とあるギンガのPartiality Vivid   作:瑠和

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後2話くらいでこの事件は終結します。その次の話で一旦Vividをひとくくりさせます。


第二十八話 謀略!アレスの罠!

「う…」

 

アインハルトは生体ポッド内で目を覚ました。辺りを見回すといくつかの生体ポッドと木の根のようなものが壁一面を覆っていた。

 

「どうなって………ぐ…」

 

アインハルトは無理やり内側からポッドの出口を開き、そこから出た。

 

「……あれは…」

 

天井に空いた穴の先にいたのはどこかおかしな姿のノーリがいた。その中身がダズマであることは知らないが、ノーリではないことは気づいた。更に、いくつかのポッドの中に見覚えのある人物がいることにも。

 

「そうだ!ヴィヴィオさん!チャンピオン!それに…魔女の方…」

 

アインハルトは急いで生体ポッドのコントロール画面を弄ってヴィヴィオ達を解放した。

 

「大丈夫ですか!?皆さん!!」

 

「…………アインハルトさん?」

 

「うーん……ハルにゃん?」

 

ジークとヴィヴィオは目を覚ました。

 

「良かった。大丈夫ですか?どこか痛んだり…」

 

「大丈夫だと思います…」

 

「ウチも…小さくなったこと以外は…」

 

「大丈夫ですか?」

 

「うん、この魔女っ娘に言えば多分治してもらえると思うから」

 

そこからどうするか、考えていた時にアインハルトの裾を何者かが掴んだ。

 

「にゃあ」

 

「ティオ!」

 

「え?ティオ?あ、クリスも!」

 

ティオとクリスがやってきていた。この二機は無限書庫内で衣服と共に剥がされたが、アキラが回収して連れてきていた。そのことをクリスが身体の動きで伝える。

 

「良かった。少し安心できますね……」

 

「でも、アキラさんたちはどこに…」

 

「わからんけど、とにかくここを出よう。上にいるのがノーリなら二人もきっと上や」

 

ヴィヴィオとアインハルトは大人モードになり、ファビアはヴィヴィオに背負われてアジトの中を駆けまわる。

 

道中、壁を覆っている木の根の先に人が包まれているのを見つける。

 

「これは…」

 

「助けなくていいんでしょうか……」

 

「それは局員の仕事。うちらはとにかく元気な姿で家に帰るのが仕事や!」

 

先導するジークが伝えた。ヴィヴィオは納得いっていない様子だったが綺麗ごとを言ってられない状況なのも確かだった。

 

(もし、二人が今も戦っているなら音がないのは不自然や……嫌な予感がする……)

 

三人は何とかアジトから抜け出し、アジトの外から状況を見た。するとそこには驚きの光景が広がっていた。

 

「!」

 

「これは……」

 

「………」

 

アジトの中心部から巨大な樹が生え、その前にはまるで樹を護るようにノーリが浮いていた。

 

「ノーリさん……」

 

「あれはもうノーリ君やないね……」

 

三人も状況を理解した。そして、それと同時にアキラとギンガを探す。

 

「………アキラさんは…どこに……」

 

「あそこ!」

 

ヴィヴィオが指を指した先には木の枝に包まれて、眠っているギンガがいた。三人は急いでアジトを上り、ギンガの元へ向かった。

 

「ギンガさん!」

 

「アキラさんもいます!」

 

完全に予想外の状況で三人は焦る。少なくともヴィヴィオは絶対にアキラとギンガが負けるとは思っていなかった。二人の実力はここにいる誰よりも知っている。二人ならきっとノーリを助けてくれると、思っていた。

 

「そんな……」

 

「ギンガさん!しっかりして!ギンガさん!!」

 

「ギンガさん!!」

 

木の枝に包まれたギンガは眠っていた。

 

 

 

-ギンガの精神世界-

 

 

 

ギンガは幼い姿である筈もない世界を楽しんでいた。クイントが生きていて、アキラが一緒にいる世界。ギンガが管理局で戦うことも、アキラが悲しみを背負うこともなかった世界。

 

「ほら、ご飯できたわよ。ギンガ、運ぶの手伝って」

 

「はーい!」

 

キッチンに駆けていくとき、ギンガはその足を止めた。

 

「…」

 

「ギンガ?」

 

「………」

 

ギンガは視線を庭に向けた。庭には見知らぬ少女がいた。二色の眼の金髪少女。何かを必死に叫んでいるがガラス窓越しだからか何を言っているのか聞こえない。

 

「……何を…言っているの?」

 

「…出て……………そこから……出て!」

 

出てと言っていることに気づく。ギンガは疑問符を浮かべる。

 

「どうして?なんで?」

 

「…」

 

そこに、幼いアキラがやってきて窓を開けた。

 

「アキラ君?」

 

アキラは何も言わない。ただ黙って微笑み、ギンガの背中を押した。ギンガは押された勢いで庭に飛び出す。ギンガはそのまま少女に手を引かれて庭の先へ走っていった。

 

 

 

-現実世界-

 

 

 

「はっ!?」

 

ギンガが目覚めると目の前にヴィヴィオとジーク、アインハルトがいた。

 

「貴方たち…」

 

「ギンガさん!!」

 

「ギンガさん大丈夫!?」

 

さっきまで夢の中にいたギンガはいきなり目の前に現れたヴィヴィオ達に困惑するが、すぐに状況を思い出した。

 

「はっ!……アキラ君、アキラ君は!?」

 

「あそこです…」

 

ヴィヴィオの指さす先にはいまだに眠っているアキラの姿があった。アキラはアインハルトに声をかけられているが反応はない。

 

「ヴィヴィオさん、こっちもお願いします!」

 

「はい!」

 

ヴィヴィオはアキラの元へ走り、アキラを包んでいる枝を掴んで引きちぎった。ギンガはその姿を見て驚く。さっき自分やアキラが枝を掴もうしたとき、手や刀は枝をすり抜けた。それは今も同じだ。見たところアインハルトもその様子だ。

 

なのにヴィヴィオだけはしっかり掴んで破壊している。

 

「どうして…」

 

「私にもわかりません!それよりギンガさん!アキラさんに呼びかけてください!!」

 

「………うん!」

 

ギンガは枝の中から抜け出してアキラの近くに行き、その腕を掴む。しかしその時、後ろから途方もない魔力を感じた。全員が振り向くとその先にいたのはダズマだった。

 

「なにやら騒がしいと思えば………」

 

「ノーリ……」

 

「ノーリさん」

 

変わり果てた姿のノーリを目の当たりにして、三人は驚く。

 

「どうやってそこから抜け出したか知らんが、お前たちも眠れ。ファンタジーツリー!」

 

ノーリが腕を前に出すとファンタジーツリー、即ち本部に伸びた巨大な樹から枝が伸びてヴィヴィオ達を包もうとする。

 

「皆さん私の後ろに下がってください!」

 

ヴィヴィオが前に出る。

 

「アクセルシューター!!」

 

ヴィヴィオが放った魔力弾は枝を破壊した。そのことにダズマは驚く。

 

「なに?」

 

「ギンガさん!アキラさんを早く!」

 

「うん………アキラ君!アキラ君!!」

 

 

 

-アキラの精神世界-

 

 

 

「………」

 

アキラは夢の世界でセシルと遊んでいた。その様子をギンガも微笑ましく眺めている。

 

「どうしたの?アキラ」

 

「…………」

 

アキラはその世界を見渡す。

 

「アキラ?」

 

「アキラ君?」

 

「…………悪いな、セシル」

 

アキラは一通り見てからセシルに微笑んだ。アキラが滅多に見せない顔だ。

 

「?」

 

「ごめんな、俺はもう後ろは振り返らないって決めたんだ」

 

刹那、世界にひびが入り、砕け散った。

 

 

 

-現実世界-

 

 

 

「もうこれ以上は…」

 

ヴィヴィオはその場の全員を護りながら枝を弾き続けていたがそろそろ限界が訪れていた。元々ヴィヴィオは持久力がないのだ。

 

疲労によって生まれた隙に、新たな枝が迫る。完全にヴィヴィオは隙を突かれ、やられたと悟る。しかし、その枝を何者かがぶった切る。

 

「!」

 

「悪い、待たせたな」

 

アキラだ。

 

だが、アキラはヴィヴィオを救ってすぐに倒れてしまう。

 

「アキラさん!?」

 

「すまねぇ………目覚めてすぐじゃ……うまくいかない」

 

アキラは跪いてヴィヴィオに支えられる。

 

「………貴様たち…どうやってファンタジーツリーを切った?」

 

「さぁな………」

 

ファンタジーツリーを切れた理由はアキラは自身の技でやったことは分かっていた。だが、ヴィヴィオが触れられる理由がわからない。

 

「………そうか、お前も」

 

ダズマはヴィヴィオを見て何かを悟る。

 

「ギンガ、こいつら連れて早く逃げろ。ノーリは、俺が何とかする」

 

アキラは何とか立ち上がり、刀を構えた。ギンガならウィングロードを使って何とか逃げ切れるかもしれないと考えたのだ。

 

「………うん!」

 

ギンガは少し悩んでから頷いた。ギンガにとっても苦渋の決断のはずだ。それでもいまはこの少女たちの救出が先決だ。

 

「逃がさん」

 

ギンガが逃げようとした先にファンタジーツリーの枝が壁を作るように伸びてきた。ヴィヴィオ一人でこれを突破するのは難しいだろう。

 

「…」

 

「お前たちも早く眠れ」

 

「…………ヴィヴィオ。悪い、協力してくれ」

 

そう簡単に行くとは思ってなかった。アキラはヴィヴィオに耳打ちする。そして作戦を念話で伝えた。民間人、それも子供に協力を煽るのは少し無理があるが、今はもうなりふり構っていられない。相手は強力な魔導師、使役するのは触れることすらできない幻影の樹。

 

使える手は使うしかなかった。幸いダズマ以外の敵はファンタジーツリーのなかで、ダズマも殺す気はないと思われる。失敗しても死ぬことはないと考えたのだ。

 

「…はい!何とかやってみます!」

 

「すまねぇ……ギンガ、ヴィヴィオのこと頼んだ」

 

「うん!ウィング!ロード!!!」

 

アキラが作戦決行の合図を出すと、ギンガがウィングロードを展開してその上をヴィヴィオが走り始める。ギンガもその後を追いかけた。

 

アインハルトはファンタジーツリーからファビアを抱えながら逃げる役割を頼まれた。

 

「でぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ヴィヴィオはファンタジーツリーを一部ぶっ飛ばしてその先へ進んでいく。

 

「どこへ………まさか!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ダズマがヴィヴィオの目的に気づいた瞬間、アキラが目の前に迫っていた。とっさにアキラの剣撃をシールドで防ぐ。

 

「ぐっ!…………貴様ファンタジーツリーを…」

 

「ああ、とりあえず折らせてもらうぜ」

 

「なぜだ、なぜ安楽な夢を受け入れない!」

 

「夢なんてしょせん夢だろうが!俺が望むのは、ギンガと共に紡ぐ、現実の未来だ!」

 

ダズマに反撃させないため、ヴィヴィオに注意を向かせないにアキラは必死に猛攻を続ける。

 

「夢だろうと同じだろう!」

 

ダズマは一旦距離を置いてから魔力剣を拳から出現させ、アキラに突進した。

 

「んなもんただの逃避じゃねぇか!」

 

アキラはダズマの剣を受け止めながら叫んだ。

 

「確かにすべてが理想通りに行くのが一番いいだろうさ!そんな世界なら、大切な人を失うこともない…けどな、そうじゃねぇんだよ!そうじゃないから人生は美しいんだ!それを乗り越えることに意味があるんだ!それぞれの人生を、その瞬間瞬間を必死に生きてるんだ!テメェがどうやって今の世界を知ったのか知らねぇがな!一人一人の人生も見もしないで!上部しか知らねぇようなやつが、世界を好き勝手して言い分けねぇだろ!」

 

そのアキラの叫びを聞いた時、ダズマは目を見開く。なにか、驚いたような表情だったがアキラにファンタジーツリーの枝が迫ったためにいったん離れた。

 

「クソっ!」

 

「…お前、まさか…………」

 

アキラを見ながらダズマは表情を動かさない。何かすごく驚いているようだ。アキラに何かを語り掛けようとしたとき、ダズマの腹部から血があふれた。

 

「…っ!」

 

「なっ………」

 

ダズマの腹部を魔力槍が貫いていた。

 

「これは……」

 

ダズマは跪き、血を吐く。その背後にはアレスがいた。どうやら他のアークの構成員がファンタジーツリーに捕まっているときに一人見つからない場所にいたようだ。

 

「は、はは…やっと、ここまで来た………いただくぞ!その力!」

 

アレスは跪いたダズマの身体にジーンリンカーコア押し付ける。その瞬間、アレスの身体から魔力が、力がジーンリンカーコアに吸われ始める。

 

「ぐ………あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ダズマ…!クソったれぇ!」

 

アキラは立ち上がってアレスに突進した。アレスはその突進を避け、後ろに下がった。その行動に

 

「はははは!もう遅い!ダズマの力のほとんどはここだ!!」

 

「てめぇ、どういうつもりだ。テメェは、ダズマを慕っているんじゃねぇのか」

 

「………いいや。それは表面上さ。私は、ダズマを恨んでいるのさずっとずっと復讐したくて、だから復活させたのさ…この力を使って、この世界を破壊する!それが私の復讐だ!!」

 

「ざけんなぁ!!!」

 

アキラは残っているアレスの片手をぶった切ろうとしたがそれより早くアレスは自身の胸に押し付けて融合させた。

 

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

アレスの体内に魔力が吸収される。それによる衝撃でアキラは吹っ飛ばされた。ダズマの魔力を体内に取り入れることによって、アレスの身体にノーリの肉体に入っている模様と同じ模様が入る。

 

「クソっ!」

 

「お前が管理しようとした世界は私が破壊する!こんな世界、私とて未練はない!」

 

 

 

続く


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