文月学園での新たな生活   作:Argo(不定期更新)

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 どうも!Argo改め、桜秋夜空です!
 この話、本当は2020の大晦日に上げたかった。


年の終わりに

 桐ヶ谷家で初めて迎える大晦日が来た。実家の方にはもう顔を出したし、年末の大掃除は忙しい翠さん達に代わって私達が協力して執り行ったので今日は何もすることはない。

 

「どうしようかしら。課題をこんな日までするのも何だかなぁ・・・」

 

 ALOかGGO辺りにログインしようかとも思ったけれど生憎、皆は用事があるらしい。

 明日奈は親戚の集まりが。本人は見栄の張り合いばかりで面白くないと心底イヤそうに言っていたのが心に残っている。

 咲智、里香、珪子は家族で出掛けたりして過ごすのだとか。

 エギルは年末は予約が入って忙しい、とのこと。ま、ダイシーカフェの料理や飲み物は贔屓目無しで見ても美味しいモノばかりだからしょうがないのかもしれない。

 クラインは忘年会で上司のありがたーいお言葉を聞かなきゃなんねぇ、と愚痴っていた。

社会人特有の付き合いがあるのだろう。

 他の皆も各々の予定が詰まっていてログイン出来そうにないと言っていた。

 

「本は読み終わっちゃったし・・・」

 

 ベッドから立ち上がりグッと伸びをして、部屋をぐるりと見てみる。

 

「コーヒーでも淹れようかしら」

 

 炬燵台の上に空のまま置きっぱにしていたマグカップを手に取り、自室を出る。

 

「「あ・・・」」

 

 何の偶然か、丁度和人も廊下に出てきて鉢合わせる。談笑でもしながらリビングへ行きたいところだが、廊下は冷凍庫のように冷えきっていて寒い。なので、二人とも少し早足になりながら暖かいリビングを目指す。

 バタン!と少し勢い良くリビングに入り込むと炬燵台に顎を乗せただらけきった状態でTVを見る義妹たちが。

 

「ちょっと、お兄ちゃんも詩乃さんもゆっくり入ってきてよ~、冷気が来て寒いから!」

「そうそう~」「右に同じくです~」

「ご、ごめん。でも廊下寒いから早くリビングに入りたくてさ、な?詩乃」

「ええ。寒い寒いとは思ってたけど、まさか雪が降るほどだったなんて・・・。あ、私コーヒー淹れるけど、皆は飲み物いるかしら?」

「詩乃さん、手伝いましょうか?」

「別にいいわよ、直葉。気持ちだけもらっておくわ」

「んー、ではお言葉に甘えてあたしは緑茶をお願いします」

「じゃあ、俺はコーヒーで。」

「ボクと姉ちゃんはココアで」

「了解」

 

 ポットの再沸騰ボタンをポチッと押してお湯が沸くまでの間にマグカップを人数分とお茶の葉の用意と、ココアの粉とインスタントコーヒーを適量用意する。今の私に豆から挽く気力はないのだ。

 ピピッと機会音が鳴り、沸騰したことを知らせる。お湯をマグカップに注ぎ、スプーンでかき混ぜる。緑茶はもちろん急須で。

 流石に手で運びきれる量では無いので、お盆に乗せて、炬燵で溶けきっている皆の元へ向かう。

 

「はい、どーぞ」

「ありがとう、詩乃」

「ありがとうございます!」

「ありがと~!」

「詩乃さん、ありがとうございます」

 

 ヒョイヒョイと手が伸びてお盆の上から自分のカップを受け取る。空になったお盆を横によけて、和人の隣に座る。

 

「んー、暇だからリビングに来たけどパッとしないわね」

「じゃあ、ゲームでもするか?」

「ゲーム?」

「そう。」

 

 バラエティー番組を見てた三人もこっちに注目する。和人は腰を上げて、リビングを出る。どうやら、自室にあるらしい。戻って来るまでコーヒーでも飲んでおこう。

 

「あー、やっぱり廊下は寒いな」

 

 パタパタと急いでリビングに戻ってきた和人が呟く。うっ、冷気が・・・!直葉達の言う通りだわ。今度から気を付けましょう。

 

「さむっ、それで、ゲームって?」

「ああ。これ、皆見たことないか?」

 

 そう言って取り出したのは数年前に大ヒットし、品薄状態にもなったゲーム機だった。

 

「和人、それ・・・」

「ああ、懐かしいだろ?これ、発売当初に1番に並んで買ったんだ。そのあと、品薄状態になったりしたから、本当に早めに買っておいてラッキーだったよ」

 

 当時の事を話ながら和人はテキパキとテレビとコンセントにコードを繋ぎ、本体の液晶を規定の位置へセットする。

 

「かずにぃ~」

「なんだ?」

「プロコンいくつあるの?」

「2つだ。あとは本体備え付けのと同じコントローラーが2組。どのコントローラーが良いかは皆で話し合ってくれ。俺は何でもいいから」

 

 和人は木綿季の質問に答えながら液晶の両側からカシャカシャとコントローラーを引き抜き、ストラップと呼ばれる器具をつけたり、本体備え付けのプロコンのようにして使える器具へコントローラーを填めたりする。

 

「プロコン使いたい人いるかしら?」

「「はい!」」

 

 詩乃が聞くとビシッ!と直葉と木綿季が手を挙げる。

 

「じゃあ、直葉と木綿季がプロコンで。プロコンモドキはどうしましょ?」

「では、わたしが使ってもいいですか?」

 

 小さく手を掲げて藍子が希望する。

 

「ん。いいわよ。じゃあ私はこれね」

「おっ、決まったみたいだな。」

 

 炬燵から出てしなければならない作業が終わったのか、和人が隣に戻ってくる。

 

「で、和人兄さん。今から何のゲームをするんですか?」

「それはな・・・・」

 

 丁度ソフトが起動し終わり、スタート画面が表示される。そのソフトはかなり有名なタイトルのものだった。

 

「マリカだ!」

「久しぶりにするわね」

「そもそもビデオゲームが久しぶりだよ」

「お兄ちゃん持ってたのスマブラだけじゃなかったんだね」

「レースゲームは久しぶりな気がします」

 

 各々が自由に喋る。それに軽く相槌を打ちながら和人が操作を進める。

 

「まずは王道のレースでいいよな?」

 

 もちろん、異論はない。それを確認した和人が次の画面へ飛ぶ。速さは150ccで決定。

次は、キャラ選択だ。

 

「じゃ、俺はキングテレサで」 1P

「私はロゼッタにするわ」   2P

「あたしは緑ヨッシーにするね」3P

「ボクは黒ヘイホーで!」   4P

「わたしはしずえさんにします」5P

 

 殆ど一瞬で決まった。皆のを見ると中々個性的なキャラばかりだな、と心の中で思う。

 次は機体選びだ。

 

「安定を選ぶなら車か・・・」

「私はバギーにしとこ」

「あたしはヨッシーに似合うヤツで揃えよ」

「ボクはバイクにしておこっと」

「わたしはしずえさんに合うように揃えようかな」

 

 若干悩みつつもノーマルシリーズで揃えたので早く決まる。決定まで少し掛かりそうなので他の四人のカスタムを眺める。

 

和人・・・ゴツい竜のようなバイクにボタンを象ったタイヤ。仕上げのグライダーはピーチ姫の傘みたいなやつ。究極的アンバランスの体現のようなカスタムだった。てか、テレサ自体が浮いてるから更に奇妙さが増している。

直葉・・・カブトムシの車に大きくも小さくもない丁度良い感じのタイヤとグライダーはモモンガみたいなやつ。自然を感じる。というか、ヨッシーバイクじゃないのね?

木綿季・・・ノーマルバイクに大きい方の通常タイヤ。グライダーは花のヤツ。性能を見ながらしてたからきっと自信作なのだろう。

藍子・・・キャラ次第で模様が変わるバイクに何故かあった企業もののタイヤ。グライダーは紙飛行機。しずえとも合っていてこの中では1番可愛いと個人的に思う。

 

 皆が決定したので次の画面へ。今度はコース決めだ。

 

「したいコースはあるか?」

「私は特にないわ」

「んー。レインボーロードはあんまりしたくないな」

「えー、楽しいのに~!」

「兄さん。決まりそうにないし、モーモーカントリーのあるコースでいいんじゃないでしょうか?」

「ん、そうだな」

 

 和人自体にしたいコースはないのか、藍子の提案を快諾する。木綿季が少し残念そうな顔をしたので次はレインボーロードのあるコースにすると約束する。そうすれば、さっきまでの残念そうな表情は何処へやらやる気満々でコントローラーを握り直した。

 

 コースの簡単な紹介のダイジェストをすっ飛ばして、スタートの場面に切り替わり、ジュゲムが現れてカウントダウンを開始する。

 

 3

 2

 1

 

 2のカウントに合わせてブレーキを踏み込む。スタートダッシュは大成功。一気に前へ躍り出る。

 コースは覚えていないから1ラップ目は様子見に徹する。2ラップ目からはジャンプ台や、グライダーが開ける方へそれて出来るだけトップと距離を詰める。

 ちなみに、一位は木綿季だ。アイテムボックスを獲得しながら皆の位置を小マップで軽く確認していると横すれすれを青こうらが通過する。危なかった・・・。

 ヒヤリとしたものを感じつつ、爆破に巻き込まれた二人を追い越してアイテムスロットを確認すると最強アイテムが。

 

「みんな、このステージ。私がもらったわ」

「「へ?」」

 

 反応したのは上位の木綿季と和人だけだったが二人は私のアイテムを確認して絶望の表情を浮かべる。

 

「さ、三連赤こうらだと!」

「これじゃあ、迂闊に前に出れないよ!」

 

 それに対して二人のアイテムはバナナや緑こうら、コインばかり。

 

「くっ!この緑こうらに賭ける!」

 

 シュパ!とこうらを私に投げるが追尾性能がない緑こうらを避けるのなどワケがない。

 すいっと横にずれて、お返しに赤こうらを後ろへ投げる。私はゴールしたので置き土産と嫌がらせだ。

 

「あぶなっ!」

「目の前にバナナ落ちてなかったらクラッシュしてたぞ!」

「木綿季は兎も角、和人は打ち消されたんだから良いじゃない。」

 

 和人は少し不満そうだが、その通りなので何も言えないようだ。ラストがゴールするのを見届けて1コース目の順位が表示される。

 

1位 ロゼッタ(詩乃)   2P

2位 黒ヘイホー(木綿季) 4P

3位 リンク(NPC)

4位 キングテレサ(和人) 1P

11位 しずえ(藍子)    5P

12位 緑ヨッシー(直葉)   3P

 

 1ステージ目の結果はこの通りだ。残りのステージは割愛するが、2ステージ目の途中からコツを掴んだ藍子と直葉が追い上げを見せたり、木綿季はバナナの皮に引っ掛かってから連続でNPCや皆が適当に投げたアイテムを受けるという悲しい事件が起きたりと散々だった。

 ちなみに、最終結果はコチラ↓

 

1位 ロゼッタ(詩乃)   2P

2位 キングテレサ(和人) 1P

3位 むらびと(NPC)

4位 黒ヘイホー(木綿季) 4P

5位 リンク(NPC)

6位 緑ヨッシー(直葉)  3P

7位 しずえ(藍子)    5P

8位 キノピコ(NPC)

9位 デイジー(NPC)

10位 ワリオ(NPC)

11位 メタルマリオ(NPC)

12位 ワルイージ(NPC)

 

 和人はギリギリ詩乃には及ばず優勝を逃した。木綿季はとあるステージで起きたフルボッコの悲劇で順位を落とす結果に。直葉と藍子は大躍進。見事最下位を抜け出した。

 

「ふぅ~。私の勝ち、ね」

「ぐっ!ラストのコースで詩乃に勝ててれば!」

「うぅ~、なんでボクばっかりアイテムの被害に・・・。バナナの皮を避けたタイミングで青こうらが通過してそれに捲き込まれるなんてどんな確率なのさ・・・」

「やったー!藍子ちゃんに勝てた!」

「ぐぬぬ・・・、兄さん!もう一度です!」

「おう!」

 

 いそいそともう一度レースを始める為に和人がコントローラーを操作する。

 カーテンの隙間から見える外の世界は真っ白で見てるだけでも凍えてしまいそうだ。

 

(でも、ま)

 

 窓から視線を戻し、わちゃわちゃとカスタムを変えながら楽しそうにする皆を見る。

 

 こんな寒さの日でも凍えずに済むのは、頬が弛むのを自覚しながらも、それを正せないのはきっと──

 

(ここが温かいからかしらね)

 

─らしくないな。そんな事を思いながら次の年へ想像を膨らませる。まぁ、なんにせよ。

 この温もりが来年もずっと続けばいい。

 

「よし!やるぞ!」

「「「おーーー!!!」」」

「負けないわよ!」

 

 やる気に満ち溢れた家族を見ながら、詩乃は改めてコントローラーを握るのであった。




 ご拝読、ありがとうございました!
 相変わらず拙作&遅筆ではありますが、今年もよろしくお願いいたします!
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