とあるギンガのPartiality Vivid   作:瑠和

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ここで一旦Vividの更新は終了し、本編である「とあるギンガのPartiality」をメイン活動に戻します。続きの更新はしばらく先になりますが、待っててください。

5月6日より「とあるギンガのPartiality」の新章がスタートします!それまでにこちらと本編に本編のダイジェストを作っておく予定ですお楽しみに!



感想とか待ってまーす!


第一部最終回 決着!紡がれる手

生まれてから、生きている意味が分からなかった。周りの連中は俺にやさしくしてくれた。多くの人に迷惑をかけた。だからせめて他人の役に立つため生きることにした。

 

その第一歩となる、あの学校での生活。俺の学力調査と学校生活の練習の様な感じで一時的に通った学校。

 

そこで出会った一人の少女。俺はその子を救えなかった。

 

だから助けると決めた。困ってる人がいるなら誰だろうが絶対助ける。それで俺がどんな負債を背負ったってかまわない。

 

そう決めた。一人で戦い続けると決めたつもりだった。

 

だが俺は一人じゃなかった。俺が助けるために伸ばした手がやがて紡がれ、こんなに多くの人を繋いでくれていた。俺はそれから目を反らしていただけだったんだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「…」

 

ノーリは目を開けた。

 

「7!8!」

 

カウントが聞こえてきた。ノーリは無理やり身体を起き上がらせる。

 

「立った!」

 

(一人じゃきっと起き上がれなかった……あいつらと出会ってからの時間、アイツらと過ごした時間が、過去が今の俺に力を与えてくれるんだ…)

 

「まだいける…!」

 

立ち上がったノーリは天を仰ぐ。

 

「……俺を倒して拳で想いを伝えるか…」

 

「…?」

 

「行くぞ…」

 

ノーリが構える。その瞳はさっきと違う、光が宿っていた。

 

やっといつものノーリに戻ったとアインハルトは感じた。だがあえて何も言わず同じように構える。

 

「はっ!」

 

(来る!)

 

ノーリはその場から一気に飛んで攻撃を仕掛けた。チャージ攻撃だ。しかしその攻撃は空を切る。アインハルトは上に飛んでノーリの背後に回っていた。

 

背後からアインハルトは攻撃を仕掛けるが直前、空中で振り向いたノーリがその攻撃をガードする。重い一撃を受け止めながらノーリは着地する。だがアインハルトは間髪入れずに間を詰めて蹴りを当てた。ノーリは吹っ飛び、柱に激突した。

 

「凄いです…ノーリさんの攻撃が全然当たってない…」

 

「ええ、判断のスピードが尋常じゃないのね」

 

「判断のスピードはあいつだけがやっているわけじゃねぇ」

 

「え?」

 

「あのモードの強みは中のティオが相手の動きをラーニングし、相手の動き予測する。攻撃の際は考えられるすべてのパターン計算、最善の一手を選出してアインハルトに教えている。見てみろ」

 

アキラに言われ、よく目を凝らすとアインハルトの眼の色が変わっていることが分かる。普段は紫と青の二色だが、今は緑色だ。

 

「ユニゾンみたいなもんさ。ティオが機能維持し続ける限り、アイツに攻撃は当たらないし、アイツの攻撃は避けられない」

 

「それってアリなの…?」

 

ギンガが疑問に思って聞いてきた。

 

「一応公式大会に聞いてみたが問題はない。技術的サポートは俄然ありだし、そもそもこのシステムを使いこなすこと自体一種の才能なんだ。あれはそう簡単に扱える代物ではない。ま、魔法なしの格闘オンリーの大会なら話は変わって来るが」

 

アキラが説明している間にもアインハルトはノーリをどんどん追い詰めていく。更に追撃をかけようとアインハルトが構えたが、急に止まった。そして胸を押さえて跪く。

 

「ぐ!ぅぅぅ……」

 

「…?」

 

「アインハルトさん!?」

 

「あのバカ…」

 

アインハルトの動きに疑問を持ったヴィヴィオ達が心配しているとアキラが呟いた。

 

「何が…」

 

「あの力はかなり無茶な力の運用なんだ………通常でもギリギリなのにロクなインターバルも入れずに連続運用してるせいでリミットが来てるんだ」

 

「ええ!?」

 

「…」

 

 

 

-3日前-

 

 

 

「はぁ?自己強化能力ぅ?」

 

「はい」

 

ここは3日前のナカジマ家アキラ宅。アキラはアインハルトがコロナに負けてからアインハルトの相談を受けていた。いや、どちらかというとノーリを何とか助けられないかという会議の様なものだった。試合の開催が決定してからアインハルトは自己強化能力が作れないかとアキラに相談にきていた。

 

「悔しいですが現状、ノーリさんに太刀打ちできる力はありません。今だけでもいいんです。太刀打ちできる力が……ほしいんです。トレーニングだけでは埋め合わせられない彼との間を埋められる力が」

 

「…仕方ねぇ。まぁノーヴェ次第だなそんなやり方をあいつが認めなきゃだめだ。いいな」

 

「はい!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

そして昨日の夜完成した最新のシステムがこのライジングシステムだった。全身の運動力、筋力、様々な能力を強引に引き上げる。それによって発生するバックファイアをアスティオンの回復能力で常に治癒させて辻褄をあわせるという強引な強化だった。

 

「正直な話付け焼刃な上に諸刃の剣だ。だから制限時間は2分程度にとどめておいたんだが…」

 

「でもまだ2分経ってませんよ?なのに何で…」

 

「2分ってのはあくまで最高のポテンシャルでの話だ。ラウンド1の時に食らったダメージも合わさって、アスティオンの回復許容量をオーバーしちまったんだ…最悪無理やり解除を…」

 

アキラが考えながら話しているとアインハルトが叫ぶ。

 

「まだです!」

 

「!?」

 

「まだやれます!まだやります!まだやらせてください!」

 

軋む身体を起こしてアインハルトは構える。その様子を見ながらノーヴェがアキラに視線を向ける。アキラは小さくため息をついてまだやらせる判断を下す。

 

「まぁいいんじゃねぇか。ただし、危ないと判断したら俺が強制的に止める。いいな」

 

「はい…」

 

(身体が軋む……朝まで訓練した時よりもっとひどい……でも、それでも、今は、私は!)

 

ノーリはアインハルトを見ながら立ち上がる。

 

(馬鹿野郎…そんなことしたら選手生命が終わるかもわからねぇんだぞ!お前がそれ以上戦うってんなら、俺が…………救う!!)

 

そのノーリの想いに応えるかのように、ノーリのバリアジャケットの腰にぶら下がっていた懐中時計兼デバイスのノヴァラミナが赤く輝いた。

 

「……あれは…」

 

「あれ…なんなの…?」

 

ノーリはノヴァラミナを持つ。

 

「この輝きは…」

 

(このタイミングか……)

 

「ノーリ」

 

アキラがノーリに話しかけた。

 

「そいつのリューズを回して短針を3時に合わせてリューズを押せ」

 

ノーリは言われた通りにリューズを操作し、短針を3時に合わせてそれを胸の前に構えて親指を立てた。

 

「あれって何なんですか?」

 

「ノヴァラミナ…あいつのデバイスは、4段階で進化する………いや、アイツの力に応じてロックを解除していく。その条件はあいつの魔力値や戦闘力が特定値以上になること。そのタイミングがついさっきやってきたってことだ」

 

「行くぞ…」

 

ノーリはリューズを押した。すると足元から魔力が放出され、そこから発生した二つの魔力輪がノーリを包んでバリアジャケットを再構築した。

 

『completed after phase2』

 

「あれは……」

 

ノーリのバリアジャケット本体にはそこまで大きな変化はなかった。少々尖った感じになり、黒いラインが増えた程度だが、それ以上に驚くべき変化があった。

 

腕に拳から肘上にかけての装備がついていた。やや形状は異なるが、そこにいる誰もが見たことのある装備。見間違うこともない、それはまごうことなき

 

「鉄腕…」

 

(そんなもん追加した記憶はねぇ……まさか!)

 

アキラはその様子を見て頭の中の考えがすべてつながった。

 

「そうか…そういうことか!あいつの力は、「人から力を奪って自分のものにする力」!」

 

アインハルトの試合が終わった後、アキラが記憶の操作をするまでもなくノーリは記憶を持っていた。そして先日の事件の際、ダズマの記憶を手に入れるために会場にいる人間全員から記憶を探して魔力と共に記憶を吸収していた。

 

そして今、ノーリはあの日吸収したジークの魔力を糧に鉄腕を生み出した。

 

「まさか……あの事件の日に吸収した魔力を自分の中で培養して自分の力へと変えたというの?」

 

「そういうことだ…」

 

その様子を、教会の屋根から白いローブを来た男、少し前にアインハルトの前に現れたリュウセイが見ていた。

 

「まず一つ………」

 

ノーリは自身の姿に驚き、鉄腕をまじまじと見ている。

 

「………これが、俺の力」

 

アインハルトもその姿に驚きながらも構える。ノーリは試合中であることを思い出し、同じように構えた。

 

「お前が俺に思いを伝えるためにそんな無茶な戦い方をするなら、俺が止める!」

 

「その前に私が倒してあなたを助けます!」

 

二人は同時に飛んだ。

 

ノーリの拳がアインハルトを捕らえる。しかしアインハルトは瞬間でノーリの横に回り、拳を放った。さっきまでだったらここでノーリが殴られていたところだった。

 

しかし今度は違った。ノーリがその攻撃を直前で回避したのだ。

 

「!?」

 

「はぁ!」

 

ノーリは一拍置いてから反撃した。アインハルトは何とか避けて距離を取った。

 

(私の速度を上回った!?そんな馬鹿な……いや、あれは!)

 

ノーリの瞳の色は赤く輝いていた。その目に見覚えはあった。ノーリの身体がダズマに乗っ取られていた時と同じ色だ。

 

「………ノーリさん?」

 

まさかまた乗っ取られたのかとアインハルトは確認を取るためにノーリの名を呼んだ。

 

「どうやらこいつは、ダズマの置き土産みたいだ。未来予知とまではいかねぇが、少し先の未来くらいは見えるらしいぜ」

 

「!!」

 

それを聞いて、ジークがハッとした。

 

「聞いたことあるよ…赤く輝く瞳は未来を見る千里眼の瞳。古代ベルカの時代にだけ言われてたことや」

 

「未来を見る力…」

 

アインハルトは少し考えて胸に手を当てた。そして瞳の色をもとに戻して構える。それをみてノーリも瞳を閉じ再度開ける。ノーリの瞳の色はもとに戻る。

 

(お互いのスピードとパワーは同等!)

 

(だったら小細工も無用!)

 

未来予知の力と行動計算で先読みする力。能力的に大差はないが未来予知し未来予知してくるであろう攻撃を予測しでは鼬ごっこだ。もはやその力は使う意味がないと判断し、力のぶつけあいで終わらせることにしたのだ。

 

再度二人は突進し、ぶつかり合った。かなりのスピードで競り合いが続く。

 

「速い……」

 

小細工抜きでのお互い古代ベルカ式の格闘勝負。そしてカイザーアーツでの戦い。互いの強みも弱点も分かっている。戦いは完全に互角に進んでいた。

 

しかし、ノーリはアインハルトの動きの中で隙を見つける。

 

(今!)

 

ノーリはほぼゼロ距離で腕を大きく引き、腕に魔力を溜めた。

 

「!?」

 

「ガイスト・クヴァール!」

 

ノーリが黒い魔力を腕に込めた一撃を放った。それはまさしくジークの技だった。アインハルトはそれをギリギリで躱したがバリアジャケットが一部削れる。

 

(外し…)

 

「覇王!断空拳!!」

 

アインハルトが反撃に断空拳を放ったがノーリはそれを両手で受け、後ろに下がらされながらも受けきった。

 

(いきなりは辛かったが防ぎ切った!これで…!?)

 

ノーリはすぐに反撃の手段を考えたがそれはすぐに遮断された。アインハルトが見たことのない構えをしていたからだ。

 

「覇王!」

 

(来る!)

 

「琥皇風牙断!!!!」

 

アインハルトの拳から放たれた風の一撃。それはライジングモードでのパワーでのみ打てる空破断の強化版だ。

 

ノーリはその一撃に飲み込まれ、琥皇風牙断は地面を抉ってノーリの背後にあった教会の壁を粉砕した。

 

「決まった!?」

 

「覇王!」

 

巻き上がった粉塵の奥から輝きが見えた。

 

「!」

 

アインハルトはすぐに回避の姿勢を取ろうとした。前回ノーリに負けた敗因である「覇王流星拳」であることが分かったのだ。

 

しかしそれよりもずっと早くノーリは飛び出してきた。

 

「流星拳!!!」

 

(これで決まる!!)

 

(まずい!でもせめて!)

 

アインハルトはせめてカウンターを決めようと右足を前に出した。

 

(カウンターの構え!だが俺の拳が速い!!)

 

まもなく拳がアインハルトに到達する直前、アインハルトの顔がノーリの前から消えた。

 

「!?」

 

ノーリの流星拳は空を切り、ノーリ自身もアインハルトの真横を通りすぎる。

 

アインハルトは1ラウンドでやられた足のダメージは完治できていなかった。動けないほどでもなかったのだが、それが今ライジングモードのバックファイアが引き金となってまた痛みが強く出た。

 

その痛みでバランスを崩し、結果ノーリの流星拳を交わすこととなった。

 

慌ててブレーキをかけてノーリが振り向こうとするが、偶然によって生まれたチャンスを活かす考えはアインハルトの方が速かった。

 

バランスを崩した直後に右手を大地に叩きつけ、それを軸に180回転、ノーリより素早く振り返る。

 

そして姿勢を直さずそのまま大地を蹴り上げ、ノーリに向かって飛んだ。その際に練り上げた力を拳に集中する。

 

「覇王!」

 

(ガード!カウンター!…ダメだ間に合わない!)

 

「断!空!けぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

死力を尽くした最後の覇王断空拳。それはノーリの鳩尾に見事命中し、ノーリは岩に叩きつけられた。

 

痛む足を大地に擦り付けアインハルトは着地する。そして、ノーリがまだ動いているかは関係なく拳を構えて歩き出そうとした。

 

「止まれ」

 

「え?」

 

アキラに引き留められた。そこでようやくアインハルトはタオルがフィールドに投げ入れられていることに気づいた。

 

ノーリも既にギンガに介抱されている。

 

「あれ…」

 

「アインハルト、お前の勝ちだ」

 

レフェリー役のノーヴェがやって来てそれを伝えた。

 

「お前にもノーリにも説教したいことは山ほどあるがそれは後だ。行ってこい」

 

「は、はい!ノーリさん!」

 

「ノーリさん!」

 

アインハルトはバリアジャケットを解除してノーリに駆け寄った。ヴィヴィオたちも釣られて走りだし、ノーリ近くへ来た。

 

「……運のいいやつだ。まさかあんな展開になるとはな…」

 

「…確かに運なのかも知れませんが…それ以上にきっと、皆さんの想いが、私に味方してくれたんだと思いたいです…」

 

「想い…」

 

ノーリは横になりながらギャラリーにいる全員を見た。そしてやられたダメージであまり動かない腕を無理矢理持ち上げ、己の手を見つめる。

 

「この手はずっと、困っている人間に掴ませて可能な限り希望のある方へ投げるだけの腕だと思ってた…一人きりで………」

 

「…」

 

「なぁ、アインハルト」

 

「はい…」

 

「俺のこの手は、まだお前と繋いでいていいか?」

 

そう言われたアインハルトはノーリの腕を両手で包み込む。

 

「当たり前じゃないですか…」

 

「お前らにありえないほど迷惑をかけたんだぞ……それでも俺を…」

 

「本来だったら、私がダズマの依り代になっていたかもしれなかったんです。ノーリさんは、私を助けてくれたんです!それに、」

 

その手にヴィヴィオ、リオ、コロナの三人の手も添えられる。

 

「私たちも付いてます!」

 

「それにヴィクターさんもジークさんも……みんな付いてます!」

 

「みんな一緒の、チームナカジマじゃないですか!」

 

「ノーリさんのように、過酷な道は歩んできてません。ですがそれでも、ノーリさんの重荷を少しくらい背負うことはきっとできます!だから……だから…一人きりなんて言わないでください…っ!」

 

しゃべっているうちにアインハルトの瞳には涙が溜まり、最後には溢れだしてしまう。ノーリは空いている手をアインハルトの頬に添えて、親指で涙を拭った。

 

「なに泣いてんだよ………勝者がよ…」

 

「すいません…なんだか…」

 

「あのときにも言っただろ………笑ってくれって…」

 

「…はい……」

 

「俺も、これからは笑って生きていくから」

 

そう言ってノーリは微笑んだ。あのアインハルトとノーリの記憶をかけた決闘から、初めて見せたノーリの笑顔だった。

 

アインハルトはその笑顔を見て笑った。アインハルトは気づいていた。あの日からずっとノーリの笑顔がなかったことを。だからノーリに笑ってほしかったのだ。

 

それがようやく叶い、自然と溢れた最高の笑顔だった。

 

(今からもう一度始めよう。俺たちのこれからを)

 

 

 

続く

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