ここはAクラス、和人の指示によって速やかに特設リングは撤収され、元の姿を取り戻している。
「戦後対談を行う。まずは両クラスの今回の代表者出てきてくれ」
「・・・全員出たぞ」
「よし、今回の試合ではクラスの勝ち負け関わらず、試合の代表者の間だけに適用される命令権が賭けられていた。一試合目の勝者から順に命令をするように」
「ワシじゃな。では姉上。今後も勉強の指導をお願いする」
「お安いご用よ、任せなさい」
本当にそっくりだな・・・。
「次は私ね。あんたは今後どれだけ良い点数を取ろうとAクラスに来ることはできない」
「横暴よ!そんな命令無効に決まってるわ!」
「言うと思ったわ、西村先生。」
「学園長も認めた。自分の行いを悔やめ」
学園長もコイツらには参ってたんだろうなこんな奴らが居たら上がる評判も上がらない。比較的まし?なFFF団に少し入れ知恵してやるか。
「・・・・次は俺。俺と友達になってくれないか?」
「もちろんだよ!これからヨロシクね!康太君♪」
気づいたらくっついてそうだな。よし、こっちも入れ知恵決定。
「次は俺か。姫路、少しは反省したか?」
「私、私は、何てことを。そうですよね。桐ヶ谷君にああ言われて当然です。」
「・・・」
「それに吉井くんは通報しようと思えばいつでもできました。当たり前です。暴力は法に違反してるんですから。それでも彼はしなかった。優しさに甘えてたんです。」
「なんだ、分かってるじゃないか。」
「はい。私に誰かを好きになる資格はありません、それが分かりました。暴力に逃げてて伝わるわけが無かったんです」
「そこまで分かれば良い。俺からは1つだけ、明久に謝罪するんだ。姫路の処罰は西村先生に任せます。」
「了解した。責任もってその任を預かろう」
正直言うと驚いた、懲りずに喚くものと俺は予想していた。いや、決めつけていた。俺も反省すべきだな。
そう一人でポツポツと考え、最後の二人に目を向ける。
「俺の番だな。・・・・・・いざとなったら何を言えば良いか解らないものだな。ま、迷うのも俺らしくないか。
・・・・・・翔子、遅くなって悪かった。こんな俺を真っ直ぐ好きでいてくれて本当に嬉しかった。だけどそれも今日までだ。」
「・・・・・・な、んで?雄二、私気に障るようなことした?謝るから、嫌いにならないで!」
「ちげぇから泣くなっ!ったく、もう。
・・・好きだ、翔子。あの日からずっと、こんな俺だけど精一杯、お前を守ってみせる。
だから、俺と付き合ってくれ。」
「・・・・・・ほん、とうに・・・?夢じゃない?」
「ああ。」
雄二の返答を聞いた瞬間、霧島さんは雄二に抱きついた。それも泣きながら、彼女がどれだけ雄二を想っていたのかが伝わってきた。未だ泣きながらゆっくりと顔を上げ雄二を見上げて彼女は言った。
「・・・・・・よろしくお願い、します」
「おう」
雄二は困ったようにグレーのハンカチを翔子に差し出す。
「・・・・・・雄二」
「ん?なんだ?」
「私・・・、やっぱり何も間違ってなかった!あの時も、今まで待ってたのも!」
普段は無表情なその顔に見る者全てを幸せにするような笑顔をただ一人へ向ける。
──ここに新たなバカップルが爆誕したのであった。
しかし、積年の思いが繋がった感動の瞬間に空気を読めずぶち壊そうという輩が数十名。何を隠そう独身の集まりFFF団である!
だが、少々様子がおかしい。
「うっ、感動する。ううっ!」
「良かったなぁ!うっ!」
そう、この連中。泣いているのだ。
この悲しき独り身の集まりは翔子が何故そこまで雄二に拘るのかと疑問に思い、独自の調査により大体の事情を知っていた。
現在の心境はさしずめ孫が漸く彼女をつくりその過程を死ぬほど応援した祖父である。
正直、黒い服着た連中が豪華な部屋の隅で集まり泣いているのはどこからどうみてもシュールであった。
「・・・うおっ、負のオーラとまるで我が子にめでたいことがあったかのようなオーラが混ざっててなんとも言えない。」
「う、うっ!っ!な、なんだ?桐ヶ谷か?」
「そうだ、それにしてもどうしたんだ?」
「ずっ、そこは坂本に聞けば半分は分かる。もう半分は自分達が寂しい奴らだな、と思うと目から水が止まらなくて」
「そうか、それなら俺がお前らの評判を上げて女子と仲良くなる方法を教えようか?」
「なにっ!?本当か!?」「俺たちもお前らのようにリア充になれるのか!?」
「ああ。だがお前ら次第だ。俺が言う方法は地道な好感度上げ。でも確実ではある。」
「何でも良い。やってやるぜ!」「独り身の俺達に失うものはなにもない!」
和人は男子達の勢いに少々気圧されながらもその【方法】とやらを口にした。
「簡単だ。お前らは人に対して敬意をもて、そして誠実でいろ。正直、嫉妬や私怨で動くお前らは見苦しかった。そのエネルギーを周囲のために使うことで今の評価からは確実に上がる」
「た、確かに。俺たちは一方的に感情を押し付けていた」「あんなことをしていれば普通は嫌われて当然だよな・・・」
そう。和人が言ったのは人としての在り方だった。真っ当な評価を得たいのなら自分が変わるしかないのだ。
当たり前のことだが、和人が言うと妙な重みが言葉にあった。FFF団はゆっくりと理解していったようで互いに頷き合い。一斉にバサッ!と黒い装束を脱いだ。
「よし、お前ら!これからは人の為に動くんだ!」「そうだな!今までの迷惑分も俺達の行動で払っていくぞ!」
『うおおおおーーー!!!』
須川が声を掛ければ団員達がしっかり返した。眼には光が宿っている。団員達は一斉に駆け出し、ボランティアを開始するのであった。
「さて、俺たちAクラスからの要求は今回試合に出た島田を除く代表者のAクラスへの編入だ。話はつけてある、三日後に行う試験で良い結果を出せばこちらに編入しても良いとのことだ。健闘を祈る」
要求というにはあまりにも一部のF側に利があるものだったが雄二の本来の目的は達成されたので断る理由もない。Fクラス側はその条件を飲み込むのであった。
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三日後、見事島田を除いた四人は好成績を叩き出し、Aクラスへの移籍は完了したのだった。
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生存ルートがいい
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いや、このままで
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