黒いグリッドマンを倒し、友情を取り戻したグリッドマン同盟。グリッドマンだけでなく直人、ゆか、一平、武史の四人に新世紀中学生もこのツツジ台にやってきた。
謎の敵トレギア……。トレギアは一週間後、怪獣を連れて再びこのツツジ台にやって来ると言っていた。
そこで一行は六花の家で今後に向けての作戦会議をしていた。
作戦会議は明日でいい派だったヴィットも予想に反して早く帰ってきた直人と一平を見てやれるなら早い内がいいだろうと考えを改めていた。
新世紀中学生中心のマックス主導で話を進めていく。
「まずは我々の敵であるトレギアについてだが……」
「ちょ、ちょっと待って。アンチ君は?」
私ははこの場にアンチ君がいないことに気付いた。
「ア、アンチについてはこれからまとめて説明する。あいつはわけあって別行動している」
「その通り。グリッドナイトの目的も含めてここにいる全員に情報を行き渡らせる」
キャリバーさんとマックスさんが答える。キャリバーさんもマックスさんも以前と同じ様に真剣かつ冷静に私達を導こうとしてくれている。
「話を戻そう。トレギアの目的だが、六花が言うには悲劇を見たいからと話していたらしい。悲壮感に溢れていたらなおいい、と」
「それだけのためにこんなことを……。なんというか嫌な感じだな……」
「ああ、趣味も気味も悪いヤロウだぜ」
直人君と一平君はトレギアに嫌悪の感情を抱いてるように見えた。
無論、ここにいる全員がそうだろう。
「我々が奴の存在に気付いたのはトレギアが開けたであろう次元の穴だ。奴の能力なのか持っている技術なのかはわからないが、我々の想像を絶する能力なのは確かだ」
マックスさんはトレギアの持つ能力を警戒していた。グリッドマンと共に様々な世界を救ってきたであろう新世紀中学生達も理解する事の出来ない力らしい。
「で、グリッドマンが次元の穴を調べたらお前らのいた桜ヶ丘とこのツツジ台が繋がってたってわけだ。そもそも時代の違う場所を繋げることの出来る奴なんか今までいなかった。それにあの黒いグリッドマンを見る限り怪獣の質も相当のモノだぜ」
「なんつーか、やってること無茶苦茶だよな……。現実世界とコンピューターワールドを繋げただけじゃなくて時代も越えさせる事が出来るなんてさ……痛ッ!?」
ボラーさんの解説を聞いた内海君はトレギアがいかに高い能力を持っているかを実感していたみたいだ。
ボラーさんにしっかりしろ!と言われながら脛を蹴られていた事には目を瞑ろう。
「それだけの力を持ってる割にはカーンデジファーみたく世界征服とかそういうタイプじゃなさそうね」
「まあ、どちらかと言えばアレクシスタイプかな。被害者もいるし」
ヴィットさんはゆかちゃんの言葉に返答すると同時に響君を見る。
「あいつ……俺の事を全部わかってるみたいだった。俺の心の弱さにつけこんで、俺が欲しい言葉を与えてくる…。俺だけじゃなくこの世界の事もよく知らないと出来ない事なのは確かだと思う」
響君はその後、自分がどのようにしてトレギアの罠に陥ってしまったかを丁寧に話してくれていた。
自分の弱い部分を晒けだす事は勇気のいることだ。
彼はこの一件で更に強い心を持つことが出来たのだろう。
響君の話が終わった後も、トレギアが私や内海君の事だけでなくアカネやアレクシスの事も知っていたのを伝えた。
トレギアが言うにはアカネやアレクシスより俯瞰してこの世界を見ていたらしい。
創造主のアカネや力を与えたアレクシスすらもトレギアの存在を把握してはいなかった。
アカネが来る前からずっとこの世界にいたアノシラス親子さえもそれは同じだ。
「僕が作った破壊プログラムはカーンデジファーに使ったものより性能を良くしたんだ。グリッドマンの力借りずともグリッドハイパービーム並の威力を出せるように」
「でも、あいつは消えなかったよ。それどころかダメージが入ってる様子も無かった……」
「少なくとも現状では我々はトレギアに全滅させられてもおかしくないだろう」
武史くんのプログラムのおかげで最悪の事態が免れたが対抗策になり得ない事もわかった。アノシラスちゃんの言う通りトレギアには屁でもないといった感じだったし。
グリッドマン含め、私達はこの状況をあまり好ましくは思ってない。
「ところで裕太……記憶は取り戻せそうか?」
「正直…全く。体は勝手に動いたけど、それだけって感じ……かな」
響君は残念そうに俯く。
「私は少なくともグリッドマンと一体化したら思い出すものだとばかりおもっていたが……」
マックスさんに限らず皆が思っていた事だろう。私はあの日々を今日のように鮮明に思い出せる。内海君もきっと一緒のはずだ。
「裕太の記憶だけど……もしかしたらトレギアが関係しているのかもしれない。多分六花も同じ事を体験したからわかると思うんだけど、トレギアに最初に会った時の記憶を一時的に忘れさせられていたんだ」
「そういえば……私も一緒だ。二回目に会ったときにアイツが指を鳴らしたのと同時に記憶が一気に蘇って……」
今でもその時の事を思い出すと背筋が寒くなる。嫌な記憶を脳の中に一気に詰め込まれた感覚だった。
「俺の記憶はトレギア次第か……」
「そのためにもあいつに勝つ方法を考えなくちゃな!」
少し落ち込む響君の肩をポンポンと叩いて直人君は励ます。
「やっぱこのジャンクの性能を良くしないとな!内海の持ってるスマホっていう板ぐらいにはしたいな」
「パソコン自体が古すぎてそこまでは出来ないけど、グリッドマンが全力を出しても問題ないぐらいにはした方が良いかもね」
一平君の概ね同意するヴィットさん。
「よし!じゃあ早速パーツ譲ってくれそうな所へ行こうぜ!」
「ちょっと待って!もう日が暮れるし明日は響君の追試があるからそれからでも良くない?第一みんなは住むところどうするの?」
「やべー、考えてなかったぜ……」
早速行動に移ろうとしていた二人を止める。直人君も一平君も考えるより先に行動するタイプなのかも。
「俺、親が今海外旅行中なんだ。男子高校生三人くらいなら全然大丈夫だよ。井上さんは、女の子だしさすがに……」
「なら私の家にこのまま泊まっていきなよ、ゆかちゃん!」
「本当に!?正直野宿も覚悟してたから助かるよ」
「良かったな一平、武史!」
「俺、腹ペコペコだぜ~」
「ありがとう二人とも。グリッドマンもここにいるみたいだし、安心だわ」
とりあえず四人の寝泊まりする所は確保できたみたい。響君の言う通りさすがにゆかちゃんを男子高校生が四人いる部屋に行かせるわけにはいかない。
「最後に……アンチもといグリッドナイトについてだが、彼は今新条アカネの世界にいる。詳しく言えば新条アカネのコンピューターの中にいる」
「新条アカネの!?」
「アカネの……!?」
アンチ君はアカネの世界にいたのだ。だけど、その理由もなんとなく察せる。
「トレギアと戦う以上戦力は欲しい。グリッドナイトはアクセスフラッシュが出来ていない状態のため完全に力を出せているわけではないのだ」
グリッドマンが解説してくれる。グリッドマン自身も誰かとアクセスフラッシュが出来ないとコンピューターワールドでの活動自体がままならないらしい。
つまり、アカネがグリッドナイトとアクセスフラッシュする必要があるという事。
「次、グリッドナイトがこの世界に来るときは新条アカネとアクセスフラッシュをしているときだ」
「でもグリッドマン、正直彼女が戦いに向いてるとは思えないわ。私達みたいにサポートするならまだしも……」
グリッドマンの言葉にゆかちゃんは反論する。
「正直、俺も。俺達は一度会っただけだけども、あんなか弱い女の子が戦えるとは思えない」
「……まあ、すごいかわいかったけどな」
一平君は置いとくとして直人君もゆかちゃんの意見に賛成した。
「ちょっと待て!お前達新条アカネの世界に行ってたのかよ!?」
内海くんはひどく驚いている。もちろん私もだが。
ここに来る前にこの三人はアカネに会ったらしい。
「彼女、この世界で自分の犯した罪を凄く後悔していたの。それに絶対に戻れない理由もあるって言ってて……」
「二度とあの世界には行かないってすげー意地張ってたぜ。アクセスフラッシュ自体、一心同体の文字通り心が拒絶してしまうとうまくいかないんだ」
私はアカネがそんな弱い人間ではないと言いたかったが心が弱かったからこそこの世界があるし、グリッドマンが来たことも事実だ。
それでもアカネが意地になってるのは私との約束のせいなのかもしれない。
「彼女はこの世界と決別して前を向くためにあっちの世界に行ったんだ。彼女が前を向いて進んだからこそこの世界は広がった。正直、新条さんには来てほしくないよ。決意が揺らいじゃったら彼女のためにならない」
内海くんは自分の胸の内を晒けだした。厳しい言葉を使っているがそれも彼女の決意を尊重するためだ。
そして私も続くように自分の胸の内を明かす。
「アカネにはこの世界に来てほしいけど、来てほしくない。でも、それを決めるのはアカネ自身だから」
「君達の意見はよくわかった。ただ、六花の言う通り決めるのは新条アカネ自身だ。どんな結果になってもそれを受け止める覚悟を持つように。今日はもう遅い、各自自分の拠点へ解散するとしよう」
マックスさんの最後の言葉で取り敢えずこの作戦会議は解散した。
ちなみに響君の追試が終わり次第手分けしてトレギア対策をすることになった。高校生組、新世紀中学生組に別れてジャンクのバージョンアップから始め最終的にグリッドマンもグリッドマンシグマもどちらもフルパワーが出せる性能を目指すことになった。
「六花のママさんの料理、凄くおいしかった!」
「ふふ、チーズフォンデュもなかなかいけるっしょ」
解散後私とゆかちゃんは晩御飯を一緒に食べ、その後私の部屋で他愛のない話をしていた。
「ゆかちゃんの世界ってどんな感じなの?」
「多分、この世界の丁度20年前くらいの感覚だと思うわ。最初はあまり変わってないように思えたけど、だんだん私達には未来的過ぎるって思うようになったわ」
そういえば直人君達の服装はどことなく昔のトレンディドラマで見そうなかんじだったなぁ。
「凄く賑やかだよね、ゆかちゃん達」
「賑やか過ぎるのも考えものよ六花ちゃん。武史君も中学生から友達になったんだけど、仲良くなるにつれて直人や一平達と同じくらい陽気になっちゃって」
「マジィ?なんかそんな感じしないけど、武史君」
「元々真面目……というにはひねくれ過ぎてたけど良識は確実に直人や一平より上だもの。あの二人のイタズラ好きなところに似なくて良かったわ」
確かに、直人君と一平君は武史君に比べたらやんちゃさが全面に出てる気がする。
「それより六花ちゃんはどうなの?やっぱ響君と付き合ってるわけ?」
「へぇっ!?」
いきなり過ぎて思わずすっとんきょうな声を上げてしまう。
「あら、予想的中?」
「付き合ってないけど……。ど、どうして響君だと?」
自分でも少し驚く程に動揺していたためか声が震えてしまっている。
「響君も六花ちゃんも目が合う度視線を切ってはまた見て……って感じでお互いに意識しまくりよ」
「そ、そんなに?そりゃあまあ、目はちょくちょく合うかもしれないけど」
自分ではあまり意識してないつもりだったが周りから見るとバレバレなのかな……?
「彼、凄く純粋ね。彼はトレギアに利用されてしまって一度闇に身を堕としてしまったけどあなた達の友情で光を取り戻した。きっと白にも黒にもなりやすいのね」
私はアカネがこの世界を去ってからずっと響君を見てきて彼を理解しているつもりだった。
だけど今回の事件で彼の苦悩を知りもしないで追い詰めていた事を知った。
「仲直りというか、お互いにわかりあえたから良かったけど、このまま仲が悪くなっちゃったらどうしようって、そんなことばかり考えてた。響君の事何もわかってなかったし、一歩間違えたらグリッドマン同盟崩壊ってかんじだったし」
「そんなこと絶対ないわ。友情ってどんなことがあっても途切れない絆なんですもの」
「途切れない絆……」
「そう、トレギアもきっと友達いないのよ。だから絆というものが簡単に壊れるものだと思ってる。たとえそれが壊れてしまってもお互いに心を寄り添えばより強固なモノになるのに」
「うん……。そうだね」
絆は決して途切れない。グリッドマン、新世紀中学生、グリッドマン同盟、ゆかちゃん達、そしてアカネとも。
「二人ともー、デザートあるわよー、きてー」
ママの気の抜ける声が聞こえてきた。
「ママー、今行く~」
「デザート!?超楽しみ!」
私とゆかちゃんはママの待つリビングへ向かった。