三好昇は理解者でありたい   作:Feldelt

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第11話 夢だとしても

午前8時。

緋月昇は乃木家の屋根に張り付いていた。

 

「乃木家正門周辺は中途半端に防具を着た奴らが3人...だが3人だけか...仕留めることはできるが無視だな、俺の存在に気づいていない...だとするなら中に入りたいのだが...煙突もないし...玄関から行くにもリスクがある...しゃあない、窓割るしかないか...」

 

だが違和感がある。静かすぎるのだ。

騒乱が起きているにしては、静かすぎる。

 

「てことは...こいつらもう中にいるのか...!」

 

窓を割って中に入る。地下ならまず階段を降りればいいが見張りは当然いる。しかも窓が割れた音を聞きつけてこっちに来るはずだ。それはつまり、戦闘の開始を意味する。

 

「武装解除に重点、ねぇ...死にそうになったら殺す気でかからなきゃ救えないっての...!」

 

ゆっくりこちら側に来た見張りの2人。

その手に握られたスタンガンのようなものを物陰から針でたたき落とす。

 

「何っ...」

「せぇい!」

 

その後天井にアンカーをセットし再び振り子の要領で2人まとめて蹴り飛ばす。さらに念には念を入れてスタンガンを拾って見張り2人を気絶させる。

 

「よし...」

 

これをあと何回やるんだ...

だが、やるしかねぇ...地下にまずは向かう...!

 

「最速で最短で真っ直ぐに一直線に...行くぞ...夏凜...園子!」

 

天井にアンカーを刺し一気に階段の見張りの後ろに降りる。速攻でスタンガンを見張りの首に押し付けて倒す。

 

「次...地下階段を降りた先か...トランシーバーは貰って行くか...」

『ガ-...よし、やっとこさ乃木の嬢ちゃんのところにたどり着けそうだ。木刀二刀流の嬢ちゃんには手を焼かされたが...まぁいい。手勢は減ったが乃木の嬢ちゃん仕留めるには十分だ。見張っとけよー、仕留める前に楽しませて貰わねぇとわりに合わなそうだがな...』

 

瞬間、緋月昇の意識は一瞬緋月昇から離れた。そして次にはどす黒い何か、灼けるように全身を駆け巡る衝動がやってくる。

 

「うおぁぁぁぁ......ッ!!!!!」

 

アンカーを射出、できるだけ早くシェルターのある座標まで向かう。そこには気絶している数人の男と三好夏凜とシェルターの解錠を試みる集団が5人程度。5人なら...殺れる...!

 

その時緋月昇の周りに誰か一人でもいたら、話は変わっていたかもしれない。

 

「見張りを抜けてきただと...!」

「何者だ!」

 

見たところ奴らに銃器はない。こちらに3人向かって来るが...些細なこと。

 

「どけぇ!」

 

アンカーを射出と同時に腕を動かすことでワイヤーにパルス波を伝え、狭いシェルター通路では避けられない斬撃を放つ。

 

「何だこの武装!?」

「蛇腹剣...!?」

 

斬撃の直撃で怯んだ奴の首元にスタンガンを押し付けて倒す。これを繰り返すこと3回。シェルターの方を見るとそこには気絶している夏凜を人質にとった首魁とシェルターを解錠しようとしている奴の2人がいる。

 

「まさか一人で我々の見張りを倒して来るとは思わなかったが...残念だったな。これ以上我々を妨害するのならこいつがどうなってもいいということだぞ?若造。」

「...まさか一人で俺の足止めをしてくるとは思わなかったが...あぁ、全くもって残念だ。これ以上そいつにその刃物を突きつけてみろ。お前、死ぬぞ。」

「ほざけ...!?」

 

一瞬、ほんの一瞬意識が俺から離れた瞬間、首魁の右肩にアンカーを突き刺す。そして。

 

「夏凜を人質にとったんだ...それ相応の痛みは受けて貰わねぇとなぁ...!」

 

そう言って、パルス波によりワイヤーで右腕を切り落とす。

 

「ぐおぉぉぉぉ!?」

「ちっ...貴様の薄汚れた血で夏凜の可愛い私服が汚れたじゃねぇか!」

 

全力で首魁の顔面を踏みつぶす。なんなら針も首元に数本刺した。だが...これで終わりじゃない。

 

「シェルターが空いている...!?」

 

シェルター内部へ入る。あと一人なんだ。あと一人消せば...!

 

「のぼるん!?」

 

視界の先からの声。園子だ。

まだ園子は無事だ。

 

「園子!」

「のぼるん後ろ!武器庫は後ろから...!」

 

園子の声と同時にひきつった表情が見えた。大方、俺の後ろで銃器でも構えられているんだろう。だが、お構い無しだ。

 

「そうかい!」

 

アンカーユニットを逆転させて最後の1人の腹を貫く。予想もしない攻撃には対処ができない。よって、最後の1人は反撃もできずに倒れた。

 

「誰も殺さないのは無理があった...すまない園子。遅くなって。」

「のぼるん...」

「でも多分まだ来る。結局、息の根を止めるまで続きそうだ...夏凜を投げ込むから、2人でそこにいてくれ。」

 

シェルターの中に夏凜を投げ込む。数ヶ月ぶりの再開で、ほんとなら今すぐ抱きしめたい。でも。

 

「ぞろぞろ湧いてきやがった...面倒なことだなほんと。じゃあ片付けますかね...」

 

返り血と少しの傷。その姿は園子の記憶を刺激した。

 

「またな。」

「...のぼるん...ッ!」

 

シェルターの扉を再び閉め、緋月昇は単身で戦いに身を投じるのであった。

 

 

 

 

 




次回、第12話「魂より出ずる力」

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