とあるギンガのPartiality Vivid   作:瑠和

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これにて原作一巻が終わりました。次回からは二巻の合宿会に入っていきます(多分)。
目覚めよ!その魂!


第四話 鮮烈!覚醒の眼

ノーヴェが組んだ練習試合が行われる日の朝。

 

ギンガはいつも通りの時間に目を覚ました。そんな彼女の横にはアキラがアリスとともに眠っている。

 

「ふぁ……」

 

ギンガはアキラは起こさずに布団から出る。そして部屋から出て居間に向かった。朝食の準備のためだ。

 

居間の扉を開けると、珍しくノーリが起きていた。

 

「あ、ノーリ」

 

「ああ。おはよう」

 

「珍しいね。こんなに早く」

 

普段ノーリが寝坊助な訳ではない。彼は基本的に朝食ができるまで起きてこないのだ。

 

「ちょっと変な夢を見た…それでな」

 

「あら。どんな夢?」

 

「…ギンガ。お前は、エレミアって知ってるか?」

 

「…知らない……かな。なにそれ?」

 

「いや、いいんだ…あんま気にしないでくれ。さ、朝飯の準備しよう。手伝うぜ」

 

ノーリは無理に明るく振る舞っているように見えた。だが、ギンガはあえてなにも聞かずにいつも通り対応した。

 

「大丈夫よ。今日は大切な練習試合なんでしょう?テレビでも見てリラックスしてなさい」

 

「…わかった。なんか、あれだな。ずいぶんお母さんが板についてきたな」

 

ノーリはギンガに感じた率直な意見を言った。

 

「あら、なに?お父さんみたいなこと言って」

 

「俺はアキラの片割れみたいなもんだ。ずっとお前を見てた。その記憶はもうアキラに渡しちまったが。昔に比べりゃお母さんらしくはなってきたよ」

 

「喜んでいいのやら悲しんでいいのやら…」

 

ギンガは複雑な顔をしながら朝食の準備を進める。ノーリは少し難しそうな顔をしながらその姿を眺めていた。

 

ノーリは色々な事情が絡み、アキラのクローンとして生まれ、アキラと繋がっていた。そして、アキラの目を通じて見てきた記憶があったがそれもすべて、アキラに返した。

 

だからノーリの記憶はほとんどないはずだった。だが最近、ノーリの頭の中に妙な記憶が混じることが増えている。それはアキラの目を通じて得た記憶でも、ノーリ自身の記憶でもなかった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

-アラル港湾埠頭 13:20-

 

 

 

試合場所となるアラル港湾埠頭にはすでに前回のヴィヴィオとアインハルトのスパーを見に来ていた面子が集まっていた。

 

「ヴィヴィオ、本当によかったのか?」

 

ノーリはヴィヴィオと話していた。前回のスパーの結果にヴィヴィオが不満を持っていたのは明らかだ。それをほぼ無理矢理譲ってもらったことでノーリは罪悪感を感じていた。

 

「大丈夫!私の本気を見てもらいたいって気持ちも確かにあるけど…。でも、アインハルトさんと戦いたいんですよね?」

 

「ああ…」

 

「じゃあ、大丈夫です。頑張ってください!」

 

ヴィヴィオは快く承諾してくれていた。ノーリ戦いも応援する気満々だった。ノーリはとても明るいヴィヴィオを見ながら苦笑いで頷いた。

 

「ありがとう。恩に着る」

 

その時、背後から声がした。

 

「アインハルト・ストラトス。参りました」

 

アインハルトがやってきた。ノーリはヴィヴィオ達から離れ、アインハルトの前に立つ。

 

「…」

 

「今日はよろしく頼む。アインハルトさん」

 

「よろしくお願いします」

 

「じゃあ、準備するか」

 

ノーリは懐からデバイスを取り出した。それはノーリが以前まで使っていたデバイスではなかった。

 

「アキラ君あれって…」

 

「ああ。前のは黙示録事件の時に壊れちまったらしい。だからヴィヴィオとのストライクアーツのとき用にってな。特別なものはなにもない。むしろあいつの年頃のもつデバイスとしては妥当さ」

 

「武装形態」

 

「格闘形態」

 

二人とも大人モードになって構えた。アインハルトの大人モードを初めてみた全員が驚く。

 

「アインハルトさんも大人モード!?」

 

「今回も魔法はナシの格闘オンリー。5分間一本勝負」

 

今回もレフェリーはノーヴェ。間もなく練習試合が開始するとなると、二人の間に緊張が走る。

 

「レディ、ゴー!」

 

(ノーリさん……クラスメイトとしての関わりは少ないけれど…昔ちょっとだけ話したときの印象を今でも覚えている…。笑っていても、心の中は笑っていないような、そんな感じ………いや、それよりも、ノーリさんが先週おっしゃった言葉の意味…)

 

そう、ノーリは先週アインハルトに対し「お前の拳、俺なら受けられる」といったのだ。格闘技としてではない。事情を知っているのならそれは「覇王」としてのアインハルトの拳を向けてもいいと言う意味だ。

 

(……本当に?)

 

アインハルトは心配そうな顔をしながら構え、一気にノーリに突撃しながら右拳を放った。

 

「!」

 

ノーリは急に飛んできたアインハルトの拳を両手でガードした。しかし、アインハルトはそのまま左ジャブ、再度右ストレートと繰り出す。

 

ノーリはそれをすべてガードで受けた。

 

「…!。ああ!!」

 

ノーリはアインハルトに見つけた僅かな隙にブローを繰り出したが、アインハルトはギリギリで避け、カウンターに顔面へストレートをお見舞いした。

 

「ごっ……」

 

ノーリはその衝撃で2、3歩後退する。

 

「ノーリさん…」

 

観客がノーリを心配そうに見守る。簡単に負けそうに見えたのだ。

 

「…中々いい拳だな」

 

「お誉めいただき光栄です。ですが、加減はしません」

 

アインハルトは再びノーリに殴りかかった。しかし、ノーリはその拳をガードするのではなく左手で受け止め、すぐさま横に投げた。

 

「!」

 

それによりアインハルトが一瞬体制を崩した隙を見逃さずガードよりも早く腹部に蹴りをお見舞いした。

 

アインハルトはその蹴りに耐えつつも後ろに押される。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

ノーリは追撃に右ストレートを放ったがアインハルトは掠りながらもなんとか避け、下からカウンターを打ち込む。

 

ノーリはアインハルトのカウンターを右足でガードし、上から左拳でアインハルトの頬を殴り落とした。

 

アインハルトはバランスを崩しながらも片手を地面に着き、腕の力だけで全身を後方に跳ばし、ノーリから離れた。

 

「はぁ…はぁ…」

 

アインハルトの表情はずっと無表情だったが、流石に苦悶の表情が出てきていた。

 

「…今のところ、ノーリが押してるね」

 

「うん…」

 

アインハルトはノーリから視線を外さず、構え続けながらも考えていた。

 

(確かに…ノーリさんは強い。パワーも、スピードも……でも、それ以上に…殴られる度、蹴られる度に感じる……これは一体なに?)

 

ノーリも似たような状況だ。

 

(……あいつの拳を受ける度に、あいつに一撃いれる度に、記憶が鮮明になっていく気がする……俺じゃない、誰かの記憶……)

 

「お前は誰だ…」

 

「…はぁ!」

 

再度戦いが始まる。アインハルトが放つ右拳をノーリは左手首で受け流す。次の攻撃を紙一重で避け、その次の攻撃は完全に避けた。

 

(……読まれている!?)

 

アインハルトは先程と違い、完全に回避してきたことに驚く。しかもただ単に避けてるわけではない。「見切られている」。その感覚があった。

 

(わかる…)

 

ノーリはアインハルトの攻撃を避けながら軽い反撃を加える。アインハルトの攻撃を見ているのだ。

 

(構え……右ストレート、からの右肘、次は上段蹴り!)

 

アインハルトはノーリの予測した通りの動きをする。そして、強力な一撃をアインハルトの顔面に加えた。

 

「…!」

 

「…」

 

(確かに…ノーリさんも強い。なにか感じるものがある気もする。だけど…!)

 

顔面に強力なのをくらい、倒れるかと思われたアインハルトは足を踏ん張らせ、一瞬で構え直した。

 

(きっと私の拳(痛み)を向けていい相手じゃない…。私の事情を向けていい相手じゃない……だから!)

 

予想外の復帰の速さに、ノーリは対応しきれていなかった。

 

(しまっ…)

 

「覇王!断空拳!!」

 

アインハルトの覇王断空拳がノーリの腹部にモロに入った。

 

「……………っ!」

 

ノーリは足を踏ん張らせ、覇王断空拳を耐えた。しかし、そのままの姿勢で大きく後ろに下がらさせられ、ダメージも尋常じゃないものだった。

 

「…」

 

(断空拳を堪えきった…!?いや、だとしてもダメージは…)

 

「…あぁ」

 

ノーリが小さく声を漏らした。

 

「…?」

 

「うぁぁぁ!あっ!あぁぁぁぁぁ!」

 

ノーリら天に向かって吠えた。次の瞬間、ノーリの足元に魔法陣が展開され、ノーリの身体から魔力が放出された。その魔力はそのまま天に登る。

 

ノーリの咆哮は近くにいたヴィヴィオに、アインハルトに、世界に響く。

 

「ノーリ!?」

 

「ノーリ!」

 

「ああ!」

 

「うっ…」

 

アインハルトは何とか耐えたがヴィヴィオが膝をついた。オットーとディードが駆け付ける。

 

「ヴィヴィオ!」

 

「陛下!」

 

「どうしました!?」

 

「今…記憶が……オリヴィエの…記憶が」

 

「聖王の…?」

 

ヴィヴィオの症状を聞くと、アインハルトが口を開く。

 

「私もです…」

 

「アインハルトも…?」

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……」

 

魔力放出が終わり、ノーリが顔を正面に向けると全員が驚く。

 

ノーリの髪の毛は茶髪から翡翠色に代わっていた。さらに右目が紫に、そして左目が赤色のオッドアイになっており、全身には虹色の魔力を纏っていた。

 

「…」

 

「おい…ノーリ?」

 

ノーヴェが恐る恐る声を掛けるが、返事はない。ただ眼前のアインハルトをひたすら見つめている。

 

「ノーリ!」

 

「…」

 

やはり返事はない。だが、ノーリはアインハルトに向かって歩き出す。

 

「返事しろノーリ!」

 

「ノーリ!!」

 

「…」

 

ノーリはただアインハルトに向けて歩を進める。ノーヴェは慌てて二人の間に入った。

 

「くそ!何が起こってやがる!アインハルト、悪いが試合は中止だ!」

 

「いえ!」

 

アインハルトが珍しく感情を強く表に出して拒否した。

 

「やらせてください!彼と!」

 

「はぁ!?」

 

「今の彼なら、私の拳を受けてくれるにふさわしい相手に思えるんです!」

 

「何言ってんだ今そんな…」

 

「これがきっと、ノーリさんが言っていた、拳を受けられる状態なんだと思います…」

 

「だが…」

 

ノーヴェは複雑そうな表情をしていた。今回はアインハルトの問題を解決することも視野に入れている。ここでアインハルトの意思を無視することはできない。

 

「やらせてやれよ」

 

アキラが言った。

 

「何かあったら俺が止める」

 

「…わかった。なんかあったら頼むぞ。アインハルト!無理するなよ!!」

 

「はい!」

 

アインハルトが構え、ノーヴェが下がった。ノーリは以前黙ったまま歩いてくる。

 

「……行きます!!」

 

アインハルトはノーリにとびかかり、右拳をお見舞いする。しかし、ノーリは片手で受け止める。ノーリは受け止めたアインハルトの右腕を掴み、捕まえた。

 

「…」

 

(動かな…)

 

「…」

 

アインハルトは急いで反撃に出ようとするがそれより早くノーリが拳をアインハルトの腹に食らわせた。それと同時に手を離し、アインハルトは吹っ飛ぶ。

 

「うう!」

 

「アインハルト!」

 

「大丈夫です…」

 

アインハルトはすぐに体勢を直す。ノーリはアインハルトに突撃する。しかし…

 

「ぐ…」

 

ノーリは途中で止まり、腹部を押さえながら膝をついた。

 

「え…」

 

「く……あぁ…」

 

なんとか立ち上がろうとしたがノーリはそのまま地面に倒れ、大人モードとバリアジャケットが解除された。アインハルトはノーリが止まって安心したような、残念そうな表情をした。そこに、アキラがやってきた。

 

「さっきの断空拳が遅れて来たんだろうな。微妙な幕引きで申し訳ないな」

 

アキラがノーリを背負いながら言った。そしてそのままノーリを日陰までもっていく。

 

「おい、オットー、ディード。救急箱持ってきてるんだろ。持ってきてくれ」

 

「はい!」

 

アインハルトも武装形態を解除してノーリの近くまで行く。

 

「…」

 

「面倒ごとに巻き込んじまったみたいになってすまなかったな」

 

ノーヴェがアインハルトに謝罪する。

 

「いえ……むしろ原因は私にありますから」

 

「………どうだった?あいつは」

 

「…とても良い実力者だと思います。彼自身も、さっきの状態も」

 

「そうか…」

 

「…ノーリさんは、ヴィヴィオさんたちといつも鍛えているのですよね?」

 

「え…ああ、まぁ。そうだな」

 

「ヴィヴィオさん」

 

急にアインハルトが話しかけてきてヴィヴィオはびっくりする。

 

「は、はい!」

 

「先週は、失礼なことを言ってしまいました………訂正します」

 

「は、はい……」

 

「…どうした急に」

 

急にアインハルトがヴィヴィオの実力を認めたことに疑問に感じたアキラが聞く。

 

「ノーリさんの拳に、彼自身が私の為に放ってくれる拳の思いの中に「俺の仲間は俺と対等にやれるくらい頑張っている」という思いが…感じられたからです。……こんな理由では…だめでしょうか。もっとちゃんと…」

 

どうやらアインハルト自身先週のことにかなり罪悪感を感じていたようだった。うまく謝るタイミングを見付けられず、そして一度出した言葉を簡単に撤回していいものか悩んでいた。

 

そんなアインハルトの様子を見てアキラは微笑む。

 

「いいんじゃねぇか。なぁヴィヴィオ」

 

「はい!私は全然!」

 

笑顔で答えてくれた。アインハルトはどこかほっとしていたようだ。だがアインハルトが安堵したその時、足から力が抜けてアキラの隣にいたギンガに倒れ掛かってしまう。

 

「あら?大丈夫?」

 

「あれ…どうしたんでょう私…」

 

「最後の一発が響いたみたいだな」

 

「大丈夫です…私は…」

 

ギンガから離れ、ちゃんと立とうとしたがまたふらつく。それをアキラが支えてやる。

 

「まぁいいから。楽にしてな。それとも俺は嫌か?」

 

「い、いえ…」

 

アインハルトはそのままアキラに支えられていた。

 

(さっきの状態のノーリさん…とても…私に近いものを感じた……もう一度…拳を交えたい……いや、それだけじゃない…私は、「もう一度彼と戦いたいと思っている」…。そしてヴィヴィオさんとも…。いったいどうしてしまったんでしょうか…)

 

新暦79年、春。

 

こうしてノーリ・ナカジマとアインハルト・ストラトスは出会った。これは彼女たちの、鮮烈な物語の、始まりの始まり。

 

 

 

 

 

続く

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