とあるギンガのPartiality Vivid   作:瑠和

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次回は無限書庫探索編です!


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第二十三話 邂逅!ノーリへの手掛かり

「捜査協力って聞いたが?倒した連中が雁首揃えて何の用だ」

 

「口のきき方は変わらねぇが、前よか可愛げのある姿になったじゃねぇか」

 

アキラはクラウドの姿を見て言う。事件当時は身体に一切気を遣わなかったので髪はぼさぼさで目の下にはクマがあったが、隔離施設に入ってからは健康的な生活とケアもされているので表所は明るく見え、髪はさらさらだった。

 

「放っておけ」

 

「あ、ギンガ…」

 

後ろから声がした。

 

「あら、あなたたち…」

 

牢屋から連れてこられた、黙示録事件でクラウドの下に付いていた「ゼロ・ナンバーズ」と呼ばれた戦闘機人たちがやってきた。

 

ゼロナンバーズは3~9番までがおり、事件中に6番、9番が戦死した。生き残ったのは3番「サード」、4番「フォース」、5番「フィフス」、7番「セヴン」、8番「エイトス(偽名フランシス)」の5人だった。

 

「二人が来たのって事件協力の話だっけ」

 

フィフスがクラウドに聞いた。

 

「ああ。別に協力しない理由もないだろう。お前らも知っていることがあれば話してやれ」

 

「んー」

 

5人はクラウドの周りに座った。

 

「で、何の話だ?」

 

「お前らに支援していたと言ってる「アーク」という組織についてだ」

 

「はぁ?」

 

クラウドはその名前を聞いた瞬間、呆れ顔になった。

 

「ほっておけあいつらなんぞ。威勢がいいだけの能無し宗教団体だ。奴らが動いたからってなにもできん」

 

「だが、現に奴らは動いた。何者なんだあいつらは」

 

「フランシス。お前データ管理していただろう?教えてやれ」

 

クラウドは自身で説明するのが面倒だったのか、データ管理役であったフランシスに任せた。

 

「はい……「アーク」は私たちに兵器等の支援をしていただいた…ジェイルスカリエッテイから始まった私たちの事件の末端組織みたいなものです。古代ベルカ以前に存在していたとある神…のようなものを信仰している組織です」

 

「神の様なもの?」

 

神と言い切らないところにアキラは疑問を感じた。

 

「はい。古代ベルカ以前から古代ベルカ中期まで生きたと言われている人物、「ダズマ」。一部地方及び次元では神と崇められています。彼らの目的は現世にダズマを甦らせ、その力を以てこの世界を統べる…だそうです」

 

そこまで言ったところでクラウドが呆れ顔で続ける。

 

「しかもやつら、大層なことを言ってる割にはこれといって計画を確実にする当てもないらしい。なにやら実験もやっていたようだが、成功はしていた様子はなかったな」

 

「そうか…だが…」

 

アキラはさっきのノーリの姿を思い出していた。黒い魔力、赤い目。それはもしやダズマの意識なのではと考えた。クラウドは放っておいても良いと言っているが実際のノーリが誘拐されているわけだし、念のためノーリのことをクラウドに伝えた。

 

「……なるほど、少なくともノーリの中にはもう一つの人格を生み出されていると見ていいだろうな。暴走の原因等はわからないが、とりあえずやつらのアジトの場所ならわかる。それを教えておこう」

 

「助かる」

 

「だがあまり期待はするな。私が捕まったことで、奴らもアジトを変えたかもしれんしな」

 

クラウドは手を差し伸べる。アキラが端末を渡し、そこにアジトの場所を記録し始めた。

 

「それから、ダズマについて先に調べておけ。知っておけばアジトへのヒント、そしてもしダズマと戦うことになったなら対策を練れるだろう」

 

「それはいいが…どうやって?」

 

「エレミアを当たれ」

 

「なに?エレミア?」

 

エレミア、つい最近聞いた名だ。ノーリが対戦したあの黒髪の少女。彼女の名前もエレミアだった。

 

「ちょっと聞いた話でな。あの宗教団体が出来たきっかけはエレミアが残した情報が始まりだと聞いている。そこに何かしらのヒントがあるだろう」

 

 

 

-とあるホテル-

 

 

 

アキラは己の伝手を使って今回の事件に巻き込まれた人物や関係者たちを集めた。

 

「こんなところで油売っててええん?」

 

そう訪ねてきたのは八神はやてだ。彼女も現場で魔力を吸われた一人であり、そして、古代ベルカの継承者でもある。今回は彼女の協力も必要だった。

 

「とりあえずクラウドからもらった情報はメグに渡しておいた。突入はやつらに任せるさ。俺は、親として、あいつの保護者としての役目も果たさにゃならねぇし今は情報がほしい」

 

「そう…」

 

「うおぉぉぉぉぉ!なんじゃここはぁぁぁ!」

 

用意した部屋の入り口から下品な叫び声が聞こえた。

 

「来たか」

 

集まったのはDSAA競技選手のハリーとその仲間達、ミカヤ、エルス、ジーク、ヴィクトーリア、ミウラ、チームナカジマの面々、そしてアインハルトだった。

 

「皆さん、来てくれてありがとうございます。簡単なものですが、食事も用意したのでどうぞ」

 

ギンガが集まった面子に言った。すると、チームナカジマの面々を覗いた全員が一瞬静かになった。

 

「…?」

 

そして複数人であつまってヒソヒソと話始めた。

 

「なぁ、あれってノーリのお父さんとお母さんか!?」

 

「そのようですけれど…」

 

「いや、それにしたって…」

 

(((若い…っ!)))

 

ギンガとアキラを知っている人間以外ほぼ全員思ったことだ。当然だ。ノーリは義理の子でアキラのクローンなのでノーリと二人の年齢の差は少ない。

 

それを知らない面子は自分等とほぼ年が変わらないように見える若さに驚いていた。

 

「あの………なにかへんなところあったかしら…」

 

「どうかしたか」

 

「あ、いえ…」

 

「なんでもありません。お気遣い感謝です!」

 

みんなで食事を始めた。みんな豪華な食事を前にはしゃいでいるが、やはりどこか心から楽しめていない様だった。当然だ。試合中に選手が一人誘拐されたのだから。

 

「…みんな、食いながらでいい。話を聞いてくれ。俺はアキラ・ナカジマ……そんな有名じゃねぇが一応管理局の陸尉だ」

 

「はい!私知ってます」

 

そういって元気に手を挙げたのはエルスだった。

 

「かつて、そしてつい先日ミッドチルダを救った大英雄の方ですよね!!」

 

「そんな大層なもんじゃないさ。成り行きで気に入らない連中をぶっ飛ばしただけだ」

 

「おお!ノーリの父ちゃんはそんな強いのか!」

 

「ちょっと、無礼かつ失礼ですわよ」

 

「それはいい。知っての通りノーリは俺らの家族だ。俺も全力であいつを助け出す。だがその前に、今回あいつと関わった君たちに頼みがある」

 

管理局の方から頼み事とは。予想外の言葉に全員顔を見合わせる。アキラの横にギンガも立って共に頭を下げた。

 

「今回あいつが暴走して試合を滅茶苦茶にしたのはあいつが望んでそうしたわけじゃない。そのことを分かってほしい。あいつのことをどうか、選手として見捨てないでやってほしい!」

 

「お願いします!」

 

「…」

 

はやて含め全員がその姿を見て呆気にとられた。そしてそれと同時に、二人は戦士でもあるがやはり一人の親なのだと思った。

 

「そんな…私たちは…」

 

「別に…なぁ」

 

全員別にそんなことはしないというような空気だった。それを感じてアキラは頭を上げ、ジークに歩み寄った。

 

「ちょっといいか」

 

「は、はい」

 

アキラがジークの手首を力強く握る。

 

「っ!」

 

ジークは表情を歪め、握っていたフォークを落とした。

 

「…え?」

 

「ジーク…あなた…っ!」

 

ヴィクターが駆け寄り、ジークのジャージの袖を捲る。ジークは手首の辺りが腫れ、赤紫色になっていた。

 

「これ……まさか…試合の時に…」

 

「ち、違うんよ!これはその…さっきちょっとぶつけて」

 

「試合の時、ノーリにやられたんだろう。最後に放ったあいつの技……俺もノーヴェも見たことがない。恐らく力に物を言わせた滅茶苦茶な攻撃だったんだろう」

 

ノーリが暴走し、エレミアの神髄の状態のジークさえ圧倒した力。その力はクラッシュエミュレートを貫通し、ジークの骨を砕いたのだ。だが、ジークはノーリに罪の意識を、目を周りから向けられないために黙っていたのだ。

 

「折れちゃいないだろうが最低でもヒビは入ってるだろう」 

 

「…………これで、ノーリが戻ってきた後の試合に出るつもりだったの?」

 

「……」

 

「まさか、その状態でいることが私への罪滅ぼしとでも思っているのかい?」

 

ミカヤが尋ねた。

 

「…どうやろな………でも、ノーリ君に悪い目が向けられたらいややって思ったんはたしかや」

 

ジークも同じ経験がある。ミカヤ相手にクラッシュエミュレート越えの攻撃を放った。それで試合は一時中止。試合再開の日にジークは現れず、ミカヤの不戦勝となったが先の試合をできる身体ではなく、その年は辞退した。

 

その時世間から向けられた視線は、ジークはよく覚えていた。

 

「前にも言ったが、去年は私も君も全力で戦っただけ。その結果がああなっただけだ」

 

「…」

 

ジークは申し訳なさそうに少しうつむいた。

 

「それに君は今、私の……いや、ここにいる選手全員の目標でもある。それがそんな怪我を放置して選手生命でも断たれたら、その方が怒るよ」

 

「…ありがとな、ミカさん」

 

どうやら、こっちはこっちで丸く収まりそうだ。それを確認し、アキラは改めて全員に訪ねる。

 

「…ノーリが選手でいれば、お前らも同じ目に合うかもしれねぇぞ。それを踏まえて考えてほしい。それでも君たちは、アイツを、ノーリを選手として認めててくれるか?」

 

その問いに対する答えはその場にいた全員もう決まっていた。ハリーが代表して答えた。

 

「はっ!あいつが全力で来るならこっちも全力で潰すだけですよ!その結果ケガするんでも上等!」

 

ハリーの答えに同意するように皆が頷いた。アキラはちらりとジークの方を見た。その視線の意味をジークは理解して微笑む。

 

「ウチも答えは一緒です」

 

「…ありがとう」

 

アキラはその場にいた全員に改めて頭を下げた。

 

「とりあえず、医者は呼んである。診てもらってから本題に入るとしよう」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「さ、これでもう大丈夫。無理はしないでね?」

 

「はい、おおきに」

 

ジークは腕にギプスを着けられたが、とりあえず選手生命にはきたさないとわかった。そしてアキラはジークの前に座る。

 

「さて、ここに来てもらった本題は君の先祖についてだ。教えてくれないか。知ってる限りのことでいい」

 

「うーん、協力したい気持ちはあるんですど…残念ながらウチはあんまりご先祖様の事覚えてないんです」

 

「なに?」

 

「ジークはエレミアの技や体質は受け継いでいますが、記憶は受け継いでいないんです」

 

その事情をジークに代わってヴィクターが説明する。

 

「彼女の先祖に関する情報は、彼女の実家にもほとんど残っていないのです。なにぶん流浪の一族でしたから…」

 

「そのエレミアが残した手記ってのがあるらしい……………なんでもいい!なにか知らないか?」

 

アキラが訪ねるも、ジークとヴィクターは首を横に降る。

 

「ごめんなさい…」

 

「………そうか」

 

アキラは目に見てわかるくらいがっくりと肩を落とした。そこに、セッテが部屋に現れる。

 

「セッテ」

 

「アキラ義兄さん。悪い知らせです………」

 

セッテは周りにいる人間を見て一旦黙る。事件とは無関係な人間の手前で話して良いのか微妙だったからだ。アキラはそれを察する。

 

「……………構わん。言え」

 

「残念ながらクラウドの情報にあったアジトは廃棄済みでした。新しいアジトの場所に繋がりそうな手掛かりや痕跡もなしです」

 

「…まぁ予想通りだ」

 

アキラは立ち上がり、部屋の大窓に手を突く。その表情は苦悶に歪んでいた。早く助けなければならないという思いが焦りを前に出す。

 

「くそっ………」

 

拳を強く握ったアキラにギンガが寄り添う。だがそこにヴィヴィオもやってきた。

 

「あの…」

 

「…」

 

アキラに反応がない。

 

「あのぅ…」

 

再度呼び掛けても反応はない。頭の中で解決法を模索しているのだろう。ギンガが肩を叩いて呼びかける。

 

「ん?ああ。すまねぇ。どうした?」

 

「あの、私「エレミア」って名前が冠された武術家の手記を無限書庫で見かけたような気がして…」

 

「本当か!?」

 

アキラがヴィヴィオの肩を掴んで尋ねる。急なことに驚きながらもヴィヴィオが答えた。

 

「は、はい…あの、オリヴィエに関する資料資料もあるかなって思って…」

 

「いつか探索したいねって言ってたんです…」

 

コロナとリオも近くに来た。

 

「よし……」

 

アキラは立ち上がってぐっと拳を握った。

 

(………道はつながった。まだだ、まだ諦めるわけにはいかねぇ)

 

 

 

続く


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