。
「………よう、肉まん娘」
「どうされたのですか?またバイクでやって来て」
総介を見つけたのは、五つ子の末っ子である『中野五月』。赤いロングヘアにアホ毛、星の髪飾りが特徴的な女子である。彼女の食材の入ったビニール袋と、夕方の時間帯から鑑みるにどうやら買い物帰りの様子だ。
「なに、近くに寄ったもんでな。三玖元気かなって思って来たみたまでよ」
「三玖なら、数日前にそちらに泊まったばかりじゃないですか」
「少しでも会わないと寂しいもんなの。三玖成分が俺の中で不足しちゃってるの」
「………」
総介の言葉に、五月が彼を『かわいそうな人を見る目』をする。
「おいなんだその目は?」
「浅倉君………束縛激しそうですね」
「んなことねーよ。仮に三玖が浮気しようが、そりゃ俺に気が無くなったってことだからな。そん時は俺自身の魅力を磨いて、修行して、浮気相手を暗殺して、こっちにもう一度振り向いてくれるように頑張るさ。安心してくれ」
「これっぽっちも安心出来ませんよ!!何ですか暗殺って!?」
と、いつものバカバカしいやり取りをする中でも、総介は監視をする者へさりげなく目を移す。そちらに気づかれない、振り向きざまや話の中でのリアクションで、自然に………
と、そんな中で。
「せっかくですから、上がって行きませんか?夕飯ももうすぐですので」
「ああ、そうさせてもらうかな。あ、飯はいらねぇよ。お前らの決めたことに乗った手前、家計を圧迫するわけにはいかねぇからな」
「そ、そうですか。ありがとうございます!」
「そのかわり、ここ数日間の三玖成分を補給して帰る」
「…………」
またまた五月に『かわいそうな人を見る目』をされたものの、時間が無いので、そのままベスパを小さな駐車場に停めて、部屋に上がることにした。
これは、総介にとっては嬉しい誤算だった。
………………………………
「うぃーす」
「あ、浅倉さん!いらっしゃい!」
「何で来てんのよ……」
「やっほー浅倉君」
「ソースケ!」
部屋に上がると、それぞれが総介に対していつものリアクションをとり、三玖が駆け寄って総介に抱きつく。
「三玖」
総介もそれを受け止め、いつものように三玖の頭に手を置いて撫でる。
「どうしたの?」
「いや何、三玖に会いたかったのが90パーと、ちょっとしたお知らせが10パーあってね」
「お知らせ?」
「どんな比率なのよ……」
総介はそう言い終えると、ポケットから『例の物』を取り出した。
「!そ、それ!」
「ああ、見覚えありまくりだろ?」
「マンションのカードキー!」
そう、彼が取り出したものは、五つ子が以前まで住んでいたマンション『PENTAGON』のオートロックを開けるカードキーだった。総介はそれを、クリスマスの日に五つ子から預かっていた。
「でも、何でそれを?」
と、一花が彼に質問をする。
「まあ何、簡単なことだ。
今日、お前たちにこれを渡しておく。
それから、明日の夕方に、マンションに集まって来て欲しい」
「マンションに?」
「どうしてまたそのようなことを?」
五月がなぜ?と総介に質問をする。それに総介も、すぐに答えた。
「まぁ何、ちょっとしたゲームを思いついてな。それにお前ら全員で参加してもらうってことだ。あ、ちゃんと中野センセーに許可取ってあっから、安心しろ」
「ゲーム、ですか……」
「おもしろそう!やってみたいです!」
「へぇ〜。何だろ?」
「………胡散臭いわね」
そんな中で、二乃は総介を怪しむが……
「あ、ちなみに海斗も来るぞ?」
「………マジ?」
海斗の名前を聞いた途端、二乃の体がピクっと反応した。
「ああ。こればっかりは不本意だがな」
「……なら、私も参加するわ。嘘ついたらタダじゃおかないわよ」
と、見事な手のひら返し。もはや清々しいまである。
「ゲームの内容は?」
と、三玖が聞いてくる。
「残念だけど、これは当日まで秘密。三玖だけに先に教えようかな〜って思ったけど、ここは公平性を持たせるため、内容は明日教えるよ」
「……わかった」
「何ナチュラルに贔屓しようとしてんのよ……」
二乃のツッコミもそこそこに、次は一花が手をあげて聞いてくる。
「ゲームってことは、勝ち負けがあるんだよね?景品はあるの?」
「ああ、もちろんあるぞ。と言っても、めちゃくちゃ豪華なもんは期待しないでくれ。あくまで高校生の範囲で用意したからな」
「ふ〜ん、中々手が込んだそうだね」
「じゃあ、一旦全員にこれを返すから、受け取っていってくれ」
「はーい!」
と、四葉の明るい返事を皮切りに、五つ子はそれぞれカードキーを受け取る。
「久しぶりですね、あそこに戻るのは」
「うん……」
「まぁ、不本意だけど、海斗君がいるなら、それでいいわ」
「ししし、何があるのか楽しみだね!」
「ふふ〜ん、お姉さん負けないぞ♪」
と、5人とも全く違う反応を示す?性格面では完全に五つ子では無い姉妹である。
「んじゃ、俺はこれで、明日の準備があるから帰るわ」
「えっ!?」
総介が説明を終えて、帰ると言った途端に、三玖がビクッと反応する。
「……行っちゃうの?」
目をうるうるとさせながら、上目遣いで総介を見上げる三玖。かわいい。
「(かわいい)……ごめんね、三玖。でも、明日も会えるから。そこで、ね?」
「………うん」
総介がそれを頭を撫でながら優しく宥めて、彼はそのままドアのところへと向かった。
「んじゃ、見送りは無しでいいからさ。また明日、絶対来いよ」
「わかりました!浅倉さん、待っててください!」
「よ〜し、久しぶりに楽しみが出来たから、頑張ろっと♪」
「浅倉君、帰りに気をつけてくださいね」
「海斗君、絶対連れてきなさいよね」
何やかんやで、皆が玄関前まで見送ってきた。そんな中で、三玖は総介にいつものように
「またね、ソースケ」
と言う。総介もそれに……
「……またね、三玖」
と、静かに微笑みながら返した。
これが、普通の恋人同士としての、総介と三玖の最後の別れの挨拶となった。
………………………………
玄関を出た総介は、そのまま階段を降りて、『ベスパ』の鍵を入れてエンジンをかけ、そのままアパートから離れていった。
『男が一人出ていったぞ?あれは何だ?まさか用心棒か?』
『いや、外見や入る前や出た後の娘たちの反応から、誰かの友人か彼氏だろう。あまり気にしなくていい。我々は娘の監視を継続するまでだ』
『……了解、監視を継続する』
『あと1時間で定時報告だ。怠るなよ』
『分かってる』
通信で連絡を取り合う2人の監視員。この時に総介を見逃したことが、全ての決め手となった。
もしこの時、総介を怪しんで動いていれば、総介を始末しようが、自分達が口を封じられようが、この時点で彼に手を出さなかった事が、後に大きな意味を持つこととなることを、2人は知らない………
………………………………
『ベスパ』を走らせて、自宅マンションへと戻ってきた総介。家に着くなり、彼は既に帰宅した海斗へと電話をした。
「海斗、俺だ………ああ、種は蒔いてきた。あとは連中が餌に食いつくかだが……その下っぱは何も気づいちゃいねぇみたいだ。あまり期待は出来ねぇな……ああ、捨て駒だろう。見張ってたのは2人。そいつらはは本当にただの監視役のようだ。位置や装備からして、期限までに手を出すことは無いな。だがそれもそれで根絶やしにするさ…………ああとなりゃ、明日の件はイレギュラーが起きない限り俺達でいいだろうな……そうだ、剛蔵さんにはそう言っといてくれ……ああ……それで、アイナは………そうか、そうしたけりゃお前の好きにしろって言っといてくれ………分かってる………中野センセーにもあいつらにも被害は塵一つ与えるつもりはねぇ。
ここから先は
俺達『外道』の出番だ
連中どもに思い知らせてやろうぜ
俺達『大門寺』の恐ろしさを
『
そして迎えた、運命の翌日
鬼の子と神の子の戻りし舞台の幕が、切って落とされた
次回、第67話
バクチ・ダンサー
もう止まるつもりはありません。突っ走ります!そして、必ず完結まで持っていきます!それまで応援をしてくれる方も、そうでない方も、よろしくお願いします!
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
さぁ、いよいよお披露目です!