映画『銀魂 THE FINAL』公開まで1ヶ月を切りました!
最初の特典として、空知英秋先生描き下ろし『鬼滅の刃』イラストカードがもらえるそうですが………
盛大に乗っかりやがったなゴリラ原作者(大笑い)!!!
これで大ヒットしようものなら先生は『ここまで大ヒットしたのも、鬼滅の刃と坂本真綾のおかげです!』とか言いそう。
イギリス、ロンドン、朝
「………ふ〜ん、そうだったんだ〜。それで二乃ちゃんは、海斗といることを選んだワケ、ってことなのね〜……」
とあるカフェのテラス席で、分厚いロングコートを着て、ノートパソコンを眺めながらコーヒーを飲む女性、『九条柚子』。
彼女は数日前に、総介と五つ子達の周りで起こった出来事が簡潔にまとめられたメールを、海斗から受け取っていた。その内容を見て、柚子は無表情のまま考え込む。
「『霞斑』がまだいたのには驚いたけど……まぁ、大門寺に『懐刀』がいる以上、無駄な足掻きよね。万が一攻略出来たとしても、地球で最強のおじ様を相手にしなきゃいけないんだもの。どう考えたって自殺行為………
……でもなさそうね」
欲望の塊とも言える『霞斑』とて、かつては栄華を極めた名家の一つだ。そこらへんの連中と同じ様な馬鹿ではない。何かしら勝算があっての行動だろう。ともすれば………
「………総くん、大丈夫かしら………」
人の流れる道路に目を移した柚子。一年前まで、とある男への復讐しか考えてこなかった総介を心配しながら、彼女はそっとパソコンを閉じ、やがてロンドンの街を歩く人混みへと入り混じっていった。
………………………………
日本、夜
「……そうですか、『霞斑』が……」
ここは、総介、海斗、アイナ、明人、綾女がかつて通っていた『柳流剣術武術道場』。その一室で、障子を開いて月明かりに照らされる石庭を眺めながら答える人物は、総介達の師であり、かつての『刀』の副長『柳宗尊』。
「ご報告をくれてありがとう
剣一」
彼が背を向けて礼を言う相手は、執事服に眼鏡をかけた大門寺家総帥『大左衛門』の側近である『片桐剣一』だった。
「いえ。局長のご指示もございますが、私も、柳先生にはお伝えせねばと……」
「まったく、相も変わらず剛蔵は、色々と気の利くやつですね………」
大左衛門と剛蔵、そして宗尊は、40年以上の付き合いのある幼なじみ。彼らはそれぞれの気質を熟知しているため、自ずととる行動も読み取れる。
「………では、私はこれにて」
「はい、お気をつけて」
あまり多くの言葉を残さず、剣一は瞬身でその場から姿を消した。
「…………」
その場に一人となった宗尊も、柚子と同じく一人の弟子のことが頭に浮かぶ。
「………総介
これから、辛いこともあるでしょう
しかし君は『侍』として、大切な人のため、その道を選んだ
いずれ君は『あの男』を真の意味で乗り越えねばならない時がやってくる
その時こそ……
君が、私や剛蔵、そして大左衛門の領域へと足を踏み入れる
それは、天の示した
それとも、君の『侍』としての意志か
見守らせてもらいますよ
君がこれから、どのような道を見つけ、切り拓き……
『君達2人』で、その道をどう共に歩んでゆくかを」
………………………………
春休みも終わり、この日は新学期の初日。
この日も、いつもの変わらぬ日ように総介は、黒いパーカーを上に着て、学生カバンを左肩にかけながら歩いていた。
しかし、違うところが一つ。2年時はいつもかけていた黒縁眼鏡を、今日はかけていない。
元々、視力は高い方であり、眼鏡も伊達眼鏡だったので、必ずしも総介はかける必要はない。では何故か……
まぁ後で。
そんなことはさておき、本日より彼は、高校3年生。つまり、高校生活最後の年となる………はず。
……まぁ、彼のことだから、留年は無いだろう。
そんな日でさえ、彼はいつものように死んだ魚の目をして、あくびをしながらイヤホンを耳にかけてお気に入りの音楽を聴いて登校していた。
と、ここで、新学年になるにあたり、最初にあるイベントといえば………
そう!クラス替えである!!
学生達にとっては、気になるあの子とか、よくいる悪友とかと一緒になれるだろうか?という、自分の青春の1年間がこれで決まると言っても過言では無い大イベント!
特別な学科等は3年間一緒のクラスということも多いが、基本的に普通の学科の生徒は、このクラスシャッフルに巻き込まれ、新たなクラスへと配属されるのが決まり。
総介が学校へと到着すると、既に多くの生徒がクラス表の貼ってある掲示板へと集っていた。
「お前、何組だった?」
「いやー、彼と違うクラスになっちゃった」
ガヤガヤと自分の名前を見つけ、親しい人と同じクラスになれたかを確認し、一喜一憂する生徒達。
そんな中にあっても、総介のいつもの死んだ魚のような目は一切生気を宿すことなく、ボーっと前を見つめていた。
本来ならば、恋人である三玖と同じクラスになっているかどうかソワソワしているところだが………
「………アイツのことだ。さすがにそれはねぇわな……」
と、意味深に呟いた。彼は既に、何かしらのことを察していた。
やがて、彼はクラス表が貼ってある場所の前へと到着して、自分がどのクラスかを確認する。
彼は五十音順では『あ』から始まるので、大体クラス表の上の方を見ていればすぐに見つかるので、総介は毎年のように、1組から上の方を見て確認していった。
すると早速、1組の名簿欄の1番上に、自身の名前を見つけた。
【1番 浅倉総介】
それを確認してから、彼はすぐ下の名前を見る。
【2番 上杉風太郎】
さらに彼は、目線を下げていく。
【大門寺海斗】
【中野一花】
【中野五月】
【中野二乃】
【中野三玖】
【中野四葉】
【渡辺アイナ】
クラス表の一番下、アイナの名前を確認し、彼はすぐにトイレへと向かい、個室のドアを開けて中に入り、鍵を閉めた。
そして………
「っっっしゃぁぁぁああ!!!!!三玖とクラス一緒じゃあああああコラァァアアアアアアアアア!!!!!!」
トイレの個室で、なんとなく察してはいたものの、嬉しくないはずはなく、彼は意味もなくシャドーボクシングをしながらめっちゃくちゃ喜んでいた。
「ウィィィィィィィィィイイイイ!!!!」
え?他のやつのこと?
どうでもいいってよ。
その後の2人の会話で……
「なんとまぁよくも五つ子全員が偶然同じクラスになったもんだな。え?」
「さぁ、なんの事かな?僕にはさっぱりだよ」
「そのワザとらしい顔やめろ腹立つ」
「でも折角の高校最後の1年なんだから、この方が僕も面白いし、君も三玖ちゃんと同じクラスになった方がいいだろう?」
「………それについては………まぁ、礼くらい言ってやらぁ」
「フフっ………これから1年間楽しくなりそうだね」
「逆にこれをどうつまんなくすんのか、聞いてみたいね俺ァ」
………………………………
一方こちらは、五つ子の義父であるマルオの病院。彼は車を降りる際に、江端からの報告を聞く。
「旦那様、無事お嬢様方が同じクラスに配属されたとのことです」
「………彼らは?」
「渡辺様のご指示の通りでございます」
「………そうか」
「それと、彼も同じクラスです」
「………ご苦労」
最後の一言を江端から聞き、マルオはそう答えてから歩き出した。
今回の彼の役割は、剛蔵から届いたとある要望に応え、実行すること。そしてもう一つは………
『彼』へ最後の試練を与えること。
………………………………
ワイワイガヤガヤ。
ざわ……ざわ……
ざわ……
なんでカイジやねん!?って思ったそこのお前!………正解です。
んなことより!新しいクラスでは、早速注目になっている存在がいた。
その『5人』は、クラスの端で、何人かの生徒に囲まれている。
「わぁ〜……」
「中野さんが五つ子ってのは知ってたけど」
「実際揃ってる所を見ると凄ぇな」
「やっぱりそっくりなんだねー」
普段こそ5人で暮らしているので、一緒にいる時間の方が多いものの、学校では5人でいる機会がほとんどなかった五つ子姉妹。それが集結しているとのことで、珍しいモノ見たさに、多くの生徒が彼女たち見に来ていた。
そして反対側では………
「だ、大門寺さん!これ、昨日作ったクッキーです!よかったらどうぞ!」
「ありがとう。美味しく食べさせてもらうよ」
「やったー!海斗様と同じクラスになれた!これは運命よ!神様に感謝しなくっちゃ!!」
「そんな、大袈裟だよ。僕も所詮はただの一端の男子生徒に過ぎないよ」
「あ、あの!この教科書の裏にサインもらっていいですか!?」
「ああ、いいよ」
「今度演劇部の発表会があるんです!来てくださいますか!?」
「もちろん。是非行かせてもらうよ」
「大門寺君!」
「大門寺様〜♡」
「海斗っち!」
「大門寺氏!」
「大門寺殿!」
「大門寺の旦那!」
「ミスター大門寺!」
と、どっかのハリウッドスターばりに女子の殆どに囲まれる海斗。彼は一人一人の話に耳を傾け、きちんと返事を返していき、全員を虜にしていく。
イケメン爆発しろ!
ちなみに、五つ子の方に行ってる女子は、2年、1年時に海斗と同じクラスになった者たちである。
「苗字だとわかりづらいから、名前で呼んでいい?」
「うん、その方が私たちもありがたいかもー」
「あれやってよ、同じカード当たるやつ」
「ごめんねー、テレパシーとか無いから」
「三玖ちゃんも似てるんでしょ?もっと顔みせてよ」
「………」
と、五つ子の方にも海斗の方にいた女子が徐々にやってくる。
(…………なんだこれ?)
その様子に、風太郎は呆然としていた。
片や、五つ子とかいう希少種を目当てで集まる何人かの生徒達。片や校内屈指のイケメンの海斗に集まる20人近くの生徒達(全員女子)
教室に入ってものの数分で、このクラスの生徒は一部を除いて、どちらかに集まっていた。
そんなカオスな教室を見て……
「………トイレ行こ」
と、両極化した教室の真ん中を通って、風太郎は誰にも見られることなく教室を後にした。
「ねぇ中野さん、あれやったことあるでしょ?『幽体離脱〜』ってやつ」
「シンクロしたりとか」
「どこに住んでるの?」
一方で、まだ五つ子に話しかける人が幾人かいた。中にはあからさまにナンパみたいなことをする男子もいる。
それに二乃の堪忍袋の緒がそろそろ切れかける。
「………いい加減に」
「まぁまぁ……」
と、一花が宥めようとすると、一つの声が響き渡った。
「みんなやめよう、ね?」
「?」
一花と二乃、そして生徒達がそちらの方を向くと、1人の男子生徒がいた。
「そんなに一気に捲し立てたら、中野さんたちも困っちゃうよ」
「武田君!」
そう呼ばれた武田という男子は、明るい茶髪で、キッチリとシャツ、ネクタイ、ベストを着た細身イケメンだった。彼の顔の周りは、どういう原理かキラキラとしている。
「ね?」
と爽やかっぽい笑顔で何故か意味もなくウインクをする。何コイツ?
「あ、ありがと……」
とりあえず、事態を鎮静化してくれたことに礼をいう二乃。それに続いて、姉妹の周りにいた生徒も反省する。
「確かに、武田の言う通りだな」
「はしゃぎ過ぎちゃった……ごめんね」
「だけど気持ちもわかるよ。五つ子だなんてみんな君たちのことがもっと知りたいんだよ………ね?」
と、また意味もなくウインクする武田。だから何なのコイツ?
「………何コイツ?」ボソッ
「……どーもー」
と、小声で作者と同じことを言う二乃。と、その時、
「席につけー。オリエンテーション始めるぞー」
「あ、先生だ」
眼鏡をかけた若めの男性教師が教室に入ってきた。
「じゃあ、また休み時間に」
と、武田は五つ子にそう言って自分の席へと戻っていった。
「武田さん!なんて親切な人なんでしょう!」
「そう?胡散臭いわ」
「コラコラ」
四葉が武田の行動に感心する中、二乃は疑惑の目を向けており、一花がそれを注意する。
と、ここで四葉があることに気づいた。
「?あれ?そういえば……浅倉さんは?」
そう言って、四葉はキョロキョロと周りを見渡して、ようやく総介の姿が目に入った。
が、その時の総介は………
「ぐが〜〜。スピ〜〜っ」
「ね、寝てるーーー!!?」
あんな喧騒の中、総介は『我、何事ニモ関セズ』と言わんばかりに、椅子にダランともたれかかり、天井を向いた顔に『週刊少年ジャンプ』の見開きを被せて、熟睡していた。
………………………………
とまぁ、四葉が急いでジャンプを取り上げて総介を叩き起こすも、今度は机に伏せて寝てしまった彼をどうすることも出来ず、そのままオリエンテーションが始まる。
「今日からお前たちは三年生だ。最高学年になった自覚を持ち、後輩たちに示しのつくような学校生活を送るように心がけ………」
先生が座っている生徒達を見ながら喋っていると、何故か立ち上がっている上に手を挙げている頭に緑色のリボンをした女子生徒が目に入る。
「……それから……」
話を続けようとするも、そのリボンの女子は真顔で先生をジーっと見つめて手を挙げたまま微動だにしない。
「……なんだ?」
仕方なく、その生徒に聞いてみることにした。すると………
「このクラスの学級長に立候補します!」
「……ええー……まだ誰も聞いてないけど……」
いきなりの四葉の立候補宣言に戸惑う先生。そりゃあそうじゃ。
「そこをなんとかやらせてください!」
「反対もしてないけど……」
先生と話が噛み合わない四葉。三年生になってもコイツのオツムはアホの子のままなようだ。
「まぁ、他にやりたいやつがいないなら……」
ということで、他に立候補する人が誰もいなかったので、四葉がそのまま学級長に就任することになった。
「皆さん、困ったらなんでも言ってくださいね!」
教壇に移動した四葉に、パチパチと拍手を送る生徒達。
「じゃあついでに男子の方も決めとくか……」
出鼻を挫かれたが、改めて仕切り直す先生。
「立候補するやつはいるかー?」
「いますかー?」
「推薦でもいいぞ」
「いいぞっ!」
(もー四葉ったら……恥ずかしい……)
先生の言葉のあとに続く四葉。その様子に、一花は顔を赤くしながら手で仰ぐ。
と、ここでとある男子生徒達の小声の会話が……
「お前やれよ」
「いや、男子の学級長なんて決まってんだろ」
「?」
「大門寺しかいねーよ」
「でも、大門寺は家の都合でそういうのはやらないって1年の時に……」
「マジで……じゃあ……武田になるな」
「全く、やれやれ……」
相も変わらず爽やかな笑顔でキラキラとしている武田。マジで何なのコイツ?
と、ここで……
「先生、私学級長にピッタリな人を知っています!」
と、四葉が唐突にそんなことをいった。そして、彼女が呼んだ名は……
「上杉風太郎さんです!」
「…………
………はぁっ!?」
席につくなり、勉強をしていた風太郎だったが、いきなり名前を呼ばれたことで、驚きながら立ち上がる。
「えっ、上杉君で大丈夫?」
「武田君を差し置いてなんて」
「一体何者なんだ……?」
「ちょっと!このクラスの長は海斗様よ!……いや、ご本人はやらないって仰ってたのよね……なら、このクラスの王子様は海斗様よ!」
「おい、長の話どこ行った?」
と、一部を除いて風太郎に疑問を持つ生徒達。
「四葉……なんてことを……」
と、悪目立ちしてしまったことにボソッと呟くが……
「よし、次の係も決めるか」
先生はそのまま風太郎を学級長ということにして、次へと進む。
「先生!俺はやるとは言ってません!」
と、風太郎は抗議するも、先生が次々に進めるのを止められず、結局男子の学級長は風太郎ということで決定してしまったのだった………
………………………………
「ふ〜ん、災難だったな」
「他人事みたいに言いやがって……くそっ、四葉の野郎、余計なことを……」
その後、オリエンテーションが終わり、目が覚めた総介は、風太郎と連れションでトイレに行きながら事情を説明してもらっていた。左に総介、右に風太郎とそれぞれの便器で用を出していると、風太郎は何故か『右』から視線を感じる………
「…………」
すると、すぐ右横に、キラキラとしているイケメンの顔があった。
「……なんだよ?」
「上杉君、君は随分彼女たちに信頼されているみたいだ……
ね?」
と、武田は三度意味のあるかどうか分からんウインクを風太郎にする。何度も言うけど、コイツ何なの?
「だからなんだ?学級長だなんて勉強の足枷でしかねぇ」
「ふふふ」
何やら不敵に笑う武田。
「昔から変わらないね、君も。流石は僕のライバルだ」
と、そう言い捨てて、武田はトイレを出て行った。
「……全く……」
何なんだと言おうとすると……
「うお、ちょいとぶるったわ。上杉、とっとと戻るぞ」
と、総介も用を足し終えて洗面台で手を洗おうとするが、風太郎は彼に尋ねてみる。
「……なぁ浅倉」
「あ?」
「あいつ、誰なんだ?」
「は?あいつ?」
「だから、俺の横でトイレしてたやつだよ」
そう聞いてみると………
「………は?お前の横、誰かいたっけ?」
「…………」
武田の名前を覚えていない風太郎も風太郎だが、総介に至っては彼の存在すら認知していなかった。
風太郎は少し唖然とするが、よくよく考えたら、総介はこういう人間だったということを思い出した。
元々、三玖以外の姉妹に何ら興味も示さなかった総介。それが自分を含めた海斗やアイナ等の身内以外の他人となってくると、こうも無頓着になってくるとは……単に普段はこうしてボーッとしているのか、それとも無駄な人間関係は築かない主義なのだろうか?
そんなことを風太郎は考えていると、総介は先に手を洗い、乾かしてからトイレを後にする。すると……
「ソースケ!」
「うおっ……三玖」
総介が外に出ると、三玖が抱きついてきた。ちゃんと手を洗い、拭いて乾かした後なので、総介はそのまま三玖の頭を撫でる。
「ソースケと、同じクラスになれた」
「そうだね。すごく嬉しいよ」
「私も、嬉しい……」
頬を赤くして、喜色満面な表情で総介の胸に顔を擦り付ける三玖。
と、その後ろから風太郎が出てくる。
「……あ、フータロー」
風太郎に気づいた三玖が、彼を呼び止める。
「なんだ、三玖?」
「ちょっといい?聞きたいことがある」
どうやら、三玖の目的は風太郎だったようだ。彼女は名残惜しくも総介から身体を離して、手で器のようなものを作る。
「ここに、魔法のランプがあります」
「……無いが?」
「あります」
「三玖があるって言ってんだ。あるに決まってんだろうが」
「ちょっとお前黙っててくんないかな」
突拍子もないことを言う三玖。
「……心理テストか?」
「五つ願いを叶えてくれるとしたら、フータローはどうする?」
「突然なんだよ。やっぱ心理テストだろ」
「………」
「俺の願いは①三玖と一緒にいる②三玖とイチャイチャする③三玖とry」
「ソースケ、黙ってて」
「………(´・ω・`)」
あくまで風太郎の願いを知りたいため、今は総介のことは聞いていない三玖。しかし、総介の願いもこの後に叶えてあげようと心の中で思う、恋人の鑑のような彼女だった。
総介爆発しろ!
「……そんなの、金持ちになる以外を答えるやついないんじゃないか?」
「お金……」
めっちゃ現実的な願いの一つ目だが、金持ちは万人の願いでもある。
「それでいいか?」
「あと四つ」
「普通三つだろ……」
「ナメック星のポルンガより多いな……」
「なんでもいい、魔法が使えるんだよ」
「う〜ん……」
悩みに悩み、考えに考えて、風太郎はなんとか答えを絞り出す。
「体力が上がったらと考えたことはあるが……
おかげで疲れは溜まる一方だから、疲労回復もありだな
最近、寝つきも悪いし……
ついでに運気も上げてもらうか」
「お前50代間近の中年かよ………」
「………わかった」
風太郎の出した答えに呆れる総介だが、三玖は何故かそれで納得したようだ。
「何がわかったんだ?心理テストか?」
「………」
「え?なんで答えてくれないの?」
風太郎の質問に、三玖が沈黙したままでいると……
「あー!見つけた!こんな所にいたんだ」
廊下の向こうから、2人の女子生徒がやってきた。
「『四葉ちゃん』、先生が呼んでたよ」
「!」
「む……」
どうやら、三玖を四葉と誤認しているようだ。
「ほらほら」
「あ、あの……」
「こっちだよ」
ふたりが三玖を連れていこうとすると……
「タンマタンマ、その子は四葉じゃねぇ」
「え?」
総介が2人を止める。
「この子は三玖だ。四葉の『姉妹』の方の子だ」
「そ、ソースケ……」
「えっ?」
「そうなの!?」
そう聞く女子に、三玖は無言のままコクコクと首を縦に振る。かわいい。
「ごめんねー、まだ覚えきれなくて」
「問題ない、慣れてる」
と、三玖は間違われるのはいつものことなので気にしてはいないが…
「ねぇ、三玖ちゃん、今その人のこと名前で呼んでたよね?」
「!」
「もしかして……2人って」
「付き合ってたりするの〜?」
「………」
興味深げに聞いてくる女子に、三玖は顔を徐々に赤くしていく。すると……
「きゃっ」
三玖は左肩をガシッと掴まれて、右にグッと引き寄せられる。するとそこには……
「俺の女を、あんまりいじめねぇでほしいね」
「そ、ソースケ!?」
自身の腕に引き寄せて言う総介がいた。三玖は彼の身体に密着しながら、更に耳まで赤くなる。それを見た女子生徒たちも、
「「キャー!」」
と、頬に手を当てながらぴょんぴょん跳ねる。年頃の女子は、何故こうも他人の色恋沙汰が好きなのだろうか………
「いつから付き合ってるのー!?」
「キ、キスはもうしたの?」
「も、もしかして、それ以上も……」
「あ、あうう……」
と、案の定質問攻めに合うが、プライベートど真ん中の質問もあったため、狼狽える三玖の代わりに総介が「全部ご想像にお任せする」と返しておいた。
すると……
「あ、今度こそ四葉ちゃんだ」
キャッキャ言ってた女子の1人が、四葉を見つけたようだが……
「おーい、先生が……」
「ニアピンで外してくる!」
やはり、声をかけたのは四葉ではなく、それは五月だった。
「も〜、みんな同じ顔でわかんないよ〜」
「…………」
姉妹の区別がつかない様を見て、風太郎はイライラを募らせていき……
「いいか!?面倒なら身につけてるアイテムだけ覚えろ!このセンスのないヘアピン、俺はそうしてる!」
「いきなり失礼な話ですね……」
出会い頭につけてるヘアピンを貶すとか、失礼極まり無いし、センスの話で風太郎にだけは言われたくない。
「四葉はあの悪目立ちリボンだ。それだけ覚えておけば間違いない!」
「悪目立ちは言い得て妙過ぎて反論できねぇな」
「四葉……」
本人のいないところでボロクソに言われる四葉。哀れなり……
こうして、五つ子姉妹の見分け方をレクチャーする風太郎。
(って俺もあまり偉そうなことは言えないんだが……)
未だに見分けられない時もあるが、それはあえて言わないことにする。
すると………
「上杉君凄いね!」
「ありがと!」
と、女子2人は姉妹の見分け方を教えてくれた風太郎に感心、感謝する。
「意外でびっくりしちゃった!ちゃんと中野さんたちのこと見てたんだ!」
「いや……」
「さすがは学級長だね!」
「そうじゃなくて……」
普段褒められ慣れていない風太郎。頬を少々赤くして照れながらそっぽを向く。すると……
「五人のこともっと教えて!」
「は?」
「ほら、付いてきて。向こうにもう一人いたんだ」
女子2人は、本物の四葉を探すために、風太郎をその場から連れて行った。
「おーい、四葉ちゃん」
「いやあれ二乃!」
「行っちゃった………」
「行っちゃいましたね……」
「コーラ飲みたい………」
その場に残された三玖、五月、総介の3人。総介に関しては既に別のことを考え始めていたのだった。
………………………………
「ってことがあってよ」
「なんとまぁ上杉君も……忙しくなりそうだね」
「それは、学級長の仕事の範疇を超えているのでは……」
「旦那達のクラス楽しそうっスね〜」
場所は変わって、三玖とその場で別れた総介は、屋上にて海斗、アイナ、そして明人と話していた。
明人はブレザーの下に、アメリカの某スーパーヒーローのロゴが入った青いTシャツを着ており、時折噛んでいるチューインガムをプクーっと膨らませている。
「それで、三玖ちゃんは上杉君にどうしてそんなことを聞いたんだい?」
と、海斗が総介から聞いた三玖の魔法のランプの話をする。
「ああそれなんだがな、どうも上杉の誕生日が近ぇから、悟られないように聞いたんだとよ」
「へぇ〜、そういうことだったんだ」
「んで三玖がいざ聞いてみたら……
・金持ち
・体力向上
・寝つきをよくする
・疲労回復
・運気アップ
だってよ」
「なんですかィそれ?完全に中年オヤジの悩みじゃないですかィ」
「だろ?それをマジトーンで言うのが上杉ってやつなんだよ」
「普段どのような生活をされているのですか……」
「ハハっ、面白いね、上杉君って」
「ってか明人。お前転校初日だったんだろ?どうだったよ?」
「特に何もないですよ。強いて言うなら、俺の周りに雌どもがいっぱい群がってきたくらいですかね〜?」
「………」
しばらく学校での話をする4人。世界最強の特殊部隊『刀』。その中でもこの4人は、化物クラスの戦闘力を持つ特別な称号『懐刀』を持つ者たちとはいえ、彼らも16.17の高校生。
こうして学校で話をしていると、自然と年相応の反応となる。話題も、それまでも殺伐としたものではなく、学校生活でのアレコレと、ちゃんと学生らしい話題に、しばらく4人は花を咲かせた。
と、『学生』としての彼らはここまで。
「ところで、明人。周りの様子はどうだった?」
海斗がある質問をした。
『周りの様子』………それは、明人が転校してきた際の周りの生徒の反応ではなく………
「朝とさっき、何人かこっちを見てるのがいましたね。ですが、俺がそっちに目を向けたら、全員一斉に撤退していきやした」
「………やっぱな。ったく、こちとら素人じゃねぇんだからよ、気配ダダ漏れだっつ〜の」
「こちらの方でも、既に場所は特定しています。……如何なさいますか、若様?」
「………」
アイナの言葉に、海斗は顎に手を添えてしばし考える。そして……
「………様子を見よう。『向こう』も、僕たち4人を確認したようだ。それで退いてくれるならそれで良し。もし、それを知って尚、向こうが続行、さらには強行するのであれば……」
「皆殺しでいいっスね?」
「………はぁ、やむを得ないね」
ため息をつきながら、海斗は明人に言うが……
「明人、皆殺しはやめろ。1人残しとけ。吐かせる」
「ええ〜」
まるで『お菓子はひとつまで』と言われた子供のように拗ねる明人だが、アイナがそれを諌める。
「駄々をこねないでください。『霞斑』の情報は、少しでも得たいのですから」
「………そうだね。何人かで見張ってる以上、指示を出している指揮官がいるはずだ。それだけは生かして捕らえよう」
「………へ〜い」
海斗直々の指示である以上、明人も納得するしかなかった。
「総介、アイナも同じだ。向こうから何もしてこない以上、一人で勝手な真似はしないように」
「承知しました、若様」
「へ〜へ〜……でもよぉ、もし連中が姉妹に近づこうって動きを見せんなら、その限りじゃねぇんだろ、海斗?」
「………その時は、君の判断に任せるよ」
「あいよ」
こうして、朝から学校を囲むようにして姉妹、または総介達を見張っていた者たちへの対応を共有し合った4人。
しかし翌日、4人が学校の周りの気配を探ると、見張りの気配は一切感じ取れなかった。目を向けても、その場所に人影は無く、日中その場所を見ても、最後までいないままだった。
それ以降、学校の周りにいた見張りの連中は一切姿を現さなくなった。
『懐刀』が4人も姉妹の周りを固めているという事実に恐れをなし、諦めて撤退したのか……
それとも…………
………………………………
翌日の教室………
「上杉学級長、三玖ちゃんに話があるんだけど!」
「学級長、一花ちゃんにこれ渡しといて」
「四葉ちゃんに伝えたいことが」
「二乃ちゃんに」
「五月ちゃんに」
「あ゛ー!面倒くせー!!」
姉妹を見分けられるという噂が広まった風太郎は、姉妹に用がある生徒たちに頼りにされるのであった。
「上杉学級長、焼きそばパンとコーラ買ってきて〜」
「自分で買いに行け浅倉コノヤロー!!!」
一クラスいったい何人いるんだ?40人くらいか……まぁいいや。あんま関係無さそうだし。
あ、武田はちゃあんと総介のオモチャになる予定ですよぉ〜(下衆顔)
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!