とあるギンガのPartiality Vivid   作:瑠和

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四か月ぶりの更新です。ノーリの過去編です。


第二章
第一話 リンネ・コネクト 0078


俺はある事件で作り出されたアキラ・ナカジマ、当時橘アキラのクローンだった。最終的に俺は死ぬ予定だったが、結果的に助かってアキラたちの家に保護されることとなった。

 

そして海上隔離施設に入れられ、常識を学んで割と早く外に出ることになった。

 

「学校か…」

 

「ああ。どうだ?」

 

「お前らが通うべきだって言うなら行く」

 

俺はいままでアキラと視界が繋がっていた。その視界を通して色々見て、勉強してきた。だが当時は俺のなかには怒りと悲しみの感情しかなかった。

 

同い年の人間より多少人生観は達観してるが、一緒にいれば子供らしさも戻るだろうとアキラたちは思っていたらしい。

 

最初は監視の意味も込めてヴィヴィオらと同じ学校……ヒルデ魔法学院にしようとしたが、一流のお嬢様お坊っちゃま学校より自由度が高い学校のが俺の成長に良いと考えて、私立ではあるがより一般的な学校へ通わせた。

 

その学校の名前はロズベルク学校。

 

 

-ロズベルク学校-

 

 

 

「転校生の、ノーリさんです」

 

「……ノーリ・ナカジマっス」

 

正直知らねぇ人と慣れあうのは苦手だった。でもアキラたちの想いを無駄にはできなかったし、それは俺がまだ人間らしくないからだと思った。人間らしくなるためにはしょうがねぇって思った。

 

「なんだかワイルドな感じ…」

 

「声ちっさ!」

 

見た目は同い年だが俺に比べれば全然人生経験の浅い子供。どう接すればいいかわからないうちに数か月の時間が経った。

 

ある日の体力測定の後俺は下級生の女の子一人と一緒に呼び出された。

 

そこで言われたのは俺達にはスポーツ選手や格闘選手になる才能があるそうだ。だが俺は遠慮した。今俺に必要なのは常識と普通の暮らし。

 

変わった日常なんていらなかった。だから俺はどうでもいいと言ったし、もう一人の女の子も乗り気じゃなかった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「失礼します」

 

俺とその子は一緒に職員室を出た。

 

「……見ない顔だな」

 

「え?」

 

俺の記憶では来たばかりの時、全校集会などで見た限り白髪の女子はいなかった。だからなんとなく気になっていた。

 

「あ、え、えっと、リンネ・ベルリネッタです。最近この学校にきたばかりで…」

 

「そうか…お前もか、いやそうだろうな」

 

「お前もって?」

 

「ああ、俺はノーリ・ナカジマ。俺も2、3ヶ月前に入………いや、転校してきたばかりなんだ」

 

本当は入学だが、経緯の説明が面倒だったから転校ということにしておいた。

 

「そうなんですか…」

 

「はは、仲間だな」

 

「そうですね」

 

その時は他愛ない会話で終わったが、再開の時はすぐに訪れた。

 

先生から話が合ったのは週末の放課後。休日を挟んでの週明け。俺は校舎裏で飯を食っていた。まだクラスになんとなく馴染めないのと色々俺への参照の声が理由だ。食堂や教室で友人と一緒に食ったことはあったが、会話に入り込めなかった。

 

流行りのTV番組や本の話なんかは俺にはできなかった。

 

そんな時に校舎裏にリンネが現れた。

 

「あれ?」

 

「ん?お前は確か、リンネ」

 

「えっと、えっと…」

 

名前を思い出せないようなのでもう一度教えた。

 

「ノーリだ」

 

「ノーリさん!すいません思い出せなくて…ノーリさんは私の名前覚えててくれたのに…」

 

「気にすんな。一度会ったきりの名前覚えてる方が珍しい。で、どうした。こんなところに」

 

「あはは…実はお恥ずかしい話、クラスの友達から逃げてきたんです…。体力測定のことでみんなに色々言われちゃって。すごいね、とか……。悪い気はしないんですけど、ご飯の時くらい落ち着きたくて」

 

「俺も一緒だが、飯はいつもここで食ってる」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。情けない話、クラスになじめなくてな…」

 

「……あの、私もここを使ってもいいですか?」

 

「…なんでだ?」

 

「その、私もたまには落ち着ける場所が欲しいですし、ノーリさんとお話ししたいです。おんなじ転校生で、おんなじ体力測定優秀者として……それに何だかこういうの、秘密を共有しているみたいでワクワクするんです!………だ、駄目でしょうか」

 

「いや。別に構わねぇよ」

 

「ありがとうございます!」

 

それから、数日。俺はリンネと一緒によく昼飯を食う仲となっていた。正直な話、アイツと一緒に飯を食う時間は楽しかった。

 

そしてある日の放課後、俺が帰り道を歩いていると公園に一人の老人が倒れていた。中々見えにくい位置に倒れていたので他の人物にも気づかれなかったようだ。

 

「!」

 

「うぅ…」

 

「おい爺さん!大丈夫か!」

 

俺はすぐにその老人に駆け寄った。

 

「はぁ、はぁ、ああ、す、すまない…持病の発作が…」

 

「大丈夫か?救急車呼ぶか?」

 

「い、いや、それより……家族に…家に薬が…」

 

「…家か。家は近いのか?」

 

「少し…遠いな………」

 

その時、俺は連絡することを控えた。近くの大通りで先ほど事故が起こっていることを知っていた。仮に家族を呼んでも車で来るならそこで足止めを食らう可能性が高い。だからと言って徒歩や自転車でも時間がかかりすぎる。

 

「爺さん、家の方向は?」

 

「あっちだが…?」

 

「わかった」

 

俺はその爺さんから家の特徴と住所を聞き、そのまま爺さん抱えて大人モードになった。そして、ビルの上まで一気に飛んだ。

 

「!?」

 

「しっかり捕まってろ!あんたを家までデリバリーだ!!」

 

俺はビルからビルへ飛び移り、最短ルートでその爺さんを自宅に運んでやった。

 

「着いたぜ」

 

門も飛び越え、敷地内に飛び込んだ。

 

「あ、あなた誰で………旦那様!?」

 

たまたま近くにいたメイドが俺らに気づいた。

 

「発作だ。薬あるだろ?持ってこい」

 

「は、はい!」

 

俺が伝えると家から使用人が何人も出てきて爺さんを回収していった。俺はその場に取り残され少しすると、家から夫妻が現れた。

 

「君がお義父さんを運んでくれたのかね?」

 

「ん?ああ」

 

「どうもありがとうございます……」

 

「礼には及ばねぇよ」

 

ノーリはそれだけ言ってもう帰ろうとした。

 

「待ってください、お疲れでしょう?上がっていってください。お礼はまた改めてさせていただきますが、とりあえずお茶だけでも…」

 

その夫妻は義理堅いのかなんなのか知らないが俺に礼をしようとしてきた。

 

「だから礼には……」

 

「ノーリさん?」

 

その時、聞き覚えのある声が背後から聞こえ、振り返るとそこにはリンネが立っていた。

 

「リンネ?」

 

「やっぱりノーリさん!どうしてここに!?」

 

俺は大人モードだったが、リンネは俺だと気づいたらしい。

 

「リンネの知り合いかい?このお兄さん…」

 

「…ああ」

 

俺は大人モードを解除し、元の姿にもどった。そこでその夫妻は俺がロズベルク学校の制服を着ていることに気づいた。

 

「リンネの学校の…」

 

「ここはリンネの家だったか…」

 

「そうですが…?」

 

「おじいさん、大切にしてやれよ」

 

なんだか面倒なことになりそうだと感じたノーリはそう言い残して塀を飛び越えていった。

 

「ええ!?ノーリさん!?」

 

 

 

-翌日-

 

 

 

「ノーリさん!」

 

いつも通り校舎裏で昼飯を食っていると、案の定というか、やはりというか、嬉々としてリンネがやってきた。

 

「おう、どした」

 

「昨日、おじいちゃんを助けてくれたって…ありがとうございます!」

 

「気にすんな」

 

「それで是非、ノーリさんを私の家にご招待したいと…」

 

「いいよ別に、礼には及ばないことだ」

 

「いえ、恩人に礼をしないなんてベルリネッタ家の名前に傷がつくと母が…」

 

「…」

 

俺はしばらくリンネの誘いを断ってたが、しつこく誘ってきた。断り続けるのも申し訳なくなってきたし、不承不承ながら了承した。その翌日、学校は休日だったから俺はリンネの家に招待された。

 

 

 

-ベルリネッタ邸-

 

 

 

「いやはや、まさかリンネの学校の先輩にお義父さんを助けていただけるとは…」

 

「おじいちゃんを助けてくれて、本当にありがとうございます」

 

リンネはお茶を運びながら俺に礼を言った。正直そこまで感謝されるようなことでもないと思ったが、どうやらリンネはあの爺さんにえらくなついてるらしい。

 

「気にすんなって……俺は別に…」

 

「どうぞ、この間お母さんと一緒に作ったクッキーです。お口に合えば良いのですけど…」

 

「おう…」

 

クッキーは上手かった。さすがはお嬢さんという感じだった。

 

「リンネー!ちょっとお手伝い頼めるかしら」

 

「はーい!」

 

リンネが席を離れたタイミングで、少しリンネの父親の表情が強張るのを感じた。

 

「ノーリさん。この度は本当にありがとうございます」

 

「あ、ああ。まぁ、その………どういたしまして」

 

「実は今回君を招待したのはお礼以外にも少し用事があってね…」

 

「用事?」

 

「用事というよりお願いに近いんですが……最近、あの子…リンネが無理に笑っているように見えるんだ…」

 

「…」

 

リンネの父から、リンネの様子が最近おかしいことを聞かされた。本人は特に何もないと言っているが、きっと学校で何かあったんじゃないかと思ってるようだった。

 

きっと自分たちに心配させないために何もないと言っているから、見かけた時で構わないから俺に学校の様子を見てほしいと頼まれた。

 

別に断る理由はなかった。だから俺はその頼みを聞いた。

 

その後、リンネが焼いたケーキをいただいて、爺さんに挨拶し、リンネの部屋へと誘われ、幼馴染と彼女が受け継いだ「スクーデリア」を見せてもらった。

 

 

 

-翌週-

 

 

 

それから数日が経った。俺とリンネの関係に変化はなかった。しかし、リンネを注視してみると確かに明るい笑顔の裏側に何かある感じはした。

 

そしてある日、俺はたまたま昼飯の後にリンネがハンカチを忘れていることに気づいた。リンネは昼飯後にすぐに教室に戻ってしまったから俺はその次の休み時間に届けに行った。

 

そこで、初めてリンネの父親から聞かされたことを理解した。

 

俺がリンネのクラスに会いに行くと、たまたまリンネがトイレから出てくるタイミングで俺は声を掛けようとした。

 

「あ、リン…ネ!?」

 

トイレから出てきた彼女はびしょぬれだった。そしてその表情はいままで見たこともないくらい暗いものだった。

 

「………!ノーリさ…」

 

俺の存在に気づくと彼女は走って逃げて行ってしまった。

 

「リンネ!!」

 

すぐに追いかけようとしたが、リンネが去ると同時にトイレの中から笑い声が聞こえた。

 

「…?」

 

状況は明らかに異常だった。その中で聞こえてくる笑い声に俺は違和感を持った。いや、きっともうその時点で核心には至っていたんだろう。

 

驚きを隠しきれずに俺はそこが女子トイレであることを忘れ、そっと扉を押した。

 

「あはは!入ってまーすってあははははは!」

 

そこで笑っていたのは三人の少女。恐らくリンネのクラスメイトだろう。そして内一人の手にはバケツが持たれていた。

 

そこまで証拠が出揃ってしまえば答え合わせは簡単だった。リンネの父親の言葉と最近の彼女の表情に見え隠れしていた違和感の原因。それは全てそこにいた三人が元凶だった。

 

「…………お前らか」

 

「あははは………え?」

 

「ちょっ、ちょっとなにあなた…」

 

「ここ女子トイレなんだけど!」

 

「答えろぉ!」

 

俺は怒りをあらわにしてバケツを持っていた少女の胸倉を掴み、奥の壁に叩きつけた。

 

「痛!」

 

「お前らがリンネの笑顔を曇らせてんのか!?答えろ!」

 

「はぁ!?何言ってんのあんた…」

 

「ちょっと離しなさいよ!」

 

「先生呼んでくる!」

 

「お前がぁ!」

 

勢いあまって、拳を振り上げる。

 

「私たちがあいつに何かしたって証拠はあるの!?」

 

「!!」

 

確かに今のところあるのは状況証拠だけだ。彼女たちが何かをやったという言い逃れできない証拠はない。

 

「……っ!」

 

俺の拳は少女の真横を通り抜けてその後ろにあった窓ガラスをたたき割った。

 

「…」

 

「先生こっちです!」

 

「ちょっと、何やっているの貴方!」

 

そこに仲間の一人が連れてきた教師がやってきた。正直そんなものはどうでもよかった。どうしてこんなことになっているのか、それが知りたかった俺は教師を無視し、トイレを飛び出した。

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

(リンネ…どこだ!?)

 

教師の静止を振り切り、全力でリンネを探しに行った。通りすがりに教室を見たが、そこにいる様子はなかった。そこで俺は急いでいつもリンネと昼食を食べている場所に向かった。

 

 

 

ー校舎裏ー

 

 

 

予想通り、リンネはそこにいた。リンネは濡れた制服を脱いで体育着に着替えていた。

 

「ノーリさん…」

 

「リンネ…………これ」

 

俺はそっとリンネにハンカチを渡す。

 

「……ありがとうございます。ここに忘れてたんですね」

 

「…………いつからだ?」

 

「………前の体力測定の時から…」

 

俺と出会ったあたりからだ。そんな前からあんなことになっていたことに俺は全く気付けていなかった。

 

「少し前に、お前上履きを履いてなかったよな。あの時ももしかして…」

 

リンネは小さく頷く。

 

「…っ!」

 

(気づけたはずだ!もっと早く!俺は…何を!)

 

「どうして隠してた…家族に、先生に、何なら俺に相談してくれればもっと…」

 

「心配も迷惑もかけたくなかったんです…お願いです!お父さんやお母さんにはこのことは…」

 

「だが…」

 

「あと少しすればきっとあの子たちも飽きるから…」

 

そこに、俺を追いかけてきていた教師が追いついてきた。

 

「やっと見つけました…、ノーリさんですね?職員室まで来ていただきます」

 

「……お前の想いは分かった。だが何かあったらすぐに言えよ……力、貸すから」

 

 

続く

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