とあるギンガのPartiality Vivid   作:瑠和

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今回は主に間話ですねー。(*´・ω・`)
次回からたぶんエレミアVSノーリだと思います。


第十九話 激動!それぞれの心!

「きっと、お前の笑顔は………素敵、だと、思うから」

 

私は、出来損ないだ。

 

「オリヴィエ!オリヴィエー!」

 

ノーリさんの思いも、クラウスの思いも、ノーヴェさんたちの思いも…誰の思いにも答えられず、ただ負けて、負けて、負け続けてただひたすら生き恥をさらし続けて………

 

私はなんの為にここまで戦って…私が格闘技を続ける意味は?チームナカジマに居続ける意味は…

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

アインハルトが目を覚ますとそこは、見知らぬ天井だった。その視界に最初に入り込んできたのはティオだった。

 

「にゃあ?」

 

「ティオ…」

 

「目、覚めたか?」

 

声がした。声がした方を見ると、そこにはノーリが座っていた。

 

「ノーリ…さん」

 

どうやらここが選手用の医務室であることをアインハルトは理解した。それと同時に自分が試合に敗北し、ここに運ばれてきたことも思い出した。

 

「…そうでした私、負けたんですね」

 

「残念だったな。だがまぁ、良い戦いだったと思うぜ」

 

「…」

 

 

 

(ナックル!エンド!)

 

 

 

敗北の瞬間をアインハルトは思い出す。するとアインハルトは身体を大きくビクンと動かし、震え始めた。

 

「アインハルト!?どうした!?」

 

ノーリはアインハルトの様子を見たノーリが心配する。

 

「!」

 

アインハルトは心配し、近づいたノーリにすぐさま抱きついた。一瞬、何が起きているか理解できていなかったがすぐにノーリは慌てふためく。

 

「な、なにして…」

 

「ごめんなさい……もう少しだけこうさせてください…」

 

「…」

 

僅かに震えた声と身体。それだけでアインハルトの状態を知るのには十分だった。ノーリは何も言わず、アインハルトの背中に、そっと手を回す。

 

その様子を扉の隙間からノーヴェは見ていた。

 

「…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

その日、コロナとアインハルトの試合の後にはにはルーテシアの試合くらいしかチームナカジマに関わりのある試合はなく、夕方には帰り支度を整えていた。

 

「みなさん、すみませんでした」

 

帰り、アインハルトはヴィヴィオたちに頭を下げる。

 

「ええ!?なんでアインハルトさんが謝るんですか!」

 

「……コロナさんと戦ってこう言うのは少し、気が引けますが、このなかで一番年長でしっかりしなきゃなのに…一番最初に負けてしまって……チームの気合いを落とすのでは…と」

 

アインハルトなりにチームの年長としての誇り、みたいなものがあったようだ。

 

「そんな、大丈夫ですよ。組み合わせ次第なんですし」

 

「まだノーリさんもいますしね…あ!決してアインハルトさんに期待してないとかそんなんじゃなくてですね!」

 

「はい。大丈夫です…わかります。ありがとうございます…。では、みなさんに」

 

チームナカジマはそこで別れた。それぞれ次の試合に、次の訓練に備えて。

 

帰りの車の中で、アインハルトは一人思い悩んでいた。

 

「…」

 

(彼の優しさに甘えてしまった……敗戦のことを思い出したとき、怖くなった。急に…理由はわからないけど、とても怖く…)

 

アインハルトは、敗戦がトラウマになりかけていた。先程病室で陥った状態はその兆候のような、いや、もしかしたらすでに症状になっていたかもしれない。

 

(その思いを、あの私を、彼なら受け止めてくれると思ってしまった………私のために覇王の悲願を受けてくれたノーリさんになら…)

 

気を落としていると、手の中のティオがアインハルトの様子を心配したのか肩にまで登り、頬擦りをしてきた。アインハルトはティオの行為で後ろ向きな考えになっている自分に気づく。

 

(……私は弱い。だから、強くならなきゃ………覇王の末裔としてではなく、チームナカジマの年長者としてでもなく、いつか、彼が助けを求めて手を伸ばしたとき、その手を掴めるためにっ!)

 

一方、こちらも帰り道の車の中。アキラの運転する車で、助手席にギンガ、後ろにノーリ、ノーヴェを乗せていた。

 

(…なぁ、アキラ)

 

ノーヴェが運転中のアキラに念話で話しかけてきた。

 

(なんだ。今運転中だぞ)

 

(…ごめん)

 

思ったよりすぐ引き下がったノーヴェの表情をバックミラーで確認し、アキラは小さくため息をつく。

 

(……まぁいいさ。なんだよ)

 

仕方なく話を聞くことにした。アキラにとって念話しながらの運転なんて造作もない。

 

(………私は、うまくアイツらを指導出来てんのかな…)

 

(……さぁな。ま、素人にしてはよくやってる方じゃないのか)

 

(でも…)

 

急にそんなこと相談してきた理由をアキラは何となく察し、少し厳しめに言う。

 

(自信がねぇならやめた方がいいと思うぞ)

 

(!)

 

(選手よりもコーチが先に自信なくしててどうすんだよ。アインハルトは負けたが、とても諦めているようには見えなかったぜ?そんなんで、お前は教え方が悪かったとかそんな感じで諦めるのか?それとも、やめてぇのか)

 

(そんなわけ…!)

 

(じゃあ、がんばれよ。曲がりなりにもお前はあいつらのコーチだろ。テメェの教えを信じろ。コーチがテメェの教え方を信じられなくなったらあいつらは何を信じて試合に出ればいいんだ。テメェを曲げるな。テメェを信じて、ガキ共を信じて、突き進めよ)

 

(…ありがと)

 

「着いたぜノーヴェ」

 

話している間にナカジマ家(ゲンヤの家)に着いていた。

 

「あ、ありがとう……じゃあノーリ、また明日な」

 

「ああ」

 

アキラはノーヴェを下ろし、自宅へ向かって運転を始めた。帰宅中、ギンガがアキラの顔を見てクスクスと笑った。

 

「な、なんだよ」

 

「ううん。相談お疲れさま、お義兄ちゃん」

 

そう言われ、アキラは急に顔を赤くする。

 

「っ!と、盗聴でもしてたのかよ?」

 

「何となくそうかなって思っただけ。何年アキラ君の表情とか、視線を研究してきたと思ってるの?」

 

「…そうかよ」

 

 

 

ー翌日ー

 

 

 

アインハルトの部屋の目覚ましが鳴り響く。それとほぼ同時にアインハルトは目覚ましを止めた。

 

「ふぅ…」

 

ノーリに記憶を渡して以来、アインハルトの目覚めも寝つきもいいものだった。だが。現在時刻は午前5:30。彼女がこんなに早く起きたのは理由がある。

 

アインハルトはトレーニングウェアに着替えて家を出た。そして、まだ薄暗い朝の街を走り始めた。

 

(強くなるんだ!誰よりも!)

 

アインハルトはもう負けてしまった。この先はしばらく休んでいても問題はない。しかし、彼女自身前から独自の訓練はしていたし、昨日負けたことによる決意から再び猛特訓を始めていた。

 

しばらく走っていたアインハルトはナカジマ家(アキラ宅)の前に来る。

 

「…」

 

ナカジマ家を少し眺めた後、再び走り始めようとした。その時横から声がした。

 

「なんか用か」

 

「アキラさん!」

 

この家の主、アキラだった。どうやらアキラも庭で個人的なトレーニングをしていたらしい。シャツ一枚にジャージのズボン。片手には木刀が握られている。

 

「なんでしょうか…」

 

「いやそりゃこっちのセリフなんだが」

 

「あ、私は、その、自主トレを…たまたま……………たまたま!ここに着いただけで!すいません、失礼します!」

 

アインハルトはなにか慌てた様子で来た道を戻ろうとした。

 

「待てよ」

 

「は、はい…」

 

「朝飯、食べてくか?」

 

「え…」

 

「これから作るところだからよかったら食ってけよ。まだだろ?」

 

アインハルトはすこし考えてから頷いた。アキラはにこりと笑って、手で「おいで」と合図した。アキラについていき、家の玄関に入っていった。

 

「あ………アキラ君……おふぁよ…」

 

「ギンガ…」

 

アキラはやっちまったという表情を浮かべる。

 

ギンガは完全に寝起きだった。しかもアリスに授乳させている。昨日、二人の夜は激しかった。そのおかげでギンガは寝不足だった。だが、朝になってアリスがおなかを空かせて泣きながら起きてしまったのだろう。なので寝ぼけながらも起き出し、アリスに授乳しながら階段を降りてきたところにアキラたちが入ってきてしまったのだろう。

 

「…」

 

「……?あれ…アインハルトちゃ…」

 

ギンガは少ししてからアキラの少し後ろにいるアインハルトの存在に気づく。すると、ギンガはそのまま居間に入っていき、アキラたちの視界からフェードアウトした。

 

「…」

 

「…」

 

ギンガが居間に入って言った瞬間、セッテの声が聞こえてくる。

 

「あれ、ギンガね…え?あの、ちょ…」

 

数秒後、いつもの凛々しく、美しいギンガが居間から出てきた。

 

「あら、アインハルトちゃん。おはよう。こんなに朝早く…何の用かしら?」

 

「いやもう遅いから……ギンガ、ちょっといいか?」

 

 

 

-アキラとギンガの部屋-

 

 

アキラは二人分の朝食をもってアインハルトとともに自室に来ていた。

 

「おう、上がれ」

 

「ありがとうございます…」

 

アキラは部屋の中の小さな机に朝食を起き、座った。アインハルトもアキラと向き合う形で座る。

 

「いただきます…」

 

「おう」

 

アインハルトはアキラの用意してくれた朝食を口に運んだ。相変わらず美味しい。そう思いながら少し幸せそうな顔をした。

 

アキラはその表情を見ながら微笑む。

 

「ここにいるのがノーリだったらよかったんだがな」

 

「え?」

 

「いや…さて、わざわざ二人きりになったのはちょいと理由があってな」

 

「はい…」

 

「今後、お前はどうしたいかって話、本当はノーヴェの仕事なんだがあいつは今、まだ生き残ってるガキの世話で手一杯だからな。まぁ単なる俺のお節介だ」

 

アインハルトはそこまで聞いて食べる手を止めて、アキラの方を見た。妙に真剣な眼差しだ。

 

「…アキラさんは、どうして私たちのことをそこまで?」

 

「どういう意味だ?」

 

「だって、私やコロナさんはアキラさんの教え子でもないですし…アキラさん自身、コーチをやっているわけでも何でもありませんし…」

 

たしかにその通りだ。アキラは単にノーリの保護者であり、育休中とはいえただの局員。いくら義理の妹とはいえ、アインハルトやコロナの為に此処まで面倒を見てくれる理由はない。

 

アキラも食べる手を止めて話し始めた。

 

「……俺に比べれば、ノーリはずっと社交的で、明るい」

 

「…」

 

「ヴィヴィオ達にとっては頼りになるお兄ちゃん、みたいな立場で十分気が許せるんだろう。相談役にもなってる………でもな、あいつは、一人なんだ」

 

「一人?」

 

「生まれのこととか、その辺の重い話はヴィヴィオ達にはできないんだろう。だからと言って俺らにもなんとなく相談しづらいのかあんま話してくれねぇ。思春期ってやつかもな。あいつは高みを目指してる、いや、妙に力を得ることにこだわっている。それには理由がある気がする。そんな理由をあいつから聞き出せるくらい、アイツの思いを受け止められるくらいに強くなってほしいって考えてるのも…理由だ」

 

「…」

 

 

 

ー翌日ー

 

 

 

時は流れ、今日はヴィヴィオとリオの大切な試合の日となった。ヴィヴィオは八神はやてのやっている道場の門下生、ミウラと。リオは特攻番長のハリー選手との対戦の日だ。

 

「じゃあお前ら今日は気ぃ引き締めて行けよ!!」

 

「はい!」

 

「頑張ります!」

 

二人の気合いの入った返事のあとに今日は試合のないメンバーが二人に声をかける。

 

「ヴィヴィオさん、リオさん、ファイトです!」

 

「リオ、ヴィヴィオ、一緒に勝ち上がろう!」

 

「油断するなよ」

 

仲間たちの声援を受けて二人は顔を見合わせ、満面の笑みで親指を立てた。

 

しかし…

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

結果は散々なものになった。ヴィヴィオはミウラに、リオはハリー相手に善戦はしたが結局KO負けした。どちらも相手が強いことは明白でこの展開も十分に考えられた。

 

試合終了後、会場の廊下でコロナはなんとなく窓の外を眺めている。

 

「…」

 

「なにしてんだ」

 

「ノーリさん!」

 

そこにノーリがやって来た。

 

「いえ…なんでもないです…」

 

「…アキラに教わったこと、あいつらに悪いなぁ…とか思ってんじゃねぇか?」

 

「…っ!」

 

図星だった。コロナは一人でアキラに教わり、結果的にチームナカジマの誰より強い。だが、一人だけ別の人物から鍛えられ、やはり不公平なのではと思ったのだ。

 

「…下らねぇことで悩んでんじゃねぇよ。いいか、全員がアキラに教わったからって全員お前みたいに強くなれるわけじゃねぇ」

 

「…でも」

 

コロナの態度にノーリはため息をついた。そしてコロナの隣に立つ。

 

「覚えとけ。お前だからアキラの訓練に着いていけたんだ」

 

「え…」

 

「お前は前までチームナカジマじゃ一番目立たない存在だったさ。魔力量、格闘技術、魔法技術、どれをとっても。だが、お前は根性ひとつで俺らに、アキラに食らいついて来たんだ。その根性が実を結んで今の結果がある」

 

仮にヴィヴィオやリオが同じくアキラに教わったとて、アキラの訓練に耐えられるかと言われると微妙なところだった。

 

根性があり、芯の強いコロナだからこそ、アキラに教わることができたのだと言うことを伝えたかったのだ。

 

「ノーリさん…」

 

「だから少なくとも、ヴィヴィオたちやノーヴェの前では胸を張ってろ。でなきゃあいつらに失礼だ」

 

「…はいっ!」

 

コロナは力強く返事をした。表情を見る限り迷いは消えたようだ。ノーリは安心すると、コロナの胸部に視線を向ける。

 

「ま、物理的にゃ張れる胸もないがな」

 

それを言われたとき、コロナは一瞬何を言われてるのか理解できなかったがその言葉の意味を理解したとき、顔を赤くしてノーリに叫ぶ。

 

「せ、セクハラですよ!?」

 

「ジョークだ」

 

ノーリはそれだけいって去っていってしまった。コロナが小さくため息をついたとき、なにかに気づいた。

 

「…?」

 

今の、最後の会話の違和感。なにかが、足りない。その事に気づいたが、その違和感は解明できなかった。

 

 

続く

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