清涼祭の準備が進む中、Aクラス代表桐ヶ谷和人は学園長に呼び出されていた。
「えーと、ここか?」
目の前には立派な扉が。中からは争うような声が聞こえてくる。
「──を、────として──」
「あ──、許可────」
「・・・とりあえず入室するか」
和人は少し強めにノックして声が止んだのを確認し、氏名とクラスを言って入室する。
「2年Aクラス、桐ヶ谷です。学園長に呼ばれ来たのですが、入ってもよろしいでしょうか?」
「いいさね、入りな」
「失礼します」
重厚なドアを開けて中に入ると立派な事務机に座る学園長の藤堂カヲルと教頭の竹中がいた。
「桐ヶ谷君か、君の話は聞いている。とても優秀なそうだね。私も君の活躍に期待しているよ、それでは失礼する」
竹中は和人にそう言うと部屋の隅の観葉植物をチラッと見て退出していった。
「なるほどな・・・、ユイ、あれの機能を止めてくれるか?」
「お安いご用です!パパ!データはどうしましょうか?」
「んー、ユイの采配に任せるよ」
「了解しました!」
「・・・桐ヶ谷、その子は?」
「・・・・・・MHCP、メンタル ヘルス カウンセリング プログラムのユイです。あの城で出会った俺の娘です。本当はもう一人いるんですけど今はきっとクエストでもしてるんじゃないでしょうか」
「パパ!終わりました!機能停止くらいはお手のものです!データの転送先はこの学園の教頭室に設定してありました。
ところで、パパ、そちらの方は?」
「ああ、俺達が通っている学園の長だ。」
言いながら画面を学園長の方へと向ける。
「そうですか、ご紹介に預かりました。パパの娘のユイと言います。ちなみにママは詩乃さんです。スマホの中からで、すみません。」
「構わないさね」
「学園長、お話とは?」
「ああ、アンタのプログラミング技術の事は聞いてるよ、それの技術を見込んで頼みたいことがある」
「なんでしょうか?」
「この腕輪の欠陥を直してほしいんだよ。もちろん報酬は弾むよ」
「しかし、試験召喚システムは口外出来るようなモノでは無いのでは?もし、俺が軍にでも情報を売ればどうするのです?」
「確かに試験召喚獣の力は圧倒的だし、手に入れられれば戦争は免れないだろう。でも、アンタは命掛けで戦うということの意味は知ってるだろう?
まぁ、それでも売ったとすればアタシの見込み違いだったというだけさね。」
「食えない人ですね。いいです、請け負いましょう」
「データはどこに送ればいい?」
「そうですね、ユイ。頼めるか?」
「ハイ!パパのパソコンまで護送すればいいですよね?」
「そうだ。できるか?」
「もちろんです!ユイにお任せください!」
「とのことなのでユイに渡しておいて下さい。用件はこれで終わりでしょうか?」
「ああ」
「では、失礼します。あ、そうだ。
学園長、盗聴にはもっと慎重になられた方がいいかと。」
「なっ!?」
ガチャンと戸を閉め、静かな廊下にカツカツと和人の歩く音が響く。
「まさか試験召喚システムについての研究データまでくれるとは・・・。この機会に色々試してみよう。」
楽しみが増えたとでもいうように和人は無邪気に笑った。
分かってるとは思いますが、腕輪とはアレのことです。それでは失礼します。