お暇がございましたらブラックコーヒー片手にご覧ください。
あと、官能小説はドドドド素人なので許してください。
はぁ〜、これからR-18も兼ねなくちゃいけないのかぁ……
ちなみにこの修学旅行編は、ここまでの原作の話で一番改変しなくちゃいけないので、結構考えるのがしんどいです………
修学旅行初日……京都へと向かう新幹線の中にて……
「そっちの班どこ行くの?」
「お寺とか神社は二日目に団体で行くんでしょ?じゃあ一日目はおもいっきり遊びたいよね!」
「だよね!」
移動中の車内では、生徒達各々が好き勝手に雑談をしており、ザワザワと盛り上がっている。
そんな中で、見事に同じ班になった五つ子達はというと………
「はい、フルハウス〜♪」
「負けた〜!」
「ぐぬぬ……」
五人仲良くポーカーをしていた。
「もう一回、もう一回勝負よ!」
「いつでも受けて立つよ〜」
負けず嫌いの二乃が、一花にもう一度勝負を仕掛ける中、四葉は隣にいる三玖に声をかける。
「三玖、三玖」
「…………」
「終わったよ」
「…………!」
三玖は、目を閉じながら寝落ちする直前まできており、うとうとしながらボーッとしていた。そのせいか、口の端から涎がこぼれそうになっている。
「…………あ、ツーペア」
「遅いし弱い!」
先程の勝負は終わっているのに気づかずに、三玖は持ち札を明かすが、その組み合わせも弱かったので、結局負けである。
と、四つ葉がヒソヒソと彼女の耳に話しかける。
「眠そうだね。今朝早起きしてどこか行ってたみたいだけど」
「うん……バイト先に無理言って朝から厨房貸してもらってた」
「えっ、じゃあ……」
「それを食べてもらっていよいよ……私も食べてもらう」
「表現!」
今朝早く、三玖はパン屋に行き、総介に食べてもらうパンを一生懸命作っていた。
この『総介に自作のパンを食べてもらうサプライズ大作戦』は、総介には一切何も言っていない。彼の方からすれば、パンを貰うのは完全に初見だ。今まで総介から教わった料理の基本と、彼の知らないところで頑張ってきた三玖の集大成を……全てをぶつける日である。
それを知っているのは、四葉のみ。
「ずっと今日のために頑張ってきたんだもんね。最後まで応援するよ!」
「………冷めても美味しいといいんだけど」
三玖の心配は、彼と一緒にお昼を共にできるかということと、パンが時間が経つにつれて味が落ちないかの問題だ。出来るだけ早く食べてもらいたい。
と、ここで一花が………
「あ、そうだ!次勝った人はなんでも命令できる、ってルールはどうかな?」
という、中々にスリリングでリスキーななことを言い出してきたのだが……
「なんでもね……いいじゃない」
「受けましょう」
「………負けない」
二乃、五月、そして三玖はやる気満々。一花含め、各々何かしらの野望があるのだろう。四人の背後に燃える炎を見た四葉は………
(………このバチバチ……トランプだけの盛り上がりだよね!?)
それぞれの野望を叶えるための戦いが、京都に到着するまでの新幹線の車内で幕を開けた。
一方、離れたところでは、海斗は小説を読み、アイナはタブレットで動画を視聴し、総介は安定の今週のジャンプをアイマスク代わりにぐっすりと寝ていた。
しかも椅子を全倒しして(後ろは空席)。
………………………………
そして生徒達を乗せた新幹線は、京都へと無事到着し、駅の広場にて、先生から説明を受けていた。
「大きい荷物はこちらでホテルに送っておく。貴重品だけ持っていくように。諸注意は以上だ。では解散」
先生の説明が終わりを迎えたころ………
カシャン
「!」
二乃は何か自身の後ろで何か音がしたように感じた。
「どうかしましたか?」
「え……ううん、多分気のせいだわ………それよりも、海斗君はどこ行くのかしら?」
「彼らなら、私達に合わせて行動するとのことですよ」
「………そう」
海斗の班は、基本的には五つ子の護衛のために彼女たちに合わせて後をついてくる予定だ。そう五月は本人からそう聞いていた。
「みんなは行きたいとこある?」
四葉がどこに行こうか尋ねてみると………
「それはやっぱ、旅といえば買い物よ。古〜いお寺よりお洒落なお店の方が楽しいわ」
自分よりも遥かに背の高い銀髪のイケメンとショッピングをする妄想をする二乃。
「わかってないなー。せっかくの京都だよ?ならではの美味しい物を食べさせたいよ」
アホ毛が二つある男に『あ〜ん』をする妄想をする一花。
「色々な神社や仏閣、歴史的名所をソースケと回ったみたい」
もはや名指しで下心を微塵も隠そうとしない三玖。総介爆発しろ!
「私もその意見に賛同ですが……今はもう少しこの駅内であの日のことを……いえ、散索しても良いかと思います」
と、五月がアホ毛の男と駅の中を見て回る妄想をする。
「五月、急にどうしちゃったの?」
四葉は修学旅行前の五月の変わりように純粋に疑問を抱いていた。まさか、五月も風太郎のことが………
「私は………」
五月は何か言おうとしたが……
「あ、フータロー君の班が出発したよ」
「………しょうがないわね。行きたい所がバラバラな以上、どうにも出来ないし、アイツらに付いていきましょう」
「どこ行くんだろ………」
一花が風太郎の班が動き始めたのを見て、二乃が仕方無しに彼らに付いて行こうと提案し、皆もそれに了承した。
「二乃達も出発したみたいですね」
「そうだね。様子を見る限り、上杉君達の後を追うみたいだ。ほとんど護衛は要らないとはいえ、これは幸いだね」
「ふぁ〜、ねみぃ〜………zzz」
「あんなに新幹線の中で寝てらしたというのに、もう……」
「…………」
海斗は未だあぐらをかいて座りながら寝る総介の様子を、無言で見る。場所が違うとはいえ、京都は自分達、特に総介にとって因縁のある場所だ。思うところが無いわけがない………
こうして彼が興味なさげにしているのも、何かの裏返しなのだろう………
と、見かねたアイナが彼の肩を揺すって起こそうとする。
「総介さん、三玖さんが出発されましたよ」
「何っ!?本当かアイナ!こうしちゃいられねぇ!すぐに追うぞ!」
「「…………」」
三玖の名前を聞くや、シャキッと立ち上がって三玖を探して追う総介に、海斗もアイナもジト目で彼を見ながら追うのだった。
(杞憂だったかな?)
………………………………
ここは伏見稲荷大社の境内にある東丸神社。風太郎と前田と武田はここに来てお参りしていた。
「なんだここ……」
「学問の神様が祀られている神社さ。前田君、君の成績は見るに堪えないんだから深ーく祈りたまえ」
「んだとコラァ!」
「お前らうるせー!」
武田のありがたくも失礼な説明に前田がキレる中、五つ子は木の柵に隠れて様子を伺っていた。
「なんか地味ねー……」
「コラコラ」
「ってか、なんで私たち隠れてんのよ」
「どうせ上杉君のことですから『班ごとの行動だろうが、シッシッ』と追い返すと思われます……」
「あはは、上杉さんなら言いそう……」
風太郎を遠くで見る五つ子だが、三玖だけは、パンの入った紙袋を胸に抱えながら、キョロキョロとあたりを見渡していた。
「あ、移動するみたいだよ」
「隣にも神社があるみたいだね」
と、先に一花、二乃、五月が風太郎に付いていく中……
「……自由昼食は今日しかないのに……やっぱり班行動が最大の難関……」
あたりを見渡しても総介を見つけれずに、シュンと落ち込んでしまう三玖だが、四葉が元気よく励ます。
「大丈夫!浅倉さんもちゃんと守ってくれてるから、きっと二人きりになれるチャンスはあるはずだよ!」
「……うん」
と、二人も三人の後を追った。
「移動しましたね」
「僕らも行こうか」
「はい」
「これ俺ら全然旅行楽しめなくね?」
「護衛が任務ですから」
………………………………
「わぁっ!これずっと鳥居なの!?」
「写真では見ていましたが、やはり実物は壮観ですね」
「映えるわ〜」
五つ子が風太郎を追った先にあったのは、伏見稲荷大社の中でも一番と言っても過言ではない名物『千本鳥居』だった。狭い感覚で奥の奥まで並び立つ鳥居は、五月の言う通り、まさしく壮観である。二乃はスマホでカシャカシャと写真を撮っている。どうせSNSにアップするつもりだろこのイマドキ女子高生め。
総介の事だけを考えていた三玖も、さすがにこの場では歴女の血が騒ぐようで、鳥居を見ながら歩いている。
「ほら、あんたたちもピース」
と、五人のいる位置の前後が鳥居だけになったあたりで、二乃がスマホを姉妹に向けて、四人がピースをしたところで写真を撮る。
「なんだか姉妹だけなのも貴重だね」
「あー、五人だけってなかった?」
「花火の時は写真撮ってないっけ?」
「それこそ小学生の頃の修学旅行以来ですよ」
と、皆が写真の話で盛り上がる中、三玖は………
「ソースケ、ついてきてくれてるかな……?」
と、後ろを振り返り、並び立つ鳥居の奥を見つめるも、そこに総介の姿は見えなかった。
「見えないわね……」
二乃も後ろを見るが、やはり確認は出来ない。
「まぁでも一本道だからね。上にはフータロー君もいるし、そのうち合流できるよ」
「そうだね。よーし!私たちも頑張ろー!」
と、四葉の一声で、五人は先に進むことを優先した。
「どうやら皆さんは『千本鳥居』に行かれた様ですね」
「とすれば、彼女たちの行く先は………四ツ辻を経由しての『稲荷山』の山頂、だね」
「オイオイ、今は人少ねぇから、手ぇ出すには最適じゃねぇのか?」
「そうですね。前方から来られたら対処にも遅れてしまいますし、それに彼女達を護りながら鳥居の中での戦闘は、極力回避したいところです……」
「僕が先回りするよ」
「若様?」
「大丈夫かよ?」
「彼女たちの歩く速度を考慮すれば、今からでも少し速めに走りさえすれば、もう一方のルートで行っても余裕で追い越して、先周りで向こうに到着できる。僕はそこから鳥居を見張るよ。もし上で何か怪しい事があったら、そっちにも連絡を入れて、前後から五つ子を護れば良いさ」
「……そうさな。上杉もいるかもしんねぇし、何かあったら頼むわ」
「ああ。そっちも、後ろの見張りをよろしく」
「承知しました。若様、どうかお気をつけて」
「せいぜいバテんなよ」
「誰に言ってるんだい?」
という風に、五つ子の行動に合わせて、護衛の形を変えていく3人。霞斑の残党が潜伏している可能性が高いとはいえ、ここまで修学旅行を楽しむような気配は微塵も見られなかった。
大丈夫だろうか…………
………………………………
「ハァ、ハァ……け、結構長いわね……」
「足が痛くなってきました……」
その後、五人はしばらく歩き続けるものの、見渡す限り見えるのは鳥居のトンネル。『千本鳥居』の名は伊達ではなく、延々と続く同じ景色と緩やかな傾斜も相まって、体力の無い三玖はもちろん、二乃と五月にも疲れが見えていた。
「もー、みんな遅ーい!」
一方の五つ子屈指の体力自慢の四葉、未だ疲れを見せずに、さすがと言うべき余裕っぷりを出している。
「あの子は気楽でいいわね」
「あれが四葉の良いとこだよ」
「元気過ぎるのもどうかしらね……」
と、途中少し立ち止まりながらも、皆は四葉に導かれながら、ようやく鳥居のトンネルを抜けて、三ツ辻を通過した少し歩いた先にある『四ツ辻』に到着した。三玖は息を荒くしている分、さすがにしんどそうだ。
そこでしばらく休憩し、稲荷山の山頂である『一ノ峰』へと向かう道を探していたのだが……
「道が二つあるね」
「どっちも山頂に続いてるみたいだよ」
と、一花が看板を見ながら言う。
(海斗君、後ろから来ないわね……)
と、既に到着し、五つ子を見守っている海斗に気づかない二乃。しっかりしろ彼女!
「もうお昼ですし、あそこのお店でお食事をとりましょう」
と、五月が一軒の茶屋を指差して昼食を食べることを提案するが……
「ま、待って。お昼は……」
ベンチに座って休憩する三玖が、総介と一緒に食べたいとの思いが先走ってしまい、五月に待ったをかける。
「何よ、他に食べたいものあるの?」
「………」
「ええっと………」
三玖はもう少し待つか、それか頂上で総介にパンを渡したいと思っていた。しかし、自分のわがままで迷惑をかけるわけにもいかないと思い、何も言えなくなってしまう。
そして隣に座る四葉も、事情を知ってるだけにそう易々と言えない。
と、その時……
(フルハウス!)
四葉はあることを思い出した。
これなら………いける!
「じゃあさ、二手に分かれよう!」
「え?」
彼女は片手で指で3、もう片手の指で2を作り、前に突き出す。
「私と三玖が右のルート。一花と二乃と五月で左のルートね」
「いや、勝手に決められても……」
「そうだね〜……」
と、一花と二乃は少し渋ってしまうが……
「なんでも命令できる権利!勝者の私が言うことは絶対!」
「うっ……」
そう、先程の新幹線の中のポーカーで『勝てば勝者はなんでも命令できる』という権利をかけての勝負、勝ったのは四葉だった。
こういうのって、欲を出したら負けるよね………
とはいえ、四葉のこのなんでも命令できる権利は、三玖のために行使されたことにより、結果的に三玖がその権利を間接的に発動したと言っても過言ではない。
三玖に小さくガッツポーズをする四葉の言葉により、五つ子は二手に分かれて、それぞれのルートで頂上を目指すこととなった。
一方、五つ子を後ろから見守り、先回りしていた海斗と合流した総介とアイナ。
「どうされたのでしょうか?あちらも二手に分かれましたね」
「左右別のルートで頂上を目指すのかな?」
「だろうな。競争でもすんのか?………どうするよ海斗?」
「君がそれを聞くかい?」
「総介さんのことですので、どうせ三玖さんと四葉さんの進まれたルートの方を追われるのでしょう?」
「お前ら何、エスパー?」
「君が分かりやすいだけなんだよ。特に三玖ちゃん絡みでね」
「とはいえ、人数の比を見るに、それが一番妥当なのかもしれません………若様」
「うん。僕とアイナで一花ちゃん、二乃ちゃん、五月ちゃんを追うとしようか。総介は彼の希望通り、三玖ちゃんと四葉ちゃんを見てもらうといい。そして彼女達が一ノ峰に到着して合流すれば、僕たちも彼女達に合流してもいいだろうね」
「かしこまりました。総介さ…………
………どうやら、既に出発されたようですね」
「はは……行動が早くて何よりだよ……」
海斗とアイナが呆れるくらいに、既にそこには総介はおらず、彼は一定の距離を保ちながら、三玖と四葉を追っていた。
………………………………
左ルート(一花、二乃、五月)
「あんたが余計なこと提案したせいで変なことになっちゃったじゃない」
「あ、あはは。まさかあそこで使ってくるなんて……一体何だったんだろうね」
「三玖と四葉、先程から二人でよく話をしていました。気になりますね」
こちらのルートを歩く者達は、二乃が一花に愚痴り、一花が四葉の予想外の権利の行使に唖然とし、五月が二人の様子に疑問を抱いて歩いていると………
「あ、お手洗いです」
途中でお手洗いのある場所が見えた。
「丁度行きたかったので、こっちが正解でした」
「この先には無いのよねー。私も言っておこうかしら」
「あ、私はいいや。ここで待ってるねー」
二乃と五月がお手洗いの中に入っていき、一花は外で待つことにした。
「ふぅ……フータロー君、もう頂上着いてるのかな……」
………………………………
右ルート(三玖、四葉)
「三玖〜、早くしないとお昼終わっちゃうよ〜!」
「うん……あと少し……」
四葉が軽快に鳥居の建つ階段を登って行く中、三玖も息を荒くしながらも、懸命に歯を進めて行く。
「この日のために頑張ってきたんだもん。あと少しだけ頑張ろっ!」
「四葉……ありがと……」
こうして二手に分かれたのも、事情を知ってる三玖と四葉の二人と、その他の三人で分かれて登っていけば、気兼ねなく総介にパンを渡す話ができ、三玖も他の姉妹たちに余計な気を遣わなくて済むと思い、四葉は先程『なんでも命令出来る権利』を使った。自分が手に入れた権利を、姉妹のために使う。そのことに彼女は微塵も負い目もない。全ては、三玖の努力が身を結ぶのを後押しするため。
しししっと笑いながら三玖を励ます四葉。ここまで付き合ってくれた彼女のためにもと、三玖は最後の力を振り絞りながら、総介の待つ頂上を目指すのだった。
あ、間違えた。総介後ろから見守ってるんだった。
………………………………
そして、稲荷山の頂上『一ノ峰』に先に到着したのは………
「ふぅ、やっと着いたね!」
「…………ごめん、四葉。ここまできて迷惑かけて……」
「ううん。全然いいよ。これぐらい朝飯前だよ!」
先に到着したのは、四葉と三玖だった。というのも、さすがに山道の階段を歩く三玖に限界が訪れるのは必定であり、それを見た四葉が、彼女を背負って代わりに頂上まで登り切ったのだ。
背負われた三玖が汗だくなのに対して、途中から彼女を背負って登った四葉は汗をほとんどかいていない。すげ〜な。
「一花たちは……まだ来てないみたいだね」
「フータローも、いない」
「そういえば……私たちより先にいってたのに」
思い出したように四葉は、風太郎の班がいないことを不思議に思った。自分たちは風太郎がずっと先に行ってると思って、そのまま進んでいたのだが、いざ頂上にきてみると、そこにはいない。
「一花たちのルートかな?」
「多分………」
すると………
「やっと着いた……」
三玖と四葉が来た道から、総介が階段を登ってきた。
「あ!浅倉さん!」
「!!」
総介が現れたのを、四葉が見つけて、三玖は告白前の女子のように頬を赤くしてしまう。
「おう、まだ二人だけか?」
「はい、そうなんですが………ほら、三玖」
「う、うん………」
四葉が、三玖の背中を優しくポンと叩き、三玖を前に出す。総介に近づいていく。
「?三玖……」
「そ、ソースケ。これ………」
三玖は、今まで大事に持っていた紙袋を差し出す。
「パン……作ってきたの………
だから………
お昼ごはん、一緒に食べよ?」
「…………」
総介はそれを聞き、思考が停止してしまった。
涙を溜めてウルウルとさせた自身を見る上目遣いの目と、林檎飴のように赤く染めた頬、プルプルと震わせた腕を必死で自分に向けて伸ばす三玖を見りゃ、そりゃ思考停止に陥るわな。
ちなみに、今の総介の脳内はというと………
(かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい)
見事に崩壊していた。『かわいい』でゲシュタルト崩壊していた。もはや文字数稼ぎと思われるくらいの文字が、某ちゃんねるの弾幕となって総介の頭の中を流れていく。
「…………」
「あ、浅倉さん?浅倉さーん!?」
「………お?あ、え、い、う、うん。もちろん」
四葉が声をかけて、総介はようやく『かわいい』の嵐から抜け出してきた。彼は三玖から、紙袋を受け取る。
「これ……三玖が作ったの?」
「うん。朝にお店で……」
「朝に!?バイト先で?」
「うん。店長さんに無理言って、厨房使わせてもらったの」
「そうなんだ………」
「三玖はずっと、この日のために頑張ってきたんですよ。是非食べてみてください!」
四葉のフォローも入り、総介は三玖から受け取った袋の中身を確認する。その中には、いくつかのパンが入っていた。
「……そっか。じゃあどっか座れるとこ行こうか。ここだと人目につくしね」
「う、うん……」
「よかったね、三玖!」
「うん」
「それじゃあ、私はここで皆を待ってるよ!ちゃんと事情も説明しなくちゃならないから」
総介は三玖と一緒に、人気の無い場所で食べることにした。四葉はそのまま、もう一つのルートの前で残った姉妹を待つことにした。すると……
「四葉」
「ん?どうしました?」
総介が移動する前に、四葉を呼び、目の前に移動する。そして………
「ここまで三玖を支えてくれたんだろ…………
ありがとな
すげぇ感謝してる」
総介はそのまま、四葉の頭に手を置いて、優しく撫でる。
「!!!………えへへへ、どういたしまして!」
総介の頭撫でに四葉は照れながらも、そのお礼をしっかりと受け取る。
「さあ!早く食べてあげてください!お昼も終わっちゃいますよ!」
「はいよ」
「四葉、本当にありがとう」
「えへへ!よかったね、三玖!」
三玖は改めて、ここまで助けてくれた四葉に礼を言った。そして二人は、四葉にその場を任せて、人気の少ない静かな場所へと移動して行った………
しばらくして………
「よし!一番乗り!」
「う、上杉さん!?」
「ん、四葉……来てたのか……」
「はい……って、どうして上杉さんが私たちより後に……」
四葉は、風太郎が自分達が登ってきたルートから、自分達より後に彼が現れたことに驚きを隠せなかった。
彼女はてっきり、風太郎は姉妹より先を行き、なおかつ一花たちのルートを進んでいると思っていたからだ。自分達の後ろを歩いているとは、思いもしなかった。
後から聞くと、風太郎の班は『四ツ辻』にあるお店で昼食をとっていたのだが、前田が食べ過ぎたせいで、歩くこともままならなくなってしまい、足止めを食らった。
そのせいで、姉妹は風太郎を追い越して、三玖と四葉はこの『一ノ峰』に先に到着したのだ。
「はぁ……やっと頂上だわ」
「あ、フータロー君、ヤッホー」
「あれ?四葉、三玖はどうしたんですか?」
とここで、別ルートを行ってた一花と二乃と五月も合流した。
その後ろにいる海斗とアイナも、三人の少し後ろにいる。そして前田を背負った武田も、やがて登り終える頃合いだ。
まぁそれはそうと、こっちは一旦置いといて。
………………………………
みんな気になるのはこっちなんでしょ?
少し人気から離れた場所に置いてある石に。総介はタオルを三玖の座る場所に敷き、彼女をそこに座らせた。
「今日のために、頑張ってたんだね」
「うん……ソースケには、食べてもらうまで秘密だっから……」
「そいつぁさすがに驚いたな。じゃあ、どれ……これから……」
総介は、紙袋の中に手を入れて、ガサガサも最初に食べるパンを選ぶ。その中から、クロワッサンを取り出す。見た目もちゃんとクロワッサンになっている。
「じゃあ、いただきます」
「う、うん。………めしあがれ」
総介がクロワッサンを口元へと持っていくのを、三玖はドキドキしながら見つめる。
緊張の一瞬。
パクっ………モグモグ…………
…………ゴクン
「…………」
「………そ、ソースケ?………どう?」
口に入れ、咀嚼し、飲み込む。その後に、総介は、しばらくは前を見ていた。三玖が心配して覗き込むと、彼はそのまま三玖の方を向いて……
「…………三玖」
「ひゃっ!?」
名前だけを呼び、思いっきり抱きしめた。
「そ、ソースケ!?どうしたの?」
突然のことに、びっくりする三玖。すると、耳元で………
「………ありがとう」
「え?」
「ありがとう、三玖………
すごく
すごく美味しいよ」
「!!………ソースケ………」
はっきりと聞こえるように、耳元で本音を伝えた。
その一言が聞けただけでも、三玖は涙をこぼしそうになるが……
「俺さ、あんまり今回の修学旅行、楽しみじゃなかったんだ」
「え?」
その一言で、三玖は少し目を開く。総介は彼女を抱きしめたまま、話を続けた。
「もちろん三玖との修学旅行は楽しみだよ………
でもやっぱり、京都は俺個人にとっては、あまりいい場所じゃないんだ」
「………それって、この前言ってたこと?」
三玖は修学旅行前に、総介から図書室で聞いたことを思い出していた。
京都は、『霞斑』が『大門寺』に敗北した場所。しかし、完全には仕留めきれなかった。未だ残党は、どこかにいる……彼女が聞いたのは、ここまでだった。
総介は自身の母の仇である『雅瞠』との念願の決着が、不本意な形で終わったことは、三玖にすら話していない………
「うん………ここじゃないけど、京都に来ると否が応でも思い出してしまって………
出来ることなら、護衛の任務を終えて、早く帰りたいって思ってた。
でも、それも今、変わった
三玖が作ってくれた、たった一つのパンが、俺の心にある全部を変えてくれたんだ」
「………ソースケ………」
「三玖とこうして、二人でいるだけで、一年前の忌々しさが、遠い昔に感じるほどに………
京都での出来事が、俺の中で全部上書きされて
三玖との思い出になっていくんだ
三玖が作ってくれたパンを食べた瞬間に
頭の中から、君のこと以外全部が消えたんだ
ここまで、あまり京都には来たくはなかったけど、
今は違う
ここに来て、ここに来れて、本当に良かった
本当にありがとう、三玖
愛してる」
総介の言葉が一つ一つ耳に入るたびに、三玖の目から、大粒の涙が流出していく。
ああ………
よかった
ここまで、ずっと頑張ってきて
喜んでほしいと、
美味しいパンを食べてもらいたいと
ずっと頑張ってきたことは
無駄じゃなかった
「………ソースケ」
三玖も、嬉し泣きしながら総介の背中に手を回して、抱きしめ合う。
「愛してる、三玖。また作ってほしい」
「うん………
ソースケが言ってくれるなら、
また作りたい
ソースケのために
私も、愛してる
ソースケ
ずっと愛してる」
「俺も愛してるよ、三玖。
本当にありがとう」
抱擁を解いて、二人は見つめ合った後、どちらともなく顔を近づけて、唇を重ねた。
「……んっ」
いつもしている口づけは、今回は焼いた小麦粉の味がした。
やがて、二人は顔を離して、総介は三玖を胸元に引き寄せる。三玖も、総介に逆らうことなく、そのまま彼の胸の中にもたれかかる。
優しく頭を撫でる総介に、三玖は少し眠気が出てくる。総介はそのまま、下にある三玖の頭に向かって話しかけた。
「三玖、これを作るまで、すごい頑張ったでしょ?」
「え………わかるの?」
「わかるよ。凄い数努力したんだなって。多分最初は、石みたいに黒焦げなパンから始まったでしょ?」
「ッッ!!……どうしてそこまで!?」
見事に当てられてしまった三玖は、別の意味で顔を赤くし始める。
「わかるって。俺が三玖のことわからないわけないじゃん。多分、最初は黒焦げで、次はトロットロで、そこから行ったり来たりして、ようやく焦げ目がなくなってきたって感じでしょ?」
「〜〜〜ッッ!!!………」
まるでどこからか見ていたかのように、全て当てられてしまった三玖は、顔を真っ赤にさせて、総介の胸に顔を埋める。かわいい。
そんな彼女を見て、総介は右手で頭を優しく撫でる。
「………知られたくなかった……」
「残念、パンが全部教えてくれました
三玖のこれまでの頑張りも
どんな想いで作ってきたのかも、ね………」
「…………」
胸に埋めた顔を擦り付けながらも、三玖は喜びが止まらなかった。
おいしいパンも
自分の想いも
全て愛する人に届いた
これを幸せと呼ばずして、なんと呼ぶだろうか
本当に、いっぱい失敗したけど
この時のために
諦めず頑張って
努力してよかった
「………ソースケ」
「ん?」
三玖は愛する人の名前を呼び、彼に喜びに満ちた顔を向け………
「………大好き」
「俺も、大好きだよ」
改めて、想いを伝え合った二人は、再度口付けを交わすのだった………
これ修学旅行初日ですよね?
最初からクライマックスじゃん………
そして総介は爆発しろ!!!
カシャン
タタタタっ!
「!!!三玖っ!!」
「えっ………!?」
途端に聞こえてきた音に、総介は直ぐに我に帰り、三玖を後ろに庇い、音のした方向へ注意を向けた。
「そ、ソースケ?」
「…………」
突然ことに、三玖はつい今まで三玖に向けていた優しく、柔らかい表情ではない。『鬼童』としての、敵を警戒する厳しい表情で、音のした方を向いたまま思考する。
(シャッター音?どういうこった?何でわざわざんなことを………もう既にいねぇみてぇだが……)
殺気は全く感じなかったし、今現在も周りに気配は無い。聞こえたのは、カメラのシャッター音と、そのまま走り去る音。それらは明らかに自分達に向けられたものだろう。自分達が互いに夢中になっているところを、静かに近づいて、カメラのシャッターを切った。そしてすぐにその場から走り去った。少し走れば、人混みのある場所へと出る。追ったとしても意味が無いし、何より三玖を置いて追うのは良策ではない。総介だけを誘き寄せる餌の可能性も充分ある。そうなれば今の三玖は無防備。攫いたい放題だ。
とにかく今は、三玖を安全に姉妹、そして海斗とアイナのもとへと合流させなければ………
「………三玖、パンは後で美味しく食べさせてもらうよ。今は元の場所に戻ろう」
「う、うん………」
二人はそのまま立ち上がって、三玖の座る場所に敷いていたタオルと、パンの入った紙袋をカバンに直してから、その場を離れ、人気のある場所へと移動を始める。
その途中、不安がる三玖に、総介は肩を抱えて、
「大丈夫。君は必ず護るから」
と耳元で優しく囁いて、不安を露わにする彼女を落ち着かせる。
優しくも、強い決意に溢れた言葉が、彼女の戸惑いや不安を溶かしていった。
「うん……ありがとう」
総介は大袈裟な動きはせずに、周りを目線のみで警戒し、三玖は総介の手を自然と握りながら、自身の前に危険を承知で立ってくれる『侍』を見つめながら、歩幅を合わせて、二人で頂上のルート口まで戻っていった。
修学旅行一日目昼過ぎ。まだまだ始まったばかり………
三玖の一世一代のパン渡し。その直前に新たなトラブルが……
起こるわけねぇだろうがぁぁああ!!!
毎度おなじみイチャイチャラブラブチュッチュッイヤンバカンだよ!お前ら全員、甘々の世界に引きずり込んで糖分過多にしてやろうかァァア!(閣下)
修学旅行編を書く際は、作者も京都に行って直接色んなところを見てから書きたかったのですが、タイミング悪く、まとまった休みが取れずなので……今回は色々な観光の案内サイトを参考にさせて頂きました。
機会があれば是非行ってみたいと思います(関西在住なので結構近いです)。
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
次回はとある子からの視点で書きたいと思います。