世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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第六章最終話です。
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そして2020年最後の投稿です。そして遂に……


78.鬼と神の子と凡人

「それではただいまより、全国統一模試を開始します」

 

 

 

監督の先生の合図により、いよいよ始まった全国模試。皆が一斉にペンをカリカリ解答用紙に記入していく中………

 

 

 

「………まずい」

 

風太郎の様子が何やらおかしい。顔色も優れない。

 

(……いや、俺ならできる!やってみせる!)

 

しかし、気合いを入れ直して、試験に集中することにした風太郎。そのままカリカリとペンを進めて行き……

 

 

 

時は流れ……

 

 

 

キーンコーンカーンコーン……

 

 

ようやく一つ目の試験である『国語』の時間が終わった。

 

「やっと一個終わったな」

 

「国語厳しいわ〜」

 

生徒たちが先の試験についてああだこうだ言いながら休憩に入る中……

 

「フータロー君、大丈夫?」

 

「き、気にすんな……」

 

風太郎の顔色はまだ優れない様子であり、一花に心配されている。

それとは別の席で……

 

 

「武田、どうだった?」

 

武田は他の生徒と話していた。

 

「やっぱ余裕あるわ」

 

「武田なら200点満点いったんじゃね?」

 

「ははっ、どうだろうね」

 

濁してはいるものの、余裕の笑みを絶やさない武田。

 

「漢文に少しばかり時間を取られてね。一問くらい落としてしまったかもしれない」

 

「いや……ワンミスでも十分凄ぇよ……」

 

さも当然の如く言う武田。なんだ嫌味か?腹立つな。もっかい総介にケツ掘らせるぞコノヤロー?

 

「ってことは、今回も大門寺か武田がこの学校のトップで決まりだな」

 

「!……」

 

今回『も』大門寺か武田『が』トップ……その言葉を聞いて、全国一位になると宣言した風太郎を思い浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

「………所詮猿山の大将か」

 

「え?」

 

「なんて?」

 

小さく呟いただけなので、話し相手の生徒には聞こえなかったようだ。すると……

 

 

 

ブルルル……ブルルル……

 

武田のスマホがバイブ機能で揺れた。メールのようだ。彼は画面を見てメッセージを確認する。

 

 

『from父さん

 

 

祐輔

今すぐ理事長室へ来なさい』

 

そのメールを見て、武田は直ちに理事長室へと向かった。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

理事長室

 

 

「祐輔、先ほどの試験の答案を見せてもらったぞ」

 

「手が早いですね」

 

理事長室の奥の席に座る『Zガンダム』に出てくるハヤト・コバヤシにクリソツな人物こそ、この学校の理事長であり、武田の父でもある。

 

「そして、こちらが特別に手配したこの模試の模範解答だ」

 

「!」

 

ハヤト・コバヤシ的な武田の父は、その模範解答と武田の解答を照らし合わせて、採点を行なっていたのだ。そしてその結果が……

 

 

「3問不正解、190点だ」

 

「!!……そんな……っ」

 

自身の結果に驚きを隠せない様子の武田。よほど自信があったのだろう。

 

「こんな点数で中野医院長の期待に応えられるだろうか……」

 

顔を手で覆い、息子の不甲斐なさに項垂れるハヤト・コバヤシ的な父。

 

「小さい頃から母さんと同じ医者になると言ってたじゃないか。この模試の結果次第で中野医院長との関係はより強いものとなる。それに、ここであの『大門寺』の御子息である海斗『さん』と懇意にさせていただき、大門寺へと近づくきっかけも作れるんだ。そのためにも、お前はここで絶対に結果を出すんだ」

 

どうやらこのハヤト・コバヤシ、マルオとの関係性を強めるためと、息子に海斗との関係を築かせ、ゆくゆくは大門寺に取り入ろうとする算段のようだ。

 

 

 

あの〜まことに残念ながら、海斗にとって息子さんは仲良くどころか、視界の外なんですけど……

 

ちなみに、大門寺の跡取りである海斗がこの学校を選んだのも、単に総介と同じ学校に行けるからという気まぐれであり、別にこの学校の理事長と仲良くしたいという訳ではない。しかし、どうやら理事長はそうでもない様子で、このチャンスに大門寺との関係を築ければ、というスケベ心が出てしまっている。

 

「父さん、僕は……」

 

「祐輔」

 

「!」

 

何か言おうとした武田に、父がスッと封筒を渡す。そしてこう言った。

 

 

 

「あまり父さんを心配させないでくれ」

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

「あ〜っ、やっとお昼だ!」

 

それから、追加で2教科の試験を終えて、ようやくお昼休みに入り、食堂にて昼食を食べている五つ子姉妹たち。

 

「残り二教科だよ。頑張ろうね!」

 

「消費したエネルギーはしっかり補充しましょう」

 

と、バクバクとご飯を口に入れていく五月。カービィかお前は……

 

「フータロー、頭垂れてたけど、大丈夫かな……」

 

と、三玖はお昼に入ってすぐさま教室を出て行った風太郎を心配する。

 

「後は信じるしかないでしょ。それに、辛気臭く誕生日プレゼントなんて渡したくないから、アイツには頑張ってもらわないといけないわ」

 

「……うん」

 

と、あっけらかんとしている二乃。

 

「あれ?その上杉さんはどこだろう?」

 

「う〜ん……それが……」

 

四葉が風太郎がいないことを疑問に思うが、一花はどうやら知っているようだった。

 

 

 

 

というのも風太郎は………

 

 

 

 

 

 

「トイレに行ったっきり全然戻ってこないんだよ」

 

 

顔色を悪くしながらトイレの個室に入り、猛烈に格闘していた。

いや喧嘩じゃなくて……

 

ぎゅるるるるる………

 

「こんな日に……なんて不運……」

 

いや、多分親父の牛乳飲んだからじゃね?

 

 

 

ようやく体内の毒素を吐き出して、個室から出ると……

 

 

 

 

「やあ、長かったね」

 

「不思議といる気はしてた」

 

 

ストーカーが待ち構えていた。

 

 

 

………もう名前すら呼ばれないというね。

 

「こんな所で時間を無駄にしてるくらいなら、復習の一つでもしておけ」

 

「復習?ふっふ……必要ないさ

 

 

 

 

これさえあればね」

 

と、不敵に笑う武田。その手には、書類用の封筒があった。

 

「?なんだその封筒?」

 

「これはね……この模試の答えだ。全てここに書いてある」

 

「!?」

 

武田の言ったことに驚愕する風太郎。

 

「なんでそんなものが……つーかそれさえあれば……」

 

「そう……確実に勝てる。君の成績がどれほど良くてもね」

 

(……………

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ不正じゃねーか!!)

 

THE・不正である。不正以外の何者でもない、それ以上でもそれ以下でもない。不正が過ぎて不整脈を起こしそうになる風太郎。

 

(……それが本当なら、こいつはほぼ満点でまちがいない……

 

 

そうなったら俺も全問正解を……

 

 

 

 

できるのか?俺に……)

 

 

 

思わぬところからの伏兵に、風太郎は戸惑いを隠せなかった。海斗を超えると改めて気合いを入れたが、武田が答えを手に入れたならば、これは正真正銘の三つ巴になってくる。……初めから三つ巴なんですけど。

 

 

こうなってしまっては、武田も無視は出来ない。海斗と同レベルだと思わなければならない………

 

 

 

 

 

すると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジでか?どれ……うわ、全部答え書いてあるじゃねーか。

 

 

 

これ覚えたら何とか前半の分いくらでも取り返せるな………

 

 

 

っわけで、ありがとな、『酒田』。これは俺が有効に使わせてもらうわ」

 

 

 

「!?……あれ!?封筒が!……って何やってるんだ君は!?というか僕は武田だ!!」

 

 

どこからともなく、突然現れた総介が、武田の封筒を掻っ攫って、中身を確認してから、自分の懐にしまおうとする。

一瞬で奪われてしまったため、武田は気付くのが遅れてしまったが、すぐさま取り返そうとする。

 

 

「返せ!このっ!!」

 

「え〜いいじゃ〜ん『磐田』。ちょっとは俺にも分けてくれよ〜」

 

「僕は武田だ!誰がジュビロだ!」

 

封筒を取り返そうとする武田を、総介はヒラリヒラリと身を躱していく。

 

(………そうだった。浅倉はコイツより汚い奴だった……)

 

総介がいきなり現れたことで少し驚いた風太郎だったが、自分がこれでカンニングを行うと聞いて、どこか納得してしまった。

 

総介も、目的のためならば手段は選ばない派であり、不正上等、バレなきゃ犯罪じゃない精神の持ち主だった。

 

 

と、

 

「あ!あそこに中野三女さんが!」

 

「何!?」

 

「今だ!!」

 

「あっ!俺のカンペ!!」

 

総介が武田が三玖がいると言って指差した方を見た隙に、彼から封筒を取り戻す。「俺のカンペ!!」って、図々しいにも程があるだろ……

 

 

そして……

 

 

「よし、取り返した。そしてこんなものは………

 

 

 

こうだ!」

 

「!!?」

 

武田は、その模試の回答を、封筒ごとビリビリに破った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああーーーーーー!!!!俺のカンペーーーーー!!!!!」

 

 

目の前の宝が引き裂かれていく様子に、目を見開いて絶叫する総介。

 

 

だからお前のじゃねぇって!

 

 

武田は紙を細かく引き裂いた後、トイレの便器に流して捨てた。

 

 

 

「テメー何やってんだ『清水』!!アレさえあれば俺もいくらか取り返せたのによ!!」

 

「僕は武田だ!っていうかせめて『田』をつけろ『田』を!!そして何気にさっきの『磐田』と合わせて『静岡ダービー』の完成じゃないか!!」

 

「ちなみに、俺はどっちかっつーとエスパルス派だけど、お前は?」

 

「あいにく、僕はどちら派でもなく海外専門だ……って何の話だ!?」

 

このまま総介とJリーグの話をしてても埒があかないので、武田は風太郎の方へと向き直して、コホンと咳払いをする。

 

 

「……安心してくれ上杉君。僕は前半の科目でもあの封筒は開けていない」

 

「お前……」

 

「もったいね〜」

 

「うるさい!!」

 

「っていうか、せめてコピーとかさせててくれよ。そうすりゃお前が原版捨てても俺が隠しときゃバレねぇだろうが?」

 

「君の頭はカンニングすることしか頭に無いのか!?」

 

「たりめーだろ。『楽して最善の結果を』。それが俺のモットーの一つだ」

 

「謝れ!今苦しみながらも必死に努力している人たちに謝れ!!」

 

漫才のようなやりとりをする二人。と、武田が風太郎を向き……

 

「……上杉君、僕はね」

 

「え?この流れで?」

 

「黙って聞け!……えーと何だったっけ?……あそうだ。

 

 

 

僕はね、宇宙飛行士になりたいんだ」

 

「………ん?は?」

 

 

突然言われた風太郎は、何がなんだか分からなくなる。前のやりとりも含めて。

 

「すまん……一から説明してくれ」

 

「地面も空も空気さえも無いあの空間に憧れているんだ。全てがない……だからこそ全てがある!」

 

「わかったもう説明はいい……」

 

「安心しな『久保田』。お前はもう宇宙飛行士だ。

 

 

 

 

頭ん中が既に宇宙の遥か彼方にブッ飛んでイっちまってる、立派な宇宙飛行士だよ」

 

「君もうホント帰ってくんないかな!?」

 

いちいち一言多い総介に、本当に帰ってほしそうにツッコむ武田。

 

「はぁ……だから、僕は縛られた道は嫌で、もっと難しいになる。って……そんな感じだ」

 

「お、おう……」

 

「宇宙に行ける人間はこの地球で一握りの選ばれた者のみ。世界中の人間がライバルだ。

 

 

 

 

だから僕は、こんな小さな国の小さな学校で負けるわけにはいかない

 

 

 

 

夢があるから」

 

「!」

 

(……その小せぇ国の一族が、実質世界の頂点なんだけどね〜)

 

「実力で君を倒す!不正して得た結果なんてなんの今も持たない!」

 

「………」

 

 

 

と、

 

 

ぎゅるるるるる………

 

 

 

「ウッ!」

 

武田が良いこと的な台詞を言ってる時に、再び風太郎の腹が悲鳴を上げて、そのまま個室へと戻っていった。

 

 

 

と、ここで総介が……

 

「上杉……

 

 

 

 

『神田』の言う通りだぜ、

 

 

 

 

 

お前もその実力で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹ん中にいる強敵を倒しちまいな。シャワートイレなんて不正使わずによ男は正々堂々、正面からトイレットペーパーのみで勝負だ!」

 

 

「全部台無しか!!」

 

 

最後までふざけ倒した総介だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして昼休みが終わり、後半の試験をこなしていった皆の衆。ちなみにあの後。総介が先に教室に戻った際に、

 

 

「武田……

 

 

 

 

 

受けて立ってやるよ」

 

 

「!………

 

 

 

 

 

ははは!何を今更!当たり前さ、僕らは永遠のライバルなんだからね!」

 

というやりとりがあったそうな。

まあそれはともかく、最後の教科を行なっている時の風太郎………

 

 

 

 

 

(………やべぇ)

 

 

突然目眩に襲われてしまった。今までの徹夜がここに来て響いてきたのだ。

 

(残り数問……なん、とか……)

 

風太郎はそのまま、次回がボヤけて机の上に突っ伏してしまう……

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の横にいる奴ら、それだけを見てろ。そうすりゃ、自ずとお前自身がやらなきゃいけねぇことが見えてくるだろうよ

 

 

 

 

 

 

(…………!!)

 

 

意識が無くなる寸前、総介が自分に言った言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

そうだ

 

 

 

 

 

 

俺は

 

 

 

 

 

 

(………一人でやってるわけじゃ……ない……だ……)

 

 

 

残った問題を、風太郎は朦朧とする意識の中、最後の力を振り絞って書き続ける。

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

(………よし……埋め………)

 

 

 

 

 

最後の文字を書いたところで、風太郎の試験の記憶はそこで無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

1ヶ月後

 

 

 

「旦那様、先月行われた模試の結果が届きました」

 

「ご苦労」

 

五つ子の父マルオは、江端の運転する車の中で、タブレット端末で模試の結果を見ていた。

 

「お嬢様方は個人差はあれど、前年より大幅に成績を伸ばしております」

 

マルオは指でスライドさせながら、姉妹たちの模試の結果を見ていく。その中で、彼が注視していたのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

「中でも三玖様の成長には、目を見張るものがございます。得意な教科はもちろん、苦手にしていた教科も、平均点に乗せるまでに成績を伸ばされました………これもひとえに」

 

「江端」

 

言葉を続けようとした江端を、マルオが止めた。彼自身も理解していた。三玖が姉妹の中で一番成績を上げた理由を………しかし、大恩があるとはいえ、言葉にするのはまだ出来なかった。

 

「………申し訳ございません。ですが、家庭教師という選択は結果的に大成功だったと言えるでしょう。勿論、お嬢様方の努力あってのことです」

 

 

そして、マルオが姉妹の結果を見終わった後に、彼女たちより上位の者達へと目を移していく。

 

 

「浅倉様はお勉強にあまり執着が無いようですので……中の上、といったところでしょうか。

 

 

 

 

 

渡辺様の御令嬢である『アイナ様』は、全国10位、そして武田様は8位の快挙でございます」

 

総介は自身の模試については別にどうでも良いようなので、それなりの勉強を行なって、試験結果もそれなりだった。

 

 

 

アイナは流石と言ったところか。大門寺で侍女として働き、勉強の虫でもないにもかかわらず、全国トップ10に入るという偉業を達成している。

 

そして武田は8位。あんだけ言ってたのに8位w

 

 

 

うん、末広がりで良いんじゃない?

 

「……渡辺さんからの電話がまた増えそうだな」

 

「ホホホ、渡辺様も鼻が高いでしょう」

 

溺愛する娘が模試でこのような結果を出したのだ。剛蔵も今頃、歓喜に震えていることだろう。

 

それをいちいちマルオに電話で自慢しにくるのが玉に瑕だが……

 

 

 

 

 

「………そして、上杉様と大門寺様ですが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お二人共、全教科満点の同率一位でございます」

 

 

 

「…………」

 

 

風太郎と海斗、二人の結果のデータをスライドさせて見比べるも、違うのは名前の欄だけだった。

 

 

「………まさか本当に一位になるとはね」

 

「報告によれば、上杉様は最後の教科の際に、突然気を失うように寝てしまったと。試験勉強で根を詰めすぎていたのかもしれませんが、最後の力を振り絞ったようです」

 

「………」

 

海斗の解答を見ると、全てが完璧だった。字も綺麗で、文句なしの解答といったところだ。

対して風太郎は、最後の数問の文字が、やっと読める程のレベルにまで崩れていた。それほどまでに限界を迎えていた彼が、この崩れた文字こそ、最後に足掻いた証だろう。

 

 

 

 

「………上杉風太郎、過程はどうあれ、大門寺君と並んだか……

 

 

 

 

 

 

 

彼には悉く邪魔をされてばかりだ

 

 

 

浅倉君然り、上杉君にも色々と悩まされる

 

 

 

 

 

 

 

『俺はなってみせます

 

 

その二人に勝ち

 

 

全国一位に』

 

 

 

 

 

 

 

 

「………結果的に、彼が大門寺君を超えることは叶わなかった

 

 

 

 

 

 

 

しかし、負けもしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

その覚悟

 

 

 

 

 

 

 

 

見事だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、どうだったよ?」

 

「ん?何がだい?」

 

「上杉だよ上杉。珍しくお前のお眼鏡に適うような奴が現れたんだ。ちっとは楽しめたか?」

 

「……フフッ、どうだろうね」

 

総介と海斗は、いつものように学校の屋上でたむろっていた。心地よい春の風が吹き、雲が流れる青空の中、総介は仰向けに寝転がり、海斗は腰を下ろして文庫本を読んでいた。

 

 

「君こそ、どうだったんだい?わざわざ僕を引っ張り出してまで、上杉君を焚きつけたのは、正解だったのかな?」

 

 

「それこそどうだろうな………だが、今のあいつなら上には上がいることは十分解ってるだろうし、それにもう、自分(テメェ)だけのモンでもねぇことには気づいただろうしな」

 

絶えず横に流れながら形を変える雲をボーッと見つめながら、総介は話す。

 

「………なら今回は、勝敗もさることながら、上杉君の成長ということに関しては、成功ということでいいのかな?」

 

「そんな野暮なこたぁした覚えはねぇよ。元々のアイツのポテンシャルなら、勉強でお前とタメ張るぐれぇ出来たからな。あとはあの五人を足枷として引き摺りながら歩くか、肩組んで掛け声上げて走るか……そんだけだ」

 

「………彼には、随分と得難い子達がそばにいてくれるみたいだね」

 

「テメェもそうだろ、若様よ?」

 

「………フフッ、そうだったね」

 

「ククク……」

 

静かに笑う二人。風太郎が自身に欠けていたものを見つけ出し、勉強とはいえ、彼は海斗に並ぶ存在になった。何やかんやで、今回の模試を一番楽しんだのは、この2人なのかもしれない。

 

 

 

特に総介は場外で。

 

 

「さて、俺は三玖のところ行くかな。試験期間のしばらくイチャイチャ出来てねぇし」

 

「そうだね、僕も二乃ちゃんに呼ばれてるんだった。流石に遅れるわけにはいかないな」

 

二人が、それぞれの恋人のもとへと行こうかと考え始めていた……

 

 

 

 

 

と、その時、遠くからこんな声が聞こえてきた………

 

 

 

 

 

 

 

「アイナちゅわぁぁぁあん!!!全国トップ10入りおめでっ「バコォッ!」ぐぼぉあああ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何であの人学校来てんだ?」

 

「さぁ?……アイナの模試の結果がよほど嬉しかったんだろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、遅くなっちゃって」

 

「いいわよ。来てくれるって信じてたから」

 

その後、総介と分かれた海斗が向かった先は、二乃が待っている空き教室。そこの椅子に座りながら待っていた彼女が、海斗が教室に入ってくるや、速攻立ち上がって彼に駆け寄り、模試の結果を見せる。

 

 

「………まだ、あなたの隣に立つには、全然足りないけど……自分でもできるなんて思わなかったわ……海斗君のおかげよ」

 

それは、海斗やアイナどころか、総介より下の点数だったが、今までの二乃と比べたら、明らかに成績が上がっていた。

学校の定期試験の時は、真っ先に風太郎と総介に反抗していた彼女だったが、今回の模試に限っては、誰よりも積極的に勉学に励んだ。春休みに会った海斗の母『天城』へと誓ったように、海斗に相応しい女になるため、彼女は一番身近で、一番手っ取り早い、自分の成績を上げることにした。

そのためならと、二乃は風太郎や総介に、教えを乞うことも厭わなかった。

 

「……ここわかんないわ」

 

「あ?ここはだな……」

 

「……ふーん、あんたにしては分かり易い解説じゃない、いつもそう素直に教えてくれればいいのよ」

 

「手ェ動かさずに口ばっか動かしてっとお前のアニメ2期の中の人を『東○奈央』さんにすっぞ」

 

「誰がガハマちゃん並のアホの子ですって!?」

 

「言ってねぇよ」

 

 

………総介に噛み付くのはやめなかったが、結局全部返り討ちにあうハメになった。

 

 

 

 

 

「……僕は何もしていないよ。全部二乃ちゃん自身の努力が、こうした結果を出したんだ」

 

「それでも、海斗君がいてくれたから、こうして私も、みんなと一緒に頑張れたわ………

 

 

 

それに、上杉も。自分の試験がありながら、面倒みてくたし……

 

 

 

ついでに、浅倉も本当、ほんっっっとーーーーに!!不本意でしかないけど、まぁ、ミミズくらいは役に立ったから、感謝してもいいかもしれないわね!」

 

「ははっ。総介も随分と嫌われたものだね」

 

最近、二乃の中の総介の印象が最悪なおかげで、風太郎の評価が相対的に上がってきているのは、総介の策略なのだろうか、はたまた単純に二乃で遊んでいるだけなのか……まぁ、おそらく後者だよね。

 

「……だからね、私は五月に言ったのよ。『パンを口に詰める前に答えを頭に詰めなさい』って……ひゃっ!?か、海斗君!?」

 

 

と、海斗は試験までの経緯を話す二乃を優しく抱き寄せ、自分の胸の中にすっぽりと引き入れた。

 

 

 

「…………頑張ったね………お疲れ様」

 

 

「……う、うん。ありがとう」

 

突然の海斗の行動に、二乃は顔を真っ赤にさせて慌てるも、耳元で自分を労う彼の声を聞き、落ち着きを取り戻すが、心臓の鼓動は未だ大きいまま。もしかしたら、海斗に聞こえていないだろうか……

 

 

すると、彼は二乃の名前を呼び、自分の顔がある上を向けさせる。

 

目が合い、海斗の顔が近くにあることに二乃は余計に緊張を露わにするが、そんなことお構い無しと言わんばかりに、海斗は左手で二乃の顎に手を添える。

 

 

 

 

「……これはご褒美、でいいのかな?」

 

 

「………い、いいの?」

 

「二乃ちゃんが望むなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………うん

 

 

 

 

 

 

…………ちょうだい」

 

 

 

彼女からのOKが出たことで、海斗は顔を下げていき、二乃も背伸びをして顔を登らせ、やがて2人の唇はその間で合流した。

 

 

触れ合うだけの、優しい口づけ。

 

 

「………」

 

「ん………はぁ」

 

10秒ほどで唇を離した2人。海斗は余裕の微笑みを絶やさないが、二乃はもう、茹でられたタコどころか、カニみたいに真っ赤になり、心臓の音もさらに大きくなっていた。

 

 

しかし、それと同時にとんでもない量の幸福感が、自身を包み込み、体中を満たしていった。

 

 

 

三玖は、いつもこんなだったのかしら………

 

 

 

先に恋人を見つけた妹が、こんなにも濃いことを体験していたのかと考えながらも、彼女の目線は海斗の瞳を捉え続けたままだった。

 

 

「……僕が言うのもどうかと思うけど、いいのかい?誰かに知られてしまったら」

 

「構わないわ。いずれどこかで言うかもしれないもの。それくらい覚悟して、乗り越えなくちゃ、あなたの隣に立つことなんて出来ないわ」

 

「………」

 

真っ直ぐな目をして言う二乃を見て、海斗は一瞬フリーズしてしまった。

 

 

 

 

自分はこの子から、覚えたこともない感覚が湧いてくる……

 

 

 

 

 

 

何故だ………

 

 

 

 

 

「………もう一回、ご褒美いいかしら?」

 

 

二乃の言葉に、海斗はすぐに我に戻る。そしてそのまま、彼女の願いを、返事をすることなく、もう一度彼女と唇を交わらせた。

 

 

 

 

 

何故だろう

 

 

 

 

 

 

不思議な感覚だ

 

 

 

 

 

 

総介とも、アイナとも、父や母とも違う

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女が持つ『それ』は………

 

 

 

 

 

 

自分から出てくる『それ』は一体何なのだろうか………

 

 

 

 

全能の天才とも呼ばれた男、大門寺海斗。しかし、この世界にも、彼の知らない事柄は、まだまだ存在するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん………」

 

「ん……はぁ、ソースケ……」

 

「三玖………」

 

「好き……大好き……」

 

「俺もだよ……愛してる……」

 

「んっ……んちゅ……」

 

 

 

 

 

三玖は、久々に総介の家に泊まりに来ていた。総介が自身の正体を明かして以来、日程の空きが合わなかったり、三玖が全国模試に集中するためであったりと色々あり、彼の家を訪れていなかったが、模試の後の週末に、やっと彼の家に行くことが出来た。

 

 

総介の家に入ると、三玖はそのまま彼に甘えた。リビングに到着した直後に、後ろから抱きつき、目を潤ませて総介の名前を呼べば、それまで彼女に触れていなかった彼に無視するという選択肢は消え失せてしまい、そのままベッドへと直行。ゆっくりと三玖を仰向けに寝かせて、体重をかけないように覆い被さり、唇を重ねる。

最初は啄み、触れ合うだけだったキスも、やがては舌を入れて絡ませ合うものへと変化して、お互いの身体を抱きしめ合って熱らせていき、身につけていたものを一つ一つ肌から取り払い、空いた時間を埋めるように、幾度となく続きの『コト』にも及んでいった。

 

 

 

 

 

総介爆発しろ!!

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

「はい。危ないから、勝手に鞘から抜くのは禁止だよ」

 

 

「こ、これが、本物の、日本刀……」

 

 

2人は何回か交わった後、脱ぎ捨てた服を着直して、晩御飯作りを2人で行なってそのまま食事。食後に三玖が、

 

 

 

「ソースケが持っていた日本刀を見てみたい」

 

と言い出した。

さすがそれは、と総介も渋ったが、戦国武将好きな性分からくる興味と、彼女の目を潤ませた上目遣いのお願いに勝てるはずもなく、特別に見せるとこにした。

ただし、万が一勝手に持ち出されても困るので、三玖にはタオルで即席の目隠しをしてもらい、総介が黒い鞘に赤い柄の本物の日本刀を取り出して見せることにした。

 

 

「……お、重い」

 

「そりゃ、言ってしまえば鉄の塊だからね。これで1キロ弱くらいはあるよ」

 

三玖は、右手で柄、左手で鞘の部分を水平に持ちながら、重さを確かめるように上下させる。

 

 

 

 

「……ソースケは、いつもこれを持って戦ってるの?」

 

「……まぁ、いつもってより、高二になるまでは任務の時はいつも持ってたけど、所詮は消耗品だからね。ダメになったら新しいのを貰ったり、敵が持ってたのを奪ったりしてたよ」

 

総介の戦闘スタイルは、『剣術』というより『斬り覚え』のようなものであり、剣での戦闘はもちろん、格闘技や槍、薙刀、十手、さらには敵の体すら武器や盾とする、不規則な動きからくる『喧嘩殺法』の一種であり、対峙した敵の武器を奪って戦うこともしょっちゅうあった。

今所持している日本刀も、大門寺から支給されたものなのか、それとも敵から奪ったものなのか、総介自身ハッキリと把握していない。

彼は武器に頓着は無いが、基本的には師である『柳宗尊』から教わった剣術をベースに、トリッキーな戦いで相手を翻弄する戦法を得意としているため、基本的には日本刀片手に戦う戦術を採用している。

 

前にも言ったが、極限まで高められた剣術を中心にして戦う海斗とは真逆の戦闘スタイルであり、海斗が最強の『剣術家』なら、総介は最強の『喧嘩士』である。

 

「……鞘……」

 

「抜いたとこ、みたい?」

 

「うん、うん……」

 

コクコクと何度も頷く三玖(かわいい)。さすがに彼女に抜かせるわけにはいかず、総介が鞘を抜くことにした。

三玖の腕から日本刀を取り、彼はゆっくりと黒い鞘を抜いていく。

 

 

「お、おお………」

 

その中から現れたのは、汚れ一つない、銀色に輝く刀身。三玖はベッドの上に正座をしながら、段々と露わになる日本刀の美しさに目をキラキラと輝かせていた。

刀身には、波打った刃紋も薄く見え、それが一層少し反った刃を引き立てている。

 

「あまり近づいちゃダメだよ。頭おかしい程切れ味凄いからね」

 

「わ、わかった……」

 

刀から一定の距離をとりながら、自身が動いて様々な角度から日本刀を見る三玖。

 

(かわいい)

 

ヒョコヒョコと動く三玖を見て癒されるそう。すると総介は日本刀の切っ先を上に向けたまま、片手で机から太めのシャーペンをとりだした。

 

 

「見てて」

 

「?……」

 

何をするのかと思い、総介がシャーペンを刀身に当て、上から下へゆっくりとスライドさせると……

 

 

ポトッ

 

 

「ほら」

 

「す、凄い……」

 

シャーペンが真っ二つになり、一方が床にポトっと落ちた。総介は、シャーペンを親指と人差し指で挟みながら持って……いや、正確にはつまんでいた程度だ。

日本刀自体にも力を入れてはいない。それなのに、ほんの少し引いただけで、シャーペンは綺麗に二つに斬られた。

 

「見た目はこんなに光ってて綺麗だけど、これで斬る物は何か……

 

 

 

 

それは戦国時代でも、今でも変わらない……

 

 

 

 

そしてその斬られたものは、このシャーペンのように、感触もほとんどなく、致命傷を与え、場合によっては真っ二つになる。

 

 

 

銃もそうだけど、(こいつ)もこうも簡単に、人1人の人生を終わらせることが出来るんだ

 

 

 

 

そして戦国の世でも、それは為されてきた

 

 

 

 

三玖もそれだけは、心に留めておいてほしい」

 

 

「う、うん……わかった」

 

真剣な目で三玖に話す総介を見て、彼女もゆっくりと頷く。

 

「よろしい」

 

総介は三玖の答えを聞いて、そのまま刀身を鞘に収めた。

 

「俺自身、何度もコレを持って人を斬って、そしてこれからも、大門寺や三玖達に近づく下衆共がいれば、斬り続けていくって誓ったからね……」

 

「………うん」

 

「……あの日のこと、改めて聞くけど、いいの?」

 

 

 

「………もう迷わないって誓ったから」

 

 

総介にではなく、自分自身に………

 

 

三玖はベッドから立ち上がり、総介の背中にゆっくりと手を回す。

 

 

「ソースケがどんなになっても、私はあなたから離れない……

 

 

ソースケが苦しくて仕方なくなっても

 

 

怒って周りが見えなくなっても

 

 

 

悲しくて、涙を流しても

 

 

 

私はずっと、ソースケ側にいるって決めたから」

 

 

 

 

「………三玖」

 

 

総介日本刀を壁に立て掛けて、そのまま三玖の背中へと手を回す。

 

「………それが、君の覚悟なんだね」

 

「うん………私も、ソースケ無しじゃもうダメなの

 

 

 

 

あなたがいない世界なんて、生きていても何にもならない」

 

 

 

 

 

「……俺もだよ

 

 

 

 

 

 

三玖がいない世の中なんて考えたくない

 

 

 

 

 

三玖を……こんなにも愛した人を、もう失いたくない

 

 

 

 

 

だから、何があろうとも護るって決めたんだ」

 

 

 

 

「………私も

 

 

 

 

 

ソースケを護るって決めた

 

 

 

 

 

辛い時は、私が側で護るって」

 

 

 

 

2人はそのまま、互いの背中に手を回して抱きしめ合う。三玖はしばし、総介の胸の中で、彼の心臓の鼓動を聴く。

 

 

 

ゆっくりとだが、力強く脈打つ鼓動。

 

落ち着く。

彼の腕の中で、彼の心臓の音が聴こえることが、何よりも落ち着く。

先程も、何度もベッドの上で愛し合ったとき、彼の露わになった胸板に直接耳を当てた時に聴こえた鼓動。

 

恐らく今まで過ごしてきた人生の中で、最も落ち着く場所だ。

 

 

ここが、私の帰る場所………

 

 

みんなと住んでいる家も、もちろんそうだ。

 

でもやがて、この場所は、私が帰る場所になる。そして彼も、それを望んでくれている。

 

 

 

「………大好き」

 

「………俺も」

 

顔を上げると、ゆっくりと近づいてくる彼の顔を見て、ゆっくりと目を閉じた。

 

優しく落とされた唇の感触。ふんわりと柔らく訪れた感触に、より一層力が抜けていく。

 

そのまま溶け合ってしまうかのように………

 

 

 

 

「………三玖」

 

「………うん」

 

 

名前を呼ばれただけで分かった。抱き合った体を解き、三玖はベッドの上にあるタオルで目隠しをする。それを確認した総介は、壁に立て掛けた日本刀を手に取って、三玖に見られないように元の場所に戻して収納した。

 

 

そして……

 

「いいよ」

 

「!?んっ!?」

 

目隠しをしている三玖にバレないように近づいて、彼女の耳元で囁くと、三玖はビクンと跳ねて驚く。その衝撃で、目隠しがポロんととれてしまうが、そんなの気にせずに総介が口づけを行う。今度はさっきに何度となく行った、舌を絡め合う濃厚なキス。お互いの唾液を混じらせて、それぞれに分け与えて飲み合うと、身体が再び芯から熱を帯びていく。

 

「……ごめん、俺……」

 

「……いいよ、私も、またソースケとくっつきたい……」

 

「体力、大丈夫?」

 

「うん、ソースケが優しくしてくれて、まだ余ってるから」

 

総介は話している最中にも、三玖の服に手をかけ、ボタンを一つ一つ外していく。

 

「愛してるよ、三玖」

 

「私も愛してる……きて」

 

 

最後の合図と共に、総介は三玖と共にベッドへと倒れ込んだ。

 

 

 

それから朝を迎えるまで、2人の身体が離れることは一切なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと一緒にいよう、三玖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、ずっとずっと、ソースケと一緒……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界でたった1人の花嫁と銀ノ魂を持つ男

 

 

 

 

 

 

 

第六章『鬼童帰参編』

 

 

 

 

 

 

 

 

第七章『漫画の修学旅行先は大体京都』に続く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

夜、とある街の路地裏

 

 

「っクソっ!また負けちまったじゃねぇか!!」

 

「ギャハハハ!さっきの七三メガネのリーマンからとった金、すぐ使ってやんの!」

 

「まぁいいじゃねぇかよ!またカモ見つけて、頂いちまえばよぉ!」

 

「……まぁそうだな。どっかいねぇかな〜……あ、オイ、アレどうよ」

 

 

ヤンキー連中3人が、遊ぶ金欲しさに誰かを集ろうとしていると、1人が指さした先に、男がいた。

 

 

 

 

無造作な髪に、古めかしくも綺麗な着物と羽織を着た中年の男性。しかも1人だ。恐らく相当持っているだろう。

 

 

ヤンキーの次のターゲットが決まった。すぐさま行動に移し、中年男性の前に現れ、ポケットからバタフライナイフを取り出して男性に突きつける。

 

 

 

「よぉおっさん。ちぃとお財布見せてくんねぇかな〜?」

 

 

「オレら、さっきパチンコで負けちゃってね〜。新しい活動資金探してんだわ〜」

 

 

「おっさん〜、ボランティア精神でさ〜、オレらに恵んでくんねぇかな〜?でなきゃ〜、その着物ごとスパスパいっちゃうよ〜?」

 

 

 

ジリジリと近づいてくるヤンキー達に、男は何も答えずに佇んだまま。

 

 

「おいおい〜、とっとと金出せよ〜。ビビってねぇでさ〜」

 

「ギャハハハ。ぶるっちまって指一本うごかせねぇってか!?」

 

 

 

「………くれるか?」

 

 

「あ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様らは、我の前で如何なる『花』を咲かせてくれるか?」

 

 

 

男が、底知れぬ笑いながらヤンキー達に聞いてきた。しかし、意味不明な言動に、ヤンキー達は呆気に取られてしまう。

 

 

 

「………なんだコイツ?」

 

 

「頭イカれてんのか?」

 

 

「おいおい!聞いてなかったのかオッサン!?ちゃっちゃと金よこせっつって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、男の周りが赤い液体で染まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は、羽織の左袖から直接出ている『血塗れの刀身』をスライドさせて収納し、細切れになったヤンキー達の肉塊を、ゴミを見るような目で見下す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『花』と呼ぶにはあまりに(きたな)し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

摘む価値もないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう呟くと、男はそのまま何事も無かったように歩き出した。

 

 

 

 

 

 

左半分が火傷痕で爛れた顔をニチャアっと歪んだ笑みを見せ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり我を満たす『花』は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の地で摘み損ねた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(わっぱ)(おも)のそれよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

摘めずとも、せめて開花の際に立ち会うとれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我の興の器は満たせたというものを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………鬼の(わっぱ)よ」

 

 

 

 

 

名残惜しむような表情から、再び歪んだ笑みを浮かべた男はそのまま、路地裏の暗闇へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の名は雅瞠(がどう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての生命(いのち)に『(おわり)』をもたらす者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリキャラ紹介……

雅瞠(がどう)
年齢、国籍共に不明。
身長187cm
体重70kg
イメージcv.若○規夫(『ドラゴンボールZ』の『セル』、『戦後BASARA』の『織田信長』の中の人)
1年前、『霞斑』に雇われていた用心棒。
そして総介の母を殺害した張本人。
左腕に義手を装着し、顔の左半分に火傷痕が残っている。
武器は長ドスと左腕の義手に仕込まれた刀。
見た目のイメージは『銀魂』の『蜘蛛出の地雷亜』。


本日は大晦日。となれば必然今回の投稿が2020年最後となります。
そして遂にいよいよ出てきました。大門寺にとっての最凶最悪の敵であり、総介の母の仇『雅瞠』。イメージ中の人も、ラスボスに相応しい声の持ち主をイメージして書きました。
今年も終わりますが、この小説は来年中、もしくは2022年半ばの本編完結を目指して、今後も突き進みます!

今回も、そして2020年も、そして第六章まで、こんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!また来年、第七章でお会いしましょう!

読者の皆様、良いお年を!!

ps.投稿後1時間以降にご感想をくださった皆様には、年明け以降に返信いたします。
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