機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ~戦乙女と血と海と~   作:Seacool

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#10 悪魔 出港

#10 悪魔 出航

 

三日月が会議に撃墜されそうになっているその頃

響と加賀が通信室で仕事をしていた。ここは大本営や付近の鎮守府、艦隊との連絡に

応答する部署である。

「…暇ね」

「そうですね…」

加賀が言うと響は返事した。実は通信室はこの鎮守府において一番暇な部署だった。

確かに通信はくる。しかしそれの大半は大本営からのもので、執務室に回線をつなげ

通信が終わったら回線を切る。という簡単すぎるものだった。しかも他の鎮守府や艦隊からの連絡などもほとんどない。午前中に何も来なければその日は特に何もないのだ。

そのためこの通信室自体は午前中だけ開いており、午後は開いていない。大本営からの通信は部屋を閉める際、回線をつなげてから閉めている。一応緊急の通信が入って場合、鎮守府内にサイレンが鳴るようになっているがそれもほとんど鳴らず、月に一回点検で何回か鳴らす程度になっている。

「それにしても」

「うん?…」

今度は響が加賀に話しかける。

「今度の提督、不思議な人でしたね」と響

「ああ その話ね」

加賀は答えた。

「提督が本地の病院に行ったって聞いて 新しい提督が来るのは予想してましたが…」と加賀

「なかなか見ないタイプの提督でしたね 前の提督も相当だったけど」

響もそう返した。二人ともクールな性格であまり興味なさそうにすることが多いのだが、

今度ばかりは違うらしい。

「はたしてどこまでできる人なんでしょうね」と加賀

「さあ…でも」

「何?」

響が間を開けたため加賀は聞き返した

「あの人の眼…信頼できる人の眼でした…」

「…そうね」

加賀は澄んだ瞳をしながら答えた。そして二人は静かになり、仕事に戻っていった。

 

 

三日月は会議が終わったあと執務室に戻り、数枚の書類にサインや文章を大和に手伝ってもらいながら仕上げ、

一息ついていた。人生初の書類仕事だった。

「読み書き上手になりましたね」

大和が緑茶を注いで持ってきてくれた。最初は舌に合わなかった緑茶(というよりお茶そのもの)だったが慣れてくるとこの苦みが好きになっていた。

「大和のおかげだよ」

三日月は大和からお茶を受け取りながら言った。

「えっと、この後の予定は何だっけ?」

三日月は大和に今日の予定を聞いた。前提督の秘書艦だった大和はそのまま次の提督の三日月の秘書艦になった。

「はい、今日は軍服のサンプルが何着か持ってきてもらっているのでそれの試着したあと寸法を測って微調整を行います。完成品は1週間もあれば届きます」

大和は自分の手帳に書かれている今日一日の予定を三日月に伝えていった。

「あとは…」

「あとは?」

「三日月さんお待ちかねのあれです」

「!、じゃあ…」

「はい改修は終了したとの報告がありましたので…」

大和は三日月を見る。

「…」

口には出していないがなんともわくわくした顔になっていた。

「…先に見に行きます?」

大和は一応聞いた。それに対し三日月は

「い…いや大丈夫、やらなきゃいけないことがあるから、そっちからやろう」

三日月は見たい気持ちを抑え込み先にやるべき仕事をやることにした。

それを聞いた大和はなにか成長したものを感じた。

「提督らしい判断です。ではちゃちゃと仕事を片付けて早く見に行けるようにしましょう」

「頼むよ大和」

三日月ははっきりと返事した。

「じゃあ早速…」

大和は辞書ほどの分厚さのある本を三日月の前に置いた。

「鎮守府の施設詳細の本です。三日月さん飲み込みが速いから2時間もあれば読み終わると思いますよ」

「…」

いきなり心が折れそうになった三日月だった。

 

 

一方そのころ

工廠にて

「なんで私に黙ってたのよーーーー!!!!」

「お…落ち着けよ夕張…」

夕張と工廠で作業していたゲンジが話していた。というより夕張をゲンジがなだめていた。

「なんで…なんで…あんなすごいもの組み立ててるの教えてくれなかったのよーーーー!!」

涙をにじませた眼で夕張は指をすごいもの…ガンダムバルバトスに向けている。

「はぁ…お前はこういうことになると行動力あるから困るわ本当…」

 

なぜこんなことになっているかというと、夕張がこの2週間の間にたまたま工廠を通りかかった際、妖精が見かけない部品を運んでいるのを目撃し、好奇心が働いた夕張が独自に探りを入れ調べた結果、艦娘の艤装ではなく艦船の艤装が運ばれていること、それを不審がった夕張は妖精の制止を振り切り、工廠内に侵入し、整備されている

ガンダムバルバトスを見つけてしまった結果、このふくれっ面の夕張がいる。

「しょうがねえだろ?今日まで秘密にしてたんだからよ~」

三日月同様、ガンダムバルバトスも今日まで秘匿しており、予定では今日の午後に

なったら正式配備発表とお披露目するはずだったのだが、夕張が入ってきてしまいその秘匿がばれてしまった。

「この際これのこと秘密にしてたことは許してあげる。その代わり…」

「こいつを触らしてくれって言うんだろ?」

「その通り!!」

「ダメだ」

夕張の許しと提案をゲンジははねた。

「なんでだめなのよ!」

「お前の手が入ったら<改造>じゃすまねえだろ!」

ゲンジがここまで拒否するのには理由がある。

「お前前科を忘れたとは言わせねえぞ!」

この夕張、機械が好きで、特に改造することが、自分の艤装どころか、他人の艤装にまで手を出しており

何度か艤装をダメにしてしまっている。そのため、最近まで工廠立ち入り禁止命令まででていたほどだった。

しかも命令が解除されたと同時に艤装を改造しようとしたため、まったく懲りていない。

「それにこの機体の改修はパイロットの許可がいるんだよ」

ゲンジは断るもう一つの理由を言う。それに対し夕張は

「じゃあそのパイロットの許可得ればいいんでしょ!」

と言い、工廠の出入り口に向かい走り始めた。

「そのパイロット、今執務室で仕事してると思うぞ!悪いことは言わねえあとで行きな!」

「わかったー!!」

夕張は聞いているのか聞いていないのかわからないが足を停めずに、外へ走っていった。

「ったく…あの機械バカめ…」

ゲンジはあきれながらバルバトスの方へ顔を向ける。

「お前もそう思うか…」

バルバトスは何も答えない

「まっ…聞いても無駄だったか」

ゲンジは他の仕事を思い出し、バルバトスを後にした。

 

 

その後しばらくして

 

 

執務室にて三日月は…

「…」

机に頭を突っ伏していた。

「…」

大和は机に突っ伏している三日月を机から引き起こし、額に濡らしたタオルをのせた。

「すいません…ここまで大変だとは思わなくて…」

大和が三日月に謝罪した。

施設詳細の本を読み終わり休憩しようとしたら、軍服のサンプルをあと1時間ほどで持っていきたいと配達してきた人から言われ、急いで試着室にかけ、すぐに試着し

適当な長さに測り、それを紙に書くと配達人は荷物をまとめすぐさま鎮守府を出て行った。

施設詳細を読むだけでも疲弊していた所に試着の催促が来てしまい三日月は休む暇もなく

寸法測定した結果、三日月は今の状態になってしまった。

「いや、大和が謝る必要はないよ 大和が悪い訳じゃないし」

大和はそれを聞き謝るのをやめたがそれでも申し訳なさそうにしていた。

それを見た三日月は話を変えることにした。

「大和、そういえばさ」

「はい?」

「背中の傷ってな…」

ジリリリリリリリリリリリリリリリ

けたたましい音がなる。鎮守府内の敷地すべてにあるサイレンからの音だった

「これって…」と三日月

「はい、そうです」大和はさっきまでの態度が嘘の様に変わっていた。

「じゃあ行こうか」

「はい!」

大和は自身の艤装のもとへ

三日月は今日お披露目するはずだった愛機のもとへ急いだ。

 

 

 

「おやっさん!」

「おっ!きたか!」

三日月は自身の機体を置いてある工廠へ入ると、愛機であるバルバトスが改装された姿で三日月を待っていた。

「…ずいぶん変わったな」

三日月は見知った姿から変わり果てた姿になった愛機を見上げている。

「まあな。海上戦闘を可能にするために色々手を加えたからな」

ゲンジはたばこ(人間用)に火をつけながら言った。

元々モビルスーツは宇宙空間もしく地上を主戦場にする兵器のため、水上戦闘はあまり考慮されていない。するにはそれ相応の装備を装着するしかない。

だが艦娘たちの主戦場は海 すなわち水上戦闘を必要とする。愛機であるバルバトスと共に戦うにも、またそれ相応の改装を行わなければいけない。

「まあおめえさんからしたら随分変わったとしか思えないだろうな」

今のバルバトスは全身に黒色の増加装甲をはっており、さらにバックパックがあるはずの場所には艦娘の艤装をそのまま大きくしたような艤装が搭載されていた。

しかも搭載されている砲すべてが見ただけで大口径大火力と思わせるものばかりだ。

「なーに、艤装の調整は済ませてある。戦闘は可能だ」

ゲンジは口から煙を吹きながら三日月に愛機の状態を伝えた。

「わかった。ありがとうおやっさん」

三日月はゲンジにお礼を言うとその場で半裸になるとバルバトスのコックピットに繋がる階段を上った。そしてバルバトスのコックピットを開く。すると

「ん?」

コックピット内にある座席の両サイドに見たことのない操作パネルがあった。

三日月は気になりながらもコックピットに入りバルバトスと自身とを繋ぐ物

阿頼耶識システムを接続した。接続した瞬間、脳内に機体に関する情報が流れ込んできた。

「ぐっ…!やっぱりきたか…」

三日月はやはりと思いながら機体状況を把握する。三日月にとってこの様な経験は初めてではなかった。

バルバトスに最初に搭乗した時と宇宙でテイワズと交戦した時に感じた<あれ>と似ているものを感じていた。それは機体状況が芳しくない時に現れる反応だった。

「おい!大丈夫か?」

ゲンジは三日月の声を聴いて走ってきた。

「うん…なんとか…ん?」

三日月は鼻を触ると赤い液体が付着していた。鼻血だった。それを三日月は手で拭うと

ゲンジに両サイドにあるもののことを聞く

「あー、それは艤装操作装置だ」

「なにそれ」

三日月は聞いたことのない装置の名前を聞き、頭の中に疑問を浮かべていた。

「実はな、この機体の中にある阿頼耶識システムとかいうやつと艤装の制御装置をつなげようとしたんだが、阿頼耶識システムがすげぇ高度なシステムすぎて、接続することができなかったんだよ。」

ゲンジはそのまま続けた。

「んでしょうがねえから、機体のシステムと艤装の制御装置を別系統にしたんだ。その両サイドにあるやつはその制御装置の制御盤だ」

ゲンジは操縦席の両サイドにある制御盤を指さしながらいった。

三日月はいくつかのボタンと発光しているパネル、そして複数のダイヤルが付いた制御盤を見た。

「なに、心配する必要はねえよ 制御盤全部に印を入れてあるからな」

ゲンジはコックピットを覗きながら、言った。

一方三日月からすれば十分複雑そうだった。

(そういう問題じゃないんだけどな~…)

三日月は心の中でそう思った。だが

(まあ、どうにかなるかだろ)

三日月は開いているハッチから見えるバルバトスの顔を見る

(そう思うだろ?お前も)

三日月は心の中で愛機に語り掛けた、その隣で

「実はこいつの名前も少し変えさせてもらってるぜ」

ゲンジはバルバトスの顔を見ながら言った。

「こいつの名は、ガンダムバルバトスネイビーだ。ネイビーっていうのは海軍って意味だ」

「バルバトスネイビー…」

三日月はゲンジとバルバトスネイビーを見ながらつぶやいた。

そんなことしていたら、出撃開始のアラームが格納庫と工廠内に響き渡る。

「おっと時間か、じゃあ健闘祈るぜ!」

そういうとゲンジはコックピットから離れ、バルバトスの周りにある足場をどける様に妖精たちに命令した。妖精たちは、命令されると即座に足場をどかし始めた。

同時に目の前にある格納庫と工廠をつなぐレールがある物資運搬用の巨大な門が開きだした。

三日月はコックピットの中でゲンジに言っておかなければならないことと、聞いておきたかったことの二つを頭の片隅に置くと、彼は操縦桿を握り自身の精神を集中させた。

阿頼耶識システムを介し、機体の状況を再確認した。

(関節には変な負荷はかかってない…となると、この装甲と武装が原因か)

三日月はバルバトスの全身に装着されている装甲とバックパックに搭載されている艤装を

網膜投影システムを通じて見る。明らかに機体側の調整ができていなかった。だがこれは

試運転などを行わなければわからない部分が多いためしかたがないと三日月はあきらめた。

そんなことを考えていると目の前の門が開き、巨大トロッコがバルバトスを工廠から格納庫…出撃位置まで移動させる。

中は非常灯が輝き、警報が鳴り響いていた。三日月は自分の知っている出撃方法とは違うことは知っていたが、実際に目にすると本当に違うことを実感させられる。

そんなことを考えていると、足元が動き始めた。出撃するために海上に近づきためだ。

そして三日月は周りに艦娘たちがいないことと出口に向かって白い波が立っていることに気づく

「みんな先に行ったのか」

三日月はそう判断すると、バルバトスの足元に何もないことを確認するとバルバトスを出撃位置に移動させる。艦娘たちは出撃するとき脚部に海上推進機構をつけている。この推進機構のおかげで艦娘たちは水上を自由自在に移動できる。

そしてこのバルバトスネイビーにも同じ様に海上推進機構を脚部に設置している。それも艤装側にある機関からではなく、モビルスーツの主動力炉であるエイハブ・リアクターから、

しかもそれを2基搭載したガンダム・フレームのエイハブ・リアクターからだ。

バルバトスネイビーの2基のエイハブ・リアクターの駆動音がより一層大きな音を上げだした。エイハブ・リアクターの出力を戦闘出力まで上昇させていた。同時にエイハブ・リアクターからエネルギーを供給され始めた脚部の海上推進機構が唸りを上げ水に浸っていた

脚部を海上に押し上げた。海上推進機構は問題ないようだった。

準備は整った。

三日月は深呼吸をした。そして妖精たちが天井近くから黄色の旗を挙げているのを確認した。

施設詳細の中に書いてあったことを思い出す。挙げている旗が赤の時は「待機」黄色の時は「出撃準備」

青の時は「出撃」だった。

少しすると旗を持った妖精が勢いよく旗を黄色から青へ変えた。

それを見た三日月はいつも出撃するときに言っていたセリフを発した。

「三日月・オーガス」

バルバトスが腰を下げ腰だめの姿勢になった。

「ガンダムバルバトスネイビーでるよ」

その言葉と共にバルバトスネイビーは2基のエイハブ・リアクターと海上推進機構が唸りを上げ勢いよく出撃していった。

新たな戦いを始めるために…

 

 

 

こうして出港していった悪魔 ガンダムバルバトスネイビー

この悪魔がこの世界にどのような変化を与えるかはまだ誰も知らない。

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