世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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UA180000突破しました!ここまでごらんになってくださった皆様、本当にありがとうございます!

さて、今回は総介と三玖の話です。そして今回の話で修学旅行は終了となります。

ちなみに、今回序盤で出てくるサービスが実際映画村で行われていたかは不明です。もしかしたらこの話だけのオリジナルかもしれないのでご了承ください。

そして総介が出会った人物とは……


86.鬼の旅路はまだ続く

………時間は少し遡って…………

 

 

 

一花が風太郎を追って一人で必死こいていた頃、こちらのバカップルはというと………

 

 

 

「扮装の館………」

 

「要は昔の衣装を着れる体験ってことだね」

 

総介と三玖の二人は、『時代劇 扮装の館』の入り口に来ていた。ここでは、どうやら昔の時代の人たちが来ていた着物や衣装の着付けを体験できるようだ。

 

「折角だし、俺たちもやってみる?」

 

「うん、やってみる」

 

総介が三玖からの同意を得て、2人は入り口の受付の人に声をかけた。

 

「すんませ〜ん、着付け体験、2人お願いできますか〜?」

 

「あっ、はい!では、どちらの衣装にいたしますか?」

 

「一覧カタログとかあります?」

 

「お待ちくださいね……はい、こちらの方をご覧になってください!」

 

そう受付の人に言われ、2人は衣装のカタログを渡された。2人はしばらくカタログの中を見て、先に三玖がどの衣装にするか決めたようだ。

 

「………じゃあ、私はこれで」

 

「はい、かしこまりました!ご用意いたしますので、少々お待ちください!」

 

そう言って、受付の人は後ろの暖簾の向こうに消えていく。

 

「………!!マジで?」

 

すると、総介がカタログを見ていると、何かを見つけたようだ。

 

「?どうしたの?」

 

三玖が覗きこもうとするが………

 

「おっと。どうせなら、お互いの衣装は着てから見せ合わない?三玖の着付けが終わるまで、俺は外で待ってるから」

 

総介が手のひらを三玖の前に出して見えないようにする。そう言われた三玖は、ほっぺたをプクーっと膨らませながらも(かわいい)、理解をしました。

 

「むぅ〜……でも、少し恥ずかしいけど、面白そう。うん、やってみよう、ソースケ」

 

「よし。じゃあ先に着替えておいで。三玖が着付け終わった後で、俺が中に入るから」

 

「うん、わかった!」

 

「お待たせいたしました!ではこちらの方にどうぞ」

 

総介の提案もあり、先に三玖の着付けを待つ事にした総介。そのまま更衣室へと向かった彼女を見届けると、彼は一旦外に出て彼女が着替えるのをしばらく待った。

 

 

 

 

やがて、着付けを終えた三玖が出てきた。

 

その姿に、総介は幾度となく見てきた彼女に、改めて見惚れてしまった。

 

濃い色の着物に、全身には椿や桜などの花があしらわれている。頭には髪飾りも付けて、それが見事にマッチしている。ただ、草履の底は高く、そのせいで三玖は歩くのがおぼつかない様子。だがそれもいい。

 

そして、三玖のチャームポイントのヘッドホンを首にかけておらず、セミロングの髪をそのまま下ろしている。

 

 

「変……じゃない?」

 

頬を赤くしながら聞いてくる三玖。一言で言うとめっちゃかわいい。いや、かわいいと言うよりも、美しい………

 

「………綺麗だよ。本当に、その時代のお姫様みたいだよ」

 

「そ、そんなっ……そんなこと……」

 

「本当に、綺麗だよ………」

 

「………あうう」

 

三玖の着物姿に見惚れながら、口から何度も綺麗だという言葉しか言わない総介。彼女は愛する人の褒め殺しに、思わず真っ赤になった顔を覆ってしまう。

これまで、浴衣や正月の着物姿(写真のみ)の彼女を見てきたが、こうしてしっかりと着付けしてもらえば、こうも美しく化けるものなのか………

 

 

「つ、次はソースケの番………」

 

「う、うん、そうだね。行ってくるよ」

 

「行ってらっしゃい」

 

もうちょっと見ていたい気持ちもあったが、それは自分が着付けしてからでいいかと、名残惜しくも総介はそのまま自身の着付けに向かうことにした。

 

 

「すんませ〜ん。俺は……これってまだあります?」

 

「こちらですね。はい!期間限定の特別な衣装となっております!」

 

「レプリカとかっすか?」

 

「そうですね。実際着られておりました衣装の素材そのままとなっております」

 

 

 

「マジでか………じゃあコレ一択で」

 

「かしこまりました!少々お待ちください!」

 

そして総介が、着る衣装を受付に告げてから、しばらくして彼も更衣室へと入っていった。

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

(ソースケ、まだかな………)

 

それから時間が少しだけ待ち、三玖が外で待っていると………

 

「お待たせ〜」

 

「!」

 

聞き慣れた声が聞こえた。どうやら着付け終えたようだ。出入り口から出てくると、三玖は思わず声を上げてしまう。

 

「!そ、ソースケ!?それって………」

 

「うん。期間限定みたいで、丁度今あったから、コレにした」

 

彼の着ている衣装は、他の人たちが来ている戦国や江戸時代の衣装とは一風変わっていた。

 

 

黒の半袖シャツ、長ズボン上下に、履き物は草履ではなく、インナーと同じ黒いブーツ。その上から、袖口が水色の波があしらわれた白い着物を纏っているが、片方の腕は袖に通さずに羽織っており、右側の腕は剥き出しの状態。腰には帯とベルトの両方を止めている。

そしてそのベルトの左側には、『洞爺湖』と柄に書かれた木刀が差しており、極め付けは、総介の髪が、銀髪になっていた。いや、正確には銀髪のヅラを被っているだけである「ヅラじゃない桂だ!」ん?なんか言われたような……まぁいいや。

 

 

 

ここまで説明すればお分かりだと思うかもしれないが、彼の着付けた衣装はまんま銀髪天然パーマ侍『坂田銀時』なのである。

 

「死んだ魚の目までそっくり………」

 

「いや、そこはやめてくんない?」

 

三玖も、総介の家に置いてある『銀魂』を読ませてもらったことがあるので、彼の格好を見てそのまま納得がいく。

 

「去年『銀魂』の実写版が公開されて、その撮影をこの映画村で行ったから、そのキャンペーンで着付け衣装として置いてあったみたいだよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「上杉がいたら新八の格好させるつもりだったんだが……ったく、ここ一番で使えねぇ奴だぜ」

 

「ひ、酷い……」

 

相も変わらず外道な総介。というか、銀時の格好も相まって、余計彼に近い雰囲気を醸し出している。

 

「ま、ここで突っ立ったままもアレだし、せっかくだからこの格好のまま色々楽しもう」

 

「うん!」

 

総介の言葉に三玖も頷き、2人は衣装を着たまま、映画村内を散策していった。

 

 

 

………………………………

 

 

「ねぇ、あの人の格好、シャツとズボンの上に着物って変なの」

 

「おい、アレ銀さんじゃないか?」

 

「本当だ。目も死んでるし、間違いない」

 

「いや〜、死んだ魚の目まで忠実に再現してるなんて、レベルが違うな〜」

 

 

 

 

 

 

「………目は自前だってんだコノヤロー」

 

「ふふっ、でも本当に目までそのままだよ」

 

「嬉しいような悲しいような………」

 

2人は、周りから注目を浴びながらも(主に総介のせい)、映画村を見て回って楽しんだ。

 

お土産屋さんに寄ったり、伊達政宗の甲冑を着た人と写真を撮ったり、弓矢の的当てで一喜一憂したり等、今後長く2人の思い出に残るくらいの時間を共に過ごした。

 

 

 

そして、その時間もあっという間に過ぎて………

 

 

「楽しかったね」

 

「もうちょいあの格好でもよかったんだけどな」

 

時間が経ち、2人は着付けした衣装を返却して、元の姿のまま手を繋いで映画村内を歩いていた。

 

 

「どこかでお茶する?」

 

「うん。私も、少し休みたい」

 

どこか休めそうな茶屋的なものを探そうとした総介だったが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!!!」

 

「?ソースケ?」

 

総介の顔が、一瞬にして変わった。その目は、鋭くなったまま、正面を見つめている。

そして三玖がら彼の視線に沿って目の前を見てみると、一人の人物がこちらに向かって歩いてきた。

 

やがて、2人の数メートル手前で立ち止まる。

 

 

 

 

 

「…………あの人」

 

三玖はその人物に、見覚えがあった。会っている、というか、春休みに、その人を見たことがあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大門寺邸に初めて連れて行ってもらった日に。

 

 

 

 

 

あの時の白いコート状の服とは違い、今は紫色の花があしらわれた白い着物、両方の腕に袖は二の腕までしか無く、肘から手首まではアームスリーブのようなものを付けている。そして左手には、鞘に収められた日本刀を直接所持しているが、おそらくそれは『本物』だろう。しかし、映画村ということもあり、それを持っている見た目だけは不思議ではない。

 

そして、長い黒髪を靡かせ、お人形のような無表情のまま、目にハイライトを宿している彼女は、総介に向かって口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………元気そうね………『鬼童』………」

 

 

 

 

「………何でアンタがここにいんだ………」

 

 

 

 

彼女こそ、海斗の父、大門寺大左衛門の妻である『大門寺天城(あまぎ)』の側近にして、大門寺家対外特別防衛局『刀』の中でも選りすぐりの戦闘集団『懐刀(ふところがたな)』の1人………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艶魔(えんま)今野綾女(こんのあやめ)だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾女に遭遇した総介は、三玖を近くの番傘が立ててある長椅子に座らせ、お茶と茶菓子を買って彼女に与えた後、彼は綾女を近くの建物の隙間に連れて行った。いや、やらしい意味じゃ無くて、基本的に『刀』の話は誰かに聞かれるわけにはいかないのである。

 

 

総介と綾女は互いに、建物の壁に背を預けながら向かい合う。

 

「………まさかアンタが京都(ここ)に来てるたぁな。天城さんのこたぁいいのか?」

 

「……私が京都に足を運んだのは、その天城の命令」

 

「?どういう事だ………」

 

綾女から事情を聞けば、こうだ。

 

修学旅行に行った海斗を心配した天城が、こんな事を言い出した。

 

 

 

 

 

『せっかく海斗の修学旅行だというのに、あの子の青春の思い出を下等な【霞斑(ゴミ虫)】のせいで無駄にさせるわけにはいかないわ。

綾女、【霞斑(ゴミ虫)】共の残党がいれば、全て根絶やしにしてきなさい。もちろん海斗にはバレないようにね♡』

 

 

 

 

 

「………という訳よ」

 

「………はぁ、剛蔵さんもだが、天城さんも天城さんで親バカまっしぐらだなオイ……ってか、せめて言ってくれよ……」

 

天城は、一人息子の海斗をこの上なく溺愛している。それはアイナの父親の剛蔵のような、ストレートなものもそうだが、彼ほど表には出さない。彼女は裏から工作して愛しい一人息子の邪魔者を徹底的に排除するという、響きだけ見ればメンヘラ親バカの典型だ。

でもまぁ、お見合いとかセッティングしたり、二乃に何かしらの興味を持ったりするあたりは、ちゃんと考えているようで、剛蔵よりはマシ………なのだろうか?

 

 

「んで、俺らの知らねぇところで、アンタは『霞斑』の残党狩りをしてた、と?」

 

「……そう天城に言われて来てみたけど、残念ながらもう京都に『霞斑』はほとんどいなかった。関係があったとしても末端の末端。残っていたのは最下層の下請けばかりよ………一応それも全て潰したけど」

 

「いない、か………本丸の拠点は、既に移動した後って訳か」

 

「………その事で、昨日『朧隠(おぼろがくれ)』から情報が入った」

 

「!剣一さんから………?」

 

海斗の父、大左衛門の側近である『片桐剣一』。大左衛門の近侍としての仕事をこなす一方、自ら各地で忍として情報収集を行っている。そんな彼から、綾女に一報が入ったとのこと………それは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『霞斑』は、東アジアの大国の力を、本格的に手中に納め始めている」

 

「東アジアの大国………はぁ、そういう事か。まぁよくよく考えりゃあ妥当だわな。奴らの双方に利のあるもっともな同盟ってもんだ」

 

 

東アジアの大国………今日まで幾度と無く日本の領海へと侵入して牽制している彼の国………それが『霞斑』と手を組む……いや、どちらかが一方を従えるのか……いずれにせよ、厄介なことに変わりは無い。

 

 

この世界において、日本という軍隊を持たない国家が何故、東アジア諸国、さらには北に存在する超大国から侵略をされないのか………

 

第二次世界大戦後の平和条約?

 

違う

 

それとも背後にいるアメリカとの睨み合い?

 

それも違う

 

第三次世界大戦への発端となる懸念?

 

 

それでも無い………

 

 

それらは表面上で語られる理由でしかない。真の歴史とは常に、表の歴史の影に隠れて動き続け、誰にも知られずに記されてゆくもの………

 

 

 

 

 

彼らが日本に侵攻しない理由、侵攻出来ない理由…………

 

 

 

 

 

 

それこそが『大門寺』の存在だった。

 

 

 

 

 

さらに細かく言えば、現地球上での最強生物『覇皇』大門寺大左衛門陸號の存在が、東アジア諸国にとって、越えることの出来ない壁となって立ちはだかり、本格的な侵略には乗り出せないでいるのだ。

 

たった1人で軍隊の師団を複数相手にしながらも、暇潰し程度で全滅させられる大左衛門(しかも無傷)。世界中の軍事力を結集させたとして、彼を止められるかどうかも怪しい………

そんなチートにチートを重ねたご都合主義キャラというべき男の絶対的なまでの力、そしてそれらの周りを固める、大門寺が誇る一騎当千の精鋭部隊『刀』。さらに、その中でもたった一人で軍事要塞を制圧できる戦闘力を持つ選ばれし者達『懐刀』、これらを前にして、東アジアの大国は、彼ら『地球上最高戦力』を相手に、無条件で白旗を上げることしか出来なかった。しかし、国家として侵略すべき国のいち個人、そしてその下の私設部隊に屈服するという、世界有数の大国としてのあまりの屈辱は、彼らにとって実に耐え難いものであった。

彼らに出来ることがあるとすれば、ひたすら機会を待つことと、時々日本の領海や領空に侵入するというささやかな抵抗を行って、大国としての威信を失墜させずに維持し続けることだけだった。

 

 

 

 

 

そして今、大国は恥を忍んでまで敵国の『霞斑』という一族を、対大門寺の切り札として手に入れようとしている。いや、それでさえ、『霞斑』に利用されるという事なのかもしれないが、『霞斑』にとって『大門寺』は、一族滅亡まで追い詰めた程の忌々しい宿敵。そんな彼らを滅ぼせば、東アジア諸国は、それを機に一気に日本へと侵攻出来る。

 

 

『霞斑』と東アジア諸国の国々。

 

 

この二つが手を結ぶのは、時間の問題であった。

 

 

「………しかし、今更『霞斑』をどうして欲しがるもんかねぇ?……アイツらは既に虫の息っつっても差し支えねぇだろ………」

 

「………あなたもわかっているでしょう、『鬼童』?」

 

 

「…………」

 

「大国が求めているのは『霞斑』じゃない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雅瞠(がどう)……あの男の存在よ」

 

その名を聞いた総介の眉間に、徐々に皺が出来てゆく。

 

 

「………ヤローは」

 

「本当に死んだと思ってるの?大左衛門すらも出し抜いて生き延びた男が、本当にあの程度で、冥土に堕ちたとでも思ってるのかしら?

 

 

 

 

 

あなたも薄々は考えていたはず

 

 

 

 

 

近頃の『霞斑』の動きは、昔とは明らかに違う

 

 

 

 

 

雅瞠が現れてから、霞斑は瞬く間に勢力を増した

 

 

 

 

 

力を蓄える術を身につけ

 

 

 

 

 

 

その名の如く『霞』のように消え

 

 

 

 

『斑』のように現れる

 

 

 

 

 

今の『霞斑』を作ったのは、間違いなく雅瞠

 

 

 

 

『霞斑』が今でも活動を続けていられるのは、雅瞠という切り札が、今も裏で動かしているから

 

 

 

 

あの男が存在しているからこそ、この世で唯一、大左衛門と対峙して生き延びたと言われている男が身を置いている『霞斑』を、大国は喉から手が出るほど欲しがっている

 

 

 

 

 

大国が『霞斑』と組む理由は、それしか考えられない

 

 

 

 

 

雅瞠に執着するあなたなら、そこまで予測出来ているはず」

 

 

「…………」

 

 

総介はそのまま、下を向いて黙り込む。

 

綾女の言う通り、全て頭の中で想定していた。彼女が剣一の情報を話した直後から、大国が雅瞠を求めて『霞斑』に手を伸ばしたことに、すぐにたどり着いた。

否定はしない。どこかで生きているとは、薄々考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、奴には生きてもらわなくてはならなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母を目の前で殺した男を葬るのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰にも渡すつもりは無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは今でも変わらない

 

 

 

 

 

 

 

しかし………

 

 

 

 

「………生憎だが、俺には今、護らなきゃいけねぇもんがある。

 

 

 

 

 

何者にも代えられねぇ、この世が終わろうとも護り通さなきゃいけねぇもんがな。

 

 

 

 

 

ヤローが生きていたとして、それを放っぽり出してまで復讐しようなんざ思わねぇよ

 

 

 

 

 

 

 

 

そりゃ機会がありゃあいずれ母さんの復讐も果たすさ

 

 

 

 

 

 

 

 

だがそれよりも今は………

 

 

 

 

 

 

 

 

アイツらを………三玖を護らなきゃならねぇ

 

 

 

 

 

 

 

 

何があろうが……何をしょうが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の俺にとって三玖は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何もかも………『全て』なんだ」

 

 

 

 

 

「………だとしたら、尚更。雅瞠は『彼女』を狙ってくるわ。『あの時』に見ることが出来なかったもの以上の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『命の花』を求めて」

 

 

 

 

 

 

「………させねぇさ」

 

 

「…………」

 

 

「次にヤローが三玖や、『アイツら』に手ェ出そうとしてくるもんなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今度こそ俺が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腐り切ったヤローの臭っせぇ息の根を止めるだけだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんを殺した分までな」

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

総介は三玖と結ばれてからは、雅瞠が何処かで野垂れ死ぬならそれはそれで仕方ないとは考えていたが、もしも再び自分の目の前に現れようものなら、奴の命を誰にも譲るつもりは無い。

同じ『懐刀』の『暴獣』長谷川厳二郎も、雅瞠との殺し合いを望んではいるが、あの男の場合はただ単純に『強い奴と殺り合えるから』という戦闘狂として至極真っ当な理由からくるものだ。

自分の復讐を正当化するつもりは毛頭ありはしないが、自身の目で奴を捉えたならば、たとえ先客がいたとしても関係無い。

 

 

 

 

 

 

 

ただ一心に、自身の手で奴を地獄の閻魔の餌にするのみ

 

 

 

 

「………話はそんだけか?」

 

「………ええ………後は二人にも伝えておいてちょうだい」

 

「どうせなら初日に聞きたかったもんだぜ、ったく………」

 

この三日間、とんだ取り越し苦労をしてしまった。特に初日の盗撮の件があってからというもの………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ん?盗撮?

 

 

「私は天城のもとに戻るわ。それと、土産に宇治抹茶ドーナツでも買ってきてちょうだい」

 

「………いや、んなもん自分で買ってけよ」

 

「何その間は?」

 

「こっちの事情で思い出したことがあってな。アンタには関係ないことだ」

 

「………そう。無いなら行くわ」

 

 

そう返事をして、綾女はそのまま少し暗い路地から出て、映画村内へと消えていった。

しかし総介は、そのまま考えを巡らせる。

 

 

霞斑の残党じゃ無いとしたら、初日の昼に自分と三玖を、そして夜にホテルで二乃と四葉と五月にカメラを向けた盗撮犯は、一体何なんだ?

奴らとは関係の無い、別の者の仕業か………

だが、証拠や目撃証言も無く姿を消したと言うのが、あまりにも解せない………

 

 

 

総介が盗撮犯のことを考えていると………

 

 

「………ソースケ?」

 

「!………三玖」

 

 

三玖が自身の元にまで来てくれた。どうやら綾女が出てきたのを見て、自分もとまで来てくれたようだが、実際は綾女が座って待っている三玖に声をかけたのだった。

 

 

 

 

「………終わったわ」

 

「えっ!あ、はい………」

 

それだけを言ってその場を去ろうとする綾女だったが、三玖に背を向けたまま立ち止まり……

 

 

 

 

「…………あなたは、『鬼』が『人』でいられる最後の理由」

 

「え………」

 

「あなたがいなくなれば、あの男はもう『人』でも『鬼』でもなくなる………」

 

「…………」

 

その後のことは何も言わずに、綾女は再び歩みを進めてその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、長いこと待たせてしまって」

 

「ううん、そんなに時間は過ぎてないから、大丈夫」

 

三玖にとって、綾女が最後に言ったことは気にはなったものの、自身が総介の側に居続ければ、自ずと答えは出てくると感じていた。

 

 

 

「………ソースケ」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

彼女は総介の顔を見上げ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は………ずっといるから」

 

 

「………」

 

 

「ソースケがどうなっても………どうしようとしても………

 

 

 

 

 

 

 

私だけは、ずっとソースケのそばにいるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の両手を正面から握りながらそう伝える三玖を見て、総介はなんとも言えないほど穏やかな気持ちになる。

 

 

 

 

 

 

「………ありがとう、三玖」

 

 

 

 

どんなになろうとも、彼女は隣に立ってくれることを誓ってくれる

 

 

 

 

 

 

 

この子がいてくれるから………

 

 

 

今の俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、一方的に護るだけではない

 

 

 

 

『私も、ソースケを護りたい』

 

 

 

 

 

 

 

そう自分に言ってくれた三玖は、自分に全てを与えてくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

取り戻させたくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

本気でふざけて笑うような感情を

 

 

 

 

 

 

 

 

ただの学生として過ごすだけの日常の時間を

 

 

 

 

 

 

 

この世で最も大切な人を愛する心を

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを破壊し尽くす『鬼』ではなく、大切なものを死んでも護ろうとする『侍』の魂を

 

 

 

 

 

 

 

 

この子と交わることで、取り戻す機会をくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雅瞠を地獄に送るのも、『鬼』として為すべきことだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それよりも今は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『侍』として、何があろうともこの子だけは………

 

 

 

 

「………まだ時間あるから、残りの行ってないとこ、まわろうか」

 

「うん」

 

2人は再び、指を交互に絡めながら手を繋いで横に並びながら歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の残り時間も、2人は映画村内の様々な施設をめぐって楽しみ、やがてそれも終わりの時がやってきた。

 

 

「………なんでお前らまでいんだ?」

 

「まぁ、色々あってね」

 

「話せば長くなります………」

 

「みんなも来てたんだ………」

 

 

何故か海斗とアイナ、そして一花以外の3人も映画村に来ていることに少しばかり驚いた総介だが、風太郎の方を見ると、一花がやたらと近くにいるのを見て、大体のことを察したようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな。つまり上杉、お前は長女さんをとりあえずはセ◯レということで側に置いておく。そういうこったな?」

 

 

 

「死にさらせ」

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一同は、映画村を後にし、京都駅と向かうバスへと乗っていた。

 

 

『本日はご乗車いただき、ありがとうございます。まもなく京都駅に到着いたします』

 

 

 

京都駅までのバスの中で、総介と海斗、アイナの三人は映画村内のことで話をしていた。

 

 

「………そうか。母さんが綾女さんを」

 

「ああ。一応根こそぎ『掃除』はしたみたいだが、小せえ埃しか見つからなかったそうだ。目当てのもんはとっくの昔に遥か彼方へフライアウェイしてたんだと」

 

「………まぁ詳しいことは帰ってから聞くとするよ」

 

「………しかし、そうなると、初日の『アレ』は一体……」

 

『アレ』とはもちろん、盗撮犯のことだ。綾女京都にて秘密裏に霞斑の残党狩りを行っていたということもあり、五つ子は無事に修学旅行の日程を終えることが出来たのだが、初日の昼に三玖と総介が、そして夜にホテルで二乃、四葉、五月が遭遇した盗撮犯の件が、未だ解決していなかった。

 

「そうなるわな……それだけが明らかにならずに終わっちまったな………」

 

すると、前方の席から………

 

 

「上杉君、聞いたかい?例の盗撮騒動」

 

「悪ィ、ミスった」

 

「………やっぱお前か………」

 

謝る前田に、風太郎は大筋を理解したようだ。

 

「全く、空気を読みたまえ」

 

「つい気合を入れすぎちまった………」

 

 

 

 

 

 

「はぁ………まぁいい。俺が頼んだんだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ〜?なになに〜?面白そうな話してんじゃねぇか〜、うーえすーぎくーん?」

 

 

「是非私にも詳しく聞かせてほしいものですね………う・え・す・ぎ・さん?」

 

 

「」

 

 

と、横から総介とアイナがぬぅっと顔を出して現れた。総介はいつもの外道な笑みを。アイナはゴミを見るような冷たい目をしている。

 

 

 

全部聞かれて、尚且つほとんどバレたようだ。

 

風太郎はブリキ人形のように、ギギギと首を横に向けて汗だくになりながら2人に釈明しようとする。

 

 

 

 

「………ま、待ってくれ、浅倉、渡辺さん。これには深いふか〜い訳が………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テンプレな言い逃れしようとしてんじゃねぇよコノヤロー」

 

「問答無用です。死んでください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アアアアアアアーーーーーッッッ!!!!!」

 

 

 

「………ははっ、本当に面白いね、上杉君は」

 

 

風太郎の悲鳴がバス内にこだまする中、海斗が窓の外を見ながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

結論………全部風太郎が仕込んだことでした。

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

それから、ようやく京都駅にバスは到着し………

 

「むむ……行きより乗車人数が増えてるような……」

 

と、ゴリラ顔の先生が不思議に思う中………

 

 

 

 

「は、はい、チーズ………」

 

 

 

カシャン

 

 

総介とアイナによって心身ともにボロボロにされた風太郎がインスタントカメラで撮った最後の写真は、最後列で仲良く眠る五人の五つ子達の寝顔だった。

 

 

 

 

それともう一枚、同じアングルで、その五人を囲うように、死んだ魚の目の男子と超絶イケメン男子、金髪サイドテール美少女の三人がカメラにピースをする写真も一応撮った。

 

 

 

 

「し、死ぬ………」

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行から帰ってきて時が経ち、風太郎はとある池にいた。

 

 

「これ、渡しておいてくれ」

 

「え?何これ?」

 

「誕生日のお返し」

 

 

そこで彼は、『零奈』に会っていた。この池は、彼が写真の子『零奈』と再会した場所。風太郎は彼女に、一冊の冊子を渡す。

 

 

その中には………

 

 

「!………アルバム」

 

 

無数のスナップ写真が入っていた。どれも被写体は五つ子であるが、いくつかに総介や海斗、アイナも入っている。

 

「俺、金ねぇし、五人分も用意できないんだ。ってことで、作らせてもらった。

武田と前田にも協力してもらって完成した、お前たち五人の思い出の記録だ」

 

写真には、五つ子の後ろ姿や、団子を食べる五月と三玖、並んで歩く一花と四葉、楽しそうに話をする二乃と四葉………

 

 

総介とイチャイチャする三玖、アイナや海斗と仲良くしている二乃なども入っている。

 

 

「そういえば………色んなことがあって、五人で写真撮ってなかったかも」

 

最後のバスでの寝顔を見ながら、『零奈』は思いに耽る。

 

「ありがとう、風太郎君。皆に渡しておくね」

 

「……てっきり、お前も京都で何か仕掛けてくると思ったんだが………」

 

「わ……私なりに仕掛けてはいたんだけどな〜……」

 

「………まさか、一花のことか………?」

 

「さあ〜、教えられませ〜ん」

 

「………まぁともかく………

 

 

 

 

零奈、お前には感謝してる」

 

「…………」

 

「あの日、お前に会わなければ、俺はずっと一人だったかもしれない。お前のおかげで今の俺がある。

六年ぶりの京都……あっという間に終わっちまったが、将来的には良い思い出になると思って作ったんだ………

 

 

 

 

 

ありがとな」

 

 

あの日、六年前の一人ぼっちだった京都は違い、風太郎の周りには沢山の人がいた。

 

五つ子………前田と武田………そして、総介、海斗、アイナ。

 

 

かなり遠回りになってしまうが、こんなにも周りに人がいてくれるきっかけとなったのは、間違いなくあの日に『零奈』と出会えたからだ。

 

 

 

その礼を、はっきりと彼女に伝えて、風太郎はその場を去っていった。

 

 

 

彼がいなくなってから、しばらくして………

 

 

 

「五月」

 

 

「!」

 

 

やがて、一人の少女が『零奈』………もとい五月に近づいてくる。

 

 

 

「………勝手な真似してごめんなさい

 

 

 

 

ですが……打ち明けるべきです

 

 

 

 

 

 

 

 

六年前、本当に会った子はあなただったと

 

 

 

 

 

五月がそう話す視線の先にいた少女………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中野四葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は、五月の言葉に、表情を変えずに、こう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん

 

 

 

 

 

 

これでいいんだよ」

 

 

 

 




綾女の映画村での服装は『洛陽決戦篇』の今井信女そのまんまです。
今回で修学旅行は終わりですが、第七章は終わりではありません。もう少し続きます。
今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
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