世界でたった一人の花嫁と銀ノ魂を持つ男   作:ハムハム様

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『BLEACH』千年血戦篇のアニメ化が決定していますが、ここで敵となる滅却師『星十字騎士団』の能力を改めて一部おさらいしてみると………

A『全知全能(ジ・オールマイティ)』………【未来予知、未来改変】。よくある二次小説の転生特典ばりに作品崩壊レベルの禁忌チート能力。ていうか【未来改変】とか、創作界隈で出したらもうおしまいじゃね?

B『世界調和(ザ・バランス)』………早い話が、【自分の不幸(ダメージ含む)は相手に押し付け、相手の幸運は自分のものにできる】という、控えめに言ってチート過ぎる能力。

M『奇跡(ザ・ミラクル)』………要は【ダメージを受ければ受けるほど意味不明レベルででっかくなって強くなる】という、こちらもバトル漫画では禁忌レベルのチート能力。

C『強制執行(ザ・コンパルソリィ)』………自分の神経を無機物有機物色んなものに入れて無理矢理操ったりする。敵をバキボキ折り畳んでしまい、その情報を得てほぼ無限に成長できるという触れたら終わり系チート能力。

D『致死量(ザ・デスディーリング)』………致死量操作。分かりやすく言えば、自分は猛毒をいくら浴びても死ななくなり、相手は水一滴でも殺せるという、条件付きであるが、発動させたらおしまいのチート能力。

X『万物貫通(ジ・イクサクシス)』………銃の射程上は等しく貫通するという『結果』を引き起こす。しかも自分は相手の攻撃は貫通して効かないという、他のバトル漫画なら間違いなくラスボスを張れる理不尽系チート能力。

V『夢想家(ザ・ヴィジョナリー)』………想像したことが現実になる。だからこんなん出したらバトル漫画終わっちゃうって!ってくらいのチート能力。


久保先生、自重しろし!!!!!
よくこんな奴らに勝てたもんだな、護廷十三隊………


90.覇を極めし者と鬼の子

先程まで青く澄み渡っていた空が、次第に灰色に染められてゆく。雲に覆われた天の下で、2人とも異様な空気の中で動かずに対峙する。

 

 

 

 

 

「フン、若鬼が…………一丁前に出し惜しみか。随分と偉い身分になったもんだな。えぇ?」

 

「…………」

 

 

「『あの日』に『目醒め』てから、お前は天を衝かんが如く、『俺達』の領域へと昇ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『憎悪』を知り

 

 

 

 

 

 

 

 

『復讐』を知り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『虚無』を知り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして『色』を知った

 

 

 

 

 

 

今のお前は、あの時とは全くの別の存在となり、足を踏み入れつつある

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、まだだな(・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ足りねェ(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

お前が本物の(ソレ)に至るまでには、まだ」

 

 

 

「あの………ゴチャゴチャワケわかんねーこと、壮大っぽく言うのやめてくんないっスか?」

 

 

大左衛門のよくわからない長台詞を、総介はため息を吐きながら途中で遮る。

 

「…………」

 

「こちとら某海賊漫画の伏線考察すんので手一杯なもんでね。匂わせ発言がこれ以上増えっと、頭パンクしちまいそうなんだ。

 

 

 

言いてぇことはストレートに言うか………

 

 

 

 

男らしく、『コレ』で語り合いましょうや、『総帥』」

 

大左衛門に、片手で握った刀の鋒を向けると、その先にいる巨大な漢が、少し笑いながら横を向く。

 

 

 

「フッ………だな。らしくもねぇ、大分語り過ぎた………嬉しかったもんでな。久しく顔を見た時の成長ぶりが………

 

 

 

 

 

よくそこまで昇ってきた」

 

 

 

 

 

「………恐悦至極でごぜぇま〜す」

 

 

 

 

 

 

 

「………話は終わりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()るぞ

 

 

 

 

 

その一言から決着まで、二人は一つも言葉を発さなかった。

 

 

大左衛門は、両手を斜め上に大きく広げ、初めて戦闘態勢をとった。

彼の周りの空間の歪みが、一層大きくなり、全てを圧し潰すような感覚が、総介と、縁側から眺めていた宗尊にも伝わってくる。総介はその光景を見て、ホッとした。

 

 

 

 

 

この場所に、最愛の人を連れて来なくてよかった

 

 

 

 

 

いつか宗尊に三玖を紹介しようと思ってはいた総介だが、本人でも気づかないほどのほんのわずかな悪寒が、彼女を救った。

今この瞬間、三玖がこの場にいれば、大左衛門から滲み出るあまりにも濃い殺気の波に耐えられない。一般人では、あの怪物の前に立つことすら許されない。

 

気を失うのみで済むか、或いは………

 

 

束の間の安堵の後、総介も刀の柄を握り直し、『鬼童』としての殺気を全開にした。

紅い鬼が、その牙を剥き出しにする…………

 

 

 

 

 

 

 

刹那、二人は動いた。同時に、空が光り、轟音が響き渡る。

 

 

 

空から自然発生した光が天の下を照らす中、大左衛門の拳、総介の刀がぶつかり合った。

 

 

 

二人を中心に、接触した瞬間の衝撃の波が拡がってゆく。石庭の石は全て吹き飛び、敷地内の草木はまるで台風が来たかのように靡き、塀や道場の屋根瓦はいくつも宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それと時を同じくして………

 

 

 

 

 

 

 

 

ー『暴獣』長谷川厳二郎ー

 

「………チッ、大左衛門の野郎、総介に喧嘩売りやがったか………アイツとの殺し合いも楽しみだったんだかな………ったく、死なねぇ程度に殺しやがれよ………俺の獲物なんだからよ」

 

 

 

 

 

 

 

ー『狂聖』アルフレッド=ショーン=ケラードー

 

「『神』と『鬼』は、交わらぬ運命(さだめ)…………しかし、それが『神』のご意志とあらば、私からは何も言うまい…………全ては『神』の召されるままに………」

 

 

 

 

 

 

 

ー『艶魔』今野綾女ー

 

「………やはり、貴方なら、今の『鬼童』はそう見えると思った………あとは、貴方が望んだ御馳走が皿の上から消えるか否か、それだけの話………」

 

 

 

 

 

 

 

ー『朧隠』片桐剣一ー

 

「主に従うのが、私の勤め………総介様………どうか御無事で………」

 

 

 

 

 

 

 

ー『金剛』渡辺剛蔵ー

ー『銀狼』片桐刀次ー

 

「………始まっちまったか………」

 

「………いいのか、剛蔵さん………アイツ、死ぬぞ?」

 

「大左の決めたことだ、これ以上は何も言うまい。それに、あそこには宗尊もいる。あいつなら、もしもの際は止めてくれるだろう」

 

「………だといいがな………」

 

 

 

 

 

 

 

ー『夜叉』御影明人ー

 

「面白そうだが、さすがに相手が総帥とあっちゃあ、俺でも出れねぇな………旦那、死なねぇでくだせぇよ………」

 

 

 

 

 

 

 

ー『神童』大門寺海斗ー

ー『戦姫』渡辺アイナー

 

「若様!」

 

「………分かっているよ、アイナ。嫌でも肌で伝わってくるよ。父さんと総介の事だろう?」

 

「!はい。ですが、これは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………まったく…………君にはつくづく妬けてしまうよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各地にいる強者達が、ただならぬ気配が流れて来るのを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

そして………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覇の頂に君臨せし者が、鬼の童と相まみえんとするか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其もまた………一興也………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!…………総介………」

 

 

宗尊は予め側に置いていた刀を抜き、衝撃を受けずに済んでいた。そこから見る光景は、かつて彼が育てた弟子が、かつて仕えた主、長年の同士と相まみえる姿だった。

 

 

 

 

総介は刀のみならず、五体全てを使い、大左衛門に攻撃を仕掛けている。

顔面を膝蹴り、鳩尾にトーキック、顎に掌底など、人体であれば、クリーンヒットすれば間違い無くダウンはとっている攻撃を繰り返す。そしてここぞとばかりに、刀で大左衛門の腰から反対の肩までを斬り上げる。

ただでさえ普通の人間ならば、生きているようなものではない。それも、『懐刀』による本気の一撃。その時点で、相手が肉の塊と成り果てるのは、彼らからすれば【よくあること】だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普通の人間だったなら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結構本気でやった筈だ。鼻は潰れ、痛みで呻き、顎は崩壊、最後は真っ二つ………容赦は一切したつもり無い。

だが、目の前にいるのは、鼻血を少しだけトロっと垂らし、服が斜めに裂けただけの男が、首をコキコキと鳴らしている様子だった。

 

 

 

マジでどうなってんだよコノヤロー………

 

 

 

膝蹴りから掌底までの流れで無傷なのは分かる………鼻血出しているけど。

 

 

だが、本気で真っ二つにするつもりで斬った。

 

 

 

 

それがただ、『着ていた服が裂けただけ』?イヤイヤイヤイヤ。日本刀だぜ?本当にそれだけ。

 

 

 

 

冗談も大概にして欲しい。

 

 

 

 

 

と、

 

 

「!!??」

 

 

大左衛門の拳が、こちらへと向かってくる。その速さたるや、一流のプロボクサーですら、その動体視力をもってしても避けきれないというほどの速度で迫って来る拳撃。

それを総介は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

刀で叩き落とした。

 

「!!」

 

 

いや、叩き落とすのが目的ではない。手の甲をから斬り下ろし、真っ二つにするつもりだった。にも関わらず、向かってきた拳は鉄がぶつかり合うような音を立てながら、軌道を変え、足元の地面へと着弾する。

 

まるで巨大な鉛玉が落ちたような衝撃音と共に、ぶつかった場所を中心に放射状に地面にヒビが入っていく。

 

 

それにより、隙が生じた大左衛門の眉間に、ほぼゼロ距離からの刀の鋒が迫る。その速度も、常人では認識不可な突きを、大左衛門はまるで予知していたかのように、首を傾けて躱した。が、頬を掠めたのか、頬から一文字の少しの切り傷が生じる。そして、彼が躱したその先には………

 

 

 

「!?」

 

 

総介の靴のつま先が、間髪入れずに顎へと入り、蹴り上げる。

渾身の一撃に、大左衛門の身体は再び宙に浮くが、そのまま身を翻して着地。

 

その次には既に、総介に迫り、拳を放っていた。

 

 

体勢の立て直しから攻撃まで、余りの速さに反応が遅れた総介は、避けきれないことを悟り、刀で身を守ろうとするも、大左衛門はそれごと総介を吹き飛ばした。

 

 

遠く離れた敷地の塀に、身体ごとめり込む。

 

「がっ!!………!?」

 

痛みに意識を振る暇もなく、大左衛門は追撃を仕掛けてくるが、距離が離れていた分、今度はすんでのところで躱す。彼の拳は、そのまま塀を突き破り、一部を崩落させる。

 

 

 

 

なんとか避けてゴロゴロと転がりながら、体勢を整えた総介は、それを見て

 

 

 

 

オイオイ………ラブコメにこんな化け物出しちゃいけねぇだろうがよ………

 

 

と心中ボヤくが、そうも言っていられず、『覇皇』はその巨大に似合わぬ速度で、総介へと迫って来る。

『鬼童』はそのまま、殺気を再び解放して、地球上最強生物へと挑みかかっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………総介………君は………」

 

 

二人の闘いを唯一目にしている宗尊は、その目を疑っていた。

今まで見てきていた『主』であり『同志』であり、長年の付き合いから『友』と言っても差し支えないで大左衛門。彼の事は、同じく『友』と呼べる男『渡辺剛蔵』が、大左衛門を理解する様に、宗尊もまた理解していた。

 

 

傲慢不遜、自身を最強と信じて疑わない、敵対した者を『例外』を除いて破壊の限りを尽くす、歩く闘争本能とも呼べる男(しかし妻には弱い)。

その気概に違わず、全てを殲滅、蹂躙し尽くす。彼の前では、鉄の板は紙屑に、刀や剣は棒切れに、弾丸は幼子が投げる礫となる。

そして大左衛門がその気になれば、投げた小石は万物を貫く弾丸となり、ただの硝子片は万物を斬り裂く名刀となり、何よりその拳は万物を破壊する砲弾となる。

 

 

 

まさに『覇皇』。その異名で呼ばれるのも、必然と思い知らされる。

 

 

 

 

そんな漢に、愛弟子が……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息子のような存在が、命かながらではあるが、なんとか食らい付いているのだ。

 

 

 

今の状況は、万人が見ても総介の劣勢であることは揺るぎない。宗尊にもそう見えている。しかし、そんなことは重要ではない。問題は『大左衛門の状態』だ。

 

『覇皇』が戦闘態勢をとって間もなく5分と経つが、未だ総介はその場に立っている。

 

一対一の場合、大左衛門はほとんど戦闘態勢に入らない。宗尊は、彼が最後に構えた場面を目撃したのは、『雅瞠』と対峙して以来である。

『懐刀』でも、未だ経験不足な『新世代の刃』達は遊びで圧倒でき、最も凶悪な『長谷川厳二郎』に対しても、面倒なのか、未だ本気を出さずにあしらっている。

 

 

それを、戦闘態勢、即ち今この瞬間大左衛門の殲滅対象に入った総介は、たった今5分を過ぎても、急所を受けずに、ギリギリ耐え続けている。

その身体能力も勿論だが、問題は、次の瞬間には命を散らすかもしれない緊張感、致命傷は避けて入るが、かすり傷ですら重い大左衛門の一撃、そして、今も絶えずに放たれている高濃度の殺気………

これらを真正面から受けながらも、反撃に転じての斬りつけ、殴り、蹴り、頭突き、あらゆる攻撃手段を駆使して闘い続ける彼の精神だった。

 

 

 

 

宗尊から見れば、完全に常軌を逸している。

 

 

 

『刀』に入った当初の実の息子の海斗ですら、父の本気には恐れ慄き、精彩を欠いてしまい、手も足も出なかったのだ(その時に大左衛門は天城にめちゃくちゃ怒られた)。

完全無欠な男ですら、本来の力を発揮できない濃度の闘争の中での殺気、殺意。

それを浴び続けて尚、総介は攻めることを止めなかった。

 

 

 

 

 

 

「………今の君を駆り立てるもの………それは一体………」

 

 

そう宗尊に呟かせた、総介の精神状態とは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ギャアア死ぬ!うおああ死ぬ!!マジで死ぬ!!なんで!俺がこんな目に!!ウワォ死ぬ!先生さっさと止めて!!イダッ死ぬぅうう!!!)

 

 

 

かなりいっぱいいっぱいだった。それでも、銃弾の速度の攻撃をいなして、何とか反撃し続けるあたりが、総介が異常なのは変わりないが………

 

 

 

「ゼェ、ハァ、ハァ、ぜェ、ハァ………ふぅっ………」

 

 

ようやく距離を取り、息を整える時間ができた。

 

総介の額からは、汗と血が垂れており、呼吸も乱れ、顔や身体の至る所に傷も出来ている、満身創痍の状態だ。

対して大左衛門の方は、いくつかの切り傷や、打撃の痕はありつつも、息一つ乱してはいない。

本来の総介の攻撃なら、既に100人ほどはとっくに葬ってはいるのだが、いかんせん相手が相手なので、致命傷はおろか、怯ませることすら出来ていない。というより、この状況が嬉しいのか、ニィっと笑みを浮かべながら、指をクイックイッと曲げて挑発している。

 

「…………」

 

それに乗る義理は無いのだが、行かなきゃそれこそ殺されるし、何よりも、地球上最強生物と自分自身の現在の『距離』、それが如何程かというのを確かめたいという、総介の中にある本能が、身体をそのまま前へと動かした。

最も、後者の方は本人には自覚は無いが………

 

 

総介が人間とは思えない速さで繰り出す剣撃、拳撃、蹴撃をいとも容易く躱し、彼の足首を掴む大左衛門。

 

 

「!?」

 

そのまま、掴んだ手を下に振り下ろし、総介を地面へと叩きつけた。

 

 

「ガフッ!!………ごぱぁ………」

 

衝撃で口から吐血する。気を失うことは無かったが、そのまま彼の視界には、大左衛門の拳が映った。

 

 

 

一瞬遅れれば潰されていた一撃を、本当にギリギリのところで寝返って避ける。

 

 

「………ほう」

 

 

 

思わず小さく感心してしまった大左衛門だが、総介はその隙を見逃さずに、横から斬り払おうとする。

 

しかし、大左衛門はそのまま丸太のような腕でガードしようとする。

 

 

 

が、

 

 

 

「!」

 

総介が斬りなぞった箇所から、ブシュッと赤い液体が吹き出した。それを見て、大左衛門は一瞬目を見開いた。

 

瞬間、総介の左の拳が、彼の顔面を直撃する。

 

 

「ぐおおおっ!!」

 

ほんの一瞬、ほんの一瞬に生じたひるみに、渾身の一撃をぶつけた総介。今この時、自分の頭がハゲてヒーロースーツを着ていなかったことを恨みながらも、全ての力を拳に乗せて、大左衛門の巨大を吹き飛ばした。

 

 

「ガハッ!ハァ、ハァ………ゲフっ!」

 

片膝をつき、頭、鼻、口から多量の血を流しながらも、刀を杖代わりにしながら大左衛門への殺気を一向に緩めない総介。

 

 

 

 

 

そんな彼の目の前に映る光景は、非情なものであった。

 

吹き飛ばされたものの、両手をついてバック転の要領で宙返りし、スタッと地面に足をつける『覇王』。

その顔からは、両方の鼻から血を垂れ流しつつも、まるで意に介しておらず、嬉しいのか、嘲笑っているのか、可笑しいのか、不気味な笑みを浮かべながらこちらを見続ける。

 

 

 

 

 

 

いや、もう勘弁してくれよコノヤロー…………

 

 

初期装備でミラボレアスに挑んでいるような絶望を感じながら、次の大左衛門の攻撃に備えて、警戒を張る総介。

その様子を見て、大左衛門はそのまま地面を蹴って、彼に迫ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでです」

 

「!」

 

 

二人が接触する直前で、ようやく宗尊が間に割って入った。

 

 

 

「これ以上の戦闘は、私が許可しません」

 

「………どきな。決着はまだついてねェ」

 

宗尊が間に入っても、戦闘を止めようとはしない大左衛門に対し……

 

「そうですか………ではこれで」

 

「せ、先生………

 

 

 

『ドスッ』

 

 

ガッ!?………」

 

次の瞬間、総介は何かの衝撃音とともに、その場に倒れて気を失った。

 

 

「これで、勝負も水入りですね」

 

「………剣神(けんじん)は健在のようだな」

 

「鍛錬を欠かせば、貴方を止める者はいなくなる。私も剛蔵も、充分理解しているつもりです」

 

「…………」

 

「それに貴方は、総介が倒れはしないことを知っておきながら、自らの愉悦のために、この子を追い詰めていった。もしこのまま続けていれば、貴方にいくつかの傷を与えたとしても、総介は………」

 

「………まぁいい」

 

十分楽しめたしな、そう呟きながら、大左衛門は何事も無かったかのように、背中を向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

「大左衛門」

 

その背中を、宗尊が呼び止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の彼は………

 

 

 

 

今の彼なら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『雅瞠』には勝てますか?」

 

 

 

 

「………聞いてどうする?」

 

 

「彼を、解放してあげたい。

 

 

 

 

 

 

 

呪縛から………

 

 

 

 

 

 

 

『あの日』から総介を縛っている因果から………

 

 

 

 

 

 

 

 

それだけです」

 

 

 

「………どうだろうな。

 

 

 

 

 

 

『ヤロー』は強さなんてもんじゃねェ………」

 

 

「…………」

 

 

 

「だが、俺がここまで血を流したのは、『ヤロー』以来だ。筋は悪くねぇと思うぜ」

 

 

 

それを最後の言葉にして、大左衛門はその場を後に…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ちなみに、施設の修理費は全て、貴方に請求します。あ、もちろん天城さんには報告しますよ」

 

 

 

「………マジで?」

 

する前に放たれた宗尊の言葉に、大左衛門は速攻で顔を振り向かせた。

 

「ええ、マジです」

 

ニコニコ顔で返す宗尊。

 

「私の愛弟子をこうなるまで追い詰め、庭や塀をめちゃくちゃに破壊したんです。当たり前の措置ですよ」

 

「い、いや、修理はいくらでもするから、天城には………」

 

「貴方達が闘っている間に、もう既に天城にはメールしておきましたよ」

 

と、宗尊は懐からスマホを出して、大左衛門に見せる。その画面には、天城からの返信で『あのゴリラコロス』とあった。

 

 

「!!??キサマァ!!!!!」

 

「当然の報いです」

 

「!!!クソっ!!覚えておけ!!!」

 

と、地球上最強生物が、まるで噛ませ犬の雑魚キャラのような捨て台詞を吐きながら、猛スピードでその場を走り去って、自邸へと帰っていった。

その後、大左衛門は天城によって10トントラックを持ちながら24時間正座の刑に処されたという………

 

 

「………さて………」

 

大左衛門が去ったのを見届け、宗尊は気を失った総介の元へと歩み寄る。その時、一粒水が、汗と血に濡れた総介の頬に落ちた。

 

 

 

「………降ってきましたか」

 

二人が闘いを始めると同時に、空を覆い、稲妻を走らせた雲から、まるで終わりを知らせるような雨が降り注ぎ始める。

 

「………あの日も、そうでしたね」

 

雨を落とし続ける雲を見上げて呟いた後、宗尊は総介を優しく持ち上げて、介抱のために自身の部屋へと向かい、足を進めていった。

 

 

 

宗尊は思い出す。

 

 

 

 

 

10年以上前

 

 

 

 

 

 

総介がまだ、自分の膝ほどまでしか大きくなかった時に

 

 

 

 

 

 

 

初めてこの場所で会った日のことを………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いち、に、さん!いち、に、さん!」

 

 

いつものように子供たちに稽古をつけていると、ふと入り口に、見覚えの無い幼子がいた。

迷い込んできたのだろうか?

その子は、じーっと他の子供たちが稽古をしている様子を見ている。

 

 

 

そんな子に、宗尊は声をかけた。

 

 

 

「君も、やってみますか?」

 

「!………いいの?」

 

「もちろん、ほら」

 

そう言って宗尊は、子供用の小さな竹刀を渡した。少年は、それを両手で受け取る。すると、とてとてと稽古をする子供たちの元へ行き、こんなことを言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー、やかましいんだよ。はつじょーきですかコノヤロー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、後に『鬼童』と呼ばれる子どもが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最愛の人を失う絶望と、『鬼』を宿す覚醒の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




総介圧倒されてるけど、大左衛門がバグキャラなだけの話です。
いよいよ90話到達。そしていよいよ、総介の過去の話に突入します!



今回もこんな駄文を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!
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