機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ~戦乙女と血と海と~   作:Seacool

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#7 臨時

 

「ハァ ハァ」

明石は息を荒げながら、それを運んでいた。工作艦の艦娘である明石は大和から回収の依頼を言われたため、大和の身を案じて急いだ。だが実際は別のものを運んでいた。

「明石さん、だ、大丈夫ですか。よろしければお手伝いしますが」

大和はそれを運ぶ明石に申し訳なさそうに話す。

「い、いえ大丈夫です」

明石はその申しを断った。彼女も艦娘そして工作艦である以上仕事はする。だが

「こんなものを運ぶとは思ってませんでしたよ」

明石はそれ、ガンダムバルバトス を見ながら言った。

ガンダムバルバトスはスラスターのガスが切れて、水上を滑走することができないため

工作艦の明石に鎮守府の格納庫まで運んでもらっていた。しかし本来艦娘の修理、改修などが主な任務の明石にとって、モビルスーツという艦娘とは桁違いの大きさと重量を持つものを鎮守府まで運ばせるというのはお門違いにもほどがあった。

それでも運ぶのがこの鎮守府にいる明石だった。

 

 

明石の気合と根性により無事、ガンダムバルバトスとパイロットの三日月・オーガスは鎮守府に到着した。大和たちは格納庫の中に入っていくと、

「すごいな、これ」

三日月はその光景に驚いた。

格納庫は巨大な工場の様になっており、海側に面している方は出撃用のカタパルトがあった。大和と明石はバルバトスから一旦離れ、そして二人は出撃したカタパルトに近づき、マンホール状の鉄板の上に立つと、天井からアームやケーブル、クレーンが下りてきた。

三日月は一瞬何事かと思うと、二人の周りにそれらが集まり二人の艤装を取り外していった。数分もすると、艤装は丁寧に取り外されていた。

「三日月さーん!」

大和はバルバトスの中にいる三日月に聞こえるぐらい大きな声で叫んだ。最もモビルスーツには外部マイクがあるため叫ばなくても聞こえるのだが、

「ん、なに?」

「そこの大きなシャッターからこっちに入ってください!」

大和が左の方に指を指しながら言う。三日月は指が指されたほうを見るとモビルスーツが簡単に入れそうなシャッターがあった。

「今頼んで開けてもらいますから少し待っててください」

大和はそういうと明石と一緒に右側にある小さな扉から奥に入っていった。

少しすると目の前にある大きなシャッターが上に開いた。三日月はバルバトスをシャッターの向こうにくぐらせた。くぐった先には、大量のクレーンやアームが天井から伸びせわしなく動いていた。

そして左右の壁に沿って艤装が何個も並んでいた。そのすべてが、モビルスーツの整備用ラックのように艤装を固定していた。

「こっちです、三日月さん」

大和の声が聞こえた。声が聞こえた方をみると、そこはなにかの集積場のようなスペースがあった。

三日月は大和の元までバルバトスを動かし、そのスペースに止めた。

「ここに止めてください」

三日月はバルバトスを両膝立ちの姿勢にした。そしてバルバトスのエイハブ・リアクターを待機状態にし、コックピットから降りた。だが

「「!?」」

大和と明石は三日月の姿を見て硬直した。なぜなら彼は上半身裸で降りてきたのだ。

男性への耐性があまりない艦娘からしたら、それはあまりにも刺激的なものだった。

「三日月さん!、そ、その、ふ、服は!?」

大和は顔を真っ赤にしながら言った

「脱いだ。バルバトス操縦するとき邪魔だからさ」

「そ、そういう問題なんですか!?と、とりあえず服着てください!」

三日月はそれもそうだと考えコックピットに一旦戻り服を着て、また降りてきた。

大和の顔はまだ赤く、明石は鼻血を出しかけていたが三日月は気にしなかった。元々異性に対してあまり配慮がない性格の影響もあった。

少し落ち着いた大和は気を取り直して三日月に話しかけた

「三日月さん、お疲れさまでした」

「そうでもないよ。それより」

三日月は早速本題を話した。

「三日月さんも一緒に戦う、でしたよね」

三日月はうなずいた。

「でもすいません。私だけの一存ではそれを許可することはできなくて」

大和はこの鎮守府の艦隊の旗艦という重要な立場でそれなりに発言権はあるのだが

さすがに普通の人間である三日月、そしてモビルスーツという未知の兵器の一種

ガンダムバルバトスをいきなり戦力として向かい入れるのは無理だった。

「というかなんで一緒に戦うって決めたんですか?」

彼女はそこに疑問を持っていた。彼は異世界の住人、こんな戦いに参戦する必要はないのだが…という考えだった。その問いに三日月は答えた

「俺、前にいたところでも戦ってたから、こういうことに慣れてるだけだよ。それに」

「それに?」

「大和は俺を助けてくれた だから俺も大和のことを助けたくなった」

三日月は大和の眼を見ながら言う。大和はそのまなざしと言葉に気恥ずかしさを感じ少し顔を赤くしながら

「い、いえ、そんなお言葉大和には、もったいないですよ」

と言った。

 

「ジーーーーーーーーー」

一方明石はそれを見ながら

(自分は空気ですか)

と思っていた。

 

三日月は大和に連れられ各鎮守府にある、執務室に移動している。そこにはこの鎮守府の

提督という人がいるという。提督とは大和曰く「この鎮守府における司令官」らしい。

三日月はオルガがやってたことをやってる人だと考えた。

そして漢字で<執務室>と書かれた扉の前にたどり着いた。(ちなみに三日月は漢字が読めないためなんと書いてあるかわからなかった)大和は扉を2回叩くと部屋の中から

「入ってきていいぞ」

聞き覚えのある声が返事した。扉を開けると、一つのベットがあった。それもただのベットではない、人二人は横になれそうなぐらい大きなベッドで、周りには様々な機械が置かれている。

点滴、心拍数や呼吸を表示するモニターなどが所狭しに置かれていた。そして、そのベッドの隣には山本の姿があった。山本は大和と三日月の組み合わせでここに来ると思わなかったらしく少し驚いていた。

「大和が来るのは予想出来たが」

三日月の方へ視線を向けた。

「まさか三日月君もくるとは」

大和は戦闘後いつも欠かさずこの執務室にきて提督に戦闘報告しているので山本は

来る頃だと思い待っていたようだ。

「ねえ、山本」

「なんだい」

「その人が提督って人なの?」

三日月は提督という存在を知らない。正規軍などにいればわかるかもしれないが

彼がいた場所は非正規軍といっても過言ではない所だった。

「ああそうだよ…ただ…」

 

「ただ?」

三日月は山本の顔を見て言った。

「提督はね、ここ半年目を覚ましてないんだ」

山本は寝ている提督の方に向いた。

「不治の病が原因でね。もう体もボロボロなんだ」

「…」

三日月は黙っていた。

「あの山本さんちょっとお話が」

その横にいた大和が山本に話しかけた。そして耳元でヒソヒソ話し始めた。

「それは本当かい?」

「はい事実です」

「うーん…」

大和の話を聞いて山本は少し考え込んだ。

「三日月君」

「なに?」

「君大和に一緒に戦いたいって言ったんだね」

それを聞いて三日月はコクンとうなずいた。

「…」

それを聞いた山本は深く頭を垂らした。そして

「…三日月君、君の願い…叶えられそうにないよ」

「なんで?」

「提督が起きていればその願いを叶えられるかもしれない。でも」

「彼は今こんな状態だ」

「…」

三日月は黙ってそれを聞いていた。

「彼があと1ヶ月こんな状態なら、鎮守府の運営が困難になりだす。今まで大和や私が手伝ってきたがそれも限界でね。そのため新しい提督がここに着任される」

「その提督が君の存在に気づいて 大本営 司令部に連絡した場合、君と君のモビルスーツを捕縛するだろうね」

「…!」

三日月は「捕縛」という言葉に反応したようだった。山本はその顔を見ながら、

「君はこの鎮守府から逃げたほうがいい。捕縛されれば何をされるか、君ぐらいの人間ならわかるだろう」

山本は椅子から立ち上がり、三日月に深く頭を下げた。

「だから、すまない。君の願いはかn」

その時、ベッドの周りにある一つの機械が発する音が一際大きくなった。

「!?、まさか!?」

山本は提督に近づいた。それも相当慌てているようだ。

「山本さん!?」

大和も驚いてベットに眠っている提督に駆け寄った。三日月もそれにつられて一緒に駆け寄った。

「て 提督!?」

大和が叫ぶ。すると、なんと寝ていた提督が起き上がったではないか

「…」

起き上がった提督は、目をぱちくりしながら辺りを見渡す。

「て、提督…?」

大和は不安そうに話しかける。それに気づき提督は大和の方を向く。

「おお…大和…」

「久しぶり…かな?」

提督は大和の名を言った。

「はい…大和です…お久しぶりです…」

大和は目に涙を浮かべながら答える。相当信頼されている人間なんだろうと、

三日月はその光景を見ていた。

「そこの君は…」

「えっと…この人はみk」

「三日月…三日月・オーガス君…だね」

「「「!?」」」

この部屋にいる提督以外の三人は驚いた。まだ三日月の名前も言っていない。

誰かが教えようにも今の今まで目覚めていなかった提督に教えるなど不可能のはずだった。

「提督…なんで三日月さんの名前を知ってるんですか?」

「俺もよくわからない…でも」

「夢で見たんだ」

「夢か」

山本は不思議そうに聞き返した。

「ああ…夢でね…」

「三日月君や君の仲間たちが戦っているのを夢で見たんだ」

「それはそれはすごい戦いだった」

「…」

さすがの三日月も呆然とするしかなかった。自分の過去を夢で見られるという現実離れした出来事が起きたことに驚いていた。それは大和も山本も同じだったが。

「ところで三日月君はなんでここに来たんだい?」

そんな三人をよそに、提督は三日月にここに来た理由を聞いた。

「俺は大和たちと一緒に戦いたいんだ」

「…」

提督は考え込み始めた。そして、考えがまとまったらしく三日月の方を見て

「いいよ」

と言った。

「て…提督いいんですか?」

大和はその答えが簡単に出てくるとは思わなかったようだ。

「その代わり」

「その代わり?」

三日月は聞き返した。

「君がここの提督になってくれ。」

「うんいいよ…って、え?」

三日月はその言葉に思わず「うん」と言ってしまった。

「ちょ!!提督!、それはさすがに」

「そうだぞ、いきなり三日月君に提督になれって」

大和と山本はその考えに待ったをかけた。

「なんだよ~俺は提督だぞ~、次の着任する奴ぐらい決めさせてくれよ~」

提督はいきなり気の抜けた声で反論した。

「もちろん俺にだって考えがあるさ」

「例えば?」

「俺が夢で見た通りの三日月君なら鎮守府を、そして君たち艦娘を守る力を持ってる」

提督はそのまま続けた。

「判断力もあり、戦場において一番前に出て味方を守ってきた。軍人にとって咄嗟の判断力というのはかなり重要になるからな」

提督はその後も三日月を提督にしようといろいろ三日月のあれやこれやを大和と山本に語った。

その語りが終わった頃合いを見て山本が、

「だからってな、三日月を提督にするにしても、大本営になんて報告するんだよ」

と聞いた。

「ああ、大丈夫だ。大本営には昔からぶっといパイプがあるんだ。俺が一声言えばどうにかなるさ」

「要は裏取引ですよねそれ」

大和は静かにツッコむ。それに対して提督は、

「しかも多大な戦果を挙げる艦隊を指揮する人間の推薦ってことにしとけばもう怖いもん無しだしな」

提督は気楽そうに話した。それを聞いた三日月は

「…いいよ、やるよ」

「ちょ三日月さん、本当にいいんですか」

「うん」

「「はぁー」」

それを聞いた大和と山本はため息をついた。

そして少し話した後三日月と大和は報告と用が終わったため、執務室を退室していった。

「よし、じゃあ俺大本営に連絡するわ」

提督は執務室にある電話の方に向かった。しかし電話の受話器を取る前に、

「おっと、そうだ、山本」

提督は山本を呼んだ。

「なんだい?」

「お前は大学病院に連絡してくれ。俺の病気ホントは手術と長期治療すればなんとかなるらしいじゃねえか」

「…知ってたのかい?」

「ああ…なんたって俺は提督だからな」

「フッ…」

それを聞いた山本は安心した顔をして、大学病院に連絡するため山本も退出していった。

執務室に一人残った提督は三日月の顔を思い出しながら、

「三日月・オーガス…か」

「ふっ、いい名前じゃねえか」

一人執務室で笑っていた。

 

 

 

 

こうして

 三日月・オーガスは正式にこの鎮守府の提督になった。

そして、それに合わせるように彼の愛機ガンダムバルバトスも新たな力を手に入れようとしていたのだった…

 




いかがだったでしょうか。
次回も見てくれると幸いです。

不定期更新とはいえ、長らくお待たせして申し訳ございませんでした。
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