絢辻さんと、私と、『証明』と   作:#NkY

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苦手な身内

 月曜日。6日のつまらないルーチンワークを再びこなす日常が戻ってくる。でも、今までの、何が何でも全部6日間が嫌いだ、という私はもういない。

 なぜなら……絢辻さんに、会えるから。

 

「ふふっ……」

 

 あの一日で、私は絢辻さんにまるっきり作り変えられてしまった。あんなに憂鬱だった月曜日を、楽しみにする日が来るなんて思いもしなかった。

 だから私は、今まで牢獄のように思うほど嫌だった校舎に向かって、軽い足取りでいつもより早く向かっているのかもしれない。

 それに、いつもより早いせいか、あいつも……。

 

「はぁ、はぁ……やっと、追いついたぞねぇね……!」

 

 何で来るんだろう。ほんと。

 

 平和な登校の時間は、だいたい彼女にぶち壊されるのが日常。知ってた、いくら私が早くに出ようったって……こいつは……。

 

「なんで置いてったのねぇね! 一緒に行こうよー!」

「嫌だ。そんなにベタベタしないで。もう高校生でしょ。あとねぇねって言うな」

「そんなー、可愛い妹をぜんざいに扱うなんて、みゃー信じられないよー」

「あーもう、うっとうしい。あとそれを言うならぞんざいだから」

 

 いい年して甘えにくる妹の美也(みや)。高校一年生。私は正直、彼女が苦手だ。

 

「あ、(あい)ちゃんと紗江(さえ)ちゃんだ! おーい!」

 

 そんでもってああやってすぐにどっかに行く。はあ……あんな人が身内じゃなければまだましだったのに。

 あんな人を振り回すのがとことん好きなくせして、彼女の人脈はかなりの広さを誇っている。さっき行った一年生のクラスメイト2人だって、一人は水泳部のホープだし、もう一人はなんと社長令嬢という噂を聞いている。

 

 それだけでない。私の幼馴染、桜井(さくらい)梨穂子(りほこ)とも上手い具合に甘えていて可愛がられるし、さらに、一体どこからどういう接点を持ったのか皆目検討もつかないが、輝日東(きびと)高校の中で知らない人はいない超人気者、いわば学園のマドンナとでも言えばいいのだろうか。そんな普通の1年生などそうそうお近づきになれない3年生、森島(もりしま)はるか先輩にも気に入られしょっちゅう可愛がられている。

 

 もちろんそれはほんの一部。私の知らない人脈が山程あるに違いない。それに、それなりの頻度で美也は男子から告白を受けていると、美也は家で話している。もっとも、全部断っているらしいが……。

 

 じゃあなんでそんな彼女が嫌いなのかというと。

 

 確かにうっとうしいしうざったいが、実は別に美也が悪いわけではない。悪いのは私。

 

 そう、私は……架空の世界に思いを馳せる夢女子で、自分優先主義。他の人のために時間を割くなんてありえないと、そう思っていた。……もっとも、その信念は今では完全に崩壊したわけではあるけれど。

 

 それに対して、美也はあんなふうに人のために喜んで時間を割くし、それであんなにも可愛がられる。人気もすごいし、モテる。あんな眩しい妹は……はっきり言って、私のコンプレックスだ。

 

 だから……無意識のうちに、きっと、遠ざけようとしてしまっている。絢辻さんだってそうだった。あんな化け物、いなければ良かったのにと何度思ったことだろう……。

 他の人に時間を割くなんてありえない。その考えが消えた今でも、私は美也を避けるのをやめることができない。

 

 美也は悪くない。悪いのは、弱い私。

 

 ……すっかり、気が滅入っちゃったな。一人になった私は、冷たい朝の空気にまとわりつかれながら。アスファルトにある白線のかすれを探しながら登校した。

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