結局、単位を物質に取られた俺は10日後のトーナメントに出場することになった。
そして今手持ちの力量を上げるためにトレーニングをしている最中だ。
今俺達がいるのは街の外れの山の中だ。ここはトレーナーは全くいない場所だが道が険しいので、足腰が鍛えられる。加えて、出現する野生のポケモンもレベルが高い。
そんなわけでほとんど俺達専用のトレーニング場になっている。
トレーニングの方法は単純。山頂まで登り、出現する野生のポケモンを倒していく。一度に多数出現したり、足場の悪いところでもお構い無しに現れる。トレーナーである俺自身の能力も高められるのだ。今だって、戦闘の真っ最中だ。
「ヘルガーはバークアウトで足止め、ブラッキーは鈍いからしっぺ返し、続いて月の光、ヤミカラスは電磁波からサイコキネシス、ニューラは嫌な音から冷凍パンチ。」野生のポケモンでよく出るのはオニドリル、ザングース、アーボック、スピアーなどの好戦的で縄張り意識の高い連中だ。タイプ相性で不利なスピアーや威力の高い格闘技を繰り出すザングース、状態異常を引き起こしてくるアーボックはトレーニング相手にはもってこいだ。疲れながらも山頂目指して順調に歩を進めている。山頂でのMAXコーヒーが楽しみだ。
だが、そんなことよりも目の前の相手に集中だ。
それから数時間後、休憩を兼ねて手持ちの回復中。現在、俺の手持ちはブラッキー、ヘルガー、ヤミカラス、ニューラ。
皆俺には勿体ないほどのいい連れだ。
ブラッキーは俺のパートナー。野生のイーブイの時怪我をしているところを保護してそれから遊び相手になった。イーブイの時は無邪気だったが、今はクールな女子だ。進化のキッカケは家出したコマチを探し出したのはいいが夜になり、道に迷ってしまった時だった。進化してくれたのはいいもののポケモンと遊ぶことに夢中になってコマチを放置しちまったことは反省している。
ヤミカラス、ニューラはイーブイが連れてきた。最初こそ威嚇されたが、自分と同じ臭いがしたのか次第に親しくなっていった。ヤミカラスはお喋りな三枚目。コメディアン気質でボケ担当。一方、ニューラはサドっ気のあるツッコミ担当。笑い方が結構可愛い二枚目。
ヘルガーはデルビルの時に最初のバトルゲットしたポケモン。ジョウト四天王のカリンさんの切り札だから、欲しがっていたからめちゃくちゃ嬉しかった。一度カリンさんのヘルガーのバトルを見せたら食い入るように見ていた。同族として対抗心を燃やしたのか以降すっかりバトルジャンキーになってしまった。なのでゲットからあっという間に進化して、現在手持ちの中で最もレベルが高い。
トーナメントに出場することが決まった時、一番嬉しそうにしていたのがこいつだ。
現在地は山頂。見晴らしの良いこの場所は人目を気にせず寛げる。
ブラッキーは昼寝していて、ニューラとヤミカラスはじゃれている。けど、時々ニューラがヤミカラスをど突いているが気にしない。いつものことだ。そして、ヘルガーは脇目も振らず食事中。あれだけバトルすれば腹も減るだろう。この時点でヤミカラスの倍は食べている。
こいつらの様子を見てると嫌われ者とは到底思えない。それだけ世間からのレッテルや偏見の影響が強いのだろう。
さて、そろそろ休憩は終わりだ。俺はMAXコーヒーを飲み干すとこいつらに帰宅すると伝えた。
山の下りは足に負荷がかかる。注意しないと怪我をすると伝えるとこいつらはうなづいた。
「こいつは大物だ」俺はボソッと漏らす。
俺の目の前に存在するポケモンはライボルト。出会い頭に電撃を放ってきた。大方縄張りに入り混んでしまったのだろう。鋭い目付きで威嚇してきてる。野生のポケモン相手にしては珍しく俺の手持ちは皆臨戦態勢に入っている。特にヘルガーは体制を低くして唸り声を出している。目を見れば真剣そのもの。ライボルトを強敵として認めているのか好戦的な笑みまで浮かべている。
「如何にも闘いたいって顔してるな。」ヘルガーにそう言うと、ちらりと目で答える。一目で分かる。「俺にやらせろ!」と訴えかけている。
「なら、任せるぞ。」と答え、他の手持ちをボールに戻してヘルガーだけを場に残す。
戦闘開始だ。
「ヘルガー、バークアウト!」
命じると途端に大音声で口汚くまくし立てる。命中するがライボルトは顔を顰めながらも睨み続ける。
だが、黙ってやられているわけもなく全身に電気を集め始める。
「充電か。ヘルガー、悪だくみ!」
バークアウトで下げられた特攻の低下を補うため充電するライボルト。つぎは威力倍増の電撃がくる。
なら、こちらも特攻倍増の悪だくみを積む。
「火炎放射!」と命ずるとすぐにライボルトは10万ボルトを繰り出す。
爆風が起こり、それが晴れるとライボルトはもう目の前にはいない。
何処だ、と思う間もなくヘルガーにライボルトの電光石火が刺さる。続けて雷の牙をヘルガーに食らわせる。
身体に直に流れる電流に顔を歪めるヘルガー。だが、面白いとばかりに笑みを浮かべる。
「ヘルガー、やれるな。そのままブレスをかけてやれ!」
すると、ヘルガーはライボルトの顔面を目掛けてブレスを吹き付ける。
途端、牙を放して後ろに飛びのくライボルト。当然だろう。ヘルガーの吐く炎には毒素が含まれる。
それを利用して毒の息を顔面目掛けて掛けたのだ。畳み掛けるなら今だ。
「ヘルガー、バークアウト!」
再び大声でまくし立てる。ライボルトはさっき受けたブレスの毒素の影響で反応が遅れてもろにくらう。
負けじと電光石火で近付こうとするが、ヘルガーはブレスの毒素を頼りに進路を予測してヘドロ爆弾を撒き散らす。
慌てて回避するライボルト。毒素を受けた身体にヘドロ爆弾をくらうのはマズイだろう。特攻を2段階も下げられたのなら力も出ない筈だ。
勝負はあっただろう。この辺が潮時だ。ヘルガーにちらりと目で指示する。真意を悟り、頷くヘルガー。
「火炎放射。」
放たれた火炎放射はライボルトの顔のすぐ横を通れすぎる。最初から当てる気は無い。もう闘う気は無いこと、これ以上やり合う様なら容赦しないという意思表示だ。
再度忌々しげにこちらを睨み付けると10万ボルトの光で目を眩ませて電光石火で離脱するライボルト
物足りないって顔してるがこんなものだろう。
「終わりだ、ヘルガー。後で傷見せてみろ。」
そう言うと俺はヘルガーをボールに戻す。ボール越しにヘルガーが暴れ足りないって態度してる。
こりゃ、トーナメントで暴れされなきゃ気が済まないみたいだ。
帰宅後、手持ちの様子を確認する。ヘルガーの傷は浅かったものの拗らせるとまずいので傷薬で治療。ヘルガーはこれくらいなんてことないと言いたげだった。後、まだ傷薬が沁みるのに慣れないらしい。少し顔を顰めてた。その様子を見たヤミカラスがケラケラ笑って威嚇されていたが、これも日常風景だ。ブラッキーは鈍いの使用が多かったので入念に筋肉マッサージしてシャワーを浴びせた。あいつも女子なのか
シャワーと毛繕いされるとご機嫌のようだ。その内ウトウトし始めた。お疲れ様。ニューラは傷の治療の後、すぐにうちのニャルマーのカマクラと一緒になって爪研ぎしていた。
仲はいいのだがお互いマイペースなのであまり一緒にいることは少ない。最後にヤミカラス。何だかんだ言って一番こいつが回避が得意のようだ。空が飛べるとはいえヒラリヒラリと攻撃を躱せる能力には俺も他の手持ちも感心している。ただ、戦闘中でもゲラゲラ笑うのはどうかと思う。どう見ても煽ってるし、相手が気の毒に思えてくるまである。今日も攻撃を悉く回避されたオニドリルが笑い声に頭にきてドリル嘴を仕掛けたら、イカサマで受け流され地面に直撃してた。あのオニドリルには同情したね。
さて、ここからが本題だ。
「明日、トーナメントのエントリーと抽選がある。」
そう言うと俺の手持ちは真剣な表情で向き直る。あのヤミカラスでさえもだ。
「ルールを説明する。1試合1対1、ポケモンの見せ合いなしのトーナメント方式。
試合ごとに違うポケモンを使っても良い。シード権はない。
使うポケモンにタイプやサイズの制限無し。」
一息置いて続ける。
「出場出来る生徒は全て六年生。それと教師からの推薦が必要。つまり、ある一定のレベルがある連中相手だ。」
そこまで言うとニューラとヘルガーが笑みを浮かべる。予想していたが、本当に悪い笑顔だ。
「ボコボコにしていいんだよな。」って絶対思ってる。
「最後に優勝者には優勝景品がある。
進化の石一式と好きな進化アイテム一つだそうだ。」
ニューラが一層やる気に満ちた顔になる。そういや、こいつマニューラになりたがっていたな。
「出場するからには優勝狙うぞ。悪タイプの実力を世間に認めさせるのが俺達の目標だ。
こんなところでグズグズしてられないよな?」
そう問えば全員無言でうなづいた。
そして、俺は続ける。
「そうと決まればやるぞ。優勝景品の進化アイテムだが、鋭い爪を選ぼうと思う。
ニューラが次に進むために手を貸してくれないか?」
そう聞けば当たり前だとうなづく。ニューラはヤミカラスから励まされている。
「何処の誰でも手を抜くな。全力で倒しに行け。
思い切り暴れてこい!」
最後にそう言えば、皆一斉に気合の声を上げる。
全員のコンディションもモチベーションも良好。後は俺のトレーナーとしての能力が試される。
絶対無様な試合はしない。そう誓うと手持ちの食事の支度に取り掛かった。
一応続きました。設定上ハチマンはカロス地方にいます。なので多分アローラのポケモンはでないと思います。次回から学内トーナメント編です。バトル描写が下手なので投稿が遅くなってしまったらごめんなさい。
ご感想など頂ければ幸いです。