世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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ジャンプフェスタ2021の『ジャンプスタジオ【銀魂】』の放送を拝見しました。
ゴリラ原作者の手紙がもう面白すぎてwww
一部抜粋
『あっちもこっちも鬼滅コラボ……中略……この鬼滅ブームに終止符うってもいいかって聞いてんだよコノヤロー!!』
『ここだけの話、あっちの中核メンバー【柱】の中にこっちのスパイ潜り込ませてるから』
『200億は無理なんで「記録」よりも「記憶」に残る作品を目指します』

もう名言と迷言の宝庫w
銀魂を好きになって本当に良かった。
ありがとう銀魂!ありがとうゴリラ原作者!!


76.人を笑わば尻の穴2つ

「今日からこの武田君が、君たちの新しい家庭教師だ」

 

 

 

 

 

「はあ!?」

 

マルオの発した一言に一同が驚愕する。

いきなり来て武田を連れて部屋に上がったかと思えば、この一言だ。驚きを通り越して、もはや『目が点』状態だ。

 

「どういうことでしょう?説明してください」

 

五月がマルオに事態の説明を求めた。それにマルオはすぐに風太郎の方を向き、説明を始める。

 

 

 

「………上杉君

 

 

先の試験での君の功績は大きい。成績不良で手を焼いていた娘たちだが、優秀な同級生に教わるということで、一定の効果を生むと君は教えてくれた」

 

「………それなら、フータローを変える必要なんてない」

 

三玖はそう抗議するが……

 

「………あ」

 

二乃が何かに気がついた。それは、マルオが次に発する言葉と同じだった。

 

 

 

「………それは、彼が未だ優秀ならの話だ」

 

「え………」

 

「残念だが、上杉君はどの科目も点数を落とし、順位も落としている。

 

 

 

 

 

そこで上杉君より上の順位にいた1人が『彼』だ

 

 

 

 

 

ならば、家庭教師に相応しいのは彼だろう」

 

 

 

 

そう憮然と言い切るマルオ。それを聞いた二乃と三玖が、さらに彼に抗議をしようとする。

 

 

三玖は『総介にこのことは話したのか?』と。もしここに総介がいれば、マルオの言ったことを鼻で笑うだろうと、三玖はタカを括っていた。しかし今、総介がいないというタイミングでマルオが現れたということは、もしかしたらこの話は、総介には未だしていないのだろうとも推測していた。総介が来てくれば、この場はどうにかなるはず……と、三玖は淡い希望を抱いていた。

 

そして二乃は、『海斗が前回の学年1位なのだから、彼を家庭教師にすべき』と言おうとした。

この女、ちゃっかり海斗に家庭教師についてもらうつもりで話してみようと思ったが、『神童』と凡人の尺度で授業になると思ってるのか?

そして隙あらば三玖と総介みたいにイチャイチャ出来るかもという、下心8割の抗議。2割は武田が胡散臭いからくる抗議………

実って欲しくね〜。

 

 

と、2人が抗議しようとした、その時………

 

 

 

「………ふっ

 

 

 

 

ふっふっふ

 

 

 

 

 

ふっふっふっふっふっふ

 

 

 

 

くくく………」

 

 

 

何やら不敵に笑う武田。そして………

 

 

 

 

 

 

「やったーーーー!

 

 

 

勝った!!

 

 

勝ったぞーーー!!!」

 

 

 

いきなり子供のように勝った勝ったと喜ぶ武田。さすがMr.何なのコイツ!

 

「イエス!オ〜イエス!イエス!イエス!イエス!」

 

続いて、イエスとしか言わずに喜ぶ武田。そしてそれを見て、姉妹の4人はドン引きする。とうとう頭おかしくなったかコイツ?

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

多分、この場に総介がいたら、容赦なくビンタするだろうなと思った5人だが、彼がいないため、武田を止めることは出来なかった。

すると……

 

「上杉君!長きにわたる僕らのライバル関係もついに終止符が打たれた!

 

 

ついに僕は君を超えた!

 

 

この家庭教師は僕がやってあげよう!」

 

風太郎を指差しながら勝利宣言をする武田。

 

 

「…………」

 

 

「始まりは二年前、僕が『大門寺さん』に次ぐNO.2を目指して……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、お前誰だよ?」

 

 

 

「…………」

 

 

なんか語り出そうとしたので、風太郎はそれを止める意味合いも込めて、聞いてみた。

 

 

「………えっ、ほら………ずっと3位で君に迫っていた武田祐輔……」

 

「3位てお前……まぁ、あんなに突っかかってきたのはそういうわけか。ずっとわからなかったんだ。

 

 

 

今まで満点しか取ってなかったから、この間まで2位以下は気にしてなかったわ」

 

 

 

「2位以下!!?」

 

風太郎の言葉に、武田は衝撃を受けてしまう。

 

「き、君!僕はまだしも、大門寺さんまで2位以下だと!?無礼な!あのお方はこれからの日本、ひいては世界を股にかけてご活躍されるお方だぞ!!それを2位以下だとっ!?」

 

「ああ、大門寺ね……前までは珍しい名前だな〜って思ってただけだが、実際会ってみて分かった。あいつこそが本物の『天才』なんだな〜って」

 

「あ、会っただと!?お会いしたことがあるのか!大門寺さんに!?」

 

「お会いっていうか……この前家に行ったばっかだし」

 

「家!?大門寺さんの御宅に!?あの大門寺邸に!?行ったことがあるというのか!?僕でも行ったことはないんだぞ!!」

 

と、何やら海斗のことで喚き始める武田。どうやら海斗を崇拝に近い形で尊敬しているようだ。海斗は女子だけではなく、男子からも一目置かれており、中には彼に憧れを持つ者もいる。武田がその最たる例だろう。

 

 

すると……

 

「……わかりました」

 

「!」

 

と、ここで、五月が口を開いた。

 

「上杉君より優秀な生徒が家庭教師に相応しいというのなら構いません……恐らくそれだけが理由なのではないのでしょうが」

 

あの日……五月は学年末試験の前にマルオと会った日のことを思い出していた。

 

 

(僕は彼が嫌いだ)

 

 

建前はマルオが言った通りだが、本音で言えば、あの時のことだろうと、彼女は考えていた。だからこそ………

 

 

「しかし、それなら私にも考えがあります……」

 

 

そう言って、五月はとんでもないことを言い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が三年生で一番の成績を取ります!」

 

 

 

「え?」

 

 

「え?」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

堂々と宣言した末っ子の一言に、二乃、三玖、四葉の三人は目を見開いてポカ〜ン、っと呆気にとられてしまう。

 

 

 

「……ふむ、いいだろう」

 

 

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

勝手に話を進めようとした2人を、三玖が慌てて制止する。

 

 

無理だ。この末っ子、自分の力量を理解していない。

『学年で一番』ということは、風太郎や武田だけではない。他の生徒や、総介、アイナ、そして海斗より上の成績を取るということだ。総介クラスなら、五月なら頑張ればいけるかもしれない。しかし、全科目で90点以上をとっているアイナや、勉強せずともトップクラスの成績を残せる海斗を越えるとか、この五女は正気の沙汰ではない。なんとか話を変えねば………

 

 

「お父さんに何言われても関係ない。フータローは私たちが雇ってるんだもん」

 

五月の話からすげ替えなければと思った三玖の反論に、二乃もとりあえず続く。

 

「……そうね。それにずっとほったらかしだったくせに、今になってry」

 

「いい加減気づいてくれ」

 

二乃が話を、武田が途中で割って入る。

 

 

 

「上杉君が家庭教師を辞めるということ

 

 

 

それは他ならぬ上杉君のためだ」

 

 

と、武田が、怒りにも似た眼差しで姉妹に向けて言う。

 

 

 

 

「君たちのせいだ………

 

 

 

 

君たちが上杉君を凡人にした」

 

 

武田の言ったことに、姉妹は彼を睨みつけるが、その後にマルオが一言。

 

 

 

「彼には彼の人生がある

 

 

 

解放してあげたらどうだい?」

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

「……でもっ……」

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタガタガタッ………

 

 

ブロロロ〜〜!!!

 

 

 

キキィィイイイイ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャワァァアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

 

 

「「「「!!!?」」」」

 

 

と、何やらアパートの階段からガタガタと登る音、そしてエンジン音とブレーキ音が聞こえたと思ったら、武田が突然大きな悲鳴を上げて床に倒れた。

 

 

 

「お尻がぁあ!僕のお尻がまたぁぁあ!!」

 

うつ伏せになって尻を上げながら強打した肛門を両手で押さえて悶絶する武田。何が起こったのかというと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレ?なんか轢いた?」

 

 

「はぁ!?」

 

 

「あ……浅倉さん!?」

 

 

黒パーカーを着て、死んだ魚の目、そして頭にはヘルメットを被った総介が、自身の愛車『ベスパ』でアパートの階段を無理矢理登り、ドアを開けて原チャごとそのまま中に入り、武田の尻を見事に轢いたのだった。

 

 

「ソースケ!」

 

 

待ち侘びた総介の登場に、三玖は一気に表情をパァッっと明るくさせる。

 

 

 

「っていうかアンタ、何家の中までバイクで入ってきてんのよ!?」

 

「そりゃお前アレだろ、外道(ヒーロー)ってのはバイクに乗って遅れてやって来るもんだろ?」

 

「字が違うわよ!!」

 

「というか、それで階段を登ってたんですか!?」

 

「な〜に、三玖のためなら階段だろうが崖だろうが大人の階段だろうが、何でも登れんのさコイツァ」

 

「答えになってねぇ……」

 

 

姉妹や風太郎が総介にツッコんだり驚いたり呆れ果てたりする中、尻を押さえた武田が立ち上がり、総介につっかかりはじめる。

 

 

「いたたたた………また君か!何なんだ君は!?僕の肛門に恨みでもあるのか!?」

 

「違うんだよ。バイクがお前の肛門に吸い込まれるようにさ……」

 

「人の尻の穴を立体駐車場みたいに言うな!」

 

意☆味☆不☆明な言い訳に涙目でツッコむ武田だが、総介はまったくもって知らん顔。

 

 

「お、中野センセーじゃねぇか。元気?」

 

と、喚く武田を無視してマルオへと視線を向ける。

 

「……浅倉君、バイクごと娘達の家に入ってくるものがあるかね?」

 

「違ぇんだよ中野センセー、コイツのケツがマグネットだから、それに自然と俺の愛車が引き寄せられちまってよ〜」

 

「どんな言い訳の仕方だ!?」

 

「……武田君、臀部に磁力を帯びさせるのはやめてもらえないだろうか?」

 

「い、いや中野先生、僕にそんな力はありません。っていうか、彼のボケに乗らないでください……」

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

その後、総介はバイクを駐輪スペースに駐めて、戻ってきたところで、三玖に事情を聞かせてもらった。

 

 

「ふむふむ……なるほどな、つまり、成績の落ちた上杉の代わりに、そこにいる『長田』ってやつが三玖達の家庭教師になる、と……」

 

「僕は武田だ!」

 

「んで、中野センセーがその『米田』を連れて、姉妹に紹介したら、三玖や肉まん娘達から反対された、と……」

 

「だから僕は武田だ!どれだけ間違えるんだ君は!?」

 

「ワリぃな『秋田』。俺ァ人の名前覚えんのは苦手なんだ」

 

「全部言う気か?『田』のつく苗字をこれから全部言う気なのか?」

 

と、総介の毎度恒例『興味ないやつの名前覚えない大会』が開催されている途中だが、実は総介、約数時間前に、大体のことはマルオから聞いていたりした。

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

数時間前………

 

 

 

総介のスマホから電話の着信音が鳴った。画面に表示された相手は『中野センセー』。それに出てみると……

 

 

「は?上杉がクビ?」

 

『……正確には、解雇目前、といったところが妥当だろうか』

 

いきなりの一言に、総介は少し眉をぴくっと動かすが、その後に、マルオから『風太郎の成績が落ちたので、彼より成績上位の武田という者へと交代する』という旨の話を聞いた。

すると、総介は……

 

 

 

 

 

 

 

「………んで、ホントの所はどうなんだよ、中野センセー?」

 

『………やはり気づいていたか』

 

「本気で上杉をクビにしたけりゃ、海斗の名前だけでも借りりゃいいだけの話だからな。その……『中田』って奴を使わなくてもいいだろうによ?」

 

回想シーンでも名前を間違えられる武田。

総介は、マルオが唐突にそんなことを言ってきた理由を、薄々と気づいていた。

 

 

 

 

「つまるところ、『最終試験』ってワケか……」

 

『………』

 

「上杉も『大門寺』の加護の下にあるからな。護衛対象同士を離すことなんざ、剛蔵さんの許可がなきゃそう出来ねぇ。もしそれができたら、アンタよりも早く、剛蔵さんから俺や海斗に連絡が入るからな。それに、アンタが他のプロの家庭教師ではなく、その『新田』って同級生を代わりに据えたのは、上杉を本気でクビにする気はねぇ。そいつと競うように発破をかけて、出来れば上杉がそいつに勝つ。そしてあわよくば学年一位に返り咲くことを望んでいる。そーゆーこったろ?」

 

『………はぁ、つくづく、君を敵に回したくはないと思い知らされる』

 

「俺ァ別にアンタが敵だろうが構わねぇよ。俺はあくまで『三玖の味方』………それだけだ」

 

武田の名前以外の全てを言い当てられてしまったマルオ。本当に、『懐刀』とは末恐ろしい存在だと、身に染みるほど実感すると同時に、彼らが娘の味方であってくれることを、心から安堵する。

 

「んで、とりあえずぁ上杉が『安田』を越えれば合格ってことなんだな?」

 

『……そうだ。それをこれから、娘達、そして上杉君に告げに行くつもりだ』

 

「ふ〜ん………

 

 

 

 

 

 

!!………♪」

 

と、ここで、総介が何やら思いついた。何やら怪しげな笑みを浮かべて。

 

 

「そうだ、中野センセー。俺にも一つ考えがあるんだけどよ」

 

『………何だね?』

 

総介の声の弾み具合を聞いて、嫌な予感がしたマルオだが、少し気になったので聞いてみる。

 

 

 

「実はな…………と、思ったが、その内容は後からのお楽しみだ。アンタはとりあえず五つ子や上杉に、さっきのことを言いにいきな」

 

 

 

そう話す総介の顔は、まさに面白いイタズラを思いついたような子供みたいに、それはそれは悪ぅ〜い顔をしていた。

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

回想終了。

 

 

 

 

「で、だ。上杉よりも成績が上になった『沼田』が家庭教師になる……その話だが……」

 

「だから!僕は武田だ!何度言わせるんだ!」

 

「お前の名前なんざどうでもいいんだよ『飯田』。それよりも中野センセーよぉ?」

 

「……何だね?」

 

 

「『上杉より成績上位の者』が新しい家庭教師になるっつったよな、アンタ?」

 

「………そうだが?」

 

「ならよぉ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰か一人忘れてねぇか?」

 

 

 

 

「………!」

 

マルオは総介のその言葉に、少し眉をひそめる。

 

 

 

 

 

 

まさか……彼は先程の総介との通話でのやりとりを思い出す………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本気で上杉をクビにしたけりゃ、海斗の名前だけでも借りりゃいいだけの話だからな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………まさか

 

 

 

 

 

 

「せっかくの『前回の学年末の試験一位』の存在を忘れちゃいけねぇな、いけねぇよ。ってなわけで、忘れ去られた哀れな男も入れてやろうや、中野センセー。

 

 

 

 

 

 

 

 

お〜い、入って来ていいぞ〜」

 

 

 

 

 

総介が玄関に向かって大きな声で呼ぶと、扉がガチャリと開き、男が一人入ってきた。

 

 

 

 

 

その男は、星のように輝く銀髪の地毛、他の者とは比べて、191cmと高い身長。スリムで、スラッとした、細身だが、決してそれだけではなく、内には鍛え抜かれた肉体のある抜群のスタイル。

そして、老若男女問わずに、万人を魅了するその美貌。

 

 

「お邪魔します」

 

発する声も、甘く、しかし凛とした、例えるなら、声優の櫻○孝宏みたいなセクシーさの醸し出すイケメンボイス。それでいて、物腰も柔らかく、部屋に入る際の一礼も忘れない。

 

 

しかも、実家は金持ちで、成績も優秀スポーツ万能……全てに於いて、文句のつけようがない完全無欠の男……

 

 

 

 

そう、この男こそ、総介が言ってた学年末試験一位の男『大門寺海斗』なのである。

 

 

 

 

「海斗君!!!」

 

海斗が入ってきたことに、今度は二乃が歓喜の声を上げる。

 

「大門寺さん!」

 

「大門寺君……」

 

「だ、大門寺……何でここに?」

 

姉妹と風太郎も、海斗の登場に驚きの表情を見せるが、本人は至って冷静で、穏やかに挨拶をする。

 

「みんな、久しぶりだね。学校では話す機会がなくて、本当に申し訳ない」

 

「そ、そんなこと無いわ!海斗君が学校でモテるからそう話しかけられないって、アイナから聞いてたから。来てくれるだけでも嬉しいわ」

 

「ありがとう、二乃ちゃん。そう言ってもらえて、少し楽になったよ」

 

「大門寺さん!お久しぶりです!狭いですが、来てもらって私もうれしいです!」

 

「久しぶりだね、四葉ちゃん。僕もみんなに会えて嬉しいよ。それと、本当に君はいつも、元気いいなぁ。何がいいことでもあったのかい?」

 

「だからそれ違う人のセリフだろうが」

 

 

 

「………大門寺君」

 

「中野先生、『先の件』以来ですね。ご無沙汰しております」

 

「……いや、こちらこそ、連絡を入れなくて申し訳ない」

 

と、各々が海斗に話しかける、そんな中………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大門寺さん!お久しぶりです!」

 

「?」

 

と、武田も、その場に現れた尊敬して止まない海斗に悠々と話しかける。

 

「数ヶ月の会食以来ですね!あの時は、僕もとても良い時間を過ごさせてry」

 

 

 

 

「えっと……本当にごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どちら様だったかな?」

 

 

 

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

海斗のその一言に、武田の体が固まった。それを見て言った本人も、必死に思い出そうとする。

 

 

「えっと、この前の会食だよね………話をしてくる人達がいっぱいいたから……あ、思い出した。確か僕の前で一発芸をしてくれた人だよね?」

 

「い、一発芸……?」

 

「あれ?違ったかな………?」

 

え〜っとっと、海斗は誰かと間違えたようで、その後も必死に思い出そうとするが………

 

 

「はぁ、もういいっての海斗。お前が思い出せねぇなら、コイツはお前ん中では『その程度』ってことなんだろ?」

 

総介が、彼を止めに入る。

 

「…………ごめんね。僕もあの時、たくさんの人と喋ったから……」

 

「悪いな『青田』。海斗が『絶対記憶』を持っているってのはよく耳にする話だが、その逆で、どうでもいいって判断したことはすぐに全部忘れられる……いわゆる『絶対忘却』ってやつも持ってんだ。お前を覚えてねぇってことは、お前は海斗にとって、その辺の雑草と同じってこったろう」

 

「ざ、雑草………」

 

海斗は本来、全ての物事を瞬時に、そして鮮明に記憶できる『絶対記憶』の能力を持っているが、その逆、忘れることだけに特化した『絶対忘却』をも持ち合わせている。

彼が不要と判断した物事、事象、そして人の情報は、海斗の好きな時に、好きなものを自由に、そして瞬時に忘れることができ、その忘れたものは、二度と彼の記憶の中に現れることは無い。何故彼が、この様な特技を使うに至ったのか……

 

 

海斗は幼い頃から、母の『天城』の計らいで、偉い人達が集まるパーティーに出席しており(息子かわいさに天城が連れ回していた)、その当時から現在に至るまで、様々な人物から話しかけられる。『大門寺』に取り入ろうとする政治家、財閥の会長や幹部、そして海斗自身を狙う女達の存在に、彼は辟易していた。

中には、あからさまに下心丸出しで近づいてくる下賤な輩もいた。

どこに行っても、そういった醜い連中を相手にしなくてはならない。そんな自身の気分を害する者たちを前にし続けた海斗は、直ちに自身の記憶からそれらの存在を『削除』する術を身につけたのだ。いや、元々持っていたとも言うべきか……

そして彼は、他にも自身が本能で判断した『無益な者』『特に関わっても何も無い者』『忘れた方が得な者』は、それと同じく自身の記憶から消していった。

そして目の前にいる武田も、所詮はその中の一人に過ぎなかった。

しかし、この『絶対忘却』のおかげで、記憶のスペースの容量にだいぶ空きが生じたので、本来彼が持つ『絶対記憶』を、さらに高度に使えるようになったこと、そして常人なら持て余してしまうかもしれない『絶対忘却』の能力を、海斗は完璧にコントロールし、使いこなせていることは、彼にとってはこの上なく幸いなことだろう。

 

 

と………

 

 

「………ん?」

 

「…………」

 

「あ〜あ、凍っちまった」

 

海斗に存在を忘れ去られていたと知った武田は、ズキズキ痛む尻を押さえた格好と、そのまま白目を剥いてカチンコチンに凍ってしまった。

 

「まぁいいや。うるせぇのが黙ったし。んなことより、話戻して本題に移るぞコノヤロー」

 

と、総介は海斗を連れてきて逸れかけた話題を元に戻す。

 

 

「前回の試験で。上杉より成績の上の生徒っつったら、海斗も忘れちゃいけねぇな〜、中野センセー。

 

 

 

 

 

 

そこでだ。どうだ?いっちょここらで、この海斗を家庭教師にしてみたら?」

 

 

「!!?」

 

「か、海斗君が!?」

 

総介の提案したことに、海斗とマルオ以外の全員が口を開けて驚愕した。特に二乃は、ちょっぴり嬉しそうだ。現金な女………

 

 

「………彼も家のことで忙しいのでは?」

 

「だってさ。実際どうよ?」

 

マルオの疑問を、総介が海斗に聞いてみた。

 

「確かに、『大門寺』の跡継ぎとして、やることもありますが、基本的には時間が全く取れない訳ではありませんので、僕如きでも、娘さん達のお役に立てるのなら、微力ではありますが、手助けさせていただきたいです」

 

「是非なってほしいわ!」

 

「二乃………」

 

「あ……」

 

つい本音が漏れてしまった二乃。

 

「………しかし」

 

「分かってるよ。アンタが『石田』を推薦した建前もある。そこでだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の模試で上杉風太郎と大門寺海斗、そして『真田』の3人、誰が一番の成績を残せるか、勝負したらどうだ?」

 

 

「………何?」

 

「「「!!」」」

 

「海斗君と上杉が!?」

 

 

 

「ぼ、僕が大門寺さんと!?」

 

と、氷漬けから復活した武田も含めて、総介の言い出したことにまたまた驚く一同。

 

「海斗にはここには来る前から既に話してるが……」

 

「……僕は構いませんよ。面白そうですし。それに、かねてより上杉君とは、一度雌雄を決してみたいと思っていたところです」

 

「お、俺と!?」

 

海斗が風太郎を向いて発した言葉に、言われた本人も驚いた。

入学して以来、海斗が試験で風太郎に勝ったのは、前回の学年末試験の一度きり。しかし、海斗は一度も本気を出していない。それに前回は、風太郎が姉妹にかかりっきりだったために、成績を落としてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

『上杉風太郎』と『大門寺海斗』……この2人のどちらが上なのか……

 

 

 

 

 

 

 

真の決着は、未だついてはいないのである……

 

 

 

「……だってよ。どうだ、上杉?」

 

「……え、あ、お、俺!?」

 

「海斗が直々に、お前さんとケリつけてぇってよ。今まで学年一位を守ってきた身としては、どうするんだ?」

 

総介に話を振られた風太郎。いきなりのことだったので、少し慌ててしまうが、落ち着いて考えてみる。

 

 

 

 

今まで、姉妹や総介達と出会うまでは、学年一位を欲しいままにしてきた風太郎。二位以下の存在など、毛ほども気にしちゃいなかった。まぁ海斗の苗字は変わった名前だと思ったが、まさかこんなにも完成された人間だとは、思いもしなかった。

 

 

 

自分は一位を取っていたんじゃない………

 

 

 

取らされていた………

 

 

 

いや、正確には海斗からすれば、勝負すらしていなかった。

全く勉強をせずに、学年二位の成績。その気になれば、同率でも一位にはなれたのだ。海斗も海斗で、風太郎のことなどを歯牙にもかけていなかった。

 

 

 

 

しかし、今は違う。

 

 

あの全能の天才である『大門寺海斗』が、風太郎を相手に、勝負を持ちかけてきている………

 

 

 

やがて、風太郎が、ゆっくりと口を開いた。

 

 

 

「………俺は少し前まで、他人なんざどうでもいいと思ってた

 

 

 

 

 

去年の夏まで、あるいはこの仕事を受けていなかったら………

 

 

 

 

 

俺は凡人にもなれていなかっただろうよ

 

 

 

 

 

 

 

教科書を最初から最後まで覚えただけで、俺は知った気になってた

 

 

 

 

 

 

知らなかったんだ、世の中にこんな馬鹿共がいるってことを

 

 

 

 

 

 

 

 

浅倉みたいな、容赦ない外道がいることも

 

「オイコラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

大門寺みたいな、本物の天才がいることも

 

 

 

 

 

 

 

そして俺自身が、こんなに馬鹿だってことも

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつらが望む限り、俺は付き合いますよ。

 

 

 

解放なんてしてもらわなくて結構」

 

 

 

「……そこまでする義理はないだろう」

 

 

「義理はありません。でも………

 

 

 

 

 

この仕事は俺にしかできない自負がある!!」

 

 

「俺は?」

 

「シーッ。総介、今いいとこなんだから」

 

 

「こいつらの成績を二度と落とすことはしません。

 

 

俺の成績が落ちてしまったことに関しては、ご心配おかけしました

 

 

 

 

俺はなってみせます

 

 

 

 

 

 

その二人に勝ち、学年一位に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全国模試一位に!

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

 

「何とまぁ」

 

「あははは!コイツぁ面白ぇ!『牧田』や海斗どころか、日本中全員倒すときたもんだ!」

 

人差し指を高く突き上げた風太郎のまさかの全国一位宣言に、姉妹は驚き、海斗は興味を示し、総介は大きく笑う、!しかし、それは決して嘲笑ではない。風太郎のその気概を大層気に入ったからこそ、自然と笑いが出てきたのだ。

 

 

「そしてr……むぐっ!」

 

「う、上杉さん!」

 

「なんだよ!」

 

「全国は無茶ですって!」

 

「フータロー、もう少し現実的に……」

 

自身は結構自信あるドヤ顔で宣言したのに、姉妹が無茶を言う風太郎を取り押さえる。

 

「あ!?学校内で一位だけじゃ今までと変わんないだろ!」

 

「いいから!」

 

それから……

 

 

 

 

 

 

「全国で十位以内!」

 

「これでどうですか?」

 

「おい!離せ!」

 

姉妹が風太郎の手を後ろで押さえて、そのまま訂正をするが、本人は納得していない様子。

 

 

 

 

「……大きくでたね。無理に決まってる。それも五人を教えながらなんて」

 

 

「テメーがコイツのことを決めつけてんじゃねぇよ『吉田』」

 

「だから僕は武田だ!」

 

武田のツッコミも完全無視して、総介が風太郎に確認をとる。

 

「…………上杉、それでいいんだな?」

 

 

「……ああ、俺は勝つさ。そいつにも……大門寺にもな」

 

 

「大門寺さんに勝つ!?それこそ不可能だ!君如きの何処の誰かも知れない存在が、この偉大なお方と肩を並べようなどとは、おこがましいにも程がry」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙ってろ三下、殺すぞ」

 

 

 

「ヒッッ!!!!?」

 

 

海斗の威を借って風太郎に捲し立てるように言う武田に、総介はほんの一瞬だけ『鬼童』としての殺気を向けた。

ほんの一瞬、それも本気の『ほ』の字も出していないにしろ、当然それを受けた武田は、短い悲鳴をあげながら尻もちをついてしまう。

そんなことなど気に留めず、総介は横にいる海斗に聞く。

 

「………お前にも勝つってよ、どうする?」

 

 

 

「ふふっ、面白いね、上杉君。久しぶりに、君に興味が湧いたよ……

 

 

 

 

 

 

そして、君に勝ちたいとも思い始めている」

 

 

「!!」

 

 

海斗の言葉に、風太郎は驚愕する。

 

 

 

 

 

 

『神童』と呼ばれた男『大門寺海斗』が今、自分に目を向けている

 

 

 

 

 

風太郎にとってそれは、誇っていいのかどうかわからないものであるが、総介から見れば、本当に希少な体験をしている感覚だった。

 

 

 

「へぇ、お前にそこまで言わせるか……上杉、お前海斗にロックオンされちまったな」

 

「ろ、ロックオン!?」

 

「前回の試験をカウントしなければ、僕は一度も彼に勝ったことがないからね。僕も今回は『本気』を出してみたくなっただけさ」

 

「……てことだ、上杉。お前の挑戦、海斗は受けて立つとよ」

 

「………」

 

 

 

 

風太郎は、目の前の完全無欠の男を見る。

 

 

 

 

相手は強大、なんてものではない。地球そのものに勝負を挑むようなもの………しかし………

 

 

「………残念だな、大門寺。『今回も』勝たせてもらう」

 

 

「じゃあ『今回が』、君の初めての敗北になりそうだね」

 

 

 

テストには上限がある。その中で争うならば、自身が満点を取れば少なくとも敗北はない。それにこれは、海斗との直接対決ではない。自分自身の限界との闘いだ………

 

 

 

 

 

勝てる………

 

 

 

 

 

 

「絶対勝つ!」

 

「楽しみにしているよ」

 

 

 

 

 

 

 

『努力で積み上げてきたただの凡人』が、『完全無欠、全知全能の天才』に勝負を挑んだ。

 

 

 

 

「……とまぁ、中野センセー、海斗がそう言ってるが、どうする?」

 

正面を向き合う2人を見て、総介はマルオの発言を仰ぐ。

 

 

「……大門寺君がそう言ってるんだ。僕が止めることも無いだろう」

 

「……だよな」

 

 

そう言ってマルオは、風太郎へと話しかけた。

 

 

 

 

「上杉君、君の言うことはわかった。

 

 

 

もしこの全国模試でそのノルマをクリアできたのなら、改めて君が娘たちに相応しいと認めよう」

 

「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マルオからの正式な許可ももらい、上杉風太郎、大門寺海斗、ついでに武田祐輔による『全国模試三つ巴の戦』が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついでにだと!?僕を何だと思ってるんだ!?」

 

「Mr.噛ませ犬」

 

「かませっ!?」

 

「上杉には悪いけど、勝つのは海斗君よ!」

 

「お前に関してはもう欲望まったく隠さなくなったよね?」

 

 

 

 

 

第六章、最後の闘い。それは原作主人公のプライドをかけた『チートキャラ』への挑戦………

 




わかるかね、武田君?私は君に、サイコロステーキ先輩ばりの盛大な噛ませ犬になってもらいたいのだよ。
『大門寺海斗』という完全無欠の男がいる以上、君はぶっちゃけ話に入れることすら最初は思わなかった。しかし、登場すら危うかったところを、こうして出番を与えてやったんだ。感謝してほしいくらいだね。
って何様だよお前!?



今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
果たして風太郎は海斗に勝つことができるのか!?
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