とあるギンガのPartiality Vivid   作:瑠和

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コロナとヴィクターの試合、決着です。しかし、この先全部オリジナルで書かなくちゃならないのがつらい。


第五話 コロナ・エフォート

ネフィリムフィストフルコントロールモード。自分自身を外から操作することで戦う戦闘方法。例え腕が折れようと、拳が砕けようと術者の精神と魔力が持つ限り戦い続けられる。最凶にして最後の戦闘方法。電撃により左半身が麻痺していたコロナはフルコントロールモードで自身の身体を無理やり動かし、なんとか戦闘を続行させたのだ。

 

「それが奥の手というわけね?」

 

「…はい」

 

(悔しいな………どれだけ努力して頑張って覚えた技も一撃で粉砕されて。まだルーキーの私はこんな無茶な戦法しか取れない…)

 

コロナは目の前のプロを見て自分の未熟さを、そしてプロの強さを実感した。

 

(残りの魔力も時間ももう僅か、きっと私は負ける…だけど、そんな予感だけであきらめるつもりはないし、やれるところまでやってみせる!)

 

「まさかそんな裏技を持っていたなんて………その応用を考えた頭脳はほめてあげたいところですけど、とても褒められる闘い方とは言えませんわ!」

 

自らの選手生命を無視した戦い方はプロであるヴィクターからすれば認められるものではなかった。

 

「百も承知です。ですが、私を支えてくれた人のためにも、あきらめるわけにはいかないんです!」

 

「お説教が必要なみたいですわね!」

 

「マイストアーツ!」

 

コロナは再び岩の鎧を見に纏い、構えた。それと同時にヴィクターは光の速さでコロナに接近し、ブロイエ・トロンベを振った。コロナは瞬時に後方に下がり、光弾を打ち込もうとしたがその場には既にヴィクターはいない。

 

「神雷式、召雷・鳥!」

 

上か声がした。急いで回避行動を取ろうとしたがすでに遅い。鳥の形を形成した雷がコロナを襲う。コロナはとっさに岩盤を出現させて盾代わりに使ったが簡単に砕かれ、コロナは吹っ飛ばされた。二度のゴーレム生成によってコロナの体力、魔力、そして判断力や反応速度あらゆるステータスが低くなっていたことが原因といえるだろう。

 

「ぐぅぅぅぅぅ!!!!」

 

コロナLIFE4580→1240

 

岩盤と岩の鎧で防いだおかげで即死は免れたものの大ダメージを負った。そして吹っ飛ばされているコロナにヴィクターが仕掛けに行く。ブロイエトロンべの刃が迫った時、ブランゼルに事前に登録された回避プログラムがネフィリムフィストで体動かす。

 

コロナの意識はその攻撃を認知していなかったが、ネフィリムフィストで体を捻り攻撃を回避した。

 

「!」

 

完全に決められると思って放った一撃。それを避けられヴィクターは一瞬動揺する。だがコロナは何が起こったのかすでに察知し、次の行動に出た。

 

「サンドストーム!!」

 

砂嵐が巻き起こり、ヴィクターの視界を一瞬覆う。そしてその砂嵐の中から岩の鎧の拳が飛んできた。

 

「くっ!」

 

ヴィクターはそれをブロイエトロンべで切り払うがそれはコロナが殴ってきたのではなく拳の部分だけミサイルのように飛ばしてきていたのだった。そしてコロナ本人はもうすでにネフィリムフィストを使った高速移動でヴィクターの背後に迫っていた。

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「神雷式!招雷・蛇!」

 

背後に現れたコロナに対し雷の蛇を出現させたがコロナはそれも何とか回避する。コロナの移動がもう少し遅く、ヴィクターが気付くのがもう少し早ければ当たっていた攻撃。コロナの臨機応変の早さ故にこのチャンスが生まれたのだ。

 

「ジェッド・ランス!!!!」

 

ヴィクターの懐まで潜り込み、低い姿勢から地面を強く蹴って全体重を乗せての鳩尾に向けたアッパー。それは雷帝の厚い装甲を貫くのには容易だった。

 

ヴィクターLIFE10670→7420

 

強力な一撃をもらったヴィクターはそのまま吹っ飛ばされる。それを見逃す手はなかった。

 

(今しかない!!!)

 

コロナはネフィリムフィストフルコントロールモードを解除し、ブランゼルを起動した。

 

「ゴーレムクリエイト!!刃の如く敵を蹴散らし!盾の如く我が身を護れ!創主コロナと魔導器ブランゼルの名のもとに!降臨せよ!ゴライアス・ヴァージョン4!!ゴライアスΩ!!!!」

 

地面から刺々しい見た目のゴーレムが出現した。腰に剣を携えたコロナが扱うゴーレムの中でも最強のゴーレムだ。アキラとの特訓で最初に渡された特別なコアから生成され、暴走したのをアキラが無理やり破壊することで止められた最強の巨神。

 

「………これは」

 

ゴーレム生成中に体勢を立て直したヴィクターはゴライアスΩを見て驚きと恐怖をその身に感じていた。プロ故にその強さを感じ取れてしまった。

 

(これは………砕けない…全力を持って破壊できるかどうか…)

 

「ゴライアス!フィンガーバルカン!!」

 

ゴライアスが指をヴィクターに向けると指の先端から岩の弾丸が無数に発射された。ヴィクターはフィールドを一気に駆け抜けることで何とか避ける。

 

「六式!閃光!」

 

ヴィクターは走りながら魔力弾をコロナに向けて放つ。ゴライアスの目の前でそれは大きな閃光を放ち、コロナの視界を奪う。

 

(閃光弾!しまった!)

 

その隙にヴィクターはリング端から一気にゴライアスに向かって飛び、ブロイエトロンべを振り上げた。

 

「神雷式!斧!!!」

 

ブロイエトロンべの先端に生成された雷の斧がコロナに迫る。しかし、その攻撃をゴライアスが腕で防いだ。創者が狙われたことを察し、ブランゼルが動かしたのだ。ヴィクターの斧はゴライアスの腕に突き刺さったが切り裂くまでには至らない。

 

(防がれた!なんて硬度!!)

 

「アースシェイカー!」

 

コロナの掛け声でゴライアスの腹部が開き、中から先ほど出した蛇型のゴーレム「アースシェイカー」の小型版が出現し、ヴィクターを咥えて地面に叩きつけた。

 

「あぐっ!」

 

ヴィクターLIFE7420→7150

 

ヴィクターはすぐに立ち上がり構える。

 

(あのゴーレムの腕………よく見たらアインハルトさんとの試合で使っていた腕のゴーレムに酷似して…………え?)

 

ゴライアスの硬度に驚いたヴィクターはゴーレムを観察する。その時、とあることに気づいた。

 

(左腕が………ない?)

 

さっきまであったはずのゴライアスの左腕がない。右腕を前に出す姿勢を取っていたため気づきにくかったが確かに左腕がない。

 

「クラッチ!」

 

(しまっ…!)

 

気づいたときにはすでに遅い。分離したゴライアスの左手がヴィクターが地面に叩きつけられた時の砂埃に紛れて彼女の背後に迫っていた。そしていま、分離した左腕はヴィクターをしっかりと確保し、離さない。

 

「ぐっ………」

 

「ゴライアス!」

 

コロナが叫ぶとゴライアスの胸部が開き、内側から砲塔が出現した。そしてゴライアスの胸のあたりが赤く光り、エネルギーが溜まっていくのが目に見えた。

 

「ゴライアス!ブレストマグマキャノン!!」

 

(あれを食らうのはマズイですわ!!今のライフじゃ受けきれない!!!)

 

ヴィクターは掴まれている腕から何とか脱出を試みるが、大技を繰り出そうにもその予備動作が取れないため破壊もままならない。バインドでの拘束でならいくらか脱出方法はある。しかし、圧倒的物量による拘束の前にヴィクターは成す術がない。

 

「お嬢様!!」

 

(いや!まだ手段はある!この腕も結局はゴーレム!抵抗すれば維持のための魔力を消費せざるを得ない!!)

 

「三式!雷波!」

 

拘束されながらもヴィクターは身体の周りに電撃波を放ち、自慢のパワーで自身を拘束している腕を何とか押しのけようと力を籠める。

 

「くぅ…っ!」

 

コロナはつらそうな顔をする。最終兵器のゴーレムの維持、キャノンのパワーチャージ、分離行動させている腕の遠隔操作、すべてに魔力リソースを回している。ここでの抵抗はすごくコロナにとってつらいものだった。

 

(いまにも魔力回路が焼き切れそうだ…でも!ここまでやったんだ!ここでぇぇぇぇぇぇ!!!!)

 

「諦めてたまるかぁぁぁぁぁぁ!!!!ファイアァ!!!!!」

 

限界を超えたコロナの叫びがフィールドにこだまする。

 

ゴライアスの胸部からマグマを纏った巨岩が発射され、それがヴィクターを掴んでいた腕パーツごと吹き飛ばす。リングの一部が融解し、そこから大量の煙が上がってヴィクターの状態がわからなくなった。

 

(お願いです………もう………)

 

既に限界を迎え、ヴィクターが倒れていることを願うことしかできないコロナ。煙が徐々に晴れていき、状況が見える。

 

煙の先には、ヴィクターが立っていた。

 

「……はぁ………はぁ……はぁ」

 

ヴィクターLIFE7150→240

CE→左腕から左胸にかけて大火傷

 

「そんな……」

 

ヴィクターのバリアジャケットは左半身部分がほとんど吹っ飛び、何とか左胸を隠せる分くらいしか残っていなかった。

 

ブレストマグマキャノンが発射された直後、抵抗を続けたおかげかわずかに緩んだ指の隙間から左腕を出してとっさに「神雷式・盾」を発動した。生成されたばかりの雷の盾はブレストマグマキャノンを完全に防ぎきることはできずにすぐ消滅したが、それでも盾のおかげで何とかヴィクターはライフを残したのだ。

 

「ゴライアスΩ!!!」

 

コロナの叫びでゴライアスが拳を振り上げる。しかし、振り下ろす直前にその動きが止まった。

 

ゴライアスに乗っていたコロナが意識を失い、ゴライアスから落ちたのだ。そしてその落ちた先にはいつの間にかアキラが立っており、コロナを優しく受け止めた。

 

「ここまでだ…魔力切れだな……レフェリー、この試合、コロナのギブアップだ」

 

「しょ、承知しました………準決勝戦、第一試合!勝者、ヴィクトーリア・ダールグリュン!!!」

 

歓声が沸き上がる。どんでん返しに次ぐどんでん返し。初参加のルーキーでありながらここまで善戦したコロナを観客全員が称えた。少し悲しいのはその賞賛を本人が聞けなかったことだろうか。

 

「………あら?」

 

少し気が抜け、ブロイエトロンべの刃を下におろした瞬間、ブロイエトロンべの刃が大きく刃こぼれした。

 

「………」

 

ヴィクターはそのまま選手入場口に戻って行った。

 

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 

「………正直、勝った気はしないわ。今回勝てたのは、本当にたまたま。ほんのわずかの魔力の差。私も倒れる直前だったもの…」

 

「お嬢様……」

 

エドガーはこんなヴィクターを見たことがなかった。普段高貴で、たまに面倒見のいいお母さんのような一面もあるが、ここまで落ち込んでいる姿はなかった。ヴィクターは壁を殴った。

 

「ここまでの悔しさを感じたことはありませんわ………っ!こんな勝ち方………っ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ぱちりと目を開く。そこは病室だった。

 

「ここは…」

 

「よう」

 

声がした。横を見るとかつてコロナを助けてくれた恩人であり、師匠であるアキラがいた。コロナは記憶がはっきりしてなかったが、アキラさんがここにいて、ここで自分が寝ていることで全てを理解した。

 

「そっか、私……負けちゃったんですね」

 

「ああ。負けた。というか、ギブアップを俺がさせた」

 

「そうですか………………勝ったって………思ったんですけど」

 

「よくやったよ。お前は。ほんの少しの差だったんだ」

 

「だけど…」

 

声が嗚咽がかる。コロナは涙を必死に我慢した。なぜか泣いてはいけないような気がしたのだ。アキラに情けない姿を見せたくなかったのかはわからない。

 

「………その調子だ。泣くほど悔しいならきっと次はもっと強くなれる」

 

アキラはそう言い残し、病室を出た。アキラが部屋を出たのは部屋の外に気配を感じたからだ。その感じた気配に扉を開けるとともに出会う。

 

「あ…」

 

「アキラさん…」

 

ヴィヴィオとリオだった。

 

「俺はガキの相手は苦手でな。あとはお前らに任すわ」

 

ヴィヴィオの頭に手を置いてアキラはその場から去っていった。二人は顔を見合わせて病室に入っていく。

 

「ヴィヴィオ、リオ」

 

「コロナ、大丈夫?」

 

コロナと二人は少し話した。最初の試合の話、ヴィヴィオの試合の話、リオの試合の話。そして、今回の試合の話。

 

「本当にすごかったよ。コロナ!」

 

「うんうん、ルーちゃんと戦った時と大違い!びっくりしちゃった!」

 

「…………試合中、なんども心が折れそうになったんだ。アインハルトさんのときもそうだった。あぁ、私はまだまだなんだなぁって思わされた。だけど、その度にいままでの教えが私を支えてくれた。技や考えた技術が決まったとき本当に嬉しかった。これがノーヴェさんの言ってた最高の瞬間なんだなって、わかったんだ」

 

「それは、わたしもわかる」

 

「わたしも…みんな褒めてくれたし、立派だったって………」

 

彼女たちの周りにいる大人たちは決して負けたことを責めたりする者はいない。大人たち自身が血反吐を吐くような努力をし続けてきたからたとえ格闘技の試合とはいえ努力を理解できない者たちはいなかった。

 

だが、だからこそそんなやさしさが彼女たちの胸を痛めた。

 

「だけどさ…………やっぱり勝ちたかったよね」

 

「当たり前だよ…」

 

「コーチや応援してくれる人たちに喜んでほしかった…」

 

「そうだよね、もっともっと……勝ちたかったよね」

 

もちろん負けたくないという気持ちもあるだろうが、それ以上に一生懸命自分たちのために尽くしてくれた仲間に申し訳が立たなかった。それが悔しくて彼女たちは涙を流した。

 

その声をアキラは扉越しに聞いていた。

 

そこに、ノーリとトレーニングをしているはずのアインハルトが現れる。

 

「あ、アキラさん」

 

「…………よう」

 

「…」

 

アキラの存在を確認してから、部屋の中の状況を察しアインハルトは帰ろうとした。

 

「いかなくていいのか?」

 

「………ノーリさんに心配だから見に行って来いと言われたのですが、この調子なら問題はないかと。それに、最初に負けた人間が励ますなんて…」

 

「んなこたぁ気にすることねぇよ。ま、お前がそういうなら無理にとは言わん。お前も頑張れよ」

 

「…はい!」

 

 

 

続く

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